スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 10位
千葉戦、大宮戦をともに1-0で勝利し、今季初の連勝を飾った栃木。3連戦の最終戦は今まで勝利したことのない金沢をホームに迎える。スタメンの変更は3人。岩間と田代は2試合ぶり、アカデミー出身の山本はプロ初先発となった。
ツエーゲン金沢 [4-4-2] 19位
前節はホームで千葉に0-2で敗戦。千葉の堅いブロック守備にボールを持たされてしまい、2連敗を喫した。前節からスタメンを6人変更し、ボランチには怪我明けの藤村が入った。
前半
サイドを巡る攻防
田代とルカオの激しい競り合いからも見られたように、立ち上がりから敵陣にロングボールを放り込み、セカンドボールを回収した方が主導権を握る展開で試合は進んでいく。
前半10分過ぎから徐々に金沢がボールを握るように。最終ラインとボランチでボールを回している間にSBが上がりSHは内側へ。大外レーンにSB、ハーフスペースにSHという関係性は試合を通じて変わることなく、SHは常に栃木の選手にとって捕まえにくいポジションを取っていた。
サイドの選手の斜めの関係性から前進する金沢に対して、栃木はSHとSBが分担して対応。栃木の右サイド(金沢の左サイド)での攻防はよく見られ、対面の選手がそのまま対応することもあれば、サイドチェンジなどからボールを受けたSB下川にSB大島が、空いたスペースへ走るSH島津にSH山本が寄せるなど、臨機応変ながらも対応の判断とスピードはとても早く感じた。
ただ、いずれにしても栃木はSHが深い位置まで押し込まれてしまい、バイタルエリアを消そうとするボランチとともに最終ラインに吸収されてしまう場面が目立ってしまい、多少受け身に回っているようにも見えた。
過密日程を考慮してか、この日の栃木は2トップが控えめなプレッシングでボランチを消す意識が強く、金沢は最終ラインで安定してボールを持つことができていた。そのためサイドからの前進に詰まれば再び後ろからやり直せばよく、また、横パスやバックパスに対する栃木のプレッシングが強くなればシンプルに前のスペースにアバウトなボールを入れ屈強なルカオを走らせればよい。万が一の逃げ道が確保されている金沢のサイド攻略に対して栃木は奪いどころを見つけられず、常に後手を強いられる難しい展開となった。
勢いそのままに金沢が先制点をゲットする。最終ラインでサイドを変えるとボールを受けた下川が縦に突破。対応する山本を振り切りクロスを入れると、CBの間を取った杉浦がヘディングで合わせた。
ゴールシーンで見逃せないのがSH島津のポジショニング。クロスの直前にCB高杉とSB大島の間に入ると、高杉は島津が目線を横切ったことで意識が外側に。一方田代は背後のルカオを気にしているため目の前の杉浦に体を寄せることができず。クロスを上げたタイミングでは栃木のCBが2人で相手3人(島津、杉浦、ルカオ)に対応しなければならず、間合いの早い下川のピンポイントクロスに中央で合わせる杉浦を瞬間的にフリーにしてしまった。
失点後の栃木は前半終盤にかけて、セカンド回収やポストプレーから中央で起点をつくり、外に開いてからSBがクロスを入れることでゴールに迫っていく。
興味深かったのが韓勇太へ入れるボール。長身でフィジカルに優れる選手だがヘディングでの競り合いよりは足元に貰って相手を背負うポストプレーの方が得意なのだろう。カウンターの際に瀬川からグラウンダーのパスが入ったり、最終ラインの高杉からの楔パスを下りて受けたりと起点を作るタイミングと方法はチームで共有されているように見えた。ただ、どうしても足元に入るボールに対しては金沢のCBも前向きのベクトルで対応可能だったため、もう少し背後を取るなど動きに緩急が出れば相手にとっても厄介さを与えられただろうか。
前半はこのまま0-1で終了。金沢リードで折り返し。
後半
高まる前傾姿勢
ハーフタイムに栃木は3枚替えを敢行。流れを手繰り寄せるべく勝負の交代策を図る。
やはりロングボールのターゲットとしての矢野は非常に効果的だった。栃木はロングボールを矢野に集め、ポストプレーやセカンド回収から前進を狙っていく。右SHに入った明本もどんどん内側に入っていくことでボールに関与。複数人での相手の対応を掻い潜り、ブロックのなかに侵入していくプレーはすでにレギュラーとしての風格を感じさせた。
攻撃のギアを一段階上げ前傾姿勢になる栃木に対して、金沢は空いた背後のスペースやインターセプトから前進。シンプルにルカオを走らせる攻撃は前半同様であり、GK塩田の好セーブがなければあと数失点は覚悟しなければならない内容だった。
過密日程も含めてここまでフルタイム出場を続けてきた影響か、疲れの見える瀬川のプレー制度が落ちてきたところで西谷優希を投入。一度右足に持ち替えてから上げる滞空時間の長いクロスに明本がさっそく頭で合わせるなど、瀬川とはまた違ったパターンから攻撃を構築。逆のSB大島も含めて、本職前目の選手がSBも遜色なくプレーできるユーティリティ性を兼ね備えている点は、今後の連戦に向けても非常に貴重である。
終盤にはテクニックとタフさに優れるエスクデロを投入して攻勢を強めるものの、決定機を作るまでに至らず。金沢の集中したディフェンスとセカンドボールへの出足は最後まで衰えず、ゴールネットを揺らせないまま試合終了。0-1、栃木は3連勝ならず、金沢は連敗を2でストップした。
最後に
今年の栃木は相手よりも走りアグレッシブに戦うことを軸にした「ストーミング」を掲げているが、この試合ではじっくり構える印象が強く、相手の判断を鈍らすような強い圧力はあまり見られなかった。もちろん過密日程の最終戦であることや金沢がロングボールを多用した影響は大きいと思うが、同スタイルの相手や今後の連戦を考えれば、プレッシングをかけられないシチュエーションも整備する必要があるだろう。「栃木は激しくプレッシングをかけてくるチーム」という印象は、おそらく強豪への連勝で他チームに植え付けられているはずである。今後は武器を尖らせつつも、いかに柔軟性を持ったハイブリットなチームになっていけるかに注目していきたい。
試合結果
得点 29’杉浦恭平(金沢)
主審 榎本一慶
観客 1,456人
会場 栃木県グリーンスタジアム