栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【選手別レビュー vol.2】栃木SCの2023シーズンを振り返る

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vol.1(背番号1~13)はこちら

 

15 DF 岡崎 亮平

24試合/1638分/0得点/0アシスト

■かつての恩師に応えたベテランDF

 琉球から加入したJ2実績十分のベテラン。湘南時代に選手、コーチの関係性だった時崎監督のもと、グティエレスが去った最終ラインのリーダーとして前半戦を中心に出場を重ねた。

 対角に振り分けるロングフィードや機動力を生かしたカバーリングなど出場した試合ではまずまずのプレーを披露。自身の持ち味を発揮しながら最終ラインに求められる役割を卒なくこなしていた印象だが、身体能力の高い選手にスペース勝負を挑まれると後手を踏むことが多かった。平松がCBの中央で独り立ちしてからはベンチを温めることが増えていった。

 時崎監督がチームを去り、最終ラインに若手を起用できる目処が立ったことを踏まれえば、契約満了になったのも理解できる。本人にとっては消化不良かもしれないが、今思えば岡崎がいたからこそ若手の台頭を待つことができたと考えることもできるだろう。

 

 

16 DF 平松 航

29試合/2540分/0得点/0アシスト

歴代のDFリーダーの系譜を継ぐ

 平松ほど試合ごとに存在感、信頼感を増していった選手はほかにいないだろう。大卒ルーキーながら、最終ラインからチームを支えた姿はすでにDFリーダーの風格を感じさせた。

 平松の今季のハイライトは間違いなく第23節金沢戦(○1-0)のワンシーンだろう。アウェイ戦未勝利で迎えた下位直接対決、1点リードした終盤に与えた被CKのシーン。「今日はここで勝つんだからな!」。敵の猛攻にさらされるなか、率先して味方を鼓舞したのは平松だった。その声は中継でも聞き取れるほどであり、これに歴代のDFリーダーの影を重ねたサポーターも多かったはずだ。

 その平松も今季の出だしは厳しい立場だった。昨季は特別指定選手としてひと足先にJデビューを飾っていたが、今季初めて出番が訪れたのは開幕から2ヶ月経った第9節山形戦(○2-1)。その試合も万全を期しての出場ではなく、負傷者が相次いだなかでのスクランブル投入だった。そこから少しずつ試合経験を積み、次第に安定したプレーを見せられるようになると、第20節徳島戦(●0-1)から先発に定着。そこからは1試合も欠場することなく最後までフルタイムでピッチに立ち続けた。

 もちろん課題がなかったわけではない。屈強な相手FWに対して迎撃を意識し過ぎるあまり反転されてしまったり、セットプレーでマークを剥がされるシーンも少なくなかった。ただ、それを踏まえても今季見せたプレーは総じて及第点以上の出来だったといえるだろう。来季はユース時代の恩師、田中新監督のもとさらなるリーダーシップを発揮してほしい。

 


17 MF 山本 廉

0試合/0分/0得点/0アシスト

栃木での9年間に幕を閉じる

 今季のメンバー入りは天皇杯秋田戦(○2-1)のみ。リーグ戦に絡めていないなか迎えた古巣対戦とあって期するものはあったと思うが、最後まで出番は訪れず。そのほかの公式戦でも18人のメンバーに食い込むことができなかった。トップチーム昇格後、初めて出場なしに終わる悔しいシーズンとなった。

 田坂前監督の時代は思い切りとセンスの良さ、そして守備時の強度を評価されて出場機会を重ねたが、時崎監督にはどうも刺さらなかった印象である。シャドーやボランチなど適正ポジションはあったと思うが、実際にローテーションに加わることはできなかった。

 ユースから計9年間を過ごした栃木とはここで契約満了。来季はプロになって初めて完全に栃木を離れるシーズンとなるが、新天地がどこになろうと、栃木印の選手として彼の活躍を願うサポーターは間違いなく多いだろう。

 

 

19 FW 大島 康樹

28試合/1475分/7得点/0アシスト

■覚醒した苦労人

 正直なところ、終盤戦に差し掛かるまではここ数年とあまり変わりないパフォーマンスだったように思う。コンスタントに出場しながらも目立った結果は残せず、あくまで守備のできるアタッカーの域を抜け出すことはできなかった。

 それが蓋を開けてみれば、チームトップの7ゴール。天皇杯も含めればトータルで9ゴールである。苦しい状況から自らの手、いやゴールで未来を切り開いたと言っても過言ではないだろう。

