栃木SCのことをより考えるブログ

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【総力戦で激闘を制する】YBCルヴァンカップ 栃木SC vs ベガルタ仙台

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 11位(J3

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 アウェイ沖縄での試合から中2日で大会初戦を迎える栃木。直近のリーグ戦から先発11人を入れ替え、フレッシュなラインナップとなった。丹野・高嶋は今季初出場、木邨・屋宜・星野はプロデビュー。前節ひと足先にデビューした庄司もまとまったプレータイムを与えられるのはこれが初めて。ベンチにはリーグ戦のメンバーが並ぶ構成となった。

 

 

ベガルタ仙台 4-4-2 9位(J2)

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 リーグ戦ではここまで2勝2分2敗と勝ち切れない試合が続いている仙台。こちらもリーグ戦から中2日での試合となり、先発11人を入れ替え。エントリーした選手のうち10代が4人(安野、南、横山、西丸)、20歳が2人(名願、中田)というように非常に若いメンバー構成となった。古巣対戦の宮崎鴻は残念ながらメンバー外となった。

 

 

 

マッチレビュー

▼オナイウの牽制により苦しい繋ぎに

 前回大会はともにカテゴリーが下のチームに敗れた両チーム。Jリーグ60クラブが参加する現行フォーマットとなってからの初勝利を目指す試合となった。

 試合は互いに相手の保持に対して積極的にプレスをかける展開でスタート。システムがミスマッチとなるため相手にしっかりと圧力をかけるにはより呼吸を合わせていく必要があるのだが、前半の出来はあまりに対照的だったといえるだろう。守備からリズムを掴むことができていたのはアウェイの仙台だった。

 仙台の前線守備は右SHのオナイウが2トップと並んで枚数を合わせていくのが基本形。オナイウが木邨を牽制するように立ち位置を取ることで逆サイドにボールを誘導すると、ラファエルにはトップの安野が内側から寄せていく。ボールを受けたラファエルは安野に寄せ切られる前にリリースする必要があるが、このとき前は全て仙台の選手に捕まっている状況。苦し紛れに蹴り出して回収される流れとなっていた。

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 オナイウの牽制から始まる守備の仕組みは栃木にとってクリティカルなものだった。栃木の左CBに入っている木邨は右利きのため、右足でコントロールして左WBの庄司につけようとするとパスコースがやや内側になる。オナイウはこれにアプローチできるような絶妙な立ち位置で木邨と庄司を両睨みしており、これにより実質的に木邨の選択肢は右方向に限られていた。

 よって仙台の選手は栃木の最終ラインの右方向へのパスを合図に連動すればよく、後ろの選手はボールの行き先が予想できるため、受け手に対してしっかりアプローチすることができていた。ベンチの森山監督からも「横パスから!」といった声が飛んでいたようにしっかりと準備されていた守備の形だった。

 栃木としては高嶋からボールを受けたラファエルにはやや時間が出来るような構図だったが、全体的にサポートが不足していた。屋宜や井出は不慣れなポジションとあって相手に消されてしまい、小堀もポストプレーが安定せず。森が低めで受けてもオタボーを走らせる以外の選択肢がなく、そのオタボーもマテウスモラエスに完全に対応されていた。

 ラファエルから縦に差し込んだ際にごちゃっとしたところから持ち出せた場面もあったが、それも限定的。左サイドに広げてもこちらも本職ではない庄司のためサイド勝負での勝ち筋は見えづらかった。

 

 一方栃木の前線守備は典型的な「良くないときの栃木」といった状況だった。ざっくり言えば前後分断によって後ろに重くなり、それに見た前の選手がしぶしぶ重心を後ろに下げるというもの。WBが最終ラインに吸収される時間が長く、5-4-1で耐える時間が長かった。

 出し手を抑えられなければ、後方からは自由に配球を許すこととなる。この日の仙台の前線はターゲットの梅木と前線を縦横無尽に走り回る安野、サイドには快速のオナイウ。彼らに長いボールを集めることで起点を作り、クロスやロングスローなどからシンプルにゴールに迫られる場面が非常に多かった。栃木としてはGK丹野とラファエルのクロス対応で辛うじて耐えていた状況だった。

