
スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 7位

前節はアウェイで5位宮崎と対戦し、3-2で勝利。早い時間帯に相手に退場者が出たことで数的優位になると、前線3人の揃い踏み弾で一気に逆転に成功。直後に1点差に詰め寄られるも何とか逃げ切ったゲームだった。前節からのスタメンの変更は2人。出場停止の青島に代わって中盤には吉野、最終ラインには前節脳震盪の疑いで交代した岩﨑に代わって平松が入った。ベンチにはオタボーに代わって屋宜が入った。
高知ユナイテッドSC 3-1-4-2 15位

前節は鹿児島とアウェイゲームを戦い、1-4で敗れた高知。中断期間前は2連勝で今季最高の8位につけたものの、中断明けは勝ちがなく、これで4連敗となった。9/10には暫定で指揮を執っていた神野卓哉ヘッドコーチが契約解除。立田将大コーチが指揮を執る初陣となる。前節からのスタメンの変更は4人。今夏長崎から加入したジョップセリンサリウは初先発、前節ゴールの三好は4試合ぶりに先発となった。
▼前回対戦のマッチレビュー
マッチレビュー
▼ボールを握る効果が現れた先制点
ここ5試合で4勝1分の栃木が対戦するのは中断明けから4連敗と元気のない高知。開幕戦で対戦した時と比べてエースが引き抜かれ、コーチングスタッフが入れ替わるなどクラブを取り巻く状況は流動的だが、栃木としては自分たちに矢印を向けるだけだろう。今季2度目の連勝をかけたアウェイゲームとなった。
互いにロングボールを蹴り合う展開の中、先にペースを握ったのは栃木。ミドルに構える高知に対してまずは左右に揺さぶることで守備の出方を窺っていく。高知のシステムは5-3-2。栃木はWBが高い位置を取って相手を5バック化できれば、その手前のスペースを使うことができる。5-3-1と対峙した前節宮崎戦と同じ構図であり、ボールを握って押し込めた再現を狙うプランだった。
これに対して高知は全体を右肩上がりにセット。右IHの三好が2トップと並んで栃木の最終ライン(左CB内田)に寄せることで出し手を牽制し、システムのミスマッチを抑えにいく。右利きの内田はボールを受けた際に身体が内側に向きやすく、高知としてはこれをスイッチにプレスをかけていくという整理となっていた。

徐々に栃木がボールを動かすようになると、迎えた13分に均衡が破れる。平松のロングフィードを起点に最後は太田が合わせたゴールだったが、改めて先制シーンを振り返ると、栃木のボールの動かし方は高知の守備をどれも後追いにさせたという点で会心のゴールといえるものだった。
まずは平松から福森へのロングフィードだが、1本のフィードで福森が相手の左WB水野の背後を取ることができている。中野が手前のスペースに下りたことで水野を釣り出し、マッチアップにズレを引き起こした格好であり、ボールを動かすことで背後と手前の両方を相手に突きつけることができたシーンだった。
ボールを受けた福森が相手2枚の間を割るようにドリブルすると、五十嵐を経由して左サイドの川名へ。五十嵐は相手の右IH三好がプレスに出たことで空いたスペースを使うことができ、逆サイドに開いた時点で川名は上月との1vs1を仕掛けることができた。ここに右CB小林が遅れて守備に加わると、今度は中央の太田へのマークが手薄に。後ろでの揺さぶりから太田のフィニッシュまで全ての過程で高知の守備を上回ることができた得点だった。

