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栃木SCの2020シーズンを振り返る(選手別レビュー GK&DF編)

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 あけましておめでとうございます。2021年もどうぞよろしくお願いします。今年も相変わらず細々とブログを続けていきますのでぜひお付き合いいただければと思います。

 

 昨年は栃木SCに限らずサッカー界にとって激動の一年となりました。前代未聞のリーグ戦中断、再開後の超過密日程。リモートマッチ(無観客試合)もありました。個人的にはここ数年で初めてアウェイ観戦がゼロに。収束の兆しが見えないだけに制限付きの観戦スタイルは今後もしばらく続くことになるのでしょうか。

 栃木SCに目を向けてみれば、順位は過去最高に迫ろうという10位フィニッシュ。戦績は15勝13分14敗。残留争いを戦った昨季を踏まえれば躍進のシーズンになったと言えるでしょう。シーズンが終わったと思いきや息付く暇なく移籍や契約の話題が盛んに動いていますが、新たなチームが始動する前に2020シーズンの備忘録として選手別レビューを書き記しておきたいと思います。まずは『GK&DF編』。

 

 

GK

1 川田 修平

22試合/1920分/22失点

 チームのJ2残留に貢献した昨季終盤の活躍が認められ、新たに背番号1を背負うこととなった今シーズン。キャリアハイの22試合に出場(先発21試合)し、全試合にメンバー入りを果たすなど川田自身も躍進のシーズンとなった。

 横並びのGK陣のなかでは最もセービングやシュートストップの技術に優れ、相手の決定機をことごとく防いだ第32節京都戦(〇1-0)はまさにGKが勢いに乗った試合の好例だった。第35節水戸戦(●1-3)のように上手くいかない試合もあったが、シーズンを通して見れば正GKに見合う活躍だったと思う。コーチングと飛び出しの判断はこれから高めていってほしいところ。

 来季はチーム最古参となる在籍6年目。若手ではなく中堅、もしくは若手選手が多いこのチームではリーダー的振る舞いが求められてくるだろう。

 

22 塩田 仁史

12試合/1050分/12失点

 大宮から加入したベテランGK。正確かつ分かりやすいコーチングでマンツーマン要素の強い守備を最後方から支えた。ファールした味方に対しては「謝れ!」と声を掛けるなど、若いチームのなかで精神面でも支柱となった。コロナ禍のスタジアムに響く塩田のコーチングを聞くだけでもスタジアム観戦する価値は十分あると思う。

 第7節町田戦(●0-2)で負傷により離脱。2巡目の第22節町田戦(〇2-0)ではFC東京時代の恩師であるポポヴィッチ監督から回復を祈るコメントがあり、敵味方を越えた繋がりの強さを感じた。

 

31 大野 哲煥

0試合/0分/0失点

 千葉から期限付き移籍で加入。塩田が離脱してからはベンチ入りを続けたが出場機会を得るには至らなかった。2018年の千葉時代にはシュートストップが当たっていた記憶がほんのりあるが、今年は練習見学もできず天皇杯もなかったのでどんな選手か見ることはできなかった。期限付き移籍期間が満了となり、千葉でも契約満了。来季の去就は未確定だが、新天地でも頑張ってほしい。

 

50 オビ パウエル オビンナ

9試合/810分/5失点/1アシスト

 8月に育成型期限付き移籍で加入した当初は出場機会を掴めず苦しんだが、第17節水戸戦(〇2-1)でデビューを果たすと、第22節町田戦からは8試合連続で先発の座についた。高精度のロングキックは栃木スタイルとの相性が良く、前線の選手にポストプレーさせてよし、裏に走らせてもよし、と守備だけでなく攻撃の始点としても存在感を見せた。極めつけは第29節愛媛戦(〇1-0)のスーパーアシスト。これは並のGKではできない。

