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【バトンは新監督へ】栃木SCの2021シーズンを振り返る(選手別レビュー MF&FW編)

 

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『GK&DF編』はこちらから!

MF

2 吉田 将也

12試合/708分/0得点/1アシスト

 乾とともに松本から期限付き移籍で加入。右SBの即戦力として期待されたが、栃木のプレッシングスタイルになかなか馴染むことができず9試合の先発に留まった。群馬時代は攻撃的サイドバックとして鳴らしてきただけあって、攻撃参加のタイミングやオーバーラップのセンスは秀逸。今季唯一のアシストとなった第14節琉球戦(●2-4)の西谷のゴールは、縦に早い攻撃とともに上手く高い位置をとれたことから生まれた。吉田の強みをもう少し生かせれば良かったが、出場していた前半戦は特にチームとしてそこまでの余裕がなかったのが正直なところだろう。

 

10 森 俊貴

38試合/2693分/5得点/4アシスト

 ルーキーイヤーの昨季は明本とともに田坂栃木の象徴として活躍。今季は背番号10を与えられるなどキャリアは順風満帆にも見えたが、数字以上に上手くいかない難しさを感じたシーズンになったように思う。

 特にパフォーマンスが不安定になったのは夏場に差し掛かったあたりから。得意としていた密集を切り裂くドリブルもボールが足につかず、焦って持ち出そうとして絡め取られるという悪循環に陥ってしまった。それでもしばらくは先発の座を守ってきたが、谷内田加入後は次第にベンチを温めることが増え、メンバー入りできないこともあった。

 ただ、リーグ戦終盤にチームがプレッシング戦術に回帰すると先発に復帰。残留争いの大一番となった第40節金沢戦(〇1-0)と第41節北九州戦(〇2-1)ではともにセットプレーのキッカーとして先制点を演出し、残留を手繰り寄せる大仕事を成し遂げた。

 第15節松本戦(〇3-0)で決めたゴールは美しく、森らしいワンタッチゴールだった。それ以降はゴールから遠ざかっているだけに早めに結果を残してまた無邪気な笑顔を爆発させてほしい。

 

11 ジュニーニョ

30試合/1699分/2得点/0アシスト

 ブラジル人っぽくないブラジル人。栃木に在籍したブラジル人FWだとリカルド・ロボクリスティアーノのようにチームを引っ張る我の強さ!をキャラクターとしてどうしても覚えているものだが、ジュニーニョには良い意味で裏切られた。それでいて第11節磐田戦(●2-3)で決めた得点は日本人にはなかなかできない嗅覚を感じさせるものだった。

 プレッシングはとにかく献身的。あまりのチェイスに味方もついて行けず、ボランチ勢が後ろから手綱を引いてコントロールする必要があるほどであった。

 これまでの経歴を見ると得点を量産するタイプではなく、やはり献身性や走力を武器としたハードワーカーなのだろう。京都在籍時はWBを務めたりもした。数字に表れないところも労を惜しまない姿勢はチーム全体にポジティブな影響を与えているに違いない。

 

13 松岡 瑠夢

22試合/863分/0得点/0アシスト

 幼稚舎から大学までを慶応で過ごした生粋の慶応ボーイ。高校まではFC東京の育成組織に在籍し、U-23チームとして当時J3の栃木と対戦した。ルーキーイヤーとして再デビューとなった今季は開幕先発を飾り、途中出場を中心に前半戦は出場機会を確保。天皇杯町田戦(〇2-0)の2ゴールは今後の活躍を予感させたが、先にあげた松本戦の森の得点に至る場面でバーを叩くなど、リーグ戦ではなかなか決め切れなかった。後半戦は次第にベンチ入りも厳しくなっていった。

 猛然と相手に襲いかかるプレッシングは魅力でシュートのパンチ力もあり。去年の森のように一発目が決まればトントンといく可能性は十分ある。本人が一つ壁を乗り越えられればチームの得点力不足も少しは解消されていくはずだ。

 

14 西谷 優希

36試合/2568分/1得点/1アシスト

 「栃木の漢」「小さな巨人」が似合う選手になった。定位置を掴んだ去年はパスの散らし役や司令塔としての印象が強かったが、それに加えて今年はハント能力と運動量が一回り二回りも大きく成長。新加入のボランチを試しても上手くいかずに、最終的には西谷に出番が戻ってくるという現象がシーズンを通して何度もあった。

