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【連戦に必要なのはサブ組の奮起】J2 第26節 栃木SC vs ツエーゲン金沢(△1-1)

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はじめに

 リーグ戦3連戦の3戦目はアウェイの金沢戦。厳しい環境のなか栃木は前半のうちに先制点を許したものの、後半選手交代とシステム変更が功を奏しキムヒョンのゴールで同点に追い付きドロー。引き分けの多い両チームは開幕戦同様に、勝ち点1を分け合う結果に終わりました。

 

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 20位

 ヴェルディと対戦した前節は終始ボールを保持される展開となりましたが、集中したディフェンスから8試合ぶりのクリーンシートを達成した栃木。中3日で迎える今節は守備の自信を高めるべく中盤から後ろの選手はそのままに、前節ノーゴールの攻撃陣にはフレッシュな大﨑と川田を起用しました。川田は攻撃的なポジションでは久々の先発。今節もスタメンとなったCB乾と左WB瀬川は、合流から約10日間で3試合目の出場になりました。

 

ツエーゲン金沢 [4-4-2] 11位

 ハードワークを基調としたヤンツースタイルでトップハーフをキープする金沢。前節は首位京都を相手に最後の最後まで善戦したものの、ラストプレーから失点を許しドロー決着。負けた数は自動昇格圏に匹敵する少なさですが、リーグトップの12引き分けがここまで尾を引いている印象。先制試合数が多いだけに、守りきる力、2点目を取り切る力を身に付けたいところ。今節はスタメンを3人入れ替え、夏加入の山根永遠はメンバー外となりました。

 

前半

勢いそのままに先制点を奪った金沢

 高温多湿かつ過密日程の最終戦。否が応でも蓄積している疲労の影響が色濃く表れる試合展開になるだろうという個人的な予想を立てていましたが、予想は徒労。互いに信条とする運動量や球際のバトルは中1週間の試合さながらの強度を見せ、走り負けた方が負けといった様相で試合は始まりました。

 

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 立ち上がりから効果的に仕掛けていったのはホームチーム。キックオフからのファーストプレーはその試合の狙いや意図が垣間見える重要なシーンですが、最終ラインまで下げ、左SB沼田からWB浜下の背後のスペースに走り出す左SH加藤へのロブパスというように、栃木の5バックの背後へのロブパスによる前進は最も再現性をもって行われていました。主な出し手は両SBとCH藤村。彼らの供給する良質なボールは、前からの守備で嵌めたい栃木にとってはまさに盤面をひっくり返されたような形。栃木はCB間やCB-WB間のチャンネルからボールを引き出す金沢の2トップとSHを序盤はなかなか捕まえられず。左右CBは内に絞るかWBの背後をケアするか、ミスマッチによる守備の二択を強いられる立ち上がりとなりました。

 

 一方、金沢は守備でも安定感を見せました。栃木の前進方法はへニキをターゲットにしたロングボールからのセカンド回収がメイン。マイボールになるとへニキがスルスルと前線に上がっていき、その周りに大黒ほかシャドーやWBがサポートに寄るのは栃木ウォッチャーにとってはお馴染みの光景です。ただ、詰まるところ、この戦術はへニキありきの属人的な方法。よって、金沢はネガトラ時のへニキへのマークを強めることでロングボールのターゲットを消しつつ、栃木に苦手なボール保持を強いることで前からのプレッシングも機能させようという意図があったと思います。プレッシングからボールを奪えれば、素早くショートカウンターから最終ライン背後にロブパスを刺す設計です。

 

 攻守に噛み合う金沢は前半16分に先制点を奪取。ゴールに繋がるCKの起点も藤村からのロブパス。狙い通りの攻め筋から最後は杉浦がヘディングで押し込み、立ち上がりからの勢いそのままにリードを奪いました。

 

栃木がミスマッチから盛り返す

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 あっさりと失点を喫した栃木は反撃を開始。前半17分には右CB菅から左WB瀬川へ、前半19分にはCB乾から右WB浜下へ立て続けにサイドを変えるボールから前進を敢行。4バックの金沢は構造上、ミスマッチから逆サイドのWBをフリーにしてしまい、一拍遅れてSBが対応に向かうため、時間とスペースを得られるWBにボールが渡ればクロスに至る場面がありました。

 

 しかし金沢も黙って見ているわけではありません。サイドに入るボールに対してはSHとSBがマーカーを固定して徹底的にマンマークで対応。最前線の数的不利もCF垣田の根気プレスバックやSHの片上げで根気強く枚数を合わせます。ボールホルダーを自由にさせないハードワークディフェンスにより、栃木は出し手にも受け手にも余裕がない状態になり、特にCH荒井は前節よりもボールを触れる機会が増えた分、出足の早い金沢のプレスにボールをロストしてしまう場面も見られました。

 とはいえ、前半28分には金沢のプレッシングのミスからスペースを見つけた荒井が右シャドー川田にダイアゴナルなパス。前半30分には前プレにより誘った金沢のミスから大﨑のシュートなど、失点後はどちらかといえば栃木に主導権があった印象でした。

