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【贅沢な悩み】J2 第39節 栃木SC vs ザスパクサツ群馬(△2-2)

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はじめに

 前節新潟戦は2-2のドロー。今季初の3連勝とはならなかったものの、上位相手のアウェイゲームで逆転に持ち込むなど攻撃面の迫力を見せた。5連戦のラストは北関東ダービー、群馬との対戦。本拠地グリスタでの今季ラストマッチで地力を見せたい一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 ホームの栃木は前節から4人変更。GKには塩田に変わって川田が4試合ぶり、右SHには有馬が16試合ぶりにスタメン入りを果たした。ベンチにはキャプテン菅が今季初のメンバー入り。古巣対戦となる大島はメンバーから外れた。

 

ザスパクサツ群馬 [4-4-2] 20位

 アウェイの群馬は前節から2人変更。平尾に変わって左SBに飯野、渡辺に変わってCBには学生時代を栃木で過ごした川上が入った。今季限りでの引退を発表している林はベンチスタートとなった。

 

 

前半

疲労がもたらすスロースタート

 3試合負けなしの栃木と、ここ4試合を3勝1敗と好調を維持する群馬。シーズン終盤を迎えてポジティブな結果が出ている両チームだが、立ち上がりの様子は対照的だった。どうもこの日の栃木には好調を支えたプレッシングにキレがなく、群馬のパスワークに対してほとんどが後追いになってしまった。

 

 プレッシングの鈍さの要因を一つにまとめることはできないが、少なくとも継続して出場してきた選手たちの疲労度が蓄積していたのは間違いない。普段はスイッチ役として抜群の働きを見せる明本もこの日は今ひとつ。中央を閉じてサイドに追いやっても、なかなかサイドで囲い込むまでには至らなかった。一歩の寄せやコース切りが不十分になった結果、群馬に自由を与えてしまったといえるだろう。

 

 群馬のサイドの選手にとっては後方のボランチやCBなどボールを落ち着かせられる逃げ場を確保できていた点はメンタル的に大きかったと思う。中を閉じられても彼らに預ければ逆サイドの広いエリアに展開できる。とりわけ右寄りに位置するボランチの岩上から左サイドへという形は頻繁に見られ、加藤と飯野によるサイド攻略は試合を通して武器となった。

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 立ち上がりから右サイドを強襲される栃木。サイドチェンジからの守備のためどうしても有馬はボールサイドに間に合わず、黒崎は後手を踏むことが多くなってしまう。何とかボールを回収したとしても押し込まれた状態からの攻撃では限界があり、サイドに流れてロングボールを受ける明本に対しても群馬のCBがそのまま付いてくるため、起点を作れた回数は限定的だった。

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 飲水タイム明けは多少盛り返した栃木。前半26分にはハイプレスから浮き球を田代が弾き返した流れでエスクデロがそのままミドルシュート。直前の25分にはハイプレスを剥がされファールで止めてしまう場面もあったが、序盤の劣勢を受けてギアを入れ直したのは明らかだった。

 

 それだけにゴール前での不用意なファールから与えてしまった先制点は痛恨であった。誰も触れずともファーポストの内側を叩く大前のFKのコースはさすが。GKノーチャンスである。優秀なキッカーを擁する群馬に対してはやはり不用意なファールだったし、良い流れを一旦止めてしまうという意味でももったいない失点になってしまった。

 

 ビハインドを背負ったこともあり、その後は前への勢いを増した栃木。エスクデロポストプレーや有馬のドリブル突破は前進の助けになっていたが最終的にシュートに至る場面は少なかった。黒崎のクロスも精度が伴わず、やはり出ずっぱりの影響はあるのかなと。

 

 試合は群馬の1点リードでハーフタイムを迎える。

 

 

後半

クロスを上げるまでの整理

 ハーフタイムに明本に変えて矢野を投入した栃木。前線に明確なターゲットを配置したことでセカンドボールへの予測もスムーズになり、敵陣深い位置でのプレータイムを徐々に確保できるようになってくる。

