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【雑感】2024年栃木SCのチーム編成について(GK&DF編)

 開幕を2週間後に控え、2024シーズンの到来も間近に迫ってきた。チームは開幕に向けて最終調整を行っているところだが、今回はおさらいも兼ねて、今季のチーム編成についてポジションごとに感想を書いていきたい。

 

※選手データは左から「背番号」「選手名」「年齢(開幕時点)」「昨季成績」「在籍年数」

 

■GK

1 川田 修平 29歳/10試合/9年目
21 キム ミンジュン 18歳/新加入
27 丹野 研太 37歳/38試合(J3)/新加入
31 中島 佳太郎 22歳/新加入
OUT▶︎藤田和輝、青嶋佑弥

 昨季レギュラーを張った藤田が新潟にレンタルバック(その後千葉へレンタル)し、青嶋は千葉へレンタル移籍。代わって3選手が新たに加わり、GKは4人体制となった。

 このオフ最大のトピックスは藤田の退団だろう。加入2年目の昨季は32試合に出場。リーグ戦での活躍が評価され、パリ五輪を目指す世代別代表にも選出されるようになった。藤田にとってはまさに飛躍の一年となったが、それだけに絶対的な守護神の抜けた影響が大きいことは明らかだろう。初めのうちは藤田と比較される難しいポジションになると思うが、新たな競争のもと守護神に相応しい選手が現れることに期待したい。

 年齢的にそれぞれ異なる世代の4選手で構成されたが、ここ2年間との大きな違いはベテランGKの存在。これまではパリ世代の藤田と大卒新人で加入した青嶋の2人を川田が年長者として率いるといった編成だったが、今年はベテラン丹野が加入した。

 個人的に丹野の加入は非常に大きいと思う。昨季所属した岩手ではフルタイム出場を果たしたが、これまではベンチを温めることが多いキャリアだった。これ自体は一見ネガティブに捉えられがちだが、丹野の強みはその点だと思う。第2GKとして常にチームの非常時に備え、出番が回ってくれば安定したパフォーマンスを発揮する。出場数は限られながらもJ1クラブに長く在籍したのは、そうした点が評価されたからだと思う。

 唯一の更新組となった川田は昨季第2GKとして10試合に出場したが、安定感という点で課題を残した。ここは丹野から吸収できる部分が大きくあるだろう。レギュラーを張った2022年はリーグ3位の堅守に貢献したように、力を発揮すればJ2でもやれることは証明済み。シーズンを通して調子の波を減らし出場機会を増やしたい。

 中島とキムはまずはプロデビューを目指すシーズンとなる。常葉大学から加入した中島は世代別代表に選出された実績があり、即戦力としての期待がかかる。田中監督とは大学時代に監督選手の関係でプレーしており、監督の求めるスタイルへの理解度ではアドバンテージがあるだろう。キムは目標とする5試合出場に向けて、トレーニングから猛烈にアピールしたい。

 

 

■CB

2 平松 航 23歳/29試合0G0A/2年目
5 大谷 尚輝 28歳/21試合2G0A/3年目
6 大森 渚生 24歳/36試合1G1A/3年目
17 藤谷 匠 28歳/21試合1G0A(J3)/新加入
23 福島 隼斗 23歳/36試合3G3A/2年目
33 ラファエル 23歳/5試合0G1A/2年目
40 高嶋 修也 23歳/5試合0G1A/2年目
OUT▶︎岡崎亮平、小野寺健

 チームを去ったのは契約満了の2人のみと、入れ替わりを最小限に留めた最終ライン。グティエレスや鈴木海音らレギュラー格が相次いで退団した昨季を考えれば、湘南からレンタル中の福島やステップアップの可能性もあった大森を残せたことは非常に大きいといえるだろう。

 気になる最終ラインの枚数については新体制発表会で田中監督は3バックを採用すると明言していた。実際に行うかは蓋を開けてみないと分からないが、昨季まで2年間3バックを貫いてきた栃木にとっては真新しいチャレンジではないことは確か。昨季からの継続選手が多いことも多少なりともアドバンテージといえる。