▼最終ラインのサポートに課題
幸先よく先制した栃木だったが、そこからの試合運びはやや高知の勢いに押されてしまった。
高知は先制を許しても引き続きロングボールを徹底。栃木としては懸命に弾き返していくが、さすがに全てのセカンドボールを収めるのは困難だった。高知は押し込んだ局面ではサイドを中心に思い切りのいい攻撃を繰り返し、14分には左サイドからのクロスが流れると逆サイドでボールを受けた上月が右足を強振。強烈なミドルシュートはGK川田がセーブしたが、先制直後にヒヤリとさせられたシーンだった。
栃木は先制するまでの間は平松や大森から福森へのロングフィードを多用することで、背後へのアクションを起点にサイドから押し込むことができていた。しかし、時間の経過とともに高知の圧力に押されると、次第に手前手前のビルドアップに終始するように。WBを高い位置に押し上げられず、高知の前からの守備に対して受け身になってしまった。
もう少しボランチが分かりやすく最終ラインに下りて4枚回しにするなど、WBが後ろに留まるのではなくボランチが積極的にサポートすることでサイドを押し上げたかった。WBの立ち位置が低いとボールを受けてもすぐに縦を切られてしまい、同時にIHに横も切られてしまう。選択肢を失ったWBが最終ラインに下げることで相手のプレスを招くこととなり、苦し紛れにロングボールを蹴り出す流れが続いてしまった。

