栃木SCのことをより考えるブログ

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【『栃木』を冠する両チームの意地】J3 第7節 栃木SC vs 栃木シティ

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 11位

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 前節はアウェイで琉球と対戦し1-2で敗戦。福森のゴールで一時同点に追い付くも、終了間際に被弾し痛恨の敗戦となった。ただ、内容自体は決して悪くなく、水曜日のルヴァン杯では仙台に120分+PK戦で勝利。良い流れの中にあると言っていいだろう。琉球戦からの変更は1人。ルヴァン杯で77分間出場した森璃太がリーグ戦に復帰し、ベンチには堀内が帰ってきた。

 

 

栃木シティ 4-3-3 2位

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 昨季はJFLで圧巻の得点力を見せつけて優勝し、栃木県2つ目のJクラブとなった栃木シティ。J3でも勢いそのままに現在3連勝で2位につけており、リーグに大きな旋風を巻き起こしている。前節讃岐戦からの入れ替えは1人。古巣対戦の森俊貴に代わって中盤に土佐が入った。3日前に加入が発表されたピーターウタカはメンバー外となった。

 

 

 

マッチレビュー

▼左サイドを巡る立ち位置の駆け引き

 ついに開戦した『栃木ダービー』。オフシーズンでの出来事やSNSでの前哨戦などピッチ外での話題ばかりが注目されてきたが、ようやくここで直接相見える。公式戦での対戦は天皇杯県予選以来8年ぶり。プロの舞台で行われる初めてのダービーマッチには12807人もの大観衆が集結し、最高の雰囲気のなかで試合は幕を開けた。

 試合は立ち上がりから相手に厳しくプレスをかけ合う展開でスタート。前からの守備を持ち味としているチームどうしとあって非常にハイテンションなペースで進んでいく。

 高い守備強度と機能性で先に主導権を握ったのは栃木シティだった。栃木シティのプレスは3バックに対して3トップで枚数を合わせるだけでなく、陣形が歪んでいるときには中盤の選手が果敢に寄せていくというもの。ゾーンディフェンスやブロックを考えるのは二の次。とにかくファーストDFを当てることに心血を注いでいる印象だった。

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 これにより栃木SCは後ろでボールを握る時間を与えてもらえず。GK川田を交えて繋ぐ余裕はなかった。今季ここまで戦ってきたなかで最も強烈なプレッシャーを感じただろう。それを避けようと前線に長いボールを蹴り出しても菅原が対峙するのは百戦錬磨のマテイヨニッチ。菅原も気合いを見せていたが、空中戦でほとんど競り勝てなかった。

 対する栃木SCの前線守備はいつも通り1トップ2シャドーが分担しながら相手のCBを監視し、SBにはWBが縦スライドするというもの。ミッドウィークの仙台戦では後半このプレスが復活してから流れを引き寄せたこともあり、会場の熱量に押されて果敢にプレスを仕掛けていく。

 しかしながら、栃木シティはそれを見越した選手の立ち位置とボールの配球でピッチを支配していた。GKを挟むように2CBが広がることでプレスを誘き出すと、福森の背後のスペースへのロングボールを徹底。GK相澤のキックは正確かつ飛距離があり、栃木SCの左サイドは常に後ろ向きの対応を強いられる状況だった。

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 GK相澤のキックの飛距離は試合前の時点でもちろん織り込み済みだったと思うが、分かっていても止められないといった感じだった。後ろ向きの対応でクリアが小さくなると、セカンドボールを回収されてサイドの関係性からクロスを上げられる。何度もCKを献上した。栃木シティのやり切るプレーに完全に圧されてしまった。

 これを受けて栃木SCは守備のバランスを調整。25分を過ぎたあたりから福森の立ち位置を下げることでスペースを埋め、それに合わせて五十嵐もCBへのプレスを自重。五十嵐と福森の間に顔を出す選手にはボランチの吉野が寄せることで整理すると、左CBの岩﨑も前に出て迎撃ができるように。ようやく守備が噛み合い始めた。

