栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【一切の緩みを見せず難敵を撃破】J2 第4節 栃木SC vs 横浜FC

スターティングメンバー

栃木SC [3-5-2] 17位

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 前節甲府戦は強度の高い守備を最後までやり切って今季初勝利を達成。今節は連勝とホーム初勝利をかけて横浜FCを迎え撃つ。前節からのスタメンの変更はなし。水曜日のルヴァン杯を戦った平松、ラファエルも先発に名を連ね、前節決勝点の宮崎はベンチスタートとなった。

 

横浜FC [3-4-2-1] 7位

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 J1からの降格組である横浜はここまで1勝2分で無敗をキープ。前節は連勝中の山形に快勝したことからも調子は上々だろう。懸念を挙げるなら前節負傷した森海渡がメンバーを外れていること。代わってトップには櫻川が今季初先発。ユーリは2019年に在籍した古巣との対戦となる。

 

 

マッチレビュー

■歯車が噛み合うまで我慢

 ともに開幕3戦目で初勝利をあげた両チーム。前節の良いイメージを継続するべく栃木は高い位置からのプレッシング、横浜はボール保持からの縦に速い攻撃を軸として試合は進んでいく。

 立ち上がりの主導権を握ったのはアウェイチーム。栃木のプレスを引き出し、空いたスペースに選手が走り込むことで前で起点を作っていく。栃木はこのとき出し手となる福森の左足を最も警戒していただろう。前節から左右CBの並びを入れ替えて機動力の高い藤谷を福森サイドに置くことで、直線的に出されるボールに対して素早く対応する構えだった。

 これにより石田の背後に流れる小川や櫻川への対応は上々。ただ、逆サイドのラファエル側の攻防では後手を踏む回数が多かった。厄介だったのがカプリーニの存在。中盤に下りてパス交換から山根を押し出したり、櫻川のポストから自ら抜け出したりと豊富な運動量でラファエルを翻弄。右奥を取ってからはクロスを上げ切る場面が多く、櫻川が待つゴール前では際どい守備を強いられることとなった。

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 しかし、これを平松を中心に弾き返すと、20分を過ぎた頃にはペースは少しずつ栃木のもとへ。ボールホルダーから縦の選択肢を取り上げて自陣から追い出していき、最終ラインに下げさせたところで今度はハイプレスに切り替えていく。奥田や神戸のサイドを限定する寄せ方も効いており、徐々に前向きの守備からショートカウンターを発動するシーンが増えていった。

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 ボールを握るフェーズで主役になったのはアンカーの神戸。相手FWのプレスの間に顔を出して最終ラインからボールを引き出すと、長短のパスでボールを左右に散らしていく。大外をフリにしてライン間のIHに楔のパスを打ち込むなど、ピッチ中央で試合をコントロールすることができていた。

 ようやく攻守の両輪が回り始めると、35分、ホームチームに得点が生まれる。大森が二度追いプレスで敵陣でボールを回収し、中央でのパスワークからボールは再び大森のもとへ。深い切り返しで山根をかわして右足クロスを入れると、矢野が折り返したこぼれ球に小堀が押し込んだ。これが小堀にとって待望のプロ初ゴール。栃木が自分たちの時間に先制することに成功した。

 得点によってメンタル面でも優位に立った栃木は回収→保持のサイクルを上手く回していく。序盤は自分たちが狙われたWB背後を逆に活用することで敵陣でのプレータイムを増やし、守備では引き続き全員が繋がりを持ってサイドに追い込んでいく。横浜はミスが頻発したことで保持のテンポが上がらず、ボールを握れたのは栃木のブロックの外だけだった。

 それでも横浜には最終ラインに高精度の飛び道具があり、最前線には屈強なポストプレーヤーがいる。この頃にはほぼほぼラファエルサイドからしか攻撃を行わず、手っ取り早く優位性を生かそうとしていたが、栃木も集中した守備でゴールマウスに鍵をかけることができていた。序盤は劣勢を強いられながらも自分たちにペースを引き寄せるまで我慢できたことで、リードした状態でハーフタイムを迎えた。

 

■劣勢を気迫で乗り切る

 後半、1点ビハインドの横浜は選手を交代。武田に代えて中野を投入し、前半フェードアウトした左サイドからの攻撃にメスを入れる。カットインからの仕掛けを得意とする中野に対して栃木はジリジリと押し込まれると、次第に重心を上げた福森にも攻撃参加されるように。横浜の人数をかけた攻撃にマークが乱れ、中盤3枚もペナルティエリア内で守備を強いられる場面が増えていった。

 ただ、依然として栃木にとって最も脅威だったのはカプリーニと山根の右サイド。行動範囲の広いカプリーニを捕まえ切れずに前を向かれると、2人の関係性から左サイドを抜き去られる場面が多発。1点ものの決定機を量産されたが、大森や大島らがすんでのところで足を伸ばし、ポジションを埋めることでギリギリの対応で凌いでいく。

