栃木SCのことをより考えるブログ

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【戦況を左右する様々な優位性】J2 第35節 栃木SCvs東京ヴェルディ(●0-1)

 さて、今回は第35節の東京ヴェルディ戦です。

 

 両チームのスタメンと配置は次のとおり。

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 ホームの栃木SCはいつも通り3-4-2-1のフォーメーション。へニキの運動量が生命線なところは否めないが、今シーズンは最後までこれで行くでしょう。前節2-0で勝利した京都戦からは、アレックスに代えて大黒がスタメンに復帰した。

 

 対するアウェイの東京ヴェルディは現在6位と昇格争いの真っ只中。2年目となるロティーナ監督の下、4-1-2-3のフォーメーションを軸にポジショナルプレー(後述します)に磨きをかけてきた。前節からのスタメンの変更は香川、井上、藤本⇒田村、内田、渡辺の3人。6戦負けなしではあるが、下位相手にドローが続いてることから、是が非でも勝ち点3が欲しい一戦になる。

 

 このカードの前回対戦は第20節。栃木が連敗で苦しむ中、苦肉の策の4バックを採用するも、立ち上がりをヴェルディに突かれて完敗した(栃木の●0-3)。あまり相性の良いイメージはないだけに今回こそは!というモチベーションで試合に臨む。

 

 

ポジショナルプレーとは

 先述のヴェルディの説明のなかでポジショナルプレーという単語を取り上げた。あまり聞き慣れないという方もいると思われるが、現代サッカーでは欠かせない概念になってきている。

 

 簡単に説明すると、「正しいポジショニングによって優位性を確保し、攻守において主導権を握るメカニズム」といったところだ。「正しい」の考え方やその体現方法は、チームの特徴やピッチ上の状況によって左右される。ただ、その根幹にある「優位性の確保」は、異なるスタイルのチームでも共通して目指すものとして位置付けることができる。

 

 ここで言う優位性とは、次の3種類が挙げられる。

数的優位性(局地的に選手を相手より多く配置して得る数の優位性)

質的優位性(クオリティで相手を上回る優位性)

位置的優位性(相手のギャップで受けるなど、システムの噛み合わせから得る優位性)

 

 ポジショナルプレーは、これらの優位性を生み続けるために正しいポジショニングを取り、攻守において相手を上回ろうというものである。

 ロティーナ監督はこの概念をスペインから持ち込んで、現在ヴェルディに植え付けているところである。随所においてその色が見えた試合を次項からまとめていく。

 

ポジショナルプレーについて、もっと詳しく知りたい!という方はこちらをご覧ください。

 

 

前半

ヴェルディの攻撃は左サイドから

 試合の大勢は大方の予想通り、ヴェルディがボールを保持し、栃木は5-4-1で耐えて奪ったらカウンターという構図になった。

 では、ヴェルディはボールを保持しながらどのように優位性を得ようとしたのか。

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 上の図は、ヴェルディのボール保持時のピッチ上の選手の配置の一例である。4-1-2-3を採用しているヴェルディであるが、ボールを保持して栃木を押し込んでいる時は基本的にピッチの横幅を最大限に使った5トップのような形になっていた。

 5トップの左幅取り役は奈良輪で固定されていたが、右幅取り役はWG泉澤やSB田村が担っていた。泉澤が幅を取る時は、IH渡辺も最前線まで上がり、IH梶川はアンカーと同じ高さを取ることで2CHを形成していた。

 この時、ヴェルディの5トップに対して栃木は5バックが対応することになるが、それぞれ対面の敵が明確になり、全てマッチアップする形になっていた。 そのため、ヴェルディとしては対面の敵を剥がすことができれば、一気にゴールに迫ることができる。まさに質的優位性が必要となる状況である。

 

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 図は前半何回か見られたシーン。栃木はへニキが対面の梶川へプレッシングをかけた時、右シャドーの浜下は空いたスペースを埋めるべくポジションを内側に取っていた。それにより左WB奈良輪とCB平のパスコースが開通。奈良輪はボールを受けようとポジションを下げると、栃木は右WB川田がそのまま縦スライドで対応した。すると、これをスイッチとするように、左ハーフスペースにいた左WG佐藤が川田の裏のスペースへ走り込み、高い位置でボールを引き出すような動きをした。

 へニキのプレッシングを誘うことで、栃木の複数の選手をスライドさせ、ギャップを作りながらペナルティエリア脇を侵入するそしてパウロンもエリアから引き出すことで、最終的に細かい動き出しや高さに長けるドウグラスヴィエイラを服部にぶつけて質的優位性から攻めよう、というところが一つの狙いであっただろう。梶川の低めのポジションもへニキを誘い出すというヴェルディの狙いを遂行させるための起点となる正しいポジショニングだったとすれば納得がいく。

