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【貫いたからこそ痛感した差】J2 第33節 栃木SC vs 徳島ヴォルティス(●0-2)

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はじめに

 前節京都戦は明本の虎の子の一点を死守し、3試合ぶりに勝利を収めた栃木。6試合負けなし、4試合連続クリーンシートと好調を維持して首位徳島に挑む。自慢のプレッシングが鳴りを潜めた前回対戦のリベンジをかけた一戦となる。

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 8位

 アウェイに乗り込む栃木は中2日の前節から4人を変更。矢野と大﨑は3試合ぶり、ウサンホは5試合ぶりに先発起用された。4試合連続クリーンシート中のDFラインは変わらず。西谷ツインズの兄優希はベンチスタートとなった。

 

徳島ヴォルティス [4-2-3-1] 1位

 ホームの徳島は中3日の前節から4人を変更。最前線に入る河田は6試合ぶりに先発復帰。古巣対戦となる福岡は前回対戦時はベンチ組だったが、ここ最近はレギュラーに定着している印象。西谷ツインズの弟和希は左SHで先発となった。

 

 

前半

中盤を巡る攻防

 前回対戦は0-1で敗戦。徳島の巧みなポジショニングとボール回しに対してプレッシングがハマらず、次第に自陣に引きこもる時間が増えてしまった。強気の姿勢を保てなかったことへの悔しさは試合後にも監督がコメントしているとおりである。

 前回対戦は栃木にとって大きなターニングポイントになったと言えるだろう。それからプレッシングと堅い守備を磨いてきた栃木にとって2ヶ月ぶりの再戦は重要そのもの。攻撃的なスタイルを貫けるか、そして貫いた結果どこまでやれるのか、今の栃木を測る上で試金石となる試合となった。

 

 試合開始から前半飲水タイムまでは栃木がプレッシングから敵陣でボールを引っ掛けてショートカウンターを何度か発動することはできていた。

 徳島は内田と福岡の2CBが大きく開き、その間にGKかボランチの一人が入ってビルドアップを行う。ボールを細かく繋ぎながら栃木を自陣に誘い出し、それにより薄くなった栃木のボランチ脇や河田へのロングパスから前進を図ろうという算段だった。

 間延びしたボランチ脇で受け手になるのは渡井だったが、栃木にとってここで渡井に時間を与えずにボールを狩り取れるかどうかは大きなポイントになっていた。

 前半9分には栃木の左サイドでボールを受ける渡井に対してウサンホがプレス。取り切ることはできなかったがボールを引っ掛けてテンポを遅らせることに成功。

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 続く前半12分には左サイドのハイプレス連動から田代が渡井に対応し切れず、渡井から栃木のDFライン背後にスルーパス。河田が右サイドから仕掛けて徳島のCKとなった。

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 前半17分は栃木のチャンス。ハイプレスから福岡→渡井のパスを敵陣で岩間がカットし、ショートカウンター発動。森が左サイドをドリブルで突破したが低いクロスに味方が合わせることはできなかった。

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 前からコースを制限して、狙いを定めた後ろの選手がボールを回収。そこからのカウンター移行をスムーズに行えていた栃木。上手くかわされてボールを運ばれたとしてもプレスバックを怠らずゴール前を固めることで、ボールは持たずとも試合をある程度コントロールできていたのは確かだった。

 

 決して上手くいってないわけではない徳島だったが、前半飲水タイムに微修正。それまで中盤での受け手役は渡井がほとんどであったが、そこに西谷和希や杉森ら両SHが加わることでCBから直接ボールを引き取る回数が増えていく。

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 栃木にとって両SHと渡井の3人は非常に厄介な存在だった。狭いスペースのなかでも簡単にボールを失わず、最終ラインと頻繁にボールの出し入れをする。上手く前向きでボールを持てれば一気にスピードアップしてゴール前に入ってくるため、栃木としてはなかなか奪いどころを定められなかった。それに伴って徐々に全体のラインが下がり、自陣で構える時間が増えていく栃木であった。

 