 このとき栃木が頭を悩ませたのは宮崎を投入してから思ったほど前で起点を作れなかったこと。セカンドボールに対する横浜の反応が早く、神戸も前半ほど自由にさばく場面は少なかった。唯一ラファエルがセットプレーからチャンスを迎えたが、基本的にはマイボールの時間を確保できないため、ボール支配を高める横浜の攻撃に劣勢を強いられることとなった。

 しかし、この日も栃木は最大の集中でピンチの山を一つずつ溶かしていく。栃木の左サイド、横浜の右サイドから中央を覗く攻撃に対しては逆サイドから石田が絞って対応。身を投げ出してカウンターを阻止するなど気持ちを前面に押し出したプレーを連発すると、これに味方も呼応した。猛攻に曝された左サイドでは普段冷静なラファエルや大森もガッツポーズで気合いを示すなど、劣勢下でもファイティングポーズを取り続けることができていた。

 終盤横浜が攻め手としたのは左サイド。途中出場の村田、新井、中野を並べて誰からでもドリブル突破できますといった強気の采配でサイドを崩しにかかるが、栃木も石田を中心に枚数を合わせて対応し、サイドと中央の間のスペースは神戸がカバー。中央ではマンツーマン要素を強めることで相手を離さなかった。

 横浜の再三の猛攻を最後まで凌いだ栃木が1-0で勝利。ホーム戦今季初勝利&初の連勝を飾り、星を五分に戻すことに成功した。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
飛び出す判断とハイボール処理が安定しており、シュートシーンでも慌てる場面は少なかった。初のクリーンシート達成。

DF 2 平松 航
櫻川に対して競り合いでは十分に競らせず、足元のボールにはいち早く反応することで自由を与えなかった。

DF 17 藤谷 匠
自身の脇を抜けていく小川や櫻川に目を光らせることで危険の芽を未然に摘んだ。序盤以降、横浜が藤谷サイドを使う場面は減っていった。

DF 33 ラファエル
動き回るカプリーニには手を焼いたが、何とか最後まで踏ん張った。サイドの守備対応を制した際は普段冷静なラファエルもガッツポーズを見せた。

MF 6 大森 渚生
終始山根とバチバチのマッチアップを繰り広げたが、結果で示した。得点に繋がるあの深い切り返しは並のDFでは対応できない。

MF 7 石田 凌太郎
90分を通してスタミナと集中が途切れず、ピンチの場面では身体を投げ出すスーパーディフェンスをしてみせた。7番を背負う覚悟が大いに感じられた。

MF 19 大島 康樹
守→攻のタイミングでの立ち位置が良く、神戸や平松からパスを引き出し、攻撃の潤滑油になった。

MF 24 神戸 康輔
アンカーとして人とスペースを守り分けるバランスが絶妙で、セカンドボールへの予測も冴えていた。攻撃面の貢献は言わずもがな。

MF 38 小堀 空
祝プロ初ゴール。逆サイドから回ってくるボールへのプレスがとにかく早く、今の栃木に不可欠な要素をピッチ内の誰よりも表現できていた。

FW 15 奥田 晃也
矢野とともにサイドに追い込むプレスで守備に貢献。攻撃では自由に動いてボールを引き出し、その都度クオリティの高さを見せた。

FW 29 矢野 貴章
プレスのオンオフの判断と追い込み方が絶妙で、この日も最前線から守備を牽引した。クロスに対して高さを発揮し、小堀のプロ初得点をお膳立てした。

FW 32 宮崎 鴻
競り合いの強さを発揮したが、味方に繋がらない場面が多かった。分が悪くても最後まで追うことで相手を嫌がらせた。

FW 42 南野 遥海
少ない出場時間だったが相手を追い回し続け、前が開けたら左足を振る積極性を見せた。

 

 

最後に

 90分を通して鬼気迫ると言わんばかりの守備で横浜の猛攻を跳ね除け、ピッチの至るところで「闘う栃木」を全員が体現してみせた。得点が少なく、耐える時間が長い試合でも、サポーターが見たいのはこうした気持ちを前面に押し出したプレーであり、最後まで走り続ける選手の姿である。それを示すことができた試合だったように思う。

 そうした試合でヒーローになったのは下部組織出身でここまで悔しい想いをしてきた小堀。彼のプロ初得点が決勝点になったことは非常に感慨深い。この日の勝利はただの一勝ではなく、栃木に関わる全ての人にとって特別な勝利となったに違いないだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.3.16 14:00K.O.
栃木SC 1-0 横浜FC
得点 35分 小堀 空(栃木)
主審 西村 雄一
観客 4475人
会場 カンセキスタジアムとちぎ