 前かの守備で相手をはめ込み、逆に相手の前線守備を容易に剥がしていくことでペースを握った仙台が前半のうちにシュートを10本記録したのに対して、栃木は2本のみ。スコアレスながら対照的な試合内容でハーフタイムを迎えた。

 

 

▼攻守におけるWBの立ち位置を整理

 後半の栃木は前半の出来を受けて選手を入れ替えるのではなく、戦い方を整理することで内容の改善に取り組んでいく。後半開始からのパフォーマンスを見れば相当な檄が入ったハーフタイムだったといえるだろう。

 大きく変わったのは守備時に全員が「一つ前」に寄せられるようになったこと。仙台の2CBに対して1トップ2シャドーが中央のコースを切りながら寄せていき、誘導した先のサイドではWBが縦スライドする。ボールサイドのボランチも相手をサイドに閉じ込める。スモールフィールドでの球際バトルに持ち込むことで仙台に思うように前進させない守備を行うことができていた。5バックで押し込められた前半から明らかに改善していた。

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 WBの立ち位置の整理は保持時にも見ることができた。相手のSH-SB間をベースにしつつ、相手のSHが前からプレスをかけてくればWBがしっかり後ろに引いてくることでSBを前に引き出していく。

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 48分には前からのプレスに対して最終ラインで果敢に繋いで相手を引き付けると、森→オタボーのパスで右サイドの背後を突破。クロスは小堀にわずかに合わなかったものの、早々にチャンスを作ることができた。52分、結果的には負傷交代を余儀なくされたオタボーの背後へのランニングも庄司が相手SBを引き付けたところからだった。

 途中交代で岩﨑、川名、ボランチに大森が入ってからは中盤での支配力もアップ。後ろでの揺さぶりがよりスムーズになり、相手を動かしながら前進できるように。ラファエルがドリブルで前に持ち出したり、岩﨑が鋭い縦パスを前線の足元につけたりと後ろから攻撃を組み立てることができていた。

 対する仙台は栃木のプレスに苦しみながらも外回しであればある程度ボールを持つ余裕はあった。そのなかで目を付けていたのは栃木のボランチの横スライドの隙間。栃木の5-2-3の2の周辺にスペースを見つけ、主にボランチの松井やトップの梅木が下りてくることでここを使おうとしていた。74分の松井のシュート、78分の安野のシュートのこのエリアを先に噛ませたものだった。

 しかし、最後の局面では両チームとも集中した守備で弾き返し、スコアレスで90分終了。決め手を欠いた両チームによる試合は延長戦に突入した。

 

 

 

▼ベーシックな要素の強まった延長戦

 延長戦は前後半ともに戦術的な細部の駆け引きというよりは、長いボールをいかに収め、いかにセカンドボールを回収できるかが問われる内容だったといえるだろう。そのためベンチに主力を揃えていた栃木の方が全体的なパワー感では上回っていた印象である。

 延長前半は矢野のポストプレーからサイドに広げてクロスという流れを量産。左からのクロスに対して逆サイドの高橋が飛び込む形を多く作ることができていた。弾き返されても大森と屋宜のボランチ勢が強度を示して対抗。とりわけ屋宜は90分以上出場しているにも関わらずルーズボールに対して臆することなく身体を投げ出していた守備は印象的だった。

 延長後半に入ると今度は仙台がややペースを握る展開で推移。特別指定の中田有祐のポストプレーを中心に前線に起点を作っていく。対する栃木も最後のカードとして五十嵐を投入して流れを引き戻しにかかる。

 しかし、15分ハーフの延長戦を戦ってもなおスコア動かず。勝負はPK戦にもつれると、両GKとも1本ずつストップするハイパフォーマンスを発揮し、相手の枠外シュートによって上回った栃木が4-3でPK戦勝利。120分+PK戦の激闘を制した栃木が福岡の待つ2回戦に駒を進めることとなった。

 

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
クロスやロングスローを多用してくる仙台の攻撃に対してハイボール処理が安定していた。PKストップで勝利に導いた。