 小さい体を生かして相手の懐に入り込む守備は一級品。寄せてからもう一歩グイッと相手に寄せ切る力強さは圧巻で、あまりのアグレッシブさに一試合に一回は接触で痛めるほどであった。そのプレースタイルの影響もあり今季は常に小さい怪我を抱えながらプレーしているようにも見えた。

 10月にはJ2通算100試合を達成。全て栃木で達成したものである。今後も200、300と栃木の選手として積み重ねていってほしい。

 

16 菊池 大介

21試合/1149分/0得点/4アシスト

 柏から期限付き移籍で加入。開幕戦は右SB、次は左SB、その次は左SHとシーズンを通して様々なポジションでプレーした。本職は2列目だと思うが、ピッチ上の人選に応じてどこにでも入れるのはポリバレント性に長ける菊池の強みだろう。キック精度の高さも魅力でアシストのうち3つはCKから。第15節松本戦は柳のヘディング弾を2つともアシストし、残留争いのライバルに土をつける見事な働きだった。

 後半戦は負傷のため離脱。足関節前方インピンジメント症候群はサッカー選手によく見られる負傷で足首に痛みと可動域制限が起こるらしい。チームが勝てていない時期の離脱は本人にとっても難しかったと思うが、最終盤にカムバックし復調を見せられたことは良かった。去就は不透明だが、来年も栃木で見たい選手である。

 

17 山本 廉

25試合/1326分/1得点/0アシスト

 ハードワークもできるテクニシャン。シーズン途中に負傷離脱したことで昨季よりも出場数を減らしたが、リーグ最終盤にチームがパイプレス戦術に回帰したタイミングで先発に復帰。右SHにフィットしていた畑からポジションを取り返し、持ち前の出足の良いプレッシングでチームの残留に貢献した。

 決して足技を駆使しているわけではないのに相手の間を割って抜いていってしまう緩急と間合いをつけたドリブルは独特。タッチが細かいから足から離れないのか、ボールの勢いを殺さない持ち運びの力強さがあるのか。逆サイドの森とは違った強みを見せてくれた。

 監督交代を機にそろそろ本職のボランチで見たいという栃木サポーターも多いのでは。

 

23 植田 啓太

7試合/205分/0得点/0アシスト

 目に見えて成長が感じられた選手の一人。マリノスユースからの昇格というエリート街道を歩んできた植田にとっては、闘志をむきだしにアグレッシブに戦う栃木スタイルは大きな刺激になっただろうか。不完全燃焼に終わった第2節秋田戦(●0-1)のプロデビュー戦と比べれば、最終節琉球戦(●1-2)で見せた自ら前を向き運んでいく力強さは明らかに頼もしさが増していた。

 すでに来季のレンタル延長が決定。かつてマリノスから武者修行しJ1へ飛躍していった水沼宏太のように彼もまた活躍できる素質をもった選手といえるだろう。若手選手たちとルームシェアしながら来季も切磋琢磨していってほしい。

 

24 和田 達也

0試合/0分/0得点/0アシスト

 栃木のJ3時代を知る選手がまた一人チームを去ることとなった。ここ数年は大怪我に悩まされ、今年こそは再起をかけたシーズンとなるはずだったが最後まで出番は訪れなかった。

 ホームゲームの試合前イベントではクラブOB坂田良太とトークショーを行うことがあったが、オフィシャルな場で話さなくてはならない緊張感がぎこちなさから伝わってきた。本当は仲が良いんだろうけど。

 栃木の激動期を支えてくれた選手の一人。6年間ありがとうございました。

 

25 佐藤 祥

38試合/3110分/2得点/2アシスト

 今年も栃木スタイルを根底から支えたボールハンター。去年もそうだったけど相変わらず今年も3人いるんじゃないかと思わせるほどのハードワークでピッチの至るところに顔を出した。プレッシングの強度や寄せてから奪いきるスキルは言わずもがな、奪ったあとの一つ目のパス精度は試合を追うごとに成長しているように見えた。

 第26節東京V戦(△2-2)の同点弾や第41節北九州戦の追加点など今年は攻撃面でも大きく貢献。とりわけ東京V戦の得点はシュートが相手ディフェンダーに当たり、ポストに当たりでねじ込んだ感じは、不器用でも気持ちで押し込む佐藤祥っぽさがあった。

