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【勝ち点1以上の価値】J2 第9節 栃木SC vs 柏レイソル(△0-0)

はじめに

前節京都戦は幸先良く先制したものの、ミスなどから痛恨の逆転負けを喫した栃木SC。今節の対戦相手はJ2では並外れた戦力を誇る柏レイソル。優勝候補の再筆頭と目されながらもいまいち波に乗り切れないホームチームに対して、栃木はどれだけ粘り強く戦うことができるか。ともにカテゴリーを変えながら9年振りの再開となった試合は、アウェイ三協フロンテア柏スタジアムにて行われました。

 

 

スタメン

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連敗中の栃木は相手に合わせフォーメーションを4バックに変更。前節からは久富に代わって怪我から復帰した森下、CHに岩間、トップ下に寺田が入りました。肉離れ明けの浜下は7試合ぶりにメンバー入りとなりました。

 

前節は琉球に引き分け(△1-1)、ここ4試合を1勝1分2敗と開幕4連勝の勢いが鳴りをひそめている柏。水曜日に消化したルヴァンカップ仙台戦ではサブメンバー主体で戦っただけに、主力組のコンディションに問題はないでしょう。4試合連続で同じスタメンとなりました。

 

前半

噛み合わせと個の勝負

柏の狙いは至ってシンプルで、栃木の守備ブロックができる前に攻めきろう!というものでした。そのための手段がいち早く栃木のCBとGKの間にボールを供給すること。ボールを回収したら第一に前線へというプランのもと、中盤を越えてゴールへ一直線に向かう柏、跳ね返す栃木という大勢となりました。

このプランを実行できたのは、言うまでもなく前線にハイクオリティな外国籍選手がいたから。なかでも特筆すべきは1トップに入ったオルンガ。今季すでに3ゴールを上げているケニア出身のストライカーは、193cmの長身に加え、長い手足を生かしたしなやかなポストプレーを武器に、栃木のCBとの競り合いも意に介せず。圧倒的な個の力で縦に早い柏の攻撃を確立させていました。

そしてもう一人挙げるとすればクリスティアーノ。栃木のサポーターにとっては彼の凄みは説明不要でしょう。在籍していたのが2013年なので、あれからもう6年も経ちますね。雨の神戸戦で決めたあの同点弾は今でも鮮明に覚えています。

思い出はさておき、彼の特徴はやはりシュートの意識とそのパワー。日立台のゴールとスタンドの近さゆえ、選手だけでなくサポーターにとっても脅威になり得るシュートは、栃木時代からさらにパワーアップしたように見えました。荒削りだった栃木時代から年齢も30代に入り、チームリーダーとして柏の攻撃を牽引する存在です。

 

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柏の強力攻撃陣への栃木の対応は図のとおり。

栃木はこれまでマッチアップをベースに、マークする相手が明確になるよう相手とフォーメーションを合わせて守備を行ってきました。この試合も同様にフォーメーションを[4-4-2]にセットして守備をします。それに対して柏のフォーメーションは[4-2-3-1]。トップ下のクリスティアーノは攻撃時にフリーロールとなり、ボールサイドに寄って数的優位を作ったり、SBが高い位置を取ったときはペナルティエリア内に構えてクロスボールに備えたりと、前線を縦横無尽に動き回りながら栃木ゴールをうかがっていました。

そのためクリスティアーノに対して、マッチアップの原則がなかなかハマらない栃木。CBが行き過ぎると背後のスペースが空き、また背後ではオルンガvs一方のCBが1vs1の状況となってしまいます。CHが見た場合は動き回るクリスティアーノに付きすぎるとバイタルエリアを空けることになります。そのため、クリスティアーノに対してはへニキを中心に状況に応じて最も近い選手がマンツーマンで対応しました。ゾーンの中のマンツーマンとも言えるでしょう。そこに他のMFのプレスバックを合わせることで、クリスティアーノを囲い込んでボールを回収することができていました。

 

前述したとおり栃木は守備時、トップ下の寺田が大黒と同じ高さで一列目を作り、[4-4-2]の形でブロックを作ります。そして図のように柏がDFラインでボールを持つとき、背後の2CHを消しながらプレスを行うことでサイドにボールを誘導しようとします。SBに渡ったら栃木はSHが厳しくプレスに行き、そこに他の選手も連動してパスコースを規制しながら、回収できたらショートカウンターを第一に守備から攻撃をプランニングしていました。まさに良い守備から良い攻撃です。