 マリノスに復帰後はJ1デビューを飾り、ACLでも正GKとしてゴールマウスを守るなど急成長を見せている。東京五輪代表として、ゆくゆくは日本代表として活躍してもらい「オビは栃木が育てた」とぜひ言わせてほしい。

 

犬飼 裕哉

0試合/0分/0失点

 塩田が負傷離脱した直後の8月に2種登録されたユース所属の若武者。高校2年生ながらU18のユースチームでレギュラーを張り、チームを全国大会に導くなど、これからの成長に期待が高まる選手である。

 

 

DF

2 伊藤 竜司

0試合/0分/0得点/0アシスト

 長らく怪我に苦しみ、栃木での2年間で出場はゼロ。第35節水戸戦でベンチ入りしたのみと悔しい結果となった。契約満了がすでに発表されているのでとにかくフィジカルで弾き返す系CBが欲しいチームにはおすすめ。ボンディア(ポルトガル語で「おはよう」)といつも言っている。

 

4 髙杉 亮太

21試合/1712分/0得点/0アシスト

 田代や柳と比べれば目立つプレーは多くないかもしれないが、ハイボールへの競り合いや縦につけるパスなどを卒なく無難にこなす安定感は抜群であった。シーズン中盤にはフィジカルとスピードを備えた相手FWの裏抜けに対して後手を踏むシーンが散見。ベテラン選手とあってアジリティ面で不安は残るが、それを補って余りある予測の鋭さやいぶし銀の安心感は契約延長した2021シーズンも頼りになるだろう。古巣長崎サポからの人気が根強く、ポスター掲載を巡る選抜総選挙では堂々の4位にランクインした。

 

6 瀬川 和樹

40試合/2377分/0得点/4アシスト

 昨季夏に加入した職人肌の左SB。今季記録した4アシストは全て印象深いものであり、第11節岡山戦(〇2-1)と第17節水戸戦では柳の後半AT弾をアシスト。第16節北九州戦(△2-2)で明本が胸トラップから落ち際をボレーで叩き込んだ得点も瀬川のロングスローからである。シーズン後半戦は戦術上の理由から途中投入が多くなり、出場40試合のうち先発は23試合に留まった。

 ピッチ外に目を向ければ、やはり中断期間中の活動に目が行く。クラブとスポンサー企業、選手とサポーターの関わりが少なくなるなか精力的な活動とSNSによる発信は大きな話題となった。

 来季は関東1部リーグのクリアソン新宿へ移籍が決定。契約延長を断ってまでセカンドキャリアを見据えた道を決断するのはある意味瀬川らしい。今後の活躍に期待である。

 

7 菅 和範

1試合/1分/0得点/0アシスト

 闘将は13年のプロ生活を最も長く所属した栃木で終えることを決断した。

 今季の出場は第39節群馬戦(△2-2)終盤の1分のみ。グリスタラストゲームで今季初出場を飾ったあとに見せた涙は、この時すでに第一線を退くことを決めていたがゆえだろう。田坂監督もこれまでの功績を称えたうえでの起用だったと思う。

 昇格を争ったシーズン、債務超過により経営に苦しんだシーズン、J3降格、そしてJ2復帰。酸いも甘いも味わった栃木の歴史のなかの中心には菅がいた。プレー面でも精神面でもチームを引っ張ってくれた功労者。お疲れ様でした。

 

15 溝渕 雄志

34試合/2623分/0得点/1アシスト

 本職は右SBだが黒崎の台頭に伴いシーズン中盤以降は左SBに定着。先発した33試合のうち右で17試合、左で16試合に先発とあまり見ない内訳となった。前からのハイプレス連動をサボらず、守備に切り替わった時の自陣に戻るスピードも早い。右利きのため左足クロスはさすがに窮屈感があったが、最もタフな運動量の求められるSBのポジションを両サイドでこなせる溝渕の存在は監督にとっても貴重だっただろう。

 今季唯一のアシストは第15節甲府戦(〇1-0)で西谷優希がヘディングで合わせたもの。やはり右サイドで見たい。

 

