栃木SCのことをより考えるブログ

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【強みを生かさない手はない】J3 第16節 栃木SC vs 福島ユナイテッドFC

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 9位

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 前節はホームで群馬と対戦し0-1で敗戦。1点を争う終盤にオウンゴールで先制を許し、今季初の連勝を逃した。ミッドウィークには天皇杯でJ1東京ヴェルディに1-3で敗れ、中3日で今節を迎える。前節からのスタメンの変更は3人。最終ラインの大森は出場停止明け。左WB川名は3試合ぶりに先発復帰。前線には3日前に加入した中野が即先発となった。

 

 

福島ユナイテッドFC 4-1-2-3 7位

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 6勝4分5敗でプレーオフ圏手前の7位につける福島。ここまでリーグ2位の27得点を挙げる一方で、31失点はリーグワーストと撃ち合い上等のスタイルという印象である。水曜日の天皇杯でもJ1川崎フロンターレに3-4の乱打戦の末敗れた。直近のリーグ戦からの変更は4人。前節決勝点を挙げた矢島は9試合ぶりに先発、右SB柴田は今季初先発となった。古巣対戦となる藤谷はメンバーを外れた。

 

 

 

マッチレビュー

▼前節の課題を生かしてカウンター量産

 勝ち点19の栃木と勝ち点22の福島。試合前の時点で得失点差では栃木が上回っており、勝てば順位が入れ替わるシックスポインターとなった。

 試合は開始早々に動く。6分、福島が右からのCKを獲得すると、中村のインスイングのボールに城定がニアで合わせ、これが平松に当たってゴールマウスへ。栃木にとっては天皇杯に続いて立ち上がりのセットプレーから先制を許す厳しい幕開けとなった。

 早くも追いかけることとなった栃木は積極的に前からプレスをかけていく。福島のシステムは前節苦戦した群馬と同じ4-1-2-3だったが、この日の栃木のプレスは非常に効いていたと言えるだろう。ボランチの過負荷が響いた前節の反省を踏まえ、この日は中盤の守備に重きを置き、最終ラインは同数を受け入れるというプランだった。

 特に前節との違いとして挙げられるのは右WB森璃太が中盤の守備を助ける役割も担っていた点。栃木のダブルボランチは青島がアンカーに寄せていくことが多く、このとき中盤に残る藤原は左右のIHを同時に見なければならない。そこを手厚くする役割として右WBの森璃太が前に出ていくことで左IH上畑を捕まえるような守備の仕方となっていた。

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 このほか右シャドーの中野も守備の立ち位置は逆サイドの五十嵐よりも低く、かつ中央に絞ったもの。中央を経由して前進する福島の攻撃パターンを抑えるため、まずは優先的に福島の中盤3枚を捕まえることを徹底していた印象だった。

 受け手を失った福島が中盤を飛ばしてロングレンジのパスを出せば最終ラインが前に出て迎撃し、トップの矢島に向けて長いボールを入れてくれば平松を中心に大きく弾き返していく。中盤と前線を抑え切った栃木はこれにより相当な数のショートカウンターの山を築くことができた。

 再三繰り出すことができたショートカウンターもそのほとんどをフィニッシュに繋げることができていた。シュート数は前半だけで14本。おそらく今季の栃木の平均を超えるスタッツを記録していたように思うが、ただ、なかなかシュートがゴールマウスを捉えることができなかった。

 19分には、右サイドの中野の左足からのクロスに五十嵐が合わせるも枠右へ。20分には、敵陣で太田が引っ掛けたところからカウンターを開始し、攻撃参加した岩﨑のクロスをファーで森が折り返し五十嵐が合わせるも枠上へ。31分には、CKから波状攻撃を繰り返し、森のクロスに再び五十嵐が合わせたヘディングは枠上へ外れていった。

 33分には立て続けに決定機。相手のカウンターを抑えると、左サイドからカウンター返しを発動。川名が左サイドを運び右足に持ち替えて上げたクロスに太田がゴール前至近距離で合わせたが、ヘディングはわずか枠上へ。外した瞬間後ろの選手が膝をピッチに付いて崩れていた姿は印象的だった。その直後、川名からの楔のパスを受けた五十嵐のフィニッシュもゴールネットを揺らすことはできず。決定機を量産したことで、かえって決定力不足が際立つこととなった。

