はじめに
不定期開催の単発マッチレビュー!ということで今回は栃木シティと八戸の試合について振り返ってみました。「栃木シティは今年は調子が良くないな〜」、「八戸は上形と宮崎が頑張ってるな〜」くらいしか予備知識がないのと、映像を見れていないのは悪しからず。生で観戦して感じたことを書いていくので、「こんな風に見たのね」って程度で読んでもらえればと思います。
スタメン
栃木シティFC(関東1部)[3-1-4-2]
チーム名とエンブレムを変え、心機一転今年こそのJFL復帰を狙う栃木シティ。しかしここまでは1勝3分1敗と決して上手くはいっていない模様。得点も思うように取れていなく、昨季15ゴールをマークしたデカモリシが退団した影響の大きさが伺えます。
昨季は[4-4-2]を貫いていた記憶がありますが、今年は3バックも積極的に採用。スタメンは普段のリーグ戦から大きく変更せず、上位カテゴリーのチームを相手に真っ向勝負を挑みます。
ヴァンラーレ八戸(J3)[3-4-2-1]
Jリーグ55番目のクラブということで、今年JFLからJ3に昇格してきた八戸。リーグ戦序盤はアウェイで長野と群馬に立て続けに勝利したものの、現在4連敗を含む5試合勝ちなし。下位カテゴリーのチームをしっかり叩いて息を吹き返したいところです。
ちなみに、上形と宮崎にとっては会場の栃木グリーンスタジアムは昨季までのホームグラウンド。走り慣れたピッチで、二人を目当てに来たファンを湧かせることができるか。
ボールを握りたい栃木シティ、前で刈り取りたい八戸
しっかり自陣からビルドアップを行う栃木シティ。3バックとアンカーの松下を中心に、八戸のプレッシングが厳しいときはGK原田も加わり、数的優位を作りながら前進していきます。
ただ、このビルドアップが効いていたかというと微妙なところ。そもそも効果的なビルドアップとは、後方で得た優位性(時間とスペース)という貯金を前方に送り届ける点が最も重視されます。その意味で、栃木シティはある程度、貯金を作るための後方での形はシステマチックに整備されていました。ただ、優位性を届けるという部分の精度はいまひとつ。スペースを作る動きやスペースを使う意識、ボールを受けるときの身体の向きなどをはじめとした、一つ一つのプレー判断が遅く、せっかく後方で作った時間を自分たちで消費する形になっていました。非常にもったいなさを感じました。
このビルドアップの形であれば、八戸の一列目をスムーズに越えることができると、次に中盤において3vs2を作ることができます。相手が寄せれば逆IHへ、寄せなければ自分でドリブル前進すればいいので、机上論的には数的優位は最も良いシチュエーションと言えます。ただ、机上論で表せないのがプレースピード。前述したように、栃木はプレースピードが上がらないため、八戸の逆のシャドーやCHのプレッシングが間に合ってしまいました。そのため栃木シティは前線頼みのハイボールやバックパスなど、逃げの選択肢が多くなり、効果的に攻撃を組み立てることができませんでした。
ただ、それでも前線2トップや攻撃時に高く張り出した右WB田中輝希を経由すると、何かが起こりそうな雰囲気は感じられました。共通するのはフィジカル的な側面。うまく相手の力をいなしながら強引に前を向く力強さは、ビルドアップで生じたエラーをなかったことにしてしまうほどであり、ここから始まるプレーは栃木シティにとって最もゴールの匂いを感じさせるものでした。
一方の八戸はどうだったか。
八戸は基本的には堅守速攻。高い位置から全員が連動してプレッシングを行うことで相手をサイドに閉じ込め、奪ったところからトランジション、ショートカウンター、といったところです。前述のように栃木シティはプレースピードが上がらないため、八戸としてはボールを刈り取れる場面が多くありました。これを持続的に可能にしたのがCH新井山の効果的な働き。彼のプレーを見るのは初めてでしたが、非常にインテリジェンスを感じる選手でした。味方の動きに合わせて取る気の利いたポジショニングは、チーム全体のプレーを円滑にするものであり、まさに「ミスターヴァンラーレ」と呼ばれる所以だと感じました。調べてみると2008年の東北2部時代から八戸に所属し、足かけ12年でチームとともにようやくJに辿り着いた苦労人なんですね。こういう選手がJリーガーになるって本当に素晴らしいと思います。ドキュメンタリー化されたら泣いちゃいます。
本題に戻すと、八戸は自陣からのビルドアップの際は栃木シティのプレスの乱れをしっかり突いていくことで教科書通りに前進することができました。栃木シティとして、もう少しファーストプレッシャーとセカンドラインの連動を高めたいところ。せめてピッチのど真ん中でCHに前を向かれた状態でフリーで捌かれるのだけは早めに修正したい点です。
八戸の前進のストロングポイントは両WB。ともに走力とボールタッチに優れた選手であり、左WB宮崎は縦への突破、右WB國分は周りと連携してのカットインからチャンスを作り出すなど、上下動によりピッチにダイナミズムを生み出す彼らの存在は、八戸の攻撃に間違いなくプラスアルファの厚みをもたらしていました。
試合は、前半34分に中村太一が中盤のプレスが緩んだタイミングで放ったミドルシュートにより八戸が先制。後半35分には積極的なシュートがハンドを誘い、それにより得たPKを栃木県出身の須藤が決めて追加点。栃木シティは枠内シュート0と見せ場を作ることができず、0-2で敗戦しました。
最後に
予備知識がない状態でのレビューは難しい!やっぱりずっと追っているからこそ、「何が起こっているか」や「普段との違い」が分かるってところがレビューの醍醐味だなぁと感じた次第です。ただ、こういうのもたまには面白いのでやっていきたいと思います。たまには。
試合は八戸が2-0で勝利。今振り返れば、ボールポゼッションでは栃木シティに分があったかもしれませんが、危ない場面はほとんどなく完勝だったと思います。これがカテゴリーの差なのかなと。
八戸の2回戦の対戦相手はJ1の松本山雅FC。この対戦カード、栃木に縁のある選手が非常に多い気がしなくもないですが、この組み合わせなら自ずと下位カテゴリーを応援したくなるがカップ戦の醍醐味ですかね。一波乱起こしてくれることを期待したいと思います。
【トップチーム📣✨】
— 栃木シティ【公式】 (@tochigi_city_) 2019年5月25日
⚽️天皇杯1回戦
🆚#ヴァンラーレ八戸
⏰13:00キックオフ
試合が終了いたしました。
栃木シティ 0-2 ヴァンラーレ八戸
天皇杯1回戦にて敗退となります。
多くの熱いご声援ありがとうございました。#栃木シティhttps://t.co/nQ1jQVgPLr pic.twitter.com/cWXAiDCQRs
【天皇杯 vs栃木シティFC】
— ヴァンラーレ八戸【公式】 (@vanraure) 2019年5月25日
試合終了
ヴァンラーレ八戸 2
栃木シティFC 0#ヴァンラーレ八戸 #全緑 #次は松本山雅 pic.twitter.com/oVvO2GWgfR
試合結果
得点 34’中村(八戸)、80’須藤(八戸)
会場 栃木グリーンスタジアム
観客 494人