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 そして迎えた36分にホームチームが均衡を破る。ヨニッチのバックパスが小さくなったところに反応した五十嵐がGKの鼻先でボールに触れると、そのまま左足を振り抜いてボールは無人のゴールへ。ゴールマウスはがら空きだったとはいえ、スプリントして身体が流れた状態かつ利き足ではない左足で約30メートルの距離を射抜くのは簡単ではないだろう。攻撃の形をなかなか作れなかった中で貴重な先制点を得ることに成功した。

 これで流れは一気に栃木SCペースに。前からのプレスに勢いが増し、ボールホルダーが処理にもたつけば瞬く間に2人3人と厳しく寄せていく。先制しハーフタイムを迎えるまでの約10分間で敵陣でボールを引っかけてショートカウンターに移行するシーンを何度も作ることができた。

 とりわけ福森の出足の良さは光っていた。前述したとおり、守備時は立ち位置を下げることでロングボールを牽制していた福森だったが、それを見た相手がSBにパスをつけようとすると、タイミングよくボールにアプローチ。42分にはインターセプトからそのまま縦に運んで中央に折り返すと、森璃太の惜しいミドルシュートに繋げた。福森の的確な判断が生んだチャンスだった。

 前半は時間の経過とともに栃木SCが盛り返す展開で終了。1点をリードしてハーフタイムを迎えた。

 

 

▼逃げ切れる流れではあったが

 後半も栃木SCのペースは継続。前半の勢いのままに前からの守備を機能させてカウンターの山を築いていく。

 栃木シティ目線で言えば、福森にあらかじめスペースを埋められてからは流れを失ったこともあり、後半ここへの長いボールは明らかに避けていた。よって平岡や鈴木国友は主に左サイドで空中戦に臨むように。ただ、ここでの競り合いで大森の壁を破れず、思うようにチャンスに繋げることができなかった。

 厳しい競り合いに身を投じながら、闘志を剥き出しにして対応した大森の姿は後半立ち上がりのチームに火をつけたと言えるだろう。これを受けて繋ぎでの前進に比重を置き始めた相手に対して、鋭いプレスを浴びせてショートカウンターを量産できたのが後半半ばまでの流れだった。

 なかでもよく見られたのが前線で幅を取る選手へ出された斜めのパスをサイドの選手がインターセプトする形だった。

 54分にはアンカーから左WGへのパスを大森が出足よくインターセプトすると、棚橋→菅原→棚橋→五十嵐と前線でリズムよくパスを繋いで、最後は五十嵐が左足で強烈なシュート。63分にもCB→右SBのパスを福森が奪い去り、五十嵐が果敢にドリブルを仕掛けてゴール前でFKを獲得。福森のFKはGK相澤の好セーブによって惜しくも阻まれた。

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 そのほかショートカウンターという点では、菅原が独力で持ち込んでサイドネットを揺らした50分のシーンのほか、森の独走からのクロスに五十嵐が合わせた70分のシーンなどチャンスを演出。ゴール期待値もこの時間帯が最も伸びていた。それだけにここで取り切れなかったことが後々響くことになってしまった。

 思うように攻め手を作れない栃木シティにとって頼みの綱となったのが田中パウロ淳一。左右を頻繁に入れ替えた前半とは変わって後半は右サイドに常駐し、キレのあるドリブルから栃木SCのゴールに迫っていく。57分にはカットインからのシュートはGK川田のセーブ。78分には深い切り返しから右足で上げたクロスがポストを叩いた。

 深い時間帯に突入してからも栃木SCは重心を調整しながらボックス内で弾き返すことができていた。ボールサイドに人を当て続け、後ろに引き過ぎないよう平松が最終ラインをコントロール。82分には後ろの連携ミスからGKとの1vs1のピンチを迎えたが、岩﨑の決死のゴールカバーで難を脱出してみせた。ウノゼロで締めくくる機運は非常に高まっていた。

 しかし、90分に栃木シティが同点に追い付く。CKから波状攻撃を受けると、最後はCKキッカーの岡庭にネット右隅に突き刺された。右に一つ持ち出されたことでブロックがズレ、シュートが矢野に当たってボールがゴールに吸い込まれる不運もあった。

 試合は1-1で終了。終盤に失点した栃木SCは前節に引き続き逃げ切り失敗。栃木シティは連勝を3でストップしたが、5試合負けなしとなった。

 