 ただ、実際にはペナルティエリア脇までボールが入らない、入っても浜下のプレスバックやパウロンの大きなストライドを生かした守備に合うなど、なかなかエリア内に効果的なボールを入れることができなかった。

 

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 右の幅取り役をSB田村に変えた時もそれほど状況は変わらなかった。へニキを誘い出し、浜下を内側にスライドさせた上で、左幅取り役の奈良輪へ、というところまではある程度再現されていた。ただ、そこからエリア内に侵入はできず、後方に戻して作り直すことになり、ブロックの外でポゼッションを高める前半になってしまった。

 

 逆に栃木は、ヴェルディの後方での繋ぎのミスやへニキの超人的プレッシングからのボール奪取などにより、次々とチャンスを作り出した。そのほとんどが敵陣深い位置からのもので、あとはゴールに入れるだけ!というくらい惜しいシュートが多くあった。ただ、GK上福元のナイスセーブもありゴールは決まらず。前半はスコアレスで終わった。

 

 

後半

立ち位置の修正から活路を見出すヴェルディ

 後半、両チームともメンバーに変更はなかったが、ヴェルディは左右のウイングを入れ替え、さらに梶川を純粋なIHとして前半より高い位置を取らせるなど、選手の配置に細かな修正を施して後半に臨んだ。

 

 前半はへニキの引き出し役としてプレーした梶川だが、後半はある程度高い位置を取ったことから、へニキが猛然と前プレをかける回数は減った。そのためアンカーの内田が浮くことになり、前半以上に内田のボールタッチ数が増えていった。大黒がCBから内田へのパスコースを切ることもあったが、左右の揺さぶりに対して一人で対応するには厳しく、ヴェルディは安定して大黒の脇からビルドアップをすることが可能になった。

 

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※二つ目の②は③の間違いです

 図は、ヴェルディのビルドアップが始まるシーン。ヴェルディは中央で浮いた内田を中心に、図のように菱形を作りながら後方からのビルドアップを行っていた。この時栃木は①大黒がCB-アンカー間を切る、②シャドーがSBマーク、③CHがIHにマーク、の3つを同時に行うことでしか、ヴェルディの菱形間のビルドアップを制限することができない状況になっていた。

 特に守備のタスクが大きくなっていた大黒は、次第に2CB-アンカー間からほぼアンカー番のような位置へポジションを修正。プレッシングもカバーシャドウしながらと微調整を施して対応した。ただ、ヴェルディもその時はCBからライン間に落ちたドウグラスにボールを入れ、IHへ落とし前を向くという形を見せて対応するなど、戦術的な駆け引きを見せながらミドルゾーンを攻略していった。

 

 

各地で数的優位を生み出すアンカーの内田

 栃木は少しずつ押し込まれると自陣でブロックを作り、何とか跳ね返す展開になっていった。人海戦術とも言える強固なブロックを敷いた栃木だが、これに対してヴェルディさらに人をぶつけることで数的優位性を得る形を見せた。

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 サイドの高い位置でボールを持つと、CBとアンカー内田がボールサイドに寄って局面に厚みを作っていた。特に顕著だったのがアンカーの内田。右へ左へとボールサイドに寄り、ミドルゾーンからアタッキングゾーンへと侵入するチームを後方から支え続けた。

 押し込まれた栃木はロングカウンターやCKからのポジティブトランジション(守から攻への切り替わる局面)から打開を図ろうとしたが、ゴールは決まらず。大黒のクロスバーを叩いたシュートは、実況の西達彦さんも思わず「ゲットー!」って言いかけるほど惜しいシーンだった。

 

 

決勝点は最高の質的優位性から

 後半はよりボールを持って相手のエリアの近くでプレーすることができましたが、チャンスはほとんど作れませんでした。(ロティーナ監督の試合後コメント)

 

 ロティーナ監督のコメントからも分かるように、流れのなかからリズムを掴みきれていないヴェルディだったが、最後はセットプレーから決勝点を奪った。ゴールを決めたのは長身の林陵平。途中出場の選手だ。振り返れば、ヴェルディが後半アタッキングゾーンの攻略で試行錯誤するなか切っていったカードは全員180センチ越えの選手だった。最高の質的優位性により決勝点を導いたロティーナ監督の采配ズバリとも言うべき試合の決し方となった。

 

 

最後に

 これが俺たちのポジショナルプレーだ!と言わんばかりの戦いを見せた栃木。9戦負けなしの時から続くブレない戦い方で、相性の良くない難敵ヴェルディにあと一歩というところまで迫った。あとは勝利を掴み取るだけ。悔しい敗戦ではあるが、辛抱の時期だ。

 次の対戦相手は横浜FC。昇格を狙うチームとの試合が続くタフな日程にはなるが、目標の11位以内を目指す上で、上位相手にもしっかり勝ち点を得ることが重要になる。良い結果になること、そしてグリスタでキングカズが出場することに期待したい!

 

 

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