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【結果は惜敗、ただ下を向くことはない】J2 第23節 栃木SC vs 横浜FC(●1-2)

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はじめに

 後半戦初戦を終了間際の逆転弾というドラマチックな展開で勝利した栃木。チーム全員で掴んだこの勝利を無駄にしないためにも、前節の試合を最低限に、今後はより熱く激しく闘う姿を見せてほしいところです。この勢いにうまく乗れるかどうか。今節は横浜に乗り込んでのアウェイゲームです。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 21位

 栃木は勝利した山口戦からスタメンを3人入れ替え。夏のウインドーで加入したFWキムヒョンとCH三宅は早速のスタメン、シャドーに入った大島は第20節愛媛戦以来の出場となりました。前節負傷によりピッチを去った榊も2試合連続のスタメン入り。後半途中からプレーした左WBのポジションにスタートから入りました。なお、逆転勝利の立役者となったへニキは諸事情により一試合の出場停止になっています。

 

横浜FC [4-4-2] 9位

 中村俊輔の獲得でメディアの注目と平均年齢をさらに高めた横浜。もうここまで来たら平均年齢でマウントを取れそうな気もしなくはないですが、そのなかでも興味深いのは多くの若手選手が出場機会を伸ばしているところ。下平監督が指揮官に就任してからはよりその傾向が顕著になっており、17歳の斉藤光毅は象徴的な活躍を見せています。栃木にとっては要注意選手の一人。それにしてもチーム内で年齢差が35歳って何なんですかね。。

 スタメンの入れ替えは3人。4試合ぶりに松井大輔がスタメンに名を連ね、チーム内得点王のイバはメンバー外になりました。

 

前半

サイドの選手の立ち位置から押し込みたい横浜

 横浜のボールで試合が始まると、さっそく戸島に向けてロングボールを入れたように、シンプルに2トップの高さとパワーからゴールに向かおうという意図を見せた横浜。下平監督も次のようにコメントしています。

イバが事情で出場できないところがあったのと、皆川(佑介)も入ってきましたので、最初は皆川を1トップで起用しようと考えたのですが、戸島(章)も好調でしたので、栃木のディフェンスラインのことを考えたときに、2トップは面白いかなと思ってそうしました。

 栃木の最終ラインは最長身の森下でも180cm。対する横浜は皆川が186cm、戸島が191cmと、身長において大きなアドバンテージがあったことから、下平監督の選手起用は非常に理にかなっていたと思います。

 2トップの高さという質的優位をフィニッシュの武器にしたい横浜は、クロスを上げるサイドの選手が時間を得られるようなビルドアップを用意していました。

 

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 横浜の基本形は[4-4-2]ですが、ボール保持時はCH(主に田代)が最終ラインに下りて、SBがサイドの高い位置を張り、SHが内側へ絞った[3-1-4-2]のようなシステムを取ります。ポイントは内側に絞るSH。今季ここまで敢えて相手と形を合わせてマッチアップを作り守備時のマークをはっきりさせていた栃木ですが、この試合では3バックを採用したことからここでミスマッチが生じるのは明らかでした。

 横浜の狙いはこのミスマッチからSBに時間とスペースをもたらすことだったと思います。栃木は基本的に大外レーンの相手選手に対してマークを受け持つのはWBになりますが、内側に入っていく横浜SHにどこまで付いていくのかが大きなポイントでした。仮にマンツーマンで最後まで付いていけば横浜はSBがフリーになり、付いていかなければ栃木はSHのマークを味方に受け渡す必要が生じます。マークの受け渡しに乱れが生じれば横浜はよりチャンスに直結しやすいバイタルエリアでプレーすることができます。WBがSHに付いていきマークを受け渡さないままSBの上がりに対してシャドーを下げれば、最終ラインに人数が増えてしまい1トップのキムヒョンが孤立し、攻撃の迫力が削がれてしまいます。サイドの選手の立ち位置で栃木の守備の出方を窺いつつ2トップの優位性を最大化させる。横浜は戦術と選手個々のタスクが整理されており非常に論理的なチームである印象を受けました。

 

栃木の粘り強い対応と先制点

 横浜のCH落としによるポゼッション安定化とサイドを起点とした攻撃に耐える時間の長かった栃木ですが、前半20分を過ぎると徐々に慣れてきたこともあり攻守に良さを出せるようになりました。一番のポイントはボールの取りどころが明確になった点。栃木はファーストプレスをミドルゾーンに設定し5-4のラインを狭くコンパクトにすることで、ライン間のSHを自由にさせない守備を徹底しました。サイドからのクロスに対しては3CBが厳しく寄せることで身長のディスアドバンテージを最小化。数的優位性のほかCHの献身的なプレスバックも助かって、ボールを握られてもピンチに至るシーンはほとんどありませんでした。

 ボールを回収すると、素早い切り替えからまずは1トップのキムヒョンを目指します。サイドで相手を抜き切る前であってもクロスを入れていたところはチームで狙いが共有されていたことを窺えました。後方からのロングボールに対してもとにかく競り勝つキムヒョンのパワーとフィジカルは今季の栃木になかった武器であり、孤立しがちな1トップでも一人気を吐くプレーを見せてくれた点は非常に頼もしさを感じました。先制点となるPK奪取もキムヒョンのポストプレーを起点としたものでした。

 栃木はリードしてからも攻め筋を変えずにペースを維持。横浜はポゼッションできてもなかなかレアンドロドミンゲスや斉藤光毅らSHがライン間で効果的にプレーできず、2トップ一辺倒な攻撃に終始した印象でした。前半はこのまま栃木のPKによる1-0のリードで折り返し。

 