ただ柏はそのような栃木の狙いとは裏腹、縦に早くボールを供給したため栃木はプレスをかけきれず。最前線のオルンガに対してはCBの二人がチャレンジ&カバーで危険な場面を作らせずに対応。攻め続ける柏に対して、最後の部分をやらせないで攻めさせているという感覚があったかもしれませんが、前半はなかなか攻撃の形を作れないまま、0-0のスコアレスで折り返すこととなりました。

 

 

後半

悪手だったのはクリスティアーノの配置変更

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ホームでは何としてでも勝ち点3を落としたくない柏は、後半に入ると一気に攻撃のギアを上げました。

前半同様オルンガへのロングボールを行いつつ、そこに合わせてピッチを幅広く使った大きな展開も見せるようになり、主に両SBが栃木の深い位置まで侵入する形は前半と比較しても特に増えていました。SBが高い位置を取るとそれに合わせてSHが図のように内側に入ります。栃木はマッチアップを維持したままだとハーフスペースに入るSHに対してはSBが中へ絞ることとなり、大外が空いてしまいます。そのため栃木はSHが自陣深い位置までマークに戻ることが多くなり、その結果攻撃に転じた後のゴールまでの距離が非常に遠くなったことからなかなか攻めきれず。後半序盤はギアを一段階上げた柏の攻撃にひたすら耐える展開となり、試合においてこの時間が最も栃木にとって苦しい時間となりました。

 

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それでもゴールを奪うまでには至らない柏。後半20分にガブリエルに代えて江坂をトップ下に投入し、クリスティアーノを右サイドに移します。柏のネルシーニョ監督は試合後、「江坂、(その後投入した)菊池に関しては非常に技術の高い選手なので、相手の空いたスペースを足下でつないでビルドアップしていく、個人の力で局面を打開する、攻撃にリズムを生むために投入した」と語るように、栃木のライン間を地上戦で突いていこうという狙いを持っていました。

しかし実際はどうだったか。柏のCBからCHへのパスコースは前半同様ある程度制限されていたためロングボールが多く。それでもオルンガがポストプレーで落としたボールを拾えれば一気にライン間侵入もできましたが、ここは栃木が最も目を光らせていたところ。2CBのチャレンジ&カバー、CHのプレスバックは非常にインテンシティが高く、中央にスペースが生じず柏は交代選手がライン間でボールを持つことができていませんでした。

それ以上に個人的に気になったのがクリスティアーノの右サイド起用。前半から後半序盤にかけては前線のフリーマンのようなプレーを見せていたクリスティアーノでしたが、右サイドで起用されると主にサイドライン一杯に張ったプレーが多くなりました。

するとどうなるか。サイドに張ったクリスティアーノはボールを持つと比較的早めにクロスボールを供給します。そのため図のように右SBの小池はなかなかオーバーラップして前線に厚みを作る機会が減ってしまいました。縦に行くにもクリスティアーノがいる、内側に行くにもすぐにクロスを上げられてしまう、ので上がるスペースと時間がないという状況です。

後半序盤、柏に最もゴールの匂いがした時間帯は、両SBが高い位置を取り、それによるSHの位置取りが合わさったために生まれたシチュエーションを作れていたときでした。しかしクリスティアーノの右サイド起用後はなかなか押し込みきれず。もちろん中央で構えるオルンガに対するクリスティアーノの弾丸クロスは脅威にはなっていましたが、それ一辺倒になった部分も少なからずあったように見えました。後半36分にオルンガに代わって菊池がトップ下、江坂がトップに入ってからは中央からの前進も見せましたが、攻めきれずにタイムアップ。0-0のスコアレスドローに終わり、柏はホームで勝ち点1止まり、栃木はアウェイで貴重な勝ち点1と柏の猛攻を耐え切った守備の自信を持ち帰ることができました。

 

 

最後に

栃木にとっては攻撃の回数が少なく、耐える時間が増える非常に厳しい試合でした。ただこの試合ではチーム全体で守備意識が共有されているように見えました。具体的にはマッチアップに拘り過ぎないゾーン的な要素や、しっかりペナルティの幅に蓋をして中央を締める守り方、そしてチャレンジ&カバー。サイドではこれまでどおりマッチアップで負けない、を軸に結果的に成し遂げた勝ち点1は数字以上の価値を生むでしょう。

次節からはホーム連戦。まずは長崎戦です。長崎は前節岐阜を4得点で下し勢いを取り戻しつつあります。降格組が続くタフな日程ではありますが、何としてでもホームで初勝利を上げたい。きっと出来るはず。柏戦で得た自信を長崎戦で発揮し、良い結果を掴んでほしいと思います。

 

 

試合結果

J2 第9節 栃木SC 0-0 柏レイソル

主審 吉田 哲郎

会場 三協フロンテア柏スタジアム

観客 7,498人

 

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