スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 20位
前節はホームで山口と対戦しスコアレスドロー。システム変更と高萩のボランチ起用を行った後半は相手を一方的に押し込んだが、最後までネットを揺らすことができなかった。今節は天皇杯も含めた5連戦の初戦となる。
スタメンの変更は1人。矢野貴章が5試合ぶりにメンバーを外れ、変わって小堀が先発に復帰。ベンチの安田は第16節東京V戦以来のメンバー入りとなった。
ツエーゲン金沢 [4-4-2] 17位
栃木とは勝ち点2差の17位につける金沢。前節はアウェイ長崎に乗り込み、1-5の大敗を喫した。ここまで8得点の杉浦を筆頭に攻撃陣はまずまずの結果を残しているものの、リーグワースト2位の失点数が尾を引いている現状だ。
前節からのスタメンの変更は、大石→奥田の1枚のみ。ベンチには古巣対戦となる豊田が入った。
サイドのやり合いで上回る
ホームでの前回対戦は4-0の快勝。プレッシングと縦に速い攻撃から終始ペースを握ることができた試合だったが、その背景には金沢が出場機会の少ないメンバーを中心に当ててきたことを考慮しなければならない。その時とこの日ではスタメンの顔ぶれがガラリと変わっており、どちらかといえば今節の方が本来の姿と言えるだろう。栃木にとっては過去勝利のないアウェイの地で挑む6ポインターとなる。
両チームとも試合を通じて狙っていたのがサイドの裏のスペース。栃木の[3-4-2-1]と金沢の[4-4-2]ではピッチの至るところにミスマッチが発生し、枚数の異なるサイドではこれがより顕著になる。サイドのやり合いで優位に立った方が主導権を握ると言ってもよく、この点で栃木は立ち上がりから金沢を上回ることができた。
7分、平松が相手のロングボールを跳ね返すと、中盤で回収した山田が金沢のSB小島を剥がして吉田へスルーパス。左サイドを抜け出した吉田がクロスを供給すると、高い打点で合わせた小堀のヘディングはクロスバーを叩いた。SB裏を突いた時には金沢の最終ラインは崩れており、その結果小堀が相手SBと競ることができたシーンだった。
先制点はその直後に生まれる。10分、自陣から福島がロングボールを入れると、宮崎が頭でそらしボールは小堀のもとへ。この時点で小堀はすでに相手SBの背後を取っており、あとは相手に当てずに折り返し、ゴール前では宮崎が合わせるだけだった。サイドの攻防を早々に制した先制点だった。
【7/1金沢戦】
— 栃木SC|Tochigi SC (@tochigisc) 2023年7月1日
7月1日(土)にアウェイで行われましたツエーゲン金沢戦のハイライト動画を公式YouTubeチャンネルにアップしました。
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PICK UP🎥
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⏰10分 #宮崎鴻 選手のゴールシーン⚽️🔥🔥🔥#全員戦力 #栃木SC #金沢栃木 #最鴻 💪@Ko_Gluyas pic.twitter.com/s61UxP88Gy
この日の栃木の攻撃で良かったのは、サイドの背後を突く攻撃に手応えを得つつも、多くの場面で中央に起点を作れたことである。中央でボールが収まれば相手の意識を引き付けられサイドの選手により時間とスペースを与えられるし、そもそも中央なら直線的にゴールに向かうこともできる。
宮崎がポストプレーの強さを発揮し、そのセカンドボールを西谷と佐藤祥のボランチ勢が鋭い出足で収めるのはもちろん、山田も巧みにボールを引き出してスルーパスを狙うなど、サイドの幅にこだわらない攻撃から一定の圧力をかけることができた。金沢は前半途中から2CBの左右を入れ替えていたが、これは宮崎への対応に手を焼いたからだろう。
ミスマッチを剥がすビルドアップもお手本どおり。テンポアップが物足りないのは依然として課題だが、相手を引き付けてのスペースメイクやギャップを見つけて斜めのパスで前進していく組み立てには安定感があった。相手の動きを見ながらボールを動かすことができたため、不用意なロストからカウンターを招く場面もなかった。
金沢のサイドの背後を狙う攻撃に対しても栃木は手堅く対応していく。プレスに行くのか行かないのか、金沢のSBに対してシャドーが寄せるのかWBが寄せるのか。これを状況に応じてよく判断できていた。
WBが前に出たときの左右CBの横スライドも良好。ここ最近の栃木は4バックの相手に対してトップ(宮崎)が左CB、右シャドー(小堀)が右CBを見るようにしており、それに合わせて右WB(福森)が頻繁に縦スライドを行うことが多い。そのため後方では福島が背後の対応に回ることになるが、中央に平松と大谷の2枚を残せる分、思い切りよくサイドへ寄せることができていた。