 大島の挙げた得点はどれもチームにとって非常に重要なものだった。天皇杯広島戦(○2-0)では格上撃破の口火を切る先制点。第28節甲府戦(○3-0)では圧巻の2ゴール。第30節徳島戦(△2-2)、第31節長崎戦(○2-1)、第39節大分戦(△1-1)ではいずれも終了間際に勝ち点をもたらす土壇場ゴール。リーグ戦の得点は全てラスト15試合で挙げたものであり、まさに覚醒したと言える活躍ぶりだった。

 これまでは万能ゆえに様々なポジションで起用されてきたが、本来のFWとして結果を残せたことは今後のキャリアを考える上で大きな意味を持つだろう。この輝きを一時的なものにしないためにも、来季はエースとしての真価が問われる一年となる。

 


21 DF 吉田 朋恭

25試合/814分/0得点/0アシスト

■バックアッパーとして奮起

 加入2年目の今季は背番号を28から21に変更。福島、山形時代にも付けた慣れ親しんだ背番号で臨んだ今季だったが、シーズンを通して福森の壁が高かった。福森が右WBに起用された試合を除いて、基本的にはベンチから出場機会を窺うといった立ち位置だった。

 それでも監督にとっては頼れるバックアッパーだったと言えるだろう。先発は8試合に留まりながら、17試合に途中出場したことがそれを表しているように思う。ハイプレス志向の栃木において唯一のサイドプレーヤーであるWBは上下動による体力の消耗が極端に激しく、途中から違和感なく試合に入れる吉田は地味ながら助かる存在だった。

 ただ、福森と比べると、どうしても攻撃面での物足りなさは否めなかった。右利きの福森と違って吉田は左利きのため縦突破が多く、大森や山田との絡みは少なかった。チームとして強みとしている左サイドの流動性に加われず、また高いキック精度をアシストに繋げることもできなかった。

 時崎監督の退任とともに今季をもって契約満了。山形時代も含めてJ2でのアピールは思うようにいかなかったが、トライアウトに未参加だったことから次のアテはあるのだろう。時崎監督と再びタッグを組み、今度はスタメンを掴む未来を見てみたいのが正直なところである。

 


22 DF 小野寺 健也

0試合/0分/0得点/0アシスト

■ピッチを離れていた時間はきっと糧になる

 昨季はハーフシーズンを鹿児島でプレー。満を持して栃木に復帰した今シーズンだったが、2月のトレーニングで右膝の大怪我を負うと、今季はリハビリに充てる1年となった。

 グティエレスや鈴木海音などDFラインの実力者が抜けた今季は期するものがあっただろう。それだけにその矢先の負傷は精神面でも相当なダメージがあったと思うし、サポーターにとっては目を背けたくなるような出来事だった。

 それでもそれを微塵も感じさせない明るさをメディアを通じて発信し続けていたのは、率直に「プロだな」と思った。ピッチを離れていた時期に積み上げてきたものは必ずプラスになって返ってくるはず。新天地で再び活躍する姿に期待したい。

 


23 DF 福島 隼斗

36試合/2910分/3得点/3アシスト

数字を残した攻撃的CB

 J3福島時代の恩師である時崎監督に招かれ、湘南から期限付き移籍で加入した若きDF。開幕から3バックの右CBのポジションを掴むと、チーム3位となる32試合に先発出場した。

 最終ラインを主戦場としながらもプレースタイルはほぼほぼSBのようだった。昨季同じポジションを務めた鈴木海音と比べると攻撃時の引き出しが多く、積極的な駆け上がりから多くの得点とアシストを記録。第9節山形戦(○2-1)で見せた根本への針の穴を通すスルーパスは福島の攻撃センスが存分に表れたシーンだった。

 その山形戦と続く第10節甲府戦(●0-1)では最終ラインに負傷者が相次いだことで3バックの中央を経験。以降はそのポジションを務めることはなかったが、試合勘の乏しい平松や高嶋を差し置いて起用されたあたりは、時崎監督からの高い信頼が垣間見える一幕だった。

 攻守に厚みをもたらす存在として栃木にとって欠かせない選手となったが、これまでの経歴から時崎体制以外では未知数なのも事実。仮に残留したとして、新体制で4バックが基軸となれば、適正ポジションの見極めも含めて序列は完全にリセットされる。去就によらず、来季はスケールアップを果たしたい一年となる。

 


24 MF 神戸 康輔

22試合/1197分/0得点/0アシスト

二枚看板の壁は厚く

 ルーキーイヤーの昨季はシーズン半ばに先発に定着。谷内田と組んだダブルボランチは時崎栃木の顔として非常に機能したが、谷内田が退団した今季は昨季ほどのインパクトを残すことができなかった。

