栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【付き合わなければならない課題】J2 第5節 栃木SC vs ブラウブリッツ秋田

スターティングメンバー

栃木SC [3-5-2] 11位

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 前節は横浜FCに勝利し、今季初の連勝を飾った栃木。3年ぶりの3連勝を目指してアウェイ秋田に乗り込む。前節からのスタメンの変更はなし。イスマイラは開幕戦以来のベンチ入りを果たし、代わって土肥がメンバーを外れた。

 

ブラウブリッツ秋田 [4-4-2] 15位

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 ホーム開幕戦となった前節は仙台とスコアレスドロー。痛み分けに終わったものの、球際バトルが頻発する秋田らしい激しい試合だった。ホーム連戦となる今節はスタメンを3人変更。右SHの畑は今季2度目の先発、昨季栃木に所属した岡崎はベンチスタートとなった。

 

 

マッチレビュー

■圧力を感じつつも準備したものを示す

 映像でも分かるくらいの大雪と強風に見舞われたこの日の秋田。ピッチには水溜まりができ、雪仕様のカラーボールが止まってしまうなど、見るからに厳しいコンディションのなか試合は幕を開けた。

 こうした環境となれば栃木としては普段の秋田戦に求められることの純度をより引き上げて表現する必要がある。フィジカル勝負に持ち込む相手に球際で負けないこと。そして奪ったボールを相手のいない逆サイドに広げることである。その点、前半は秋田にやや押されながらも、逆サイドを覗く攻撃を何度か作ることができていた。

 多かったのは右サイドから左サイドへの展開。アンカーの神戸や平松を経由して左サイドへボールを送ると、大森は相手の右SB裏に動き出す大島へボールを供給。大島以外にも縦に速い攻撃のときはFWが流れたりと、このスペースを活用しようとする狙いは逆サイドよりも顕著だった。

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 このとき興味深かったのが逆サイドに広げられた秋田がズルズルと下がるのではなく、SBを前に出して素早く縦を消そうとしてきたこと。前述のとおり栃木は空いたスペースにIHが流れてサイドの奥を取りたいのだが、寄せられた大森は精度を削られ、大島もプレス連動したCBとプレスバックしたSBに挟み込まれてしまう場面が目立った。このとき秋田のCBはゴール前を空けることになるのだが、リスクが表面化する前に芽を摘んでしまおうという守備は秋田らしさを感じた。

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 この形からチャンスを演出できたのは、石田のクロスに対してCB-SB間を走り込んだ小堀が頭で合わせたシーンのみ。ワンチャンスをものにした前節のようにはならず。中盤の球際勝負で徐々に秋田に上回られるようになると、左右への散らしも少なくなっていった。

 ここ2試合はセカンドボールへの予測と出足の良さでチームを助けてきた神戸もこの日は「らしくない」プレーが散見。目測誤りや処理ミスからボールを後逸し、中盤を通過された回数も少なくなかった。雪の影響はあっただろうし、アンカーシステムの難しさも大いに影響していたように思う。

 ボールを保持した秋田はサイド奥を取ってからの攻撃が多彩。流れたFWを含めて三角形を作ると、細かいパス交換からサイド攻略を図っていく。フィジカル増し増しの土台にこれが上乗せされるので栃木としては厄介極まりない。ペナルティエリア内には逆SBを含む少なくとも3人がクロスに備えるため、栃木は小堀や大島もエリア内の守備を余儀なくされた。前半30分台はこれが顕著で、栃木はクリアしても矢野が孤立する苦しい状況だった。

 とはいえ秋田も目立ったチャンスを作ることはできず、試合は折り返し。秋田の圧力を感じつつ狙いを示すことができた前半はスコアレスでハーフタイムを迎えた。

 

■連続失点した時間に起こったこと

 後半、風上に立った秋田は前半同様に長いボールと素早いトランジションから敵陣に襲いかかっていく。サイドの奥を目指して次々とボールを入れていく攻撃は明らかに前半からギアを一段階上げたような迫力があった。これに栃木は自陣で息付く暇もなくそのまま失点。49分、左サイドを突破され、畑のクロスから先制点を許した。

 ようやく栃木が落ち着いてボールを持てるようになったのは後半も10分を過ぎた頃。とは言っても、秋田のプレスの圧力が減った訳ではなく、ボールを出した先で囲い込まれるのは立ち上がりと同様だった。ロングボールの競り合いではファールを重ねてしまい、栃木が自陣から脱出できたシーンは数える程度だった。

