栃木SCのことをより考えるブログ

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【目を向けるべきはジャッジではない】J3 第21節 栃木SC vs SC相模原

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 14位

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 前節はアウェイで讃岐と対戦し、1-4で敗戦。序盤に中野克哉の移籍後初ゴールで先制したものの、その後は不安定な試合運びを露呈し、4失点で完敗した。3試合ぶりのホーム戦となる今節はリバウンドメンタリティが試される一戦となる。前節からのスタメンの変更は3人。福森健太は6試合ぶり、青島太一は3試合ぶりの先発入り。今週徳島から加入した内田航平はさっそくの先発起用となった。

 

 

SC相模原 3-1-4-2 16位

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 前節福島戦は攻撃力のある相手に対して多くの時間で押し込んだが、0-1で敗戦。5試合ぶりの黒星で順位を16位に下げた。一方、天皇杯ではJ1川崎を相手に120分+PK戦の末ジャイアントキリングを達成。中3日でのリーグ戦とはいえ勢いは十分にあるだろう。前節からのスタメンの変更は5人。ここまでフルタイムで出場していた島川俊郎は累積により出場停止。代わって中盤には前田泰良が初先発を飾った。

 

 

▼前回対戦のマッチレビュー

 

 

マッチレビュー

▼引いて構えるきっかけを与えた1失点目

 前回対戦では開始3分の失点で均衡が破れたこのカード。入りの時間帯での失点が続いている栃木にとっては警戒を強めて臨みたいところだが、この日は逆に最高のスタートを切ることに成功する。

 開始37秒、セカンドボールの処理で相手DFを出し抜いた五十嵐が左サイドからクロスを入れると、こぼれ球に反応したのは福森。左で作って右で仕留める形から幸先よく先制点を奪うことに成功した。

 その後も試合の主導権を握ったのはホームの栃木。相模原としてはしっかり前からプレスをかけるのがこの日のプランだったのだろう。右IH前田が前に寄せることで空いたスペースを使い、上手くボールを前に進めることができていた。

 とりわけ早い時間帯から青島がライン間に走り込むアクションを見せるなど、相模原のプレスに応じたスペースの使い方はよく整理されていた。狭いゾーンでは五十嵐が技術の高さを発揮。ミスマッチを突くことでスムーズに背後を取り、攻め切れずとも苦し紛れのクリアを強いることができていた。

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 対する相模原も自分たちの攻撃ではミスマッチを活用しようという狙いが窺えた。相模原のビルドアップはWBを押し上げて、左右のIHがサイドに流れてボールを引き出す3-3-4のような形が基本路線。これで栃木のWBを前に誘い出し、CB→WBのロングフィードで背後を取りにいく。栃木の左右CBがこれをカバーしようとすればフルタードへのマークが薄くなり、またWBの出足が弱まればIHが前を向きやすくなるというイメージだっただろう。

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 ただ、これに対しての栃木の守備は非常に統率が取れていた。外に広がるIHにはシャドーが直接のパスコースを切りつつ、ボランチかWBが分担しながら寄せることで受け手を押さえていく。これにより中盤に預けられない相模原は攻め手がロングボール中心に。ミスマッチによる懸念はあった栃木だったが、意図的に蹴らせることができていたため余裕をもって対応することができていた。

 しかし、思わぬところから失点を許してしまう。16分、岩﨑のバックパスが大森に向けてなのかGK川田に向けてなのか、方向・強さから微妙に判断しづらいものになると、そこを狙われて与えたCKから失点。ゾーンDFを越えた先で合わせられてしまい、GK川田も味方と重なりパンチングできなかった。ミスを突いて一気に出力を上げた相模原に試合を振り出しに戻さてしまった。

 

 ミスから失点した栃木だったが、その後は気を取り直して攻勢を強めていく。序盤は右IH前田を引き出してできたスペースを使いながら前進していたが、次第に前田のプレスが弱まると、川名の下りる動きを軸に今度は右WB西久保を引き出した背後を使うように攻め手をシフト。

 25分には川名が生み出したスペースに岩﨑→五十嵐のパスが通ると、五十嵐が寄せてくる相手DFを上手く剥がしてクロスを供給。マイナス方向へのクロスに中野と藤原が反応すると、すんでのところでクリアされてしまったが、決定機未遂ともいえる惜しい場面を作ることができた。

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 相模原としては前半の飲水タイム以降、前田のプレス位置を下げることで栃木の左サイド攻勢を抑えようという狙いだった。ベンチ側のサイドということもあり、より気になったというところだろう。早めに手を打ってきていた。

 ただ、前述した25分のシーンに留まらず、栃木はその思惑などお構いなしに左サイドからの攻撃を量産。川名の引き付ける動きを軸にしつつ、岩﨑のオーバーラップや青島の背後への動き出し、時には中野が左サイドに絡むなど、相手が構えて動かないなら自分たちがアクションを起こそうという構えだった。

