栃木SCのことをより考えるブログ

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【遂行力】J2 第10節 栃木SC vs レノファ山口FC(〇1-0)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 13位

 前節新潟戦はペースを掴みながらも一点が遠かった栃木。鋭いプレッシングを牽引した明本は引き続き2トップの一角として先発。ここまで右SBに入ることの多かった大島は一列前でのスタートとなった。瀬川は古巣対戦。

 

レノファ山口FC [4-2-3-1] 20位

 霜田監督3年目の今季は厳しい序盤戦となっている山口。昨季はFWとして栃木のJ2残留に貢献したへニキが山口で最終ラインを担っているのは驚きである。前線には出場停止明けのイウリと、先日プロ契約に移行した16歳河野が入った。

 

 

良い流れのままに

 前節新潟戦は前からのプレッシングで何度も相手のビルドアップを引っかけ、ゴールに迫っていった栃木だったが、今節もその勢いを継続。最前線の矢野と明本を中心に山口の選手に圧力をかけ、バックパスに対して時にはGKまでプレッシャーをかけることもあった。追い込まれたGK山田が蹴り出したボールに対してはCBが弾き返し、ボランチがセカンドボールの行方に目を光らせる。山口の選手が余裕をもってボールを保持できるシーンが少ない立ち上がりとなった。

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 後方からのロングボールに対する矢野の空中戦の強さは言わずもがな、セカンドボールの回収とそこからのクロスという流れは立ち上がりから繰り返し何度も見られた。

 ロングボールに競り合うポイントのほとんどが中央レーンなのはセカンドボールを拾うためのMFの距離感、拾った後のSBが走り込むスペースを意識してのものだろう。全体がコンパクトになるためボールに対する反応が早く、球際も強い。相手を押し込んでからクロスを上げられればセカンドボールの回収率も高くなり、二次攻撃を仕掛けられる。

 前半16分には相手のクリアを何度もマイボールにし、左サイドに供給。瀬川のクロスに明本が合わせたがわずかに枠の右に逸れる決定機を演出した。

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 個人的にはアスリート能力が重視されるタフな戦術のなかで優希がフィットしているのが嬉しいところ。競り合いなどフィジカルが求められる場面では後手を踏むこともあるが、豊富な運動量と予測の高さはチームに欠かせないものになっている。とりわけ後者は守備で効いており、相手のトラップ直後を狙って一気に詰め寄ることで、フィジカルよりもタイミングで勝負している印象がある。シーズン当初は佐藤の相方に岩間や禹相皓など守備的に戦える選手が起用されていたが、自身の生きる方法を見つけ、攻撃でもプラスアルファを加えられる優希の存在感は試合ごとに大きくなってきている。

 

 

メリハリをつけた守備

 プレッシングとポストプレーで立ち上がりからペースを掴んでいた栃木だったが、潮目が変わったのが前半20分ごろから。山口がボランチの高を最終ラインに落としてビルドアップすることで、栃木との噛み合わせのズレから前進を狙っていく。

 前半20分には、それまで左サイドに張っていたSH浮田インサイドでボールを貰い、ボランチの位置まで下がってきた河野から大きく右サイドに展開するシーンがあった。

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 それに加えて、飲水タイム後には最終ラインやボランチからロングボールを入れる回数が増加。栃木の高い最終ラインの背後に入れることでプレッシングを空転させ、陣形を間延びさせようという狙いが窺えた。

 

 山口のボール保持に対してブロックを敷いて構える時間の増えた栃木だったが、どちらかと言えばボールを持たせているという感覚だっただろうか。

 背後を狙うボールに対してはCBを中心に弾き返し、プレスバックでセカンドボールを回収。ターゲットになることの多かったイウリに厳しく対応できていたのは、同じくパワーとスピードを兼ね備えたルカオを経験していたことが大きかったように思う。山口にとっては、前節クロスから得点をアシストしている吉濱の負傷交代が攻撃の単調化に大きく響いただろう。

 

 ただ後ろで構えるだけでなく、バックパスや最終ラインでの横パスにはラインをグッと上げつつ、機を見てプレスをかけることで山口の最終ラインを牽制する栃木。前半30分にはジリジリと相手に寄せていくなかでGK山田から池上へのパスを大島がカットし、ショートカウンターを発動するシーンもあった。

 

 森俊貴のボールロストから河野に持ち込まれた場面は危なかったものの、何とか凌いだところで前半終了。0-0のスコアレスで折り返し。

 

 

ピッチを広く使う山口

 後半キックオフからのロングボールであっという間に先制点を奪った栃木。細かいフェイントで相手を滑らせてゴールを決めきった大島はやはりFWが本職であることを感じさせる。後半7分にペナルティエリア角で倒されたシーンもアタッカーの嗅覚を感じさせる出足の速さだった。

 

 山口が反撃ののろしを上げたのは後半17分の2枚替えから。この辺りの時間からボランチの高が明確にCB間に下りてボールを左右に捌く役割に。栃木がSHをプレッシングの第一矢に含めれば、空いたボランチ脇に顔を出すSHや高井がビルドアップの出口になり、そこから逆サイドに送ることで栃木のブロックを横に揺さぶっていく。栃木は2トップを入れ替えてプレッシング強度を維持しようとするが、二人の間や脇を通されてしまうことが多く、田坂監督が2トップに対して指示をする声が集音マイクを通じてよく伝わってきた。

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 山口は利き足と逆サイドに配置したSHを中心に幅を使った攻撃からゴールに迫っていくが、栃木はボールサイドへのスライドを繰り返し、エリア内では体を張ることで粘り強く対応。自分たちのセットプレー崩れから山口にロングカウンターを許し、森晃太にシュートを打たれたもののGK川田が指先で弾いた場面は、得点と同じくらい価値のあるビッグプレーだった。

 

 SB安在に変えてFW小松を投入し、いよいよパワープレーで畳み掛けようという山口。決まったフォーメーションというよりは、左サイドで田中パウロ淳一と森晃太が作って、イウリ、高井、小松がクロスを待つという形になっていた。栃木は一度だけ有馬がロングカウンターを仕掛けるシーンはあったが、それ以外は全員自陣に戻ってひたすら耐え続けた。

 

 後半アディショナルタイムにはクローザー柳が守備を閉め切って試合終了。1-0。栃木は3試合連続のクリーンシートを達成。一方山口は4戦勝ちなしとなった。

 

 

最後に

 メリハリのある守備で山口の攻撃をシャットアウトした栃木。プレッシングをひっくり返すロングボールやピッチ幅を揺さぶる攻撃に対しても粘り強く全員が連動してスライドし、最後の局面では守護神がチームを救ってみせた。勝負の際ともいえるキックオフ直後の時間帯に得点をものにする試合巧者ぶりも身に付いてきている。追加点が取れないことは依然課題ではあるが、ウノゼロを遂行できる自信がチームに身に付いてきているのも確かである。ここまでのチームづくりは順調にいっている印象だ。

 

 次節はホームに戻ってファジアーノ岡山との対戦。2013年以降勝てておらず相性の良くない相手となるが、今のチーム状態であれば勝機はあるはずだ。さらなる上昇気流に乗れるよう期待したい。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 レノファ山口FC

得点 46’大島康樹(栃木)

主審 松本大

観客 1,688人

会場 維新みらいふスタジアム

 

 

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