 チームが求めていたのは高萩がボランチに起用されたときに見せた働きだっただろう。佐藤祥と組んだ時は右IHとして機を見て攻撃参加し、西谷と組んだ時はアンカーとしてボールを捌く。いずれにしてもリンクマンとして前と後ろを繋ぎ、アタッカーに少しでも時間を与えることが彼に求められた役割だった。ワンツーやミドルシュートなど時折光るプレーを見せることもあったが、トータルで佐藤祥と西谷の二枚看板を越えることはできなかった。

 チームとしてレベルアップするためには彼が出場時間を増やすことはマストになるだろう。今季はボランチの三番手に留まったが、ボールを握れた試合や単調になりがちな試合では彼の存在は重宝された。上を目指すにはそうしたマイボールのクオリティは必須であり、神戸は現状のチームで最もそこに適正がある。複数年契約を結んでいる来季は勝負の3年目となる。

 


25 GK 青嶋 佑弥

0試合/0分/0失点

■公式戦デビューは今季もお預け

 藤田が代表活動の際はベンチ入りすることもあったが、今季も出場機会が訪れることはなかった。GKチームの顔ぶれが昨季から変わらず、また藤田がハイパフォーマンスを維持していたことも青嶋の出場機会に大いに影響していただろう。改めてGKというポジションの出場の難しさを痛感した。

 来季はJ2チームもルヴァンカップに参加するため、GKに訪れるチャンスは増えるはず。まずはプロデビューを飾りたい。

 


27 FW 五十嵐 理人

2試合/15分/0得点/0アシスト

■出場機会を求めて活躍の場を移す

 特別指定時代も含めれば今季は栃木3年目。宮崎との前橋育英高校コンビ、根本との鹿屋体育大学コンビの再来を望む声も多かったと思うが、今季も出場機会を得ることはできず、夏に滋賀に活躍の場を移した。

 時崎監督のもとでは[3-4-2-1]の右WBが主戦場だった。昨季終了後に行われたエリートリーグではサブ組中心のメンバーのなか、右WBとして守備に攻撃に奮起。持ち前の快速と粘り強い守備で存在感を示した印象が強いが、黒﨑の課題と同様、縦を切られたときの選択肢が少なかったように思う。技術面でクオリティを生み出せる石田が加入してからはさらに立場が厳しくなった。

 クラブからのリリース前にトライアウト参加の報を聞いたときは驚いたが、のちに契約満了が正式決定。栃木県出身の選手として彼の今後には注視していきたい。

 


29 FW 矢野 貴章

26試合/1198分/2得点/0アシスト

■ピッチ内外でチームを牽引

 今季の矢野を語るうえで欠かせないのは第17節千葉戦(●0-1)で敗れた後、翌週のトレーニングでの出来事だろう。チームは一つ前の東京V戦からアグレッシブさを欠く不甲斐ない戦いに終始すると、オフ明け最初のトレーニングで矢野が旗頭となり危機感を共有。球際の強度やハードワークなどサッカーの本質を再確認し、自信を失いかけていたチームに檄を注入した。そうして迎えた第18節岡山戦(○2-1)では、自身に出場機会はなかったもののチームは勝利。全員の矢印が一つの方向を向いて難敵を撃破した試合だった。

 もちろんピッチ上でも存在感は抜群。ここ数年と比べればプレータイムをやや減らしたものの、年齢を感じさせない圧巻のハードワークぶりを見せた。前線の一角としてプレスでチームを牽引し、第11節金沢戦(○4-0)ではらしいヘディングを決めてみせた。

 契約更新した来季は40歳の大台を迎えるシーズン。攻守において前向きの矢印を作り出す栃木スタイルの象徴として、来季もピッチ内外で矢野の存在は欠かせない。

 


30 DF 福森 健太

37試合/2783分/2得点/5アシスト

■計り知れない貢献度

 大分からの期限付き移籍を延長した今季はまさに獅子奮迅の活躍だった。WBで2得点5アシストはもちろん立派な数字だが、それ以上にチームにもたらした貢献度は計り知れないものだった。チームMVPに推す声が多いことに疑いの余地はないだろう。

 福森の武器は味方を生かすことも自力で打開することもハイレベルでこなすことができる万能性である。精度の高いキックから味方に良質なボールを送り届けるだけでなく、自らターンして縦突破を見せるなど、とにかくプレーバリエーションが豊富だった。ミスも非常に少なく、特に今季は福森にボールが集まることが多かったように思う。

 今季挙げた2ゴールの相手が群馬と水戸という点でダービー男な側面もあった。とりわけ第15節水戸戦(△2-2)で決めたミドルシュートは今季ベストゴール級。その試合ではその後2枚目の警告により退場してしまうのだが、それも含めてサポーターの心を鷲掴みにするような圧倒的な存在感を示した試合だった。

 2年間のレンタル移籍を経て、来季は完全移籍での加入が決定。正真正銘、栃木の漢となる来季も福森の活躍からは目が離せない。