 栃木を押し込める土壌が完成した徳島だったが、その後の試合運びもまた巧みだった。ただ押し込むだけでなく、状況を見ながら自陣まで下げることで、構え気味の栃木を無理矢理誘い出すと、間延びした中盤に向かって後ろの選手がドリブル開始。前半33分にCB福岡がスルスルと持ち上がって逆サイドの藤田に開いたシーンはその典型。個人の剥がす力はさることながら、チームとして空いているスペースの共通理解と抑揚を付けた試合運びはさすがであった。

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 徳島のボール支配がさらに高まったことでカウンターチャンスを作れなくなっていった栃木だが、DF陣が体を張った対応でゴールは許さず。試合はスコアレスで折り返しとなった。

 

 

後半

ビハインドが生んだ前傾姿勢

 ハーフタイムに左SBジエゴに変えて岸本を投入した徳島。前半は西谷和希とジエゴが大外とハーフスペースを半分くらいの割合で使っていたが、後半は西谷和希が大外に張ることの方が多かった。代わりにハーフスペースには岸本や渡井、逆サイドから杉森が入ってくることもあり、左サイドから厚みのある攻撃を演出。先制点となった後半8分もこの形からであり、CB柳とSB黒崎の間を埋めるボランチ岩間は侵入する渡井に対応し切れなかった。

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 ビハインドになったことで当然得点を取らなくてはならない栃木。そのためにはマイボールの時間を少しでも確保する必要があるのだが、ロングボールのセカンドを拾えず、拾えても一つ目のパスを繋ぐことができない。守備に切り替わった際の徳島の選手の囲い込む、圧縮するようなプレスが非常に冴え渡っており、中央突破を第一に掲げる栃木は格好の餌食になってしまった。ボール処理に時間のかかった明本に対して西谷和希が激しく寄せて回収し、ロングカウンターを成功させた二点目も速い守備切り替えが起点となっていた。

 

 攻撃の形をなかなか作れない栃木だが、西谷優希、瀬川の入った左サイドからは何かが起きそうな雰囲気は漂っていた。特に広い視野とキック技術に長けた西谷優希にボールが集まるのは必然であり、明本がヘディングで合わせた後半21分のシーンは西谷優希でなければ出てこないクロスであった。

 

 後半の徳島は、前半と比べればCB間にボランチを落とさずにビルドアップを行うことが多かった。GK上福元を交えればある程度繋げるという自信があったのかもしれない。

 それに対して栃木のハイプレスは少々前傾姿勢が強すぎたようにも見えた。徳島のCBに対してSHが出てしまえば結果的にサイド奥が空いてしまう。スペースを埋めるのはボランチになるのだが、プレーエリアがどうしても広くなったことで徳島のビルドアップを塞き止められず、前進を許してしまう場面が目立ってしまった。

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 前傾姿勢を強める栃木に対して、ボールを失わずにスペースを有効活用しながらセーフティにチャンスを演出する徳島。マイボールにしても出し手と受け手の息が合わず、パワープレー要員として攻撃参加した柳の存在も希薄だった。

 

 試合は0-2で終了。栃木は7試合ぶりの敗戦。徳島は今季初となる4連勝を飾った。

 

 

最後に

 ハイプレスから何度かショートカウンターを発動できていた栃木にとって、前半の飲水タイムまでに得点できなかったことは非常に痛かった。プレッシングの圧力を高めていっても相手を慌てさせることができなければ、エラーを引き起こすことも攻撃回数を確保することもできない。増員したビルドアップの出口を塞げなかったところから試合は徳島が主導権を完全に掌握したと言えるだろう。

 ただ、栃木としても前回対戦のように受け身に回って敗れたわけではない。精力的にプレスをかけ続け、どれだけ剥がされても素早い帰陣と体を張った守備で何とか抵抗。今季取り組んでいるベーシックな部分の徹底を惜しみなくぶつけていったが、それでも徳島の壁は高かった。

 やれるだけのことはやったからこそ痛感したチーム力の差。紆余曲折を経てようやく首位に辿り着いた徳島からは学ぶべきことが多くあるだろう。

 

 

試合結果

栃木SC 0-2 徳島ヴォルティス

得点 53分 オウンゴール(徳島)

   75分 垣田裕暉(徳島)

主審 木村博之

観客 2,124人

会場 鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム

 

 

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