左右のバランスを多少右肩上がりにしているのは、SB的な振る舞いも可能な福島と本職CBの大谷の特徴をより生かすためだろう。大森が先発を外れているのは、こうしたバランスの中で左CBにはより高い守備力が求められているから。リスクをかけるサイドを整理することで一体となって良い守備ができているのが現状である。
一方、栃木はこの左サイドを突破されると危険な場面を作られやすい。22分に杉浦に深い位置まで侵入され際どいクロスを入れられたように、栃木は大谷を大きく動かされるとカバーできるのが平松しかいない状況になる。前節の山口も大谷の背後を狙っていた。右サイドがはっきりとプレスをかけるのに対して、左サイドはより繊細な受け渡しを要するのが栃木の守備バランスといえるだろう。
とはいえ、ヒヤリとしたのはこのシーンくらい。前半は栃木がペースを保ったまま1点リードでハーフタイムを迎えた。
若き守備陣が試合を締める
後半立ち上がりも栃木ペース。宮崎のポストプレーを起点に西谷が立ち位置を変えながら積極的にボールに関わることで、金沢守備陣の攻略を図っていく。宮崎がサイドに流れれば代わりに小堀が最前線に入ることで、ゴール前の厚みを確保しつつ高い位置で起点を作ることができた。
しかし、金沢もシンプルなサイド攻撃から活路を見出すと試合は一進一退の展開に。徐々に最終ラインを追い切れない場面も散見されるようになっていく。前半の項に書いたとおり、栃木のプレッシングは右肩上がりで特に福森にかかる負担は大きい。ペースを握り返そうと前から寄せる小堀と息が合わないと、54分のシーンのように金沢の左SB長峰をフリーにしてしまう。
サイドは異なるが、同様のシチュエーションからヒヤリとしたのが56分のシーン。ここでは吉田が対面のSBをフリーにさせまいとアプローチしたが、勢い余って小島を削ってしまった。このシーン、元をたどれば相手の後ろの繋ぎに対して全体の重心が低く、見かねた山田が庄司へ寄せたことで、吉田は長距離のスライドを強いられている。吉田はイエローカードを貰っていただけに、栃木としては非常に危ういシーンであった。
この一連の流れから主導権は金沢に渡ったと言えるだろう。栃木はWBを入れ替えてもなお全体の重心を押し上げられない。相手の最終ラインとボランチに十分に制限をかけることができないため、陣形を左右に揺さぶられ、自陣ゴール前で耐える時間が増えていく。
プレスをかけたい前の選手と最終ラインがコンパクトさを欠き、間延びした中盤を突かれる場面もしばしば。中盤にスペースが生じたことで個人では平松の迎撃が目立ったものの、チームとしての機能性は欠いた。高萩を中盤に投入してからはボールを落ち着かせることで守備の時間をいくらか減らすことができたが、攻勢を強める金沢の一つ一つの攻撃には冷や汗をかかされた。
そうした苦しい展開のなか奮闘したのがGK藤田を含む最終ラインの選手たち。とりわけ藤田のセービングには何度も助けられた。金沢にとっては何本シュートを打っても破ることができない壁が立ちはだかったような感覚だっただろう。至近距離からのシュートや1vs1からのシュートを次々と防ぎ、ゴールマウスに鍵をかけた。ボールデッドのタイミングで味方を大声で鼓舞した平松には、歴代のDFリーダーの影を重ねたサポーターも多いのではないだろうか。
最終盤にもGK藤田がビッグセーブでピンチを防ぎ、復帰戦となった岡崎もわずかなプレータイムだったが起用に応えた。ベンチの選手も固唾を呑んで見守るなか、5分間の追加タイムを凌いだ栃木が1-0で勝利。宮崎の挙げた虎の子の1点を守り切り、今季初のアウェイ戦勝利を飾った。
最後に
ミスマッチを巡る攻防で早い時間から相手を上回り、その後は粘りの守備でクリーンシートを達成。前半の充実した内容を考えれば、追い上げられた後半の試合運びは課題だが、金沢の猛攻を執念の守備で耐えきった経験は今後の自信になるだろう。これまで取りこぼしてきたシチュエーションを成功体験に繋げることができたことは、今後同様の展開を迎えた際に生きるはずである。6ポインターにおいて最大の手応えを得ることができた。
次の対戦相手は21位のいわきFC。前半戦ではホームで勝利した相手だが、監督交代からのここ3試合は負けなしと残留に向けてギアを上げてきた印象である。ここで勝ち点差を7に広げられるか、はたまた1に縮まってしまうか。今後を大きく占う激戦になることは間違いない。
試合結果・ハイライト
得点 10分 宮崎鴻(栃木)
主審 松本大
観客 2596人