 

 ホームチームに目を向ければ、福島のビルドアップが成功したシーンは決まって左WG森晃太が中央から右寄りに出張していた時だった。

 これが表れていたのが18分と42分のシーン。前に出た青島の背後で森晃太がボールを引き取ると、ここから一気にドリブル開始。システムの噛み合わせ的に栃木は止めに入れる選手がおらず、ここを突かれた際は帰陣して構える必要があった。福島の先制点に繋がったCK獲得もこれに似たものといえるだろう。

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 ただ、これもどこまで準備してきたものかは分からない。森晃太は比較的どの試合でもサイドを中心としながらも自由を与えられているイメージであり、この日もこれをプランとして組み込んでいるようには見えなかった。そのため、栃木の前からの守備に対して打開策を見い出せず、後ろからのビルドアップが頓挫する流れを繰り返すこととなった。

 

 

▼ワイドを起点としたダイナミックな前進

 後半初めに動いたのはホームの福島。先制点をアシストした中村に変えて右WGに清水を投入。栃木はこの清水に手を焼くこととなった。

 清水は上背こそそれほどないが、身体の使い方が非常に上手く、高いキープ力とそこからの前への持ち出しが武器といった感じだった。マッチアップした岩﨑は何度か入れ替わられてしまう場面があり、前半ビルドアップで起点を作れなかった福島にとっては貴重な存在になったといえるだろう。雰囲気的にJ2時代に何度も対戦した矢村健(現新潟)を見ているようだった。

 それに加え、後半の福島は中央でのパスワークに前半以上に重きを置いていた。3MFに加えて前線3枚も近い距離感に集まり、まるで鳥かごのように狭いゾーンでボールを繋いでいく。栃木の守備が食い付いたタイミングで前線の選手がボールを引き取り、強引に前に持ち込むことで着実にシュートに繋げていた。栃木にとっては守備が後手後手になる難しい立ち上がりになったといえるだろう。

 潮目が変わったのは61分の3枚替え。森璃太と川名に代えて両WBに高橋と庄司を投入。前線には中野に代えて屋宜を投入し、攻撃のテコ入れを図る。

 大外の選手のキャラクターを変えた栃木はここから流れを引き戻していく。左WBに入った庄司がロングボールのターゲットとなり、それまでにはなかった長いボールによる前進が可能に。65分には、平松→庄司のロングボールのセカンドを収めた五十嵐が縦に仕掛けてクロスを供給。これが同点弾の布石となった。

 福島は長いボールを入れられるとSBとWGの距離が開き、中盤もアンカー脇を突かれることでセカンドボールに対して全くアタックできていなかった。67分には、同じように平松→庄司のロングボールのセカンドを五十嵐が収めると、今度は右足に持ち替えてクロスを供給。ファー目掛けてふわりと上げたクロスに飛び込んできたのは逆のWBの高橋だった。直近の天皇杯と同じような形から豪快に叩き込んだヘディングシュート。交代による勢いでもぎ取った同点弾だった。

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 同点の勢いそのままに攻勢をかける栃木だが、75分、一瞬の隙を突かれて勝ち越しを許してしまう。福島が栃木陣内で獲得したFKを素早くリスタートすると、左サイドから森晃太が仕掛けて右足クロス。これに合わせたのは後半から攻撃のアクセントとなっていた清水だった。栃木としては藤原の戻りがやや遅れたことでゾーンにわずかな隙間を空けてしまい、そこに高精度のクロスを供給され失点を喫することとなった。

 効果的な攻め手を見つけた中での失点はダメージが大きいものだったが、気を取り直して攻撃を続ける栃木。五十嵐に代えて矢野、青島に代えてロングスローを投げられる高嶋を最終ラインに投入し、大森をボランチに上げるなど、高さと強さを存分に生かす体勢にシフトしていく。

 これが功を奏したのが終了間際の90分だった。敵陣で藤原がクイックリスタートしたFKに抜け出した庄司のシュートがGKに阻まれると、それで得たCKに頭で合わせたのは太田。大外へのロングボール攻勢から押し込む流れを作り出し、最後の最後でゴールに結び付けることができた。16試合目にしてようやくの複数得点。太田にとっては記念すべきJリーグ初ゴールとなった。