栃木の繋ぎに対して縦横から圧縮していき下げさせたところにプレスを浴びせる守備が機能した高知。守備からリズムを掴んでいく中で、攻撃面でやはりクオリティの高さを見せたのは右WBの上月だった。
35分には、栃木を押し込んだ展開で右サイドからカットインすると、左足で振り抜いたミドルシュートはクロスバーを直撃。精度の高いキックのほかに上月はロングスローも投げることができ、少しでも高い位置でスローインを与えると栃木の選手は全員がゴール前に戻らなければならなかった。これも攻撃で重心を上げ切れない要因となっていた。
一方、高知の左サイドの水野はキックのフィーリングが合わないのかクロス精度を欠いたことで栃木としては助かったシーンも多かった。ここは福森の負傷により途中出場した高橋の対人守備が効いていただろう。
徐々に高知が守備からリズムを掴む試合展開となったが、ゴール前では安定したハイボール処理で相手の攻撃を跳ね返し前半終了。栃木が1点をリードしてハーフタイムを迎えた。
▼局面のバトルが際立った後半
前半はシュートを7本ずつ放った両チーム。一転して後半は中盤での潰し合いやゴール前での予測を研ぎ澄ました守備でシュートを打たせない鍔迫り合いのような展開で進んでいく。
両チームに共通したのは攻撃をやり切れないというよりはとにかく集中した守備、粘り強い守備が際立った後半だったといえること。
高知は引き続きジョップと内田優晟へのロングボールを供給していくが、栃木はCB勢がタイトな守備で対抗し、空中戦で先に触られてもセカンドボールを回収させず。身長で劣る内田航平もボールではなく相手に身体を当てることで十分に競らせない守備対応は印象的だった。
ただ、その流れで栃木がマイボールにできても高知の素早いカウンタープレスを受けてしまい、なかなか落ち着いてボールを握ることはできなかった。高知の前からのプレスによって大森がフィードを蹴らされる場面が増え、受け手の高橋も待ち受ける相手2枚に抑えられるようになっていった。
55分にはスローインから右サイドを押し込み、高橋がクロスを上げようとしたところで相手の守備に阻まれてエリア内にボールを供給できず。57分には藤原から背後を取った中野へスルーパスが通ったが、CB深川のカバーによりポケットを取ることができなかった。高知の集中した守備を前になかなかチャンスを作り切れなかった。
67分には高知に決定機。ロングスローからの二次攻撃で押し込むと、カットインした高野が右足で強烈なシュート。これはGK川田のビッグセーブで免れたが、時間の経過とともに高知のロングボールとセットプレー攻勢に受け身に回る時間が長くなっていった。
両チームの交代選手は良い意味でも悪い意味でもチームの流れを変えず、現状の流れに乗るようにプレーしていた印象だった。押し込まれる栃木は飲水タイム明けに投入したディアマンカセンゴールが終始これといった良さを発揮できず。対する高知は途中出場の東家が76分に左足で強烈なシュートを放つなど、交代選手のパフォーマンスも勢いの差を如実に示していた。栃木はGK川田のファインプレーで何とか踏ん張るといった状況だった。
栃木は84分に木邨と矢野を投入してゲームクローズに軸足をシフト。いつもよりやや早めの交代策を切ったことからも高知の圧力を強く感じていたのだろう。それに応えるようにピッチで戦う選手たちは最後まで集中を切らさず、タイトな守備で身体を張り続けることがでにていた。最終盤に4本連続で与えたCKも枠内に飛ばさせなかった。
6分間のアディショナルタイムをやり切った栃木がこのまま1-0で勝利。今季8度目のウノゼロ勝利を達成し、負けなしを6試合(5勝1分)に伸ばすことに成功した。
選手寸評
GK 1 川田 修平
文句なしのMOM。ビッグセーブ連発でチームの勝利に大きく貢献した。
DF 2 平松 航
長身のジョップに対して徹底マークで自由に競らせなかった。正確なロングフィードを何本も通し、そのうち一つが決勝点の起点となった。
DF 3 大森 博
タイトな守備で強度の高さを見せつけた。相手の守備を受けて蹴らされる場面が多く、一つ内側につけられると良かった。
DF 88 内田 航平
クロスに対して相手に身体を密着させることで自由に仕事をさせなかった。途中交代はコンディション面を考慮してのものだろう。
MF 8 福森 健太
立ち上がりから良いスプリントでロングフィードを引き出したが、飲水タイム直後に負傷交代。軽傷で済めばよいが。
MF 18 川名 連介
五十嵐とともにサイド攻撃で存在感を示し、太田の決勝ゴールを鮮やかにアシストした。
MF 47 吉野 陽翔
最終ラインの手前でフィルターとなり厳しい球際バトルに身体を投げ出した。38分にはCKから惜しいヘディングが1本あった。
MF 77 藤原 健介
司令塔としてのプレーはさることながら、守備に切り替わった局面での素早いプレスや相手のシュートコースに身体を投げ出していくなど守備強度の高さを見せた。
FW 10 五十嵐 太陽
川名とのコンビネーションから左サイドを仕掛けた。エリア内に潜り込む回数も多く、あとはクロスやラストパスの精度次第といったシーンを数多く演出した。
FW 32 太田 龍之介
ニアに走り込んで上手くゴールに流し込んだ。これで2試合連続決勝ゴール。
FW 81 中野 克哉
開始早々にバーを叩く思い切りのいいロングシュートを放った。この日も90分間を通して攻守にハードワークした。
DF 22 高橋 秀典
個で仕掛けてくる対面の相手に粘り強く対応した。空中戦の対応も相変わらずの強さだった。
FW 14 ディアマンカ センゴール
空中戦でも走り合いでも相手に上回られた。秘密兵器として期待されていただけに厳しいパフォーマンスだったと言わざるを得ない。
DF 5 森 璃太
自身の守備タスクをきっちりと遂行した。川名の負荷に応じて森を交代カードとして切れるのは地味に大きい。
DF 37 木邨 優人
内田からバトンを引き継ぎ、手堅い守備でクリーンシートに繋げた。
FW 29 矢野 貴章
二度追いプレスやタッチライン際でのボールキープなどこの日もゲームクローズに貢献した。
最後に
GK川田のビッグセーブ連発がなければ勝ち点を落としていたかもしれないことを考えれば、ここ最近で最も苦戦した試合だったといえるだろう。前半途中から高知の圧力をなかなか押し返すことができず、2点目3点目と奪える雰囲気は漂ってこなかった。それでもタフなゲームをゼロで切り抜けて勝ち点3を手にすることができた。長く厳しい夏の戦いを経てチームには「勝ち癖」が付いてきたといえる。
得点シーンでも見られたように、現状栃木にとって得点期待値が最も高いのはサイド攻撃だ。この日はロングフィードからサイドを取ることで前半立ち上がりに押し込むことができたが、WBの重心が下がってからは徐々にチーム全体がジリ貧になっていった。両ワイドの福森も川名も数字に絡む活躍を続けている。サイドの武器を生かすためにも最終ラインでボールを持ったときのボランチとシャドーの関わりはより高めていきたいところだ。終盤戦に向けてもう一つ突き抜けるために乗り越えたいステップである。
試合結果・ハイライト
2025.9.14 18:00K.O.
J3リーグ 第27節
栃木SC 1-0 高知ユナイテッドSC
得点 13分 太田 龍之介(栃木)
主審 小林 拓矢
観客 5006人