栃木SCのことをより考えるブログ

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【自分たちに矢印を向けなければならない】J3 第20節 栃木SC vs カマタマーレ讃岐

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 11位

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 前節はアウェイで鹿児島と対戦し、0-1で敗戦。前半にミスから先制を許すと、その後は多くの時間でペースを握ったが、最後まで1点が遠かった。遠方アウェイ連戦となる今節で2試合ぶりの勝利を目指す。前節からのスタメンの変更は2人。最終ラインの中央には平松に代わって高嶋が5試合ぶり、ボランチには吉野に代わって佐藤祥が第2節以来のスタメンとなった。ベンチの矢野は4試合ぶりのメンバー入りとなる。

 

 

カマタマーレ讃岐 3-4-2-1 20位

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 前節はアウェイで鳥取に敗れ、これで3連敗。前半戦を終えて4勝5分10敗の最下位となり、これを受けて米山篤志監督の解任が発表された。代わって指揮官に就任したのはJ3での指揮経験が豊富な金鍾成監督。攻撃的スタイルを志向する監督のもと、ここまで得点力不足に喘ぐチームをどう立て直すか注目が集まる。前節からのスタメンの変更は5人。FC大阪から加入した林田、大分から加入した木許は讃岐デビューとなった。

 

 

▼前回対戦のマッチレビュー

 

 

マッチレビュー

▼劣勢の中、ホットラインから先制に成功

 栃木はこの試合の前日に今シーズンの目標を「J3優勝によるJ2自動昇格」から「プレーオフ圏内(6位以内)への進出と、そこからのJ2昇格」に修正。ボトムハーフで折り返した前半戦の結果を受けて、目標を再設定することとなった。ただ、いずれにしても求められるのは目の前の試合に集中するということに変わりない。一戦必勝で臨む後半戦初戦である。

 ただ、それとは裏腹にこの日も不安定な入りを見せてしまう。立ち上がり、長いボールでシンプルに敵陣を取りにいく讃岐に対して最初のプレーで藤原が球際で上回られると、今度は自陣から脱出しようとしたところでコントロールミス。讃岐の左WB藤井、左CB附木に立て続けにサイド攻撃を許し、ゴール前での守備を強いられる苦しい幕開けとなった。

 新監督の初陣となった讃岐としては、多少なりとも「いける!」という前向きなメンタルを持つには十分な入りになったといえるだろう。初手で栃木を押し込めたことで、まずは自分たちの準備してきたビルドアップを表現していく。

 讃岐はビルドアップ時に川西が下りて中盤に厚みをもたらす形を徹底してい。栃木の2ボランチに対して前後に5人の選手を配置することで中盤でボールを支配する狙いだろう。後ろは状況に応じてボランチが下りたり、下りなかったり。このときWBは高い位置を取っており、5バック化した栃木のWBとシャドーとの間に出来たスペースを攻撃の入口としていた。

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 序盤に一度、中野が左CB附木からボールを奪ってカウンターに繋げたシーンがあったが、前で奪えたのはこれくらい。3枚回しと4枚回しを使い分ける讃岐に対して栃木は前からのプレスがハマらず、下りる川西によって中盤でも数的不利を強いられ、時間の経過とともに讃岐のビルドアップを抑えられなくなっていった。

 ただ、そうした流れとは関係なく先に試合を動かしたのは栃木だった。18分、左サイドで五十嵐→川名→五十嵐と繋ぐと、五十嵐をマークしていた右CB林田を剥がすことに成功。これで最終ラインが一つずつズレると、ニアに走り込んだ太田の背後で中野がフリーになることができた。コンビネーションからミラーゲームを出し抜いた見事な先制点だった。

 

 

▼誘導も限定も不十分

 讃岐との前回対戦ぶりに先制点を挙げた栃木だったが、リードも束の間、24分に同点に追い付かれてしまう。讃岐のCB井林からのロングフィードに抜け出したのはトップの川西。オフサイドラインをギリギリ抜け出すと、GK川田の頭上を浮かす巧みなシュートでゴールに流し込まれた。栃木としては最終ラインにプレスがかかり切らない中でラインコントロールを見誤る痛恨の失点だった。

 この失点にも見られたように、この日の栃木の守備は全体としてチグハグ感が否めなかった。前線のプレスでボールを奪えないにしても、ビルドアップの方向を限定できれば誘導した先のサイドで狙いを定めることができるが、肝心の前線でプレスのスイッチが入らない。讃岐にボールを握られるうちに前線3枚の距離感が広がり、真ん中を通されてしまう場面が目立ってしまった。

