
スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 9位

前節はアウェイで金沢と対戦し、0-2で敗戦。金沢のアグレッシブな攻守を前に落ち着いてボールを握ることができず、プレーオフ争いの直接のライバルに手痛い敗戦を喫した。前節からのスタメンの変更は2人。木邨に代わって大森が3試合ぶりに負傷から復帰、福森に代わって川名が2試合ぶりに先発となった。先日引退を発表したGK丹野はこの日もベンチ入りとなった。
ガイナーレ鳥取 3-4-2-1 12位

ここまで14勝6分16敗、勝ち点48で12位につける鳥取。直近3試合は讃岐(〇1-0)、岐阜(〇4-2)、北九州(〇3-2)に連勝を飾っており、チームの状態は上向きだ。前節の北九州戦に続き、栃木→奈良とプレーオフ争いを戦うチームを掻き回したいところだろう。前節からのスタメンの変更は2人。ここ3試合で5ゴールの富樫佑太、岐阜戦で2ゴールの半田航也はともにメンバー外となった。
▼前回対戦のマッチレビュー
マッチレビュー
▼時間を確保することから
J3リーグもレギュラーシーズンは残り2試合。プレーオフ圏内の6位金沢を4ポイント差で追いかける栃木としては勝って望みを繋ぎたい一戦となる。
立ち上がりの主導権を握ったのはホームの栃木。この日の栃木は前節の反省を踏まえて、まずは自分たちの保持の時間を確保しようというプランだっただろう。通常はロングボールの蹴り合いになりやすい立ち上がりだが、縦に攻め急がず後ろから丁寧にビルドアップしていこうという姿勢を見せていた。
鳥取のシステムは前節の金沢と同じ3-4-2-1。よって、栃木は前節苦しんだ1トップ2シャドーの3人による前線プレスを受けることになるのだが、これを4枚回しにすることで難なく回避。基本的にはボランチが1枚下りつつ、低い位置ではGK川田が最終ラインに加わることで数的優位を作る形はある程度オートマチックにできていた。
4枚回しからの前進は左SB化した岩﨑サイドからの方が多かった。ちょうど岩﨑のポジションが小林監督の目の前であり、声とジェスチャーで上がるよう頻繁に指示を受けていた影響もあっただろう。ボランチが下りたときに中盤をサポートする中野を経由して右サイドに広げる形も事前に落とし込まれていたように見えた。
守備ではミラーゲームを生かして鳥取のビルドアップを牽制。ゾーンディフェンスを敷く以上完全なマンツーマンにならないことは金沢戦のレビューでも触れたとおりだが、相手の攻撃をサイドに誘導しつつ無理に内側に入れたところを前線5人で囲い込む守備はよく機能していた。全体が繋がってコンパクトに守ることができていた。
ラインを下げてミドルゾーンに構えたときも同様。中央を閉じてサイドに追いやることで鳥取のポゼッションを外回しに終始させる。鳥取は左右CBの金浦や温井が栃木の1列目の外側から前進するよう探っていたが、栃木のスライドが十分間に合っていた。ならばと長いボールを入れてきても高さ勝負では岩﨑がきっちりと弾き返し、背後は平松が対応できていた。
そうして攻守において栃木が主導権を握るなか、22分に均衡が破れる。鳥取がボランチの曽我からトップの棚田に縦パスを差し込むと、これに対して栃木は藤原が縦を切り、中野のプレスバックによってボールを奪取。ショートカウンターを発動すると、太田のパスを受けた中野が難しい角度から利き足とは逆の右足でゴール天井に打ち抜いた。見事なカウンター完結で栃木が先制に成功した。
1点を追う展開となった鳥取はここから目を覚ましたようにミドルシュートやアーリークロスなど積極的な攻撃を繰り出すように。栃木のビルドアップに対してプレッシャーを強めることでミスを誘い、敵陣でプレーする機会を増やしていく。
ただ、栃木も前線のコンビネーションを駆使しながら着実にゴールに向けてアクションできていた。25分には、鳥取のプレスに対してボールサイドのサポートを厚くして左サイドを突破。川名の大外からの鋭いクロスに太田がニアに飛び込むも、シュートは枠左へ。31分には、ゴール前での細かいパスワークから最後は五十嵐がラストパスを送ったが、太田との呼吸がわずかに合わなかった。