 前半の飲水タイム以降、相模原がはじめてボールを持つことができたのは37分を回ったころ。それまでは栃木が終始敵陣でプレー。相模原のカウンターの芽を摘みつつ、武器の左サイドから再三攻め続けたという展開を見れば、ある意味得点は時間の問題だったといえるだろう。しかし、スコアは動かなかった。

 飲水タイムを迎えるまでの時間は明らかに栃木が主導権を握ることができていた。相模原が引いて構える守備にシフトしていなければ、2点3点と奪う展開になる可能性は十分あっただろう。相模原としても仮にリードされる時間が続けば、後ろに引く選択肢は取りにくかったはずである。それだけに相模原にその選択肢を是とさせてしまった失点は大きく、それを自分たちのペースの時間帯にミスで与えてしまったことは何よりも痛恨だった。

 

 

▼攻め切れず、差し込まれる

 後半も前半同様に5-3-2で引いて構える相模原に対して栃木がボールを支配して押し込む展開で進んでいく。相模原は入りの時間帯こそ両IH徳永・前田がCBまで寄せてきていたが、これがハマらないと見るや50分以降は自陣で構えるようになっていった。

 相模原の狙いは明らかだった。引いて構えて自陣で回収し、カウンター局面ではフルタードへのロングボールから栃木の最終ラインの背後を突く。スコアがイーブンな状況で攻められながらもセーフティーに守れていることを考えれば無理のない現実的なプランだった。

 やはり左サイドから攻め切れない栃木は高い位置でボールを失うと、52分にはロングボールからフルタードに背後に抜け出されてあわやというシーンを作られてしまう。ここは大森の決死の守備で免れたが、57分にも同じような流れからフルタードに抜け出されてしまうなど、攻め込んだ際のリスク管理が疎かになっていた。前節のレビューでも触れた点だが、3バック相互のカバーリングの意識が希薄だった。

 それでもボールを支配して敵陣でプレーできていた分、主導権は栃木にあったといっていいだろう。左サイドに呼応するように徐々に右サイドも機能してくると、内田の攻撃参加や福森からの際どいクロスも見られるように。弾かれても青島が出足よく回収することで攻撃の時間を増やすことができていた。

 ただ、この攻勢も60分を過ぎてからは潮目が変わったように見えた。攻めあぐねる栃木が精度の上がらない攻撃を繰り返すたびに、相模原が鋭い縦パスから前方向のベクトルを強めていく。61分から62分にかけてのセットプレーも含めた波状攻撃を終えて以降、栃木の勢いはそれまでと比べて目減りした印象だった。

 右サイドの2枚替えが機能しなかったことも地味に痛かった。それまでの福森と中野に比べてオタボーと森璃太は使われてナンボの選手。そもそもこの日の栃木はWBを押し上げてシャドーが手前で引き取るようにしていたが、オタボーにその役割を任せるのは強みを削いでしまうように感じた。福森とコンビを継続するならまだしも、である。それなら右WBに高橋を入れてアバウトに左サイドからクロスを入れてしまうのもアリだったように思う。いずれにしても右サイドのチグハグ感は否めなかった。

 そうした栃木を尻目に相模原は決定的な攻撃を繰り出していく。73分にはロングボールのセカンドを回収した武藤が途中出場の髙木に預けると、髙木のシュートはわずか枠右へ。直前にも武藤にシュートを許しており、栃木の最終ラインは背後を突かれるだけでなく、手前の選手を潰しにいくアクションも乏しかった。

 78分にはトップの加藤への縦パスの落としを受けた左WB杉本がサイドを抜け出すと、GK-DF間のラストパスに合わせた右WB河野のシュートはわずかに枠左へ。左サイドに杉本を投入してからの相模原はなかなか機能しない栃木の右サイドを押し返すようにこのサイドで優位に立ち、右WBの河野がゴール前に顔を出す回数は明らかに増えていた。

 終盤は手っ取り早く前にボールを集めていく両チーム。80分には、藤原が敵陣で引っかけて太田からのリターンを受けると、左のポケットに侵入してシュートを放つもGKセーブ。相模原も2トップにボールを当てつつ、中盤での細かいパス交換から左の杉本→右の河野でチャンスを作っていく。

 そして、引き分け濃厚に見えた最終盤に思ってもいない形から試合は決する。90+3分、岩﨑のクリアが相手に当たってこぼれると、被ショートカウンターのような形に。左WB杉本にクロスを上げられると、ファーに詰めた髙木のシュートは明らかにゴールラインを割っていたが、これを加藤が折り返すと中で合わせた常田にネットを揺らされた。4人の審判団は誰一人としてゴールラインを割っていたことを確認できておらず、インプレーでゴールという判定。これが決勝点となった。