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 これに関してはミラーゲームの影響も大きかっただろう。讃岐が4枚回しで左右CBを外側に広げると、対面の相手を意識する栃木はシャドーが外側に開くことに。これで最終ラインからボランチへのコースが開通する。受け手となるボランチには栃木もボランチが寄せたいところだが、川西らが気になり十分に前に出ることができない。失点の影響で最終ラインも後ろに重く、左右CBによる迎撃も見られなかった。

 前からの守備を機能させられないため、サイドに誘導することも攻撃の方向を限定することもまるで出来ていなかった。よって、奪いどころを定めることができず、後ろの選手は対応がリアクションに。チームとしての繋がりを欠き、ただただ全体か間延びしてしまった。31分には中央を抜け出されて決定機を作られたシーンがあったが、チームとして守備が上手くいっていないことを象徴するものだった。

 ただ、これも35分を過ぎたあたりには改善の兆しが窺えた。ちょうど敵陣でスローインを獲得し、高嶋が落ち着かせるように時間をかけてロングスローを入れた後の時間帯である。前線3枚の距離感を近くすることでボールをサイドに誘導し、右サイドは佐藤祥が広い守備範囲でスペースをカバーし、左サイドは川名が縦スライドで対応。少しずつ守備の歯車が噛み合い始めた。

 徐々に攻守において重心を回復していくと、先制点をもたらした左サイドのユニットを中心に攻撃を繰り出せるように。44分には決定機。川名→五十嵐→川名で左サイドを押し込むと、手前で受けた岩﨑がクロスを供給。相手DFのクリアが太田の元にこぼれ、太田は右足でこれを振り抜いたが、GKの好セーブによって阻まれた。

 前半はこのまま1-1で終了。栃木が追い上げの雰囲気を漂わせたところでハーフタイムを迎えた。

 

 

▼トライに根差した失点

 まずまずの手応えとともに前半を終えた栃木だったが、後半の入りに立て続けに失点を許してしまう。47分、スローインを受けた相手選手に対してボランチ2人が同時に寄せて一気に剥がされると、そのまま持ち運ばれてミドルシュートで被弾。53分には、ビルドアップのミスから与えたCKの二次攻撃で被弾。大事な立ち上がりの時間帯に大きく突き放されることとなった。

 中でも佐藤祥のパフォーマンスは非常に不安の残るものだった。チームとして入りの時間帯への警戒を最大限に高めている中で、藤原との連携ミスと自身の球際負けから2失点目を献上。失点直後のプレーでは自身のコントロールミスで与えたFKから目を切ってしまい、クイックリスタートから最後はクロスでヒヤリとさせられた。やはり長期間実戦から離れていた影響は少なくないだろう。

 一方、立て続けに喫した3失点目はもちろん痛恨ではあったが、後半のプランをしっかり遂行しようとして結果的に上手くいかなかったものだったということは見逃せないところである。

 後半の栃木はできるだけ後ろでズレを作ってから前進していこうとトライを繰り返していた。全体を左肩上がりにセットし、最終ラインを左から岩﨑-高嶋-大森-高橋の4枚に。高嶋と大森はなるべく距離を広げることで相手FWから距離を取りつつ、間には適宜ボランチかGKが加わる。

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 しっかり後ろで形を整えてからスタートするプランは一定の効果をもたらしていたと言えるだろう。ビルドアップがままならなかった前半と比べて、後半は高嶋・大森が出し手となることで後ろから繋ぎ出すシーンは明らかに増えていた。実際に左サイドでは川名と五十嵐がともに高い位置を取ることで前半よりも近い距離感でプレーすることができていた。

 そうした流れの中で、高橋が前を窺いつつ内側に持ち出したところを狙われてしまい、それが発端となったのが3失点目だった。大森のパスミスから招いた4失点目も似たようなものに分類できるだろう。失点の仕方や大敗という結果によって覆い隠されてしまいそうな部分だが、トライに根差した失点だったということは触れておきたい。

 ただ、実際のピッチ上ではなかなかチャンスを作れなかった。次第に全体の重心が前かかりになるに連れて、70分以降は讃岐のカウンターにさらされることに。74分にピッチに入ったフレッシュなシャドー2人に背後を再三突かれてしまい、GK川田のビッグセーブに辛うじて助けられる展開となってしまった。

 チーム全体が前がかりになる中で、3バック相互のカバーリングが疎かになってしまった点は気になった。高嶋が空中戦で上回られてしまうと、背後のスペースをケアする選手がおらず、主に栃木の右サイドから速攻を許すことに。前線の失い方も悪く、ボランチがフィルターになることもできないまま、攻撃比重を高めていったのとは対照的に被決定機の山を築かれてしまった。終盤はチーム全体がバラバラだった。

