栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【勝負に徹する】J2 第33節 栃木SC vs 松本山雅FC

f:id:y_tochi19:20211013065201j:image

スターティングメンバー

f:id:y_tochi19:20211013065216p:image

栃木SC [4-4-1-1] 15位

 前節は残留争いのライバル大宮に敗れて2連敗、ここ3試合勝ちなしと正念場を迎えている栃木。スタメンの変更は2人。契約上出られない乾に変わってCBには三國、有馬に変わって矢野が右SHに入った。畑はトップ下スタート。復帰が期待された山本、ジュニーニョのメンバー入りは次節以降か。

 

松本山雅FC [3-5-2] 19位

 前々節は北九州に逆転勝ち、前節は好調千葉にドローと、粘り強い戦いで勝ち点を積んでいる松本。リーグワーストの失点数を記録していた守備が少しずつ安定してきたが、セルジーニョ離脱は攻撃面で大きく響きそうだ。スタメンの変更は2人。CBには高さ対策で野々村が入り、最前線には阪野が起用された。

 

 

状況にマッチした人選

 この日の栃木はいつにも増して慎重な入りだった。柳のセーフティーなクリアに然り、判断早く蹴り出すロングボールに然り。強風の吹き荒れる風下であり、アウェイで迎えるシックスポインター、ましてや前後半の立ち上がりに失点を許し、自分たちから流れを悪くしてしまった前節を踏まえれば妥当な判断と言えるだろう。久しぶりの先発となる三國が最終ラインに入ったことも影響しているはずだ。栃木にとっては慎重にならざるを得ない条件が数多く揃っていた。よって有馬に変わって高さとスピードで敵陣を取れる矢野が先発起用されたのも納得がいく人選だった。

 一方松本は攻撃の柱であるセルジーニョが負傷により不在。地上戦のキーマンを失った影響は大きく、比較的繋ぐことを大事にする名波監督にしてはロングボールが多かったように思う。もちろん風を考慮した安全策とも取ることができるが、試合後の監督コメントを見る限りは上手くいってなかった様子が伝わってくる。

 互いにロングボールを入れる展開になると中盤でのセカンドボール争いも増えていく。ここでの勝率は五分五分だったが、回収したボールを攻撃に繋げるイメージは栃木の方が分かりやすかった。7分、14分と矢野が外山の後ろのスペースに猛スプリントしていたのは狙いとしていたところだろう。

f:id:y_tochi19:20211013065239p:image

 栃木の得点はこの矢野のスプリントから生まれている。畑からボールを預かった矢野がサイド奥を取るとクロスが相手に当たりCKに。ショートコーナーで相手に一度ニアを意識付けさせてファーから折り返す形は栃木の繰り返してきたサインプレーの一つ。そこで招いた混戦から得たPKを谷内田が落ち着いて決めきった。谷内田はプロ初から2試合連続となるゴールとなった。

 

 飲水タイム後はロングボールを止めて自陣から繋ぐスタイルにシフトした松本。おそらく名波監督から明確な指示があって、戦術というよりはメンタル面で平常心を取り戻したようなイメージ。栃木のプレッシングに対して自信をもって繋ぐことで自分たちのテンポでボールを支配していく。

 松本のビルドアップで面白かったのはWBの外側をサイドのCBが駆け上がっていたことである。特に下川と大野の右サイドは積極的に可変。アンカーの佐藤や平川が列を下りるのに合わせて左に旋回するようにポジションをチェンジ。対峙する谷内田にとっては、プレスの場面では大野を睨みつつ構えたときは下川の位置をケアするのが基本タスクだったと思うが、構えてもその外側を大野が回ってくるのはかなり厄介だったと思う。

f:id:y_tochi19:20211013065255p:image

 ただ、その分松本はビルドアップにかける人数が少し多かったようにも思う。右サイドでは可変しながらボールを繋ぐ一方で、左サイドでは阪野が流れてきて前でタメを作る。このときゴール前には伊藤1人のみ。河合もどちらかといえばボールに関わりたい選手のため、なかなかゴール前に厚みをもたらすことができなかった。

 

 それほどピンチは多くない栃木だが、この日の前半は強風の風下。よってプレーはセーフティー優先。いつものようにもう少し繋いでもよかったと思うが、リードしていることもありここは徹底されていた。上手くセカンドボールを拾えれば左サイドに展開し、豊田と矢野のツインタワー目掛けてクロスを供給していく。左サイドに右利きしかいないことをカバーするように、内側を抜ける選手が囮となって溝渕にクロスを蹴り込むコースを作る形は手が込んでいた。

f:id:y_tochi19:20211013065315p:image

 