 

 後半7分の同点弾は敵陣で溝渕がボールを奪取したところから。エスクデロポストプレーを経由して右サイドに送ると駆け上がってきた黒崎が加藤との1vs1を制してクロス。これはDFにクリアされたものの、セカンドボールにいち早く反応した岩間がダイレクトで合わせてみせた。岩間は栃木在籍2年目で初ゴールとなった。

 続く後半14分、左サイドでの崩しから供給した瀬川のクロスが右サイドに流れると、今度は佐藤がクロス。相手DFに当たってコースが変わるも、有馬がペナルティエリア内で粘り、最後は山本がサイドネットに突き刺した。直前に投入されたばかりの選手たちがさっそく結果を残し、後半立ち上がりの時間帯に逆転することに成功した。

 

 この2得点もそうだが、ここ数試合は相手を押し込んだ状況でのクロスを上げる過程が整理されてきているように見える。

 一つは同サイドで繋いでからクロスを上げるパターン。一方のサイドに3~4人の選手が集まって三角形や菱形を作りながら、ゴール前には逆SHが入ることで打開を図るが、このときクロスを上げるのは下がり目のSBやボランチが多かった。

 もう一つが同サイドでの繋ぎから逆サイドに展開してからのパターン。このときはシンプルでSBが1vs1を作れれば積極的に仕掛けるというものだった。1vs2の数的不利を強いられればやり直して、密集or逆サイド展開からクロスを上げる。

 ともに共通するのがクロスを上げる選手により上げやすい状況を与えること。この試合の2得点や前節新潟戦の矢野の得点のきっかけはこれらの形からであり、攻撃力を維持できている一つの要因になっているように感じる。

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 逆転後は再び中央を閉じて構えることで群馬のビルドアップをU字回しに限定。左右に散らされ、サイド深い位置を取られることもあったが、ボールサイドの枚数を素早く合わせて自由にさせない。

 しっかり自陣でボールを回収できれば一気に複数人が走り出してのカウンター。後半37分や後半41分には薄くなったSBの背後を突き、決定的なカウンターを創出したが得点には至らなかった。

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 ビッグチャンスをものに出来ないと風向きが変わるとはよく言うがこの日は前節の終盤のように被決定機を量産されているわけではなかった。最後の失点を除いては。

 後半45分の失点シーンは舩津のクロスを林が制したところから。競り方と落とす場所はパーフェクト。ポストプレーヤーとしての質の高さを見せつけた林のベテランの味である。柳にとっては高い授業料になったといえる。

 

 試合は2-2で終了。今季最後の北関東ダービーは勝ち点1ずつを分け合う結果となった。

 

 

最後に

 前節新潟戦と同じ得点経過で逃げ切れなかった栃木。どちらの試合の方が勝ち点3に近かったかと言えば間違いなく群馬戦である。ホームでのダービーマッチ、そして試合後に引退を表明したキャプテン菅を思えば、やはり3点目を奪えなかったことが重くのしかかってしまった。

 決定的なカウンターは見せたものの、リードしたときの試合運びが不慣れなのは否めないところ。クリーンシートで快勝した山口戦も2点差にならなければどうなるか分からない劣勢ぶりだったし、試合をダメ押す決定打が必要なのは明白。昨季の今ごろを考えれば贅沢な悩みなのかもしれないが、来季の続投が決定した田坂監督にはさらに磨き上げてほしいところである。

 

 

試合結果

栃木SC 2-2 ザスパクサツ群馬

得点 30分 大前 元紀(群馬)

   52分 岩間 雄大(栃木)

   59分 山本 廉(栃木)

   90分 宮阪 政樹(群馬)

主審 先立 圭吾

観客 3,345人

会場 栃木県グリーンスタジアム

 

 

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