 試合はこのまま1-4で終了。栃木は後半戦初戦を今季最多となる4失点で終えることとなった。

 

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
前がかりになった背後を突かれてピンチを迎えるシーンも多く、川田がいなければもっと失点していたかもしれない。

DF 3 大森 博
中盤で受ける相手にもう少しガツンと寄せたかった。高嶋の背後を取られることで一人取り残される場面があったが、コースを消してギリギリのところで凌いだ。4失点目は痛恨のパスミス

DF 25 岩﨑 博
左サイドを押し込んだ際は攻撃参加してクロスを供給した。後半は讃岐がペースを落としたこともあり、長短のパスで攻撃の起点となった。

DF 40 高嶋 修也
最終ラインの中央の選手としてラインコントロールが不十分だった。ボールを握れば左右CBやGKへの近場のパスが多く、後半讃岐がペースを落とすまでは攻撃の起点になれず。途中から入った大野には空中戦で上回られ、何度も背後にボールを落とされた。

MF 4 佐藤 祥
サイドに流れる後藤や下りてくる川西など、中央を数的不利にされることで守備に走らされた。2失点目は藤原と二人で同時に寄せてしまい、剥がされてしまった。

MF 18 川名 連介
1失点目は川名のラインアップが遅れたか。後ろの繋ぎでテンポが上がらない中、五十嵐との連携から何度も左サイドを切り裂いた。

MF 22 高橋 秀典
中野がキープした際は勢いよく駆け上がっていったが、そもそもの回数が少なかった。内側に持ち出したところを狙われ、3失点目となる被CKの流れを作ってしまった。

MF 77 藤原 健介
ボール保持時の判断が遅く、相手のプレスバックの格好の餌食となった。相手が帰陣してからでは崩せない。ビハインドを追いかける後半、守備に切り替わった局面での対応が緩かった。

FW 10 五十嵐 太陽
この日唯一ポジティブだったのは五十嵐のベクトルが最後まで前を向いていたこと。前への姿勢とテクニックを共存させて、中野のゴールをアシストした。

FW 32 太田 龍之介
高温多湿が影響してか守備の出足がいつもより重かった。ロングボールのターゲットとして何度も身体を張り、味方によく繋げていた。

FW 81 中野 克哉
待望の加入後初ゴール。前からの守備がなかなかハマらない中で、後追い承知で交代までハードワークした。

MF 47 吉野 陽翔
3失点して混乱するチームを落ち着かせた。高い守備強度と保持のスキルをバランスよく兼ね備えているのが吉野の魅力。

FW 80 オタボー ケネス
ライン間で引き出した際のファーストタッチが伸びてしまい、相手に狙われてしまった。

DF 5 森 璃太
藤原からのシュート性のクロスにスプリントしたが、わずかに届かなかった。

DF 8 福森 健太
何度か左サイドから縦突破を試みるなど、苦しい中でも戦う姿勢を示した。

FW 29 矢野 貴章
前からのプレスとポストプレーでチームの息を吹き返そうとした。

 

 

 

最後に

 さすがにこれでは相手がどこであっても勝てないだろうな、というのが正直な感想である。チーム全体が守備の繋がりを欠き、前でも中盤でもサイドでも奪いどころを定めることができず、為す術なく守備に走らされた試合だった。チームとしての体をなしておらず、残念ながら昨季の8失点を思い起こしてしまう惨敗だったといえるだろう。

 それだけに、こうなってしまった以上は自分たちがやるべきプレーに原点回帰するしかない。相手の順位は関係なく自分たちに矢印を向けなければ勝つことはできない。もちろん結果を追い求めることは大事だが、今季の栃木SCはJ2へ復帰してからを見据えて、しっかりとした基盤を作ることを一つの目標に掲げてきた。そこだけは忘れてはならない。ある意味この試合はターニングポイントにするには良い機会だろう。今この時が今季の行く末を分ける正念場である。

 

 

 

試合結果・ハイライト

2025.7.12 18:00K.O.

栃木SC 1-4 カマタマーレ讃岐

得点 18分 中野 克哉(栃木)

   24分 川西 翔太(讃岐)

   47分 長谷川 隼(讃岐)

   53分 長谷川 隼(讃岐)

   77分 大野 耀平(讃岐)

主審 小林 健太朗

観客 1758人

会場 Pikaraスタジアム