後半

いつもの形に変更した横浜

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 前半をスッキリしないまま終えた横浜は、後半開始からシステムを[4-2-3-1]に変更。前半は右サイドであまりボールに絡めなかったレアンドロドミンゲスでしたが、「いつもの」トップ下に入ったことで攻撃が活性化。神出鬼没にライン間でプレーする回数が増えたことにより栃木はなかなか捕まえ切れなくなると、後半5分にFKを直接決められ同点ゴールを許します。

 その後もレアンドロドミンゲスを中心にボールを握りながら攻め立てる横浜。システム変更により左SHに移った戸島も右サイドでの崩しの際はゴール前でターゲットになるなど迫力ある攻撃を続けると、栃木はなかなか最終ラインを上げられない展開に。自陣に磔にされた状態の栃木に対して跳ね返されたセカンドボールの回収率で上回る横浜は、CHの下りる回数も減り、松井も前半より積極的に前目でボールを捌くようになりました。

 栃木は苦しい時間帯が続きましたが決して攻撃を行えないわけではありませんでした。後半1分には左サイドで榊が相手ボールをインターセプトすると三宅と大﨑を経由して逆サイドの浜下へ展開してのカウンター。後半11分にはポジティブトランジションから浜下のカウンターに繋げるなど、前節と同様の形から一瞬のカウンターの鋭さは見せました。ただ、どちらもクロスが相手に当たってしまい、特に後者はカウンター返しから藤原がファールで止めてイエローカードを貰うなど、攻撃を完結させられないクオリティの低さを露呈。チームとして意図しない形でボールをロストすれば苦しいのは明らかであり、お世辞にも堅固とは言えない守備陣は拙攻によりさらに横浜の攻撃に晒されることとなりました。

 

一瞬の隙を突かれた決勝点

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 栃木は後半24分にキムヒョンに変えて西谷和希を投入すると、さっそくその西谷和希が前プレの起点となる積極的なプレーを見せました。西谷和希がCBの右側に下りていたCH田代へプレッシングを行うと、田代はGK南へバックパス。1トップに移った大島がそのままGKへプレス、その他の選手も対面の選手に対して1vs1でプレスをかけることにより、最終的には左CBのヨンアピンにクリアせざるを得ない状況を作ることができました。

 しかし問題はそのクリアボールへの対処。クリアに対して最初に反応したのは右CBの菅でしたが、菅の対応はボールを味方に繋ぐわけでも、切るわけでもない中途半端な対応になってしまいました。戻りながらの対応のため難しい状況だったとは思いますが、そのセカンドボールを拾った袴田からノープレッシャーの松井に渡ったことで失点を招いたことを考えれば、結果論ではありますが、もう少し慎重に、はっきりとしたプレーが求められたはずです。ゴールシーンの斉藤のシュートはスーパーでGKユヒョンはノーチャンスだったと思います。しかしながら、前と後ろの選手の狙いの齟齬やプレー判断など、失点を許すまでの要因のほとんどが栃木にあったことを考えれば、自滅とも言える非常にもったいないシーンとなってしまいました。田坂監督がよく語る「際」とはこういう部分のところを指すのではないでしょうか。逆に横浜は一瞬の隙を逃さないベテランの嗅覚と、連勝中という空気感、そしてブレイク寸前の若手選手が生み出す勢いがあれば、栃木との「際」を制するには十分だったと言えました。

 

打開策を見い出せなかった栃木

 ビハインドになってからの栃木は多少前プレの圧力を高めたように見えましたが、横浜はCHの最終ラインへのサポートなどで簡単にプレスを回避。セカンドボールの回収率でも分があるのは未だホームチームだったため試合のペースはあまり変わりませんでした。

 後半40分に大﨑に変わって古巣対戦となる大黒が投入されましたが、押し下げられて孤立した状況ではまともにボールタッチもできず。終盤には恒例となった森下のパワープレーや、右CB菅から左WB久富へのダイナミックな展開から西谷和希がシュートを放つシーンもありましたが、ゴールネットを揺らすには至らず。栃木は最後まで横浜ゴールに迫るための打開策を見い出すことができず、痛恨の逆転負けを喫しました。

 

最後に

 ハーフタイムに修正を施し見事逆転勝利を収めた横浜。派手なゴールシーンばかりが目立った印象ですが、攻守において栃木を上回る綿密なプランと修正力は、後半の得点力の高さと逆転勝利に妥当性を裏付けるものでした。また2つの得点に新加入の皆川が絡んでいたという点も横浜にとっては実りのある試合になったのではないでしょうか。

 一方栃木に目を向ければ、失点シーンは自分たちのミスから招いたとはいえ、あれだけのスーパーゴールが決まってしまうとやはり厳しいところです。あのレベルのゴールはJ2ではなかなか見られないでしょう。ただ、勢いのあるチームに一瞬の隙を与えてしまえば十分に起こりうることですし、それ以外の場面でそれほどチャンスを作らせなかったことを考えれば、高い授業料を払ったと割り切って前を向くことの方が大事なのではと思います。シーズンはまだ折り返し地点ですし、できたことできなかったことを整理して、できるだけ早いうちに浮上のきっかけを掴んでほしいと思います。

 次の対戦相手は柏レイソル。なんと現在5連勝中で絶好調。それにしても最近の対戦相手は好調なチームが多いような。。難しい試合になることが予想されますが、アウェイで戦ったときのように堅守を軸にしつつ、ホームの利を活かしてどんな形からでもいいので得点を狙う姿勢を見せてほしいと思います。

 

おまけ

 私は見てしまった。ありがちだけどやってはいけないミスを。。

 

試合結果

J2 第23節 栃木SC 1-2 横浜FC

得点 30’大﨑(栃木)、50’レアンドロドミンゲス(横浜)、71’斉藤(横浜)

主審 三上 正一郎

観客 4,733人

会場 ニッパツ三ツ沢球技場

 

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