 契約更新を早々に発表しており、新監督のもとでも主軸として期待の高い選手である。

 

37 上田 康太

11試合/568分/0得点/0アシスト

 今年の補強の目玉になるはずだったが、先発はわずか6試合のみ。後半戦はほとんど試合に絡むことができず、1年での契約満了が発表された。

 やはり栃木に求められるボランチの能力を満たせなかったことが大きいだろう。今季の主軸となった佐藤や西谷と比べるとどうしても守備の強度で見劣りしてしまい、期待されていた攻撃面でのプラスアルファをもたらせるところまで到達できなかった。ある意味開幕前の懸念が的中してしまった。

 それでも出場したときに見せる左足の精度は一級品。新天地でもそのエレガントな左足で魔法をかけてほしい。

 

41 松本 凪生

27試合/1096分/1得点/1アシスト

 セレッソ大阪から期限付き移籍で加入した若手ボランチ上田康太と並んで彼もまた栃木スタイルへの適応にはじめは苦しんだが、佐藤と西谷のファーストセットの次に控える選手としてそれなりに出番は得られた。ただ、先発10試合は少々物足りないところ。

 ボールを持ったときに描く攻撃のビジョンはチーム一。松本が出場しているときはパスのテンポが良くなっていたし、時折ブロックの間を刺してくる鋭い縦パスは名門ユースの出身者であることを改めて感じさせた。第21節町田戦(△1-1)で鎮めたミドルシュートはワールドクラスだった。

 

44 谷内田 哲平

14試合/759分/3得点/2アシスト

 良い意味で栃木の型にハマらなかったことがプラスに働いたと思う。球際や走力に振り切ったチームのなかでボールを持ったときにワクワクさせられる貴重な選手だった。夏加入で3得点2アシストは立派な数字。後半戦に何とか持ち直せたのは谷内田の活躍によるところが大きいと言っても過言ではないだろう。

 第32節大宮戦(●1-3)ではプロ初得点を記録。続く第33節松本戦(〇1-0)のPKシーンではセットしたボールが何度も強風で動いてしまう難しい環境のなかゴール天井を狙う強心臓ぶりを見せた。

 レンタル元の京都はJ1への昇格が決定。それまで出場機会を得られていなかっただけに来季は活躍の場所をどこに置くことになるのだろうか。

 

 

FW

19 大島 康樹

30試合/1645分/1得点/1アシスト

 どこでもできるユーティリティープレーヤー。登録ポジションはFWながらSB、SH、トップ下でコンスタントに起用され、変則的ではあるものの第14節琉球戦では3CBの右も務めた。ワンタッチゴーラーとして名を馳せた群馬時代を考えれば、FWとして難しい時期をコンバートを経て乗り越えていく様はキャリアのターニングポイントを見たようにも思う。絶対的なレギュラーではないかもしれないが、痒いところに手が届くという意味では貴重な存在だった。

 3シーズン連続で早い時期に得点をあげながら2点目を奪えていないだけに、契約更新の決まっている来季は一つ殻を破りたいところ。

 

27 五十嵐 理人

3試合/25分/0得点/0アシスト

 鹿屋体育大学からの来季加入が内定している快速アタッカー。今年は特別指定選手に登録され、主に春先に出場機会を得た。前橋育英高校では2017年に選手権を制覇しており、同じく駒澤大学からの加入が内定している宮崎鴻とは高校の同期。J2の他クラブにも内定者が多くいるためピッチ上で再開果たすためにも定位置確保といきたいところだ。

 

29 矢野 貴章

41試合/3045分/4得点/0アシスト

 今季は柳に次いでチーム2位となる41試合に出場。昨季からプレータイムを1000分以上伸ばし、10月にはJ通算500試合出場という偉業を成し遂げた。若い選手が多いチームの模範であり続けると同時に、キャプテン柳の精神的支柱にもなった。

 もともと得点を量産するタイプではないが4得点はちょっと寂しいところ。第22節新潟戦(●0-3)ではPKがバーを叩いたり、その他の試合でもゴール前でミートできずに決めきれないシーンが目立ってしまった。