DF 33 ラファエル
ボールを持たされたことで不得手な保持を強いられたが、後半は前に持ち出せるようになった。クロス対応で圧倒的な強さを示した。

DF 37 木邨 優人
ロングボールの処理で相手に渡してしまうことが多く、対面のオナイウへの対応でも後手を踏んだ。

DF 40 高嶋 修也
シンプルにゴールに迫ってくる相手に対して集中して対応した。初出場をクリーンシートで飾り、メンバー入りへアピールした。

MF 5 森 璃太
ラファエルをサポートするため低い立ち位置を取ることが多く、クロスを上げる場面は少なかった。

MF 19 庄司 朗
後半からチーム全体がプレスのギアを一段階上げるなかでしっかりとボールホルダーに制限をかけることができていた。膝の負傷が心配。

MF 20 井出 真太郎
本職ではないポジションで守備に追われた。後半になって前を向けるようになり、狭いスペースを自ら運んでクロスを上げる場面もあった。

MF 39 屋宜 和真
プロデビュー戦で120分をやり切った。時間の経過とともにプレースピードにも慣れ、テクニックの高さと球際に身体を投げ出せる泥臭さを示した。

FW 23 星野 創輝
前半はほとんどボールに触れなかったが、ハーフタイム以降は積極的なプレスとポストプレーで存在感を示した。個人的に最もアピールに成功した選手だったように思う。

FW 38 小堀 空
120分間前線でハードワークした。クロスに対して危険な場所に顔を出したが、わずかに合わず。PKはややコースが甘かったか。

FW 80 オタボー ケネス
苦しい前半を終えてようやく後半に良さが出始めたが、負傷交代を余儀なくされた。ハムストリングの負傷だろうか。

FW 29 矢野 貴章
オタボーの負傷を受けておそらく予定より早いピッチインとなったが、試合終了までハードワークを切らさなかった。PK戦の先陣を切り、勝利の流れを引き寄せた。

DF 25 岩﨑 博
普段試合に出ているだけあって攻守において落ち着いて対応していた。岩﨑が入ったことによって後ろのボールの回りが良くなった。

FW 18 川名 連介
大森と岩﨑のサポートを受けながら積極的に仕掛けた。仕掛けた後のプレーに精度を伴わせたい。

DF 3 大森 博
CBでも見せている強度の高さと安定感を中盤でも発揮した。大森が入ったことで一気にセンターラインに軸が通ったような感覚だった。

DF 22 高橋 秀典
左サイドからのクロスに果敢に飛び込み、惜しいヘディングシュートを放った。

FW 10 五十嵐 太陽
延長後半から出場し、相手に行きかけた流れを引き戻した。PKはさすがの落ち着きだった。

 

 

 

最後に

 前半の内容を見ればどのような結果になってしまうのか不安の募るパフォーマンスだったが、ハーフタイム以降は五分五分以上の内容で試合を進められたといえるだろう。前からの守備と後ろからの繋ぎを微調整したことで一気に歯車が噛み合った試合だった。

 理想は前半のうちに相手を見てアジャストすることだが、フィールドプレーヤーに経験豊富な選手がいない以上、試合が動くなかで意識を擦り合わせていくことはなかなか難しかったように思う。それだけに耐えるべきを耐えて、ハーフタイム以降に繋げたという点では守備陣を中心に前半の内容にも手応えを掴むことはできたといえる。

 ハーフタイムに修正を施してからは普段リーグ戦に出場していない選手が半数以上を占めても同じ絵を描けることを示した。最終的にはノーゴールに終わったとはいえ、一発勝負の醍醐味を引き出すことができたという点では、今季のチームに欠けていた勝負強さを見せられたといえるだろう。

 120分+PK戦を戦い、怪我人も続出することとなったが、総力戦になったからこそ自分たちのスタイルに対する自身と手応えをチーム全体がピッチ上で実体験として深めることができた。この日出場のなかった選手たちも刺激を受けたことだろう。チーム全体で作り出せている良い流れを胸に栃木シティとのダービーマッチに臨む。

 

 

 

試合結果・ハイライト

YBCルヴァンカップ 1stラウンド 1回戦

2025.3.26 19:00K.O.

栃木SC 0-0(PK4-3) ベガルタ仙台

得点 なし

主審 中川 愛斗

観客 2128人

会場 栃木県グリーンスタジアム