 試合はこのまま1-2で終了。2試合連続で先制しながらも逆転負けを喫した栃木は、これで今季初の3連敗。順位を17位まで下げ、昇格に向けて土俵際まで追い込まれることとなった。

 

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
最終ラインの顔触れが試合ごとに変わる難しさはあるにせよ、コーチングも含めて川田がはっきりプレー出来れば防げた失点も少なくない。

DF 3 大森 博
1失点目は前向きの川田に蹴り出してほしかったのだろう。攻めている時のリスク管理が危うい場面が多く、逆にズルズルとラインを下げてしまう場面も気になった。

DF 25 岩﨑 博
相手の守備の状況を見極めてパスを供給し、左サイドからの攻撃の起点となった。1失点目はバックパスが中途半端に、2失点目はロングボールが相手に当たってしまい、失点のきっかけを与えてしまった。

DF 88 内田 航平
最終ラインから身振り手振りで指示を出して後ろからゲームメイクした。噛み合わせ的にもう少し攻撃参加できたようにも思うが、ここからだろう。

MF 8 福森 健太
逆サイドからのクロスに対してゴール前にしっかり詰めてゴールを決めた。深い位置を取ってもやり切れない場面が多く、今後は内田・中野との連携面を高めていきたい。

MF 11 青島 太一
状況に応じて最終ラインをサポートしたり、背後に飛び出したりとピッチを縦横無尽に駆け抜けた。押し込んだ展開での相手のクリアに対する予測が冴えており、青島のプレーによって攻撃の時間を長く増やすことができた。

MF 18 川名 連介
川名自身が深いエリアで仕掛ける場面は少なかったが、味方にスペースを開けたり、シンプルに預けたりと左サイド攻勢のアクセントとなった。対面の西久保とのマッチアップは負けておらず、対人守備の向上が窺えた。

MF 77 藤原 健介
キックのフィーリングがなかなか合わず、セットプレーでも脅威になれなかった。機を見てゴール前に入り込む積極性を見せた。

FW 10 五十嵐 太陽
この日も攻撃陣を牽引し、松本戦や讃岐戦でも見せた力強いドリブルから先制点を演出した。狭いエリアでもボールタッチが乱れず、ボディフェイントにもキレがあった。

FW 32 太田 龍之介
長いボールにある程度競り勝てていたが、落としを味方に届けることができなかった。相手の堅い守備陣を前に起点作りに終わってしまった。

FW 81 中野 克哉
左サイドとのバランスの問題もあるが、もう少し前からスイッチを入れるようにプレスをかけてほしい。左から作る決定機には顔を出せているだけに中野に懸かる期待は大きい。

MF 5 森 璃太
交代で入った対面の左WBに押し込まれてしまい、周りの味方も右サイドには預けにくい側面はあったように思う。

FW 80 オタボー ケネス
下りてボールを引き取るにしても背後のスペースに引き出すにしても、もう少しはっきりとアクションしないとボールは回ってこない。

MF 47 吉野 陽翔
投入直後にCKをニアで合わせたが、それ以外は見せ場を作れず。チームが前がかりになる中で中盤のフィルター役を担うタスクだったか。

FW 9 菅原 龍之助
後半アディショナルタイムに投入されてもさすがに結果は残せない。

FW 23 星野 創輝
後半アディショナルタイムに投入されてもさすがに結果は残せない。

 

 

 

最後に

 試合の結果を大きく左右した最後のジャッジにどうしても目がいってしまうが、チームとして前を向いて強くなっていくには相手に怖さを与えられない攻撃とアラートさを欠いた守備対応に矢印を向けるべきである。

 前者について、攻撃に確実性を求めて取り組んできたものの片鱗は窺えるものの、それがなかなか花開かないのが現状だ。未だに複数得点が2回しかなく、得点力不足に出口が見えない状態が続いている。今になってそれをかなぐり捨てる必要はないにしても、相手にとって嫌がることから逆算して戦う必要があるのではないか?というが率直な感想である。

 後者はチームのアイデンティティを考えれば前者よりも深刻だろう。最終ラインのミスからゴールを許す試合がここのところ多く、この日も1失点目はそれに分類されるものだった。コンディション不良もあるのか試合ごとに変わる最終ラインの人選も連携面に不安を生み出しており、失点に歯止めが効いていない。

 よって、チーム状況はあまりよろしくない。しかし、それを大きく好転させるきっかけがすぐ目の前に迫っている。昇格に向けて後がないチームにとって次の試合は絶対に落としてはならない。背水の陣で首位栃木シティとのダービーマッチに挑む。

 

 

試合結果・ハイライト

2025.7.20 19:00K.O.

J3リーグ 第21節

栃木SC 1-2 SC相模原

得点 1分 福森 健太(栃木)

   16分 西久保 駿介(相模原)

   90+3分 常田 克人(相模原)

主審 岡 宏道

観客 4896人

会場 カンセキスタジアムとちぎ