 それでも最後まで落ちないハードワークは攻撃面を補って余りある最大の魅力と言えるだろう。試合が終盤に近づいても落ちるどころか尻上がりに高まっていくプレス強度は相手にとって相当厄介だったはず。豊田加入後は右SHを務める時期もあったが、やはり中央最前線で起用されてこそ最も脅威になる選手である。

 

31 豊田 陽平

16試合/1250分/3得点/0アシスト

 鳥栖のレジェンドが栃木に加入したときはJリーグ界隈がザワついた。前からプレッシングをかけ続ける栃木のスタイルには正直フィットし切れなかったが、それでも夏加入から3ゴールをあげる得点感覚はさすがのパフォーマンス。動きながら起点になる矢野に対して、豊田はより中央でどっしり構えるストライカータイプと言えるだろう。自チームの選手としてトヨコプターを生で見られるとは思っていなかった。

 栃木加入時のインタビューや2得点をあげた第28節山口戦(〇3-2)のヒーローインタビュー、そして故郷金沢への移籍リリースに載せたコメントなどは、豊田が真にプロフェッショナルであり素晴らしい人間性をもつ選手であることを示していたと思う。経験を積み重ねてきたベテランの言葉は若い選手が多いチームにプレー以上に多くのものを残してくれたように思う。

 一般客としてインタビュー受けたプロサッカー選手というニッチなジャンルの先輩として鈴木大輔ツイッターで絡んでいるので暇な方はご覧ください。

 

32 畑 潤基

30試合/1592分/3得点/1アシスト

 シーズンの初めと終わりで最も評価を変えた選手の一人だと思う。開幕時はどうしても空中戦もプレッシング強度もピリッとせずいまいち特徴を掴みきれなかったが、2列目を主戦場とした夏場あたりからは欠かせない戦力に。有馬や谷内田とともに抜群のキープ力や足元からボールを離さないヌルヌルっとしたドリブルで存在感を発揮した。ホームアウェイそれぞれのヴェルディ戦であげた得点はどちらもゴラッソであり、SHとして起用されたメリットと得意のミドルシュートを存分に生かす格好となった。

 長崎から期限付き移籍のため去就がどうなるか注目していたが、移籍先はまさかの岐阜。栃木で見せたクオリティは確かなので横山ヘッドコーチやチョルファン、服部、パウロンらと昇格を目指して頑張ってほしい。

 

34 有馬 幸太郎

21試合/945分/0得点/0アシスト

 鹿島からのレンタル延長となった今季は出場時間を昨季の倍ほどに伸ばしたが、目に見える結果を残すことができなかった。昨季終盤のパフォーマンスから今年はブレイクを予感させただけに序盤戦の出遅れが痛かっただろうか。

 夏場以降にトップ下のポジションを掴んでからは左サイドの谷内田とともに子気味良いパス交換からサイドを突破したり、相手を背負った状態で相手から遠い位置でボールをコントロールするなど基本技術の高さを披露。スタイルをマイナーチェンジした夏場の栃木においてチームの中心となった。

 来季はJ3に新規入会したいわきFCへ完全移籍。筋肉ムキムキ集団のなかでどれくらい存在感を発揮できるか楽しみである。

 

38 小堀 空

1試合/13分/0得点/0アシスト

 ユース昇格1年目の新鋭。出場機会は第14節琉球戦(●2-4)、天皇杯町田戦(〇2-0)、鹿島戦(●0-3)と限られたが、意欲的にプレスをかける姿勢は印象的だった。ユース卒の先輩である明本を憧れの選手にあげるだけあって、二度追い三度追いを辞さないファイトは今後も続けてほしい。ロングボール戦術のなかでは相手に抑え込まれることも多かったが、屈強なCBと日々トレーニングしているため力は着実に身に付いているだろう。若手の起用に積極的な新監督のもとで一気に飛躍する可能性はある。

 

9 エスクデロ 競飛王

0試合/0分/0得点/0アシスト

 クラブの秩序風紀を乱したとして4月に契約解除。事の真相は分からないし、別に知りたいとも思わないけど、陽気なキャラクターで一体感を大事にするチーム作りに一役買っていたところは切り離して考えてもいいと思う。現在はタイのチェンマイ・ユナイテッドFCに所属しているが、今後日本復帰はあるのだろうか。水内猛にはクラブ名を間違えないように教えてあげてほしい。

 

 

以上!来年もまたあいましょう!