23 柳 育崇

35試合/2267分/6得点/1アシスト

 今季最もブレイクした選手の一人。シーズン序盤はベンチスタートが多く、主な起用はビハインド時や同点時のパワープレー要員だったが、ここまで見事に結果を残してくれるとは誰も予想できなかっただろう。第11節岡山戦、第17節水戸戦、第20節磐田戦(〇3-2)の得点は全て途中出場からアディショナルタイムに叩き込んだ逆転弾である。記録上は出場1分で1得点を3回行っているのだから、これだけ見るともうよく分からない。

 髙杉が離脱した後半戦は田代の相方として対人守備の強さを十二分に発揮。第41節千葉戦(〇1-0)ではカンセキスタジアムとちぎでの初陣で決勝点をあげた。完全移籍での加入が決定している来季もゴール前の門番と点取り屋の二刀流をお願いしたい。

 

28 温井 駿斗

0試合/0分/0得点/0アシスト

 一昨年は8試合、昨年は5試合と徐々に出場機会を減らし、今季は第17節水戸戦でベンチ入りしたのみで出場はゼロ。瀬川に続く左SBのバックアッパーとして計算されていたと思うが、右SBが本職の溝渕にポジションを奪われてしまうと厳しい。左利きの左SBであり、セットプレーを任せられるほどの高精度のキックが持ち味となると欲しいチームは多いと思う。

 

30 田代 雅也

41試合/3601分/3得点/0アシスト

 昨季終盤にレギュラーに定着すると、今季はチーム最長のプレータイムを記録。最終ラインのリーダーとして、そしてゲームキャプテンとしてチームを最終ラインから引き締めた。前の選手の細かなポジショニングのズレを修正させるコーチングにはすでにキャプテンの風格が出てきており、マイボールを一度落ち着かせるパスや自分自身で持ち運んだりするなどプレー面での余裕も出てきた。第40節金沢戦(△1-1)では自身のミスを直後に帳消しする同点弾を決めるなど負けん気の強さを見せた。

 闘将菅和範の座を継ぐのにふさわしい栃木の象徴的選手だが去就はとうなるか。

 

33 黒﨑 隼人

26試合/1920分/0得点/3アシスト

 怪我に苦しんで出場ゼロになった昨季を踏まえれば、右SBのレギュラーを掴んだ今シーズンは飛躍の一年となった。プロデビューは第13節琉球戦(△2-2)。高温多湿の厳しいアウェイゲームのなか、試合終盤の81分に自陣からの猛スプリントでアシストのアシストを記録するなど、豊富な運動量と並走する相手に負けない快速が武器であることを印象づけた。第28節琉球戦(〇4-1)では1試合で3アシストを決める大車輪の活躍。琉球にとってはオルンガよりも脅威かもしれない。

 体格が良いため守備で狙い撃ちされることも少なく、SBとして必要な能力は十分備わっているように感じる。よりスケールの大きい選手になれるポテンシャルはあると思う。

 

35 池庭 諒耶

0試合/0分/0得点/0アシスト

 青山学院大学から加入した大卒ルーキー。大学時代はビルドアップに定評のあるCBだったが、より守備者としての能力を求められる栃木では出場機会を得ることはできなかった。そもそも田代、柳、髙杉の3人だけで大崩れせずに回せた頑丈さやマネジメントが凄い。9試合にベンチ入りしているだけに試合出場まであと一歩である。イケボ。

 

40 井出 敬大

2試合/96分/0得点/0アシスト

 中断期間中に柏から加入した左利きのCB。第8節群馬戦(〇1-0)でプロデビューを飾るなど出だしは悪くなかったが、池庭と同じでレギュラー組の壁を越えることはできなかった。柏ユース出身で世代別代表経験もあるいわゆるエリートだが、こんな過去があったとはこの記事を読むまで知らなかったので、未読の方はぜひご覧いただきたい。

 

 

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