はじめに
前節山口戦は2-0で勝利。岡山戦から続く複数得点での勝利に加えて、4試合ぶりのクリーンシートを達成した。今節はアウェイに乗り込んでの新潟戦。僅差で上位につける相手に追い付くことができるか。今季初の3連勝をかけた一戦となる。
スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 11位
アウェイの栃木は前節から2人変更。契約上の理由で出場不可の柳に変わり、CBには高杉が17試合ぶりのスタメン復帰となった。古巣対戦の矢野はベンチスタート。
アルビレックス新潟 [4-2-3-1] 6位
現在2連敗中の新潟は前節から4人変更。ボランチには出場停止明けの島田と左SBが本職の堀米が起用された。チームトップの7得点をマークする鄭大世はベンチからのスタート。
前半
意図的な曖昧さ
試合は90分を通じて丁寧にパスを繋いでビルドアップを行う新潟、前からのプレッシングでできるだけ高い位置で奪いたい栃木という対照的な構図で進んでいく。
栃木対策としてシンプルにロングボールを入れることでプレスを回避し、同時にハイラインの背後を狙うというプランは多くのチームが採用しているものだが、この日の新潟は少し違ったアプローチ。最終ラインを深く取り、U字に素早く回すことで栃木の前線のプレス距離を遠くさせることでプレスを牽制させようとしていた。
ボールを受けたSBが近くのボランチに預けて逆サイドという形は攻撃パターンとして用意していたように思う。前半6分はその典型。栃木のハイプレスは一列目の後ろが空きやすく、トップ下のスライドが遅れることも少なくない。ピッチを幅広く使う新潟は密集する栃木DFをひっくり返すようなイメージを持っていた。
GK藤田からマウロを飛ばして田上へ届けたり、栃木のプレッシングが強ければボランチを下ろして最終ラインを厚くしたりと、後方のパス回しのテンポを意識していた新潟だが、どちらかといえば栃木がプレッシングで引っ掛ける回数の方が多かったように思う。
新潟は最終的に前進を本間・早川のいる左サイドから図るため、攻撃の始点では右サイドを使うことになる。したがって、栃木は左サイドで回収することが多かったが、そこからのカウンターの質がなかなか伴わなかった。実際に引っ掛けた回数やアタッキングサードでのプレー割合を見れば栃木に流れがあったのは明白だが、クロスやラストパスの精度、強引な中央突破からのボールロストなどシュートに至ったシーンはわずか。ロングボールのセカンド回収からの攻撃も同様だった。
攻撃のルート上、右サイドの高い位置にボールが回らない新潟は割と早い時間帯から右SH中島に前線のフリーマン的な役割を与えていたように見えた。右サイドを主戦場にピッチ中央や最前線にも顔を出していく。その分右サイドにはトップ下の高木が中央から流れることが多く、それに応じて左SH本間も中央寄りにボールを受けることが増えていった。
とりわけ前半18分は初めて効果的に中央を割れたシーンでもあった。栃木のボランチ間で本間が縦パスを受けると島田へバックパス。島田からボールを受けた高木がドリブルでバイタルエリアに侵入すると、慌ててプレスバックした森に倒されてFKを得るという場面があった。
新潟は二列目の選手が少しずつ配置をズラしながら曖昧なポジショニングを取ることに加えて、前半35分過ぎには左SB早川がボランチの位置でプレー。マンツーマン要素の強い栃木は徐々に前からのプレッシングがハマらず、後追い気味になってくる。自陣に押し込まれるようなってからもボールホルダーへのチェックとブロック構築を卒なくこなしていたが、大外から個人で仕掛けられる本間の存在はなかなか脅威であった。
流れを掴んだ新潟は押し込んだ展開から中島がクロスに合わせて先制点を奪う。ブロックの手前でコースを変える技あり弾は、さすがに相手の質の高さを褒めるしかない。試合は1-0、新潟リードでハーフタイムを迎える。
後半
逆転まではこぎつけたものの
ハーフタイムにエスクデロに変えて矢野を投入した栃木は一気に逆転に成功する。
後半2分、明本が右サイドに流れてボールをキープすると上がってきた黒崎へ。黒崎の低いクロスを上手く収めて前を向いた山本がシュート。一度はGKに弾かれたものの、こぼれ球に反応した矢野がキックフェイントで相手DFをかわすと冷静にフィニッシュ。投入後すぐに結果を残した矢野はこれで3試合連続での途中出場からのゴール。古巣相手に貴重な同点弾となった。
続く後半6分、前線からのハイプレスで相手のパスミスを誘うとボールを回収した黒崎からダイレクトで中央の明本へ。その明本からパスを受けた山本は利き足とは逆の右足でクロスを供給。ファーサイドから走り込んだ森が膝下に何とか合わせてゴールイン。後半ギアを入れ直した栃木が立ち上がりの勢いのまま逆転に成功した。
この2つの得点の間にも栃木は山本のシュートがポストを叩く場面を演出。1点目の同点弾と同じでFWがサイド奥で粘り、後ろに下げてのクロスという形からだった。相手の最終ラインを押し下げた上でライン間へのクロス供給は準備していた形なのだろう。
流れを取り戻したい新潟は攻撃的な選手を次々と投入。一応のシステムは[4-4-2]だが、両SBはウイングのようにタッチライン際に張り、両SHはFWとともに中央に厚みを加えていたため、さながら[2-2-4-2]もしくは[3-1-4-2]の形になっていた。
構える時間が長くなる栃木だったが、ボールを支配されての守備スライドはお手の物。ツートップは相手のボランチを基準に、一人が最終ラインに下りていけば縦関係を形成する。そこからは相手を順々に見ればよく、タフな展開ながら新潟のツートップに自由にボールを入れられるシーンはほとんどなかった。
ボールを持たされる新潟にとって、インサイドに入ったことでより自由度の高まった本間の存在は受け手として貴重な存在だったと思う。ブロックの外でボールを貰えば自らブロックを割って侵入していけるし、ライン間であればそこから出し手にもなれる。後半45分の同点弾も本間がライン間で受け、素早く同じライン間の高木に預けたところからだった。
新潟が土壇場で追いついてからは両チームともチャンスなく2-2で試合終了。栃木は連勝ストップも3試合負けなし、新潟は連敗を2でストップさせた。
最後に
今季最初の対戦(第9節 △0-0)も含めて、ここ最近の新潟とは見応えのある試合を演じることが多いが、この試合も例に漏れず両チームの狙いが見える好ゲームだった。手中にしかけていた3連勝は最後にこぼれていったものの、歯車が噛み合ったときの迫力ある試合運びがこれだけ結果として表れたのにはチームとしての積み重ねを感じる。上位相手のアウェイゲームならなおさらである。
他方、こういう試合を勝ち切ってこそ得られるものが多いのも間違いない。終盤のようにほとんど敵陣に挽回できず、ひたすら耐える展開になってしまうとどこかで判断が鈍くなる恐れがある。最後の時間帯の過ごし方については監督もコメントしているように、リードした状態での大人な試合運びはこれからの課題になってくるだろう。
試合結果
得点 41分 中島元彦(新潟)
47分 矢野貴章(栃木)
51分 森俊貴(栃木)
90分 シルビーニョ(新潟)
主審 井上知大
観客 4,109人