 試合はこのまま2-2で終了。プレーオフ圏を窺う両チームによる対戦は勝ち点1ずつを分け合うドローとなった。

 

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
2失点ともノーチャンス。失点以外で1vs1を迎えた場面ではビッグセーブでチームを救った。

DF 2 平松 航
立ち上がりのオウンゴールはボールの軌道が見えていなかったか。相手FWとのマッチアップを尽く抑え、攻撃の起点を作らせなかった。シュートブロックも冴えていた。

DF 3 大森 博
目の前の相手に対して強度の高い守備を続け、長いボールにも高さを見せつけた。終盤には久しぶりにボランチでプレーした。

DF 25 岩﨑 博
曖昧な位置でボールを引き取る森晃太に対して前と連携して対応をはっきりしたかった。後半入ってきた清水のポストプレーには手を焼いた。

MF 5 森 璃太
新加入との中野とのコンビネーションはまずまず。相手SBと1vs1になりやすく、積極的に縦に仕掛けてクロスを上げた。

MF 11 青島 太一
相手のアンカーを積極的に捕まえにいくことで、中央からのビルドアップを牽制した。ルーズボールに対して果敢に身体を投げ出した。

MF 18 川名 連介
左サイドから積極的に仕掛け、太田の決定的なヘディングを演出した。後ろから繋ぎ出す際の立ち位置が高く、試合中に監督から指摘される声掛けがなされていた。

MF 77 藤原 健介
押し込む時間が多い中で一歩引いた位置から積極的にミドルシュートを放っていった。2失点目はクロスに対して戻りが遅れ、ゾーンに穴を空けてしまった。

FW 10 五十嵐 太陽
決定機に多く顔を出したが、フィニッシュの精度がつかなかった。後半には反撃ののろしを上げる同点アシストを記録した。

FW 32 太田 龍之介
前半は左からのクロスをゴール前至近距離で外してしまったが、終了間際に汚名返上となる同点弾を決めた。祝プロ初ゴール。

FW 81 中野 克哉
ぶっつけ本番での起用となったが、上手く周りと合わせつつ自分の特徴も発揮できていた。フィットしていけばこれ以上ない戦力である。

MF 22 高橋 秀典
水曜日の天皇杯と同じようなシチュエーションで同点弾をゲット。点の取れる場所・形を心得ており、ここにきて右WBのレギュラー争いに猛烈に食い込んできた。

MF 39 屋宜 和真
ワイドの高橋と繋がってライン間で得意の左足からクロスを上げた。強力なライバルが加入したため結果で価値を示したい。

FW 19 庄司 朗
後半追い上げる展開のなかで起爆剤となった。2点目に追い付くCK獲得は、クイックリスタートに反応した庄司のシュートから。

DF 40 高嶋 修也
前節不安定だったロングスローの軌道が改善していた。

FW 29 矢野 貴章
庄司が競った後のボールを巧みに収めた。後半ATには高嶋のロングスローに頭で合わせたが、GK正面だった。

 

 

最後に

 長身の選手を立て続けに投入し展開がダイナミックに変わっていくなかで2ゴールを奪えたことは今後のプランに間違いなく大きな影響を与えるだろう。試合後のコメントを見る限り、小林監督としてはチーム作りのなかでそこに重きを置き過ぎないことを強調していたが、メインの攻め筋にならないにしても、オプションとしての有用性は如実に感じたはずだ。ダイナミックな攻撃とそれに伴う球際の強さ、泥臭さは栃木の根底にある強みであり、少し前までのチームが前面に押し出していた大事な要素である。

 結果的に勝ち点3こそ奪えなかったものの、「栃木といえば」で思い浮かぶチームの強みを久々にピッチ上に見て取ることができたこと、そしてようやく複数得点を挙げられたことを素直に喜びたい。

 

 

 

試合結果・ハイライト

2025.6.15 16:00K.O.

J3リーグ 第16節

栃木SC 2-2 福島ユナイテッドFC

得点   6分 オウンゴール(福島)

   67分 高橋 秀典(栃木)

   75分 清水 一雅(福島)

   90分 太田 龍之介(栃木)

主審 山岡 良介

観客 1916人

会場 とうほう・みんなのスタジアム