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
クロス対応で少しヒヤリとする場面はあったが、全体的には安定していた。

DF 2 平松 航
声で味方を鼓舞し、最終ラインの高さをコントロールしながら再三のクロス攻撃に対応した。

DF 3 大森 博
相手のロングボールに対して強さを発揮。闘志を剥き出しにしたプレーで相手FWとバチバチとやり合った。

DF 25 岩﨑 博
窮地を救うゴールカバーのあとに吠えたシーンはこの試合のハイライト。普段は冷静にプレーしている印象だが、この日は戦う姿勢を前面に押し出していた。

MF 5 森 璃太
前半はボールを受けてからの選択肢が消極的だったが、後半は持ち味のスピードを生かした縦突破を見せた。

MF 8 福森 健太
始めは背後を狙われたが、重心をやや低めに設定することで粘り強く対応した。リード後は出足の良さでショートカウンター量産に貢献。

MF 11 青島 太一
頭の上を越えるボールが多く、セカンド争いも相手に上回られた。勇猛果敢に前につっかけていく青島の良さはまだ出ていない。

MF 47 吉野 陽翔
引き続き強度の高い守備でハードにプレーできている。狭い局面での捌きも正確で、前で奪った際には積極的にミドルシュートを放った。

FW 7 棚橋 尭士
前からプレスがハマらない難しさもあったが、攻守にハードワークを切らさなかった。右サイドでの仕掛けからクロスを供給した。

FW 9 菅原 龍之助
前線で奮闘するもヨニッチに封じられた。後半立ち上がりには自らボールを奪いシュートに持ち込んだ。一発目が出れば変わるはずだが。

FW 10 五十嵐 太陽
前からの守備とプレスバックの強度が高く、攻撃に転じればゴールを強く意識したアクションを見せていた。得点シーンはお見事。

DF 22 高橋 秀典
サイドから圧力を強めてくる相手に対して堅実な守備で対応した。

FW 29 矢野 貴章
Jリーグ通算600試合出場を達成。偉業を飾ることは出来なかったが、最後まで相手の脅威になり続けた。

MF 78 堀内 陽太
敵陣ではガツガツと寄せていたが、自陣では相手の圧力に飲み込まれた。

MF 39 屋宜 和真
貴重な左足キッカー。ルヴァン杯での活躍もあり、これからリーグ戦に絡んでいきそう。

FW 38 小堀 空
ルヴァン杯のPKに続き貧乏くじを引いてしまっている印象。プレー自体は決して悪くない。

 

 

 

最後に

 試合の終わり方という点では守備を意識した重心の置き方や交代カードの采配に大きな問題はなかったように思う。確かにミス絡みでピンチを招き、交代選手が試合の流れを引き寄せられなかったのは事実だが、ゲームクローズに明確なエラーが生じたとまでは言えないものだった。やはり攻勢を強めた後半序盤の時間帯に追加点を取り切れなかったことが問題だろう。ここまで複数得点を取れていないのは栃木SCだけである。

 ただ、一方で攻撃に関するスタッツは試合を重ねるごとによくなってきている。Jスタッツによれば、シュート数は開幕戦の5本から9本→9本→11本→12本→13本と推移し、この日は19本を記録。ゴール期待値は0.37→0.74→1.13→1.35→1.15→1.46でこの日は1.76だった。あとは仕上げの精度をフィニッシャーに託す段階に来ているといえる。

 さて、この試合は栃木のサッカー界において歴史的な1日になったといえるだろう。あれだけの素晴らしい雰囲気を作り出せるのが『栃木』を冠する両チームのポテンシャルだし、それに相応しい意地とプライドをピッチ内外でクラブに関わる全ての人が示してみせた。ダービーと称したからこそ相手を今後もさらに強く意識していくことに違いない。これから紡いでいく歴史の1ページ目としてこれ以上ない充実感を覚える一戦になったといえるだろう。

 

 

 

試合結果・ハイライト

J3 第7節

栃木SC 1-1 栃木シティ

得点 36分 五十嵐 太陽(栃木SC

   90分 岡庭 裕貴(栃木シティ)

主審 山岡 良介

観客 12807人

会場 カンセキスタジアムとちぎ