39分のFKからのシーンは間違いなくゴールとして認められるべきだった。藤原のFKにヘディングで合わせた平松のシュートはGKが触ったあとに空中でゴールラインを割っていたが、その前に接触があったとしてノーゴールの判定。主審も副審も確認できていない以上仕方ないとはいえ、確認できていないのであれば、流れをひっくり返してまで取り消す積極的な理由はなかったのではないか?というのが個人的な感想である。
幻のゴールに泣いた栃木は直後の43分にもセットプレーから決定機。ロングスローの流れで左サイドから押し込むと、川名が低めに入れたボールから混戦が発生。これにいち早く反応した大森が振り向きざまにシュートを放ったが、惜しくもポスト直撃。跳ね返りを収めた中野のシュートも枠右へと逸れていった。
前半はこのまま1-0で栃木がリードして終了。1点ではもの足りない押し気味の展開でハーフタイムを迎えた。
▼劣勢の時間帯に挙げた追加点
後半は鳥取のキックオフのミスから栃木が押し込む展開でスタート。セットプレーや太田のポストプレーから深い位置でチャンスを作り出していく。太田は身体を預けながらのポストプレーで温井を剥がしたり、ヴァンイヤーデンショーンのファール→イエローカードを誘ったりと、相手CBに対して完全に個の優位性を発揮していた。
立ち上がりは前からの守備を機能させてからの速攻も目立っていた。鳥取のビルドアップに対して前からコースを制限していき、縦関係になったボランチのところでボールを狩り取る。マイボールにすれば五十嵐と中野のシャドー勢に藤原が3列目から関わっていくなど、全体の重心が高いためスムーズに波状攻撃を繰り出すことができていた。前半の良い流れを継続できた立ち上がりだった。
ただ、54分に鳥取が2枚替えを敢行すると、優勢だった流れが徐々に変わっていく。鳥取は途中出場のボランチ永野のプレーが秀逸だった。中盤から大きく移動するわけではなく、特段派手なプレーを披露したわけでもなかったが、とにかくシンプルに左右にボールを散らし、前が開ければクロスやシュートを素早く選び取っていく判断が正確だった。
縦パスをシャドーが落としてボランチが前を向くレイオフを駆使する鳥取に対して、栃木はボランチ周辺の守備がなかなか決まらなかった。遅れてシャドーがボランチ脇を埋めることで5-4-1化すると、今度は左右CBの攻撃参加を許してしまうことに。鳥取は主に温井と河村の左サイドから前進することで悠々とハーフラインを跨げるようになっていった。
栃木にとって60分前後は我慢の時間帯だった。それまでの良い流れとは一転して守備の時間が長くなった。しかし、そうした状況のなか、追加点を取り切れたことは非常に大きかった。
65分、相手のクロスを川名がクリアすると、五十嵐が上手く収めてカウンター開始。自ら持ち込んでのシュートはDFに阻まれるも、セカンドチャンスを再び自ら振り抜くと、太田が頭でコースを変えてゴールイン。アナウンスを含め、会場の多くの人が五十嵐のゴールだと思っていたが、咄嗟の反応でボールに触れた太田のファインゴールとなった。
追加点の直後に栃木は2枚替えを敢行。棚橋と福森を投入することで、フレッシュな選手で攻守にエネルギーをもたらしたいところだったが、間もなくした鳥取に1点を返される。温井からの背後へのボールに対して途中出場の小澤に抜け出されると、ペナルティエリア内で高橋がファール。このPKを小澤に決められて1点差に。GK川田もコースを読んでいただけに悔しい被弾となった。
2-1にされてからは苦しい時間を過ごすこととなった。前からの守備がなかなかハマらず、重心が低くなったことで、相手のボランチをオープンな状態にしてしまう場面が増加。曽我が最終ラインをサポートし、サイドに流れた温井が配球する鳥取のポゼッションを制御できず、次第にセカンドボール争いでも後手を踏むようになっていった。
終盤にかけて栃木はオタボー、矢野貴章、佐藤祥を投入し、守備の強度をアップ。試合開始から圧巻のポストプレーを示し続けた太田に続くように、オタボーも前線で身体を張って相手のファールを誘発。矢野は前からのプレスを切らさず、佐藤祥もゴール前に押し込められた守備陣を奮い立たせることで、何とか時計の針を進めていく。