 仮に3バックをベースとしたとき、最も多く組んだ大森・平松・福島のユニットをそのまま残せたのは大きい。3バックに求められるのは後ろに重くならない守備であり、そのためには前に出て相手を潰しに行かなければならない。積極的な守備には周りのカバーリングが不可欠であり、実戦を通して守備の連携を高める必要がある。その点で守備スキルや癖を相互に理解しているユニットが残留したことは大きなメリットになるだろう。

 昨季終盤に出場を重ねた高嶋とラファエルは開幕からここにどれだけ食い込んでいけるかが試される。ともに加入当初はなかなか試合に絡めなかったが、終盤戦には主力組と遜色ないプレーを見せた。最終ラインからの持ち運びやライン間への楔のパスなど攻撃面で存在感を示したことで、J2でもやれる自信を身に付けたに違いない。

 昨季は怪我がちで思うように出場数を伸ばせなかった大谷と岐阜から加入した藤谷は、ベテランとして安定したパフォーマンスが求められる。本職CBであり機動力に優れた彼らはチーム事情に応じて3バックの全てのポジションで起用される可能性が高いだろう。

 懸念点を言えば、左利きのCBがいないことが不安材料に挙げられる。現状では大森のみ。その大森も全体の選手層を見ればCBではなく左WBで計算されているかもしれない。監督がどれだけ左利きCBにこだわりがあるかは分からないが、左WBの福森も右利きであることを考えれば、編成に多少偏りがあるのも事実である。

 とはいえ、新指揮官が新たに守備組織を構築するとなれば、最終ラインに求める役割は当然変化するだろう。先に書いたユニットも盤石ではない。シーズンを通して様々な組み合わせが試されると思うが、個人的には昨季ワースト3位に沈んだクリーンシート数を改善できるよう、伝統の堅守を取り戻してほしい。

 

 

■WB

3 黒﨑 隼人 27歳/21試合1G2A/6年目
7 石田 凌太郎 22歳/16試合0G1A/2年目
10 森 俊貴 26歳/25試合2G0A/5年目
30 福森 健太 29歳/37試合2G5A/3年目
OUT▶︎吉田朋恭、面矢行斗、五十嵐理人

 新加入選手はいないものの、福森の買い取りと石田のレンタル期間延長に成功。面矢と五十嵐はすでに昨夏にチームを離れていたことを考えれば、最終ラインと同様に入れ替わりの少ないオフとなった。

 まずはなんといっても福森と石田の引き留めに成功した点は大きい。福森は2年間のレンタル期間中ほとんどの試合で先発し、絶対的な主力として地位を確立した。石田も夏に加入してからは右サイドからの力強い突破と観衆を盛り立てる熱い姿勢で存在感を示した。両翼からチームを牽引した2人は今季もファーストチョイスとなることが濃厚だろう。

 [3-5-2]を軸とした場合、これまでの[3-4-2-1]と比べてサイドの選手が一枚削られるため、WBにはサイドをより支配することが求められる。

 これは攻守において当てはまるものであり、攻撃では周りと連携して自ら深い位置に潜り込んでいくこと、守備ではサイドの唯一の守備者として豊富なアップダウンが求められる。ここのプレー強度が保てなければ攻守に厚みをもたらすことはできないし、後手を踏めば5バック化し後ろに重くなってしまう。WBがどれだけ高い位置で主体的にプレーできるかがチームの調子を計るバロメーターになるだろう。

 それだけに個人的には黒﨑と森にはシーズンを通して彼らを脅かす存在として猛烈にアピールしてほしい。2人とも昨季はパフォーマンスの波が大きく、メンバーに絡めない試合が多かった。両サイドの出来がチームに大きく影響することを考えれば、バックアッパーに留まらないパフォーマンスに期待したい。

 上記した選手のほか、このポジションにはCBと兼務可能な大森や福島のほか、サイド突破に特徴のあるアタッカーやユーティリティな大島も起用される可能性はある。状況に応じて攻撃的にも守備的にも振る舞える選手層を揃えることができた。

 その一方で、CBの項と同様に、左利きの選手が不在な点は少し気になる点。福森は左足も遜色なく使えるとはいえ、やはり左利きの選手の縦突破が欲しい状況は少なからずあるだろう。その意味で吉田の退団は地味に痛い。仮に練習生としてキャンプに参加した選手や出場機会を求めるJ1の若手の獲得がない限りは、大森が左WBでプレーする可能性も十分あるように思う。