 

 前半も30分以降は膠着した展開に。互いに守備を修正したことからエリア内まで侵入させることは少なくなり、いかに焦れずに相手の攻撃にスライドできるか、我慢比べの様相で前半は終了しました。

 

後半

システム変更により生まれた得点

 頼みのへニキは空中戦を封じられ、自陣からのショートパスによるビルドアップも金沢のプレッシングをまともに受けてしまい、意図したプレーからほとんどチャンスを作れなかった栃木。連戦も考慮してハーフタイムの選手交代も十分考えられましたが、田坂監督は前半の11人を引き続きチョイス。金沢もリードしているため変化を加えることはなく、よって前半と変わらない展開で進んだ後半立ち上がりでした。

 

 金沢は後半7分に得点を上げた杉浦に変えて金子を投入。最前線に置いて栃木の最終ライン背後への意識を高めると、投入直後の後半8分には金子、後半9分には垣田、後半15分には再び金子がスペースに抜け出してチャンスを創出。後半15分の金子の抜け出しに対応した菅はこのプレーにより負傷し、キムヒョンとの交代を余儀なくされました。

 

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 後半12分に川田、大﨑に変えて西谷和希、三宅、後半18分に上述の菅に変えてキムヒョンを投入した栃木はシステムを[4-4-2]に変更。1トップ2シャドーから2トップに変更し、シンプルにサイドを突破してからのクロスにより重点を置いた布陣に修正します。

 この変更が功を奏した栃木。後半22分、栃木のクリアボールが相手に跳ね返って生じた不運な1vs1をGKユヒョンがビッグセーブで凌ぐと、素早く左SBの瀬川にスローイング。瀬川→荒井→浜下と右サイドにボールを展開し、最後は浜下のクロスに大黒がスルーしファーサイドのキムヒョンのシュート。SBと2トップの関係性からキムヒョンが難易度高めの左足ハーフボレーを決めて栃木が同点に追い付きました。

 浜下にこれだけサイドで自由が与えられたのはこの試合この場面くらいでしょうか。金沢はフィニッシャーが左SH加藤だったということもあり、栃木ポジトラ時の右SB浜下に対するマーカーが存在せず。ミラーゲームによるマッチアップは各所の1vs1の勝敗が重要になってくるだけに、金沢としてはネガトラ時に加藤の背後を埋めることができなかった点は痛恨でした。

 

 試合終盤に差し掛かると両チームともに疲労の見える展開に。中盤を経由せずにロングボールが多く飛び交う展開に中盤以下の選手がラインを押し上げられず、互いのゴール前での単発なプレーが多くなっていきました。自身のポストプレー後にリターンを受けてシュートまで持ち込んだ後半34分のプレーや、後半ATのセカンドボールを拾ってのミドルシュートなど、途中出場ながら両チーム通じてトップのシュート数をマークしたキムヒョンの姿が頼もしく見えた点は収穫。4バック時の守備に不安のある瀬川が終盤に被クロス対応を誤り、エリア内で清原にシュートを打たれる場面もありましたが、辛うじてシュートミスに助けられると、試合はこのまま終了。1-1、両チームとも2試合連続のドローとなりました。

 

最後に

 厳しいコンディション下の過密日程を大きくメンバーを変えずに戦った栃木。試合に臨むに当たって田坂監督はもちろん最善の11人(18人)をチョイスしたと思いますが、試合が進むなかでイージーなミスやテンポアップしないビルドアップが散見された点は改善の余地がある部分。いずれにせよ前半は無失点で折り返せればいいというゲームプランなら異論はありませんが、もう少し相手にナイフを突き付けた状態でプレーしたいところでした。

 サブ組の奮起も必須事項です。この試合途中から出場したキムヒョンは目に見える結果を残しましたが、西谷和希と三宅は相手のブロックに埋もれてしまった印象でした。もう少しでフィニッシュに至るという場面で切り返しを選択したことで金沢守備陣に対応された、後半26分の西谷和希のカウンターのシーンは顕著ですが、途中出場選手はよりシンプルにゴールに最短なプレーをしてほしかったところ。自分たちが前プレのスイッチになったり、二次攻撃、三次攻撃に加担したりと、途中出場のフレッシュさをプレーで体現できればまた違ったかもしれません。

 ここまでは栃木の課題ばかり挙げてきましたが、システム変更により勝ち点を得た結果は大きな収穫。もちろん勝ち点1のみを手放しに喜ぶことはできませんが、受け身のまま90分を耐えるのではなく、自ら変化とアクションを起こしてドローに持ち込んだ経験は、今後残留争いを戦っていくなかで、相手を上回るための選択肢と自信を提供してくれます。この勝ち点1が残留の決め手になったと言えるように。金沢戦で得た課題と収穫を次節以降の糧にしてほしいと思います。

 

試合結果

J2 第26節 栃木SC 1-1 ツエーゲン金沢

得点 16’杉浦(金沢)、69’キムヒョン(栃木)

主審 吉田 哲朗

観客 4,850人

会場 石川県西部緑地公園陸上競技場

 

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