 

腹を括った5バック采配

 リードして迎えた後半だったが、栃木は松本のビルドアップに引き続き苦しむこととなる。切り替えてプレッシングをかけ直したい栃木を難しくさせたのが可変のスイッチ役になる大野の存在。栃木の選手は大野のポジションによって近くの選手が連動して寄せていたが、どちらかと言えばそれによって空いたスペースを上手く使われていた格好だった。

f:id:y_tochi19:20211013065329p:image

 それでも縦に刺されたパスを後ろの選手が跳ね返すことができれば問題にはならなかった。この日の柳と三國はサイドに流れたり中盤に下りながらポストプレーをする松本の2トップに対してよくやっていたと思う。

 ただ、CBが相手の前進を止められなかったときにはズルズルとラインが下がり、もれなくピンチを招いてしまったところは課題点。56分の上図のシーンは、中盤を横断されてしまい手薄な逆サイドからクロスを入れられている。決定的なピンチを間一髪オビが防いだシーンも、三國と柳の両CBが十分にクリアできなかったところからだった。失点に直結するポジションの選手がミスを重ねてしまうとその分リスクは高まるが、それでも何とか凌げていただけツキがあったといえる。

 野々村を除いて流動的に後ろの組み合わせを変化させる松本。栃木は前線の選手がプレッシャーをかけたいものの、背中で受け手になる選手を隠すことができない。可変の影響を大きく受けるエリアに森を投入して守備のテコ入れを図るが、それでも劣勢を跳ね返すまでには至らなかった。

 

 後半の飲水タイム後には畑に変えて小野寺を投入した栃木。 残り時間を守り抜こうという明らかなメッセージ付きの交代策だった。もちろんそのプランは飲水タイムで共有されていたとは思うけど。

f:id:y_tochi19:20211013065344p:image

 5バックにしてからは防戦一方。ボールを運ぶ力のある森を中心に、できればロングカウンターの場面を作りたかったが、攻撃回数をほとんど確保できず。ただ要所をしっかりと抑えることができていたため、真にピンチといえる場面は少なかった。[5-4-1]の栃木の守備は相手にテンポアップさせないことが基本路線。自陣ではしっかり構えながらもボールホルダーを牽制し、サイドに追いやったところで縦を切って前進の機会を奪っていく。痺れを切らした相手が大外からのクロスやロングボールを入れてくれば堅固な3CBで跳ね返す。これを愚直に繰り返すことで時計の針を少しずつ進めていった。

 中央をこじ開けることができない松本は村越や山口を投入することでサイドでの突破力と供給するボールの質を高めていく。ただ栃木の牙城は崩せず。栃木にとって意表を突かれたのは、流れのなかで前に動いてきた平川が縦パスをフリックで外山に預けたシーンくらいで、しっかり構えたところから崩されることはなかった。

 

 試合はこのまま1-0で終了。クリーンシートを達成した栃木は連敗を止めて4試合ぶりに勝利。一方松本は4試合ぶりの敗戦で今節での降格圏脱出とはならなかった。

 

 

最後に

 5バックにしてからは要所を抑えた守備で最後の局面ではやらせなかったとレビューでは書いたが、見ている側からすれば常にヒヤヒヤするくらい薄氷の勝利だった。防戦一方となってしまった采配が良いか悪いかは別として、5バックにするのがあと10分早かったら、もしくはあと10分4バックを続けていたら耐えきれていたかどうかは怪しい。矢野を先発させた起用法含め、様々なリスクを踏まえたうえで田坂監督の勝負師的な采配が光った試合だったといえる。もちろん選手たちもよく最後まで集中を切らさずに戦ってくれた。

 リーグ戦も残すはあと9試合。残留を争うチームはどこも粘り強く勝ち点を積み上げている。それでも4チームは降格してしまう過酷なレギュレーションのなかでは勝ち点1の差、得失点差が明暗を大きく分けるだろう。それだけに直接対決をこのように勝利した成功経験は今後に向けて大きな糧となるに違いない。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-0 松本山雅FC

得点 18分 谷内田哲平(栃木)

主審 御厨貴文

観客 7740人

会場 サンプロ アルウィン