 イスマイラ、宮崎を投入して巻き返しを図りたい栃木だが、直後の62分にセットプレーの流れから2失点目を献上。70分には同じくCKから3失点目を献上。攻勢を強める秋田はセカンド勝負の球際の強さ、予測、出足の速さ、距離感の全てで栃木を上回り、五分五分のボールには全て秋田の選手の方が先に触れていた印象だった。クロスを上げ切るサイド突破も見せた。

 栃木がこうした状況に陥ったのも新たに入った2トップの人選と防戦一方が相まって、全体の間延び感が修正できないほどになっていたからのように思う。長いボールを前線で待つ2トップとこれ以上失点したくない最終ラインの距離感が広がり、3MFの周りには秋田の選手が密集。これではセカンドボールを拾うことはできない。前線は2人の関係性がイマイチで、後ろからのサポートもないため、それぞれが個々でプレーしていた印象である。

 森、南野、青島を投入してからは多少盛り返すことができたが、3点リードした秋田がペースを落としてきた点は否めないだろう。神戸がボールを左右に散らし、サイド突破からのクロスという本来やりたい形を表現するには時間が遅かった。宮崎のポスト直撃弾などゴールまであと一歩に迫ったシーンもあっただけに、早い時間に立て直すことができれば、最後まで勝敗を争う試合になったように思う。

 試合はこのまま0-3で秋田が勝利。栃木は連勝が2でストップしたが、それ以上に力負けしたダメージが色濃く残る敗戦となった。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
雪で視野が狭まる味方にシンプルなプレーを促すコーチングが何度か聞こえた。GKだけのせいではないが、これだけ失点が続くとポジションも安泰ではなくなってくる。

DF 2 平松 航
3失点目のシーンはファーから飛び込む選手を抑え切れなかった。腕章を巻く選手として勇気を持ってDFラインを押し上げたい。

DF 17 藤谷 匠
アンカー脇の相手への迎撃がこれまでよりも出足鈍く感じた。

DF 33 ラファエル
勢いよく飛び込んでくる相手に対して大きく弾き返すことができなかった。

MF 6 大森 渚生
前線で収まらないため持ち前の攻撃参加を見せられず。1失点目は誤ったポジショニングでフリーでのクロスを許した。

MF 7 石田 凌太郎
1vs1の守備対応で一人気を吐いた。イエローカードの数は減らしたいが、彼の積極的な守備の裏返しでもある。

MF 19 大島 康樹
相手のSB裏を取る場面は何度もあったが、ボランチやCBのスライドに上手く対応された。

MF 24 神戸 康輔
左右への散らし役としてもセカンドボール要員としてももう一声欲しい。秋田の出足の速さに時間を与えてもらえなかった。

MF 38 小堀 空
前節見せたプレスの鋭さは影をひそめ、上空を行き来するボールを後追いした。石田のクロスに合わせたシーンはチームとして狙いとするフィニッシュの形だった。

FW 15 奥田 晃也
相手に飲み込まれ存在感を示せず。奥田の日ではなかった。

FW 29 矢野 貴章
ロングボールをなるべくボランチと競るようにしていたが、ファールが多く攻撃の流れを止めてしまった。

FW 9 イスマイラ
後半AT、ゴール前で青島からマイナスのパスを受けたが、時間をかけてしまいミートできず。調子が良ければダイレクトで振り抜けると思うが。

FW 32 宮崎 鴻
石田のクロスにゴール至近距離で合わせたがポスト直撃。一矢報いたかった。

MF 10 森 俊貴
何度か縦の推進力を見せた。現状を変えるためにも一つ結果を残したい。

FW 42 南野 遥海
これまではゴール前で自分が自分がといった雰囲気だったが、IH起用されたことで周りとの繋がりを意識しているように見えた。

MF 22 青島 太一
短い出場時間ながら何とかしたいという気概を感じた。

 

 

最後に

 後半立ち上がりに喫した1失点目が全てだと思う。準備してきたことを示せた前半を経て、さぁ後半というところで迎えた立ち上がり。ロングボール攻勢を耐え切れずに失点すると、そこから立て直すことができず、交代選手が加わってからはチームのバラバラ感に拍車がかかってしまった。

 一つの失点によってトーンダウンし、失点を重ねてしまう。球際の強度不足や全体の間延び感も含めて、この辺りは全てメンタル面に起因するものだろう。メンタル面を立て直せずに崩れていく姿はチームとしての未熟さを感じるのが正直なところである。ここまでの戦績からこれは相手のレベルどうこうという話ではないし、この波の大きさは今季向き合っていかなければならない課題のように思う。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.3.20 14:00K.O.
栃木SC 0-3 ブラウブリッツ秋田
得点 49分 佐藤 大樹(秋田)
   62分 河野 貴志(秋田)
   71分 喜岡 佳太(秋田)
主審 上田 益也
観客 3002人
会場 ソユースタジアム