再三の鳥取のパワープレーを最後は全員守備で封じた栃木がこのまま逃げ切りに成功。スコアは2-1。薄氷の勝利で勝ち点3を積み上げ、他会場の結果により、最終節にプレーオフの望みを繋ぐこととなった。
選手寸評
GK 1 川田 修平
PKは指先で触れていただけに悔しい1失点となった。
DF 2 平松 航
藤原のFKに合わせたシーンは確実にゴールラインを割っていた。劣勢な時間帯も最終ラインを統率して入ってくるボール弾き返した。
DF 3 大森 博
恐らく負傷は癒えていないと思うが、それを感じさせないパフォーマンスだった。ゴール前の混戦からポストに直撃したシーンは惜しかった。
DF 25 岩﨑 博
相手のロングボールを高い打点で弾き返した。自分たちの攻撃ターンではSB然としたプレーでサイド攻撃に厚みをもたらした。
MF 11 青島 太一
最終ラインをサポートしながら藤原とともにチームに落ち着きをもたらした。劣勢な時間帯も足を止めず、カード覚悟のプレスバックを見せた。
MF 18 川名 連介
対面の伊川に剥がされたりパスが乱れたりとプレー精度がやや物足りなかった。
MF 22 高橋 秀典
90分間タフに上下動した。PKを与えたシーンは大森とのコミュニケーションがやや足りなかったか。
MF 77 藤原 健介
ボール保持の中心となり、チームに落ち着きをもたらしたほか、FKのキック精度も非常に高かった。前からの守備に連動して中盤でカットできたシーンが多かった。
FW 10 五十嵐 太陽
足元の技術はさることながら単騎突破のスピードもかなり速く、結果的にはアシストという形で決勝点を演出した。
FW 32 太田 龍之介
1ゴール1アシストの大活躍。五十嵐のシュートに対して瞬間的にコースを変えてゴールマウスに流し込んだ。2桁まであと1点。
FW 81 中野 克哉
身体が外に流れながらも利き足とは逆の右足で突き刺した。後半にも至近距離でチャンスがあったが、これはGKに阻まれた。
FW 7 棚橋 尭士
守備の時間が長くなったが、交代直後に狭いエリアから中野にラストパスを送ったシーンは棚橋らしい巧みなプレーだった。
DF 8 福森 健太
劣勢の時間帯も前向きの矢印を切らすことなく、出足の鋭いプレスで相手の前進を阻んだ。
FW 80 オタボー ケネス
相手の最終ラインにプレスをかけ続け、被ファールでチームに時間をもたらした。
FW 29 矢野 貴章
短い時間ながらプレッシングの足が止まらなかった。
MF 4 佐藤 祥
夏の中断明けの沼津戦以来の出場。ホーム最終戦のラストを締めた。
最後に
負ければ終わりのホーム最終戦というプレッシャーがかからないはずのない大一番で堂々たる戦いぶりを示すことができたと思う。相手をリスペクトし過ぎず、準備してきたものを粛々と表現し、劣勢の時間も全員が強固な繋がりをもって迎え撃つ。痛い敗戦を喫してからの一週間でこれ以上ないリバウンドメンタリティを見ることができた試合だったといえるだろう。
最終節を残してプレーオフ圏内の6位争いはさらに混迷を極めることとなった。勝ち点56で金沢、北九州、奈良が並び、そこに勝ち点55の栃木が続く。仮に上の3チームのうち一つでも勝ってしまえば、栃木は6位に上がることはできない。よって、完全に他力な状況だ。
栃木としては目の前の試合に集中するだけだろう。ここまで来たらやるべき事をピッチ上で余すことなく発揮して吉報を待つしかない。フクアリで奇跡の残留を決めた2019年、愛鷹でJ2復帰を決めた2017年など、栃木が何かを成し遂げるのは決まってアウェイゲームだ。今回も運命の最終節はアウェイゲームである。舞台は整った。長野の地を黄色と青のサポーターで埋めつくし、ともに歓喜の瞬間を目に焼き付けよう。
試合結果・ハイライト
2025.11.23 14:00K.O.
J3リーグ 第37節
得点 22分 中野 克哉(栃木)
65分 太田 龍之介(栃木)
74分 小澤 秀充(鳥取)
主審 足立 正輝
観客 5807人
会場 カンセキスタジアムとちぎ