栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCのことを書いています。

【紙一重のタフゲームを制す】J3 第26節 栃木SC vs テゲバジャーロ宮崎

f:id:y_tochi19:20250906213015p:image

スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 8位

f:id:y_tochi19:20250907001128j:image

 前節はホームで奈良と対戦し1-1でドロー。プレーオフ圏との差を一気に詰めるチャンスだったが、先制してからの試合運びに課題を残し、1点のリードを逃げ切ることができなかった。前節からのスタメンの変更は1人。吉野に代わって出場停止だった藤原が先発に戻り、ベンチには負傷離脱していた平松が約2ヶ月ぶりにメンバー復帰を果たした。

 

 

テゲバジャーロ宮崎 4-4-2 5位

f:id:y_tochi19:20250908063409j:image

 開幕から好調をキープし、プレーオフ圏を維持する宮崎。前節はアウェイで高知に2-1で競り勝ち、中断明けから全て複数得点での3連勝を飾った。前節からのスタメンの変更は3人。松本は出場停止明け、阿野は3試合ぶり、眞鍋は今季初先発。前線には得点ランクトップの橋本と夏の移籍市場で富山から復帰した武が並び、左SHにはアシストランクトップの奥村が入った。

 

 

▼前回対戦のマッチレビュー

 

 

マッチレビュー

▼宮崎の強さを痛感した20分間

 前節は6位奈良との6ポイントゲームを勝ち切れなかった栃木。プレーオフ圏との勝ち点差を詰めるためにも5位宮崎との直接対決はアウェイながら落とせない一戦となる。

 立ち上がりからペースを握ったのはホームの宮崎。3分、栃木の左サイド攻撃を塞き止めると、中盤でボールを受けたFW橋本がポストプレーで守備陣を打開して前を向き、カウンターを発動。左サイドに広げて再びペナルティエリア内に入ると、左SB下川からのクロスに頭から飛び込んでいった。

 9分には、栃木のロングスローのこぼれ球を回収し高速カウンターを発動。左SH奥村が球際の強さを見せてボールを運び出し右SH阿野にスルーパスを送ると、味方が次々と追い越す中で最後は右SB松本がシュートで攻撃を完結させた。五十嵐の必死の帰陣で対抗した栃木だったが、被カウンター局面で2vs5の状況を作られる非常に危険なシーンだった。

 以降も激しい球際の攻防が繰り広げられる中で、セカンドボールへの出足や五分五分のボールを持ち出す力強さで上回ったのは宮崎だった。チーム全体が繋がって全員で守備を行い、ボールを回収すれば前への強い矢印を押し出していく。時間の経過とともに勢いを増していく宮崎に対して栃木は飲まれてしまった印象だった。

 前線で抜群のフィジカルを見せる橋本や武、カウンター局面で栃木の寄せを強引に剥がしていく奥村が効いていたのは言わずもがな、地味に厄介だったのは古巣対戦となる安田の存在だった。

 この日も4-4-2で守備を行う栃木は太田と五十嵐の2トップで相手の出し手に制限をかけていきたいのだが、安田が適宜最終ラインに加わるとプレスがハマらず。栃木の1列目を越えてからは立ち位置を取り直して2トップの背中でボールを捌くなど、栃木としてはなかなか捕まえることができなかった。

f:id:y_tochi19:20250913180541p:image

 押し込まれる栃木は自陣で守備をした後、攻撃に移行する局面で全くといっていいほど時間を作らせてもらえなかった。宮崎の素早い守備への切り替えをまともに受けてしまった格好である。前節の反省を踏まえ、この試合ではマイボールを大事にしようという意識は見えたが、後ろでボールを回しているうちに中盤の選手がコンパクトな陣形の中で覆い隠されてしまった。出し手と受け手が繋がれず、太田頼みの長いボールもそれだけでは厳しいものがあった。

 自陣に釘付けにされた栃木だったが、そうした展開の中で試合を大きく左右する出来事が起こる。20分、最終ラインの背後に抜け出した武に対して内田が対応すると、体勢を崩した武がそのままGK川田と接触。このとき武の払った足が川田に当たったとして藤原が声をかけにいくと、藤原に対して乱暴行為を行い一発退場のジャッジ。これで栃木は早い時間帯に数的優位に立つこととなった。

 

 

▼我慢して数的優位を生かす

 それでも先に試合を動かしたのは宮崎だった。33分、自陣からロングカウンターを発動すると、左サイドでドリブルを開始した奥村が中野のプレスに対して体幹の強さを見せ、青島と福森をスピードで振り切り、プルアウェイの動きをした橋本へスルーパス。橋本がGK川田との1vs1を冷静に沈め、1人少ない宮崎に先制を許してしまった。

 退場や飲水タイム、岩﨑の治療など失点直前の時間帯は試合がぶつ切りに止まるような状況だった。そこから試合が再開し、すぐの時間での失点である。ドリブル突破する奥村にこれだけ剥がされてしまえば、もはや数的優位など関係ない。大森も引いて構えるのではなく一歩前に出て相手を遅らせるアクションを取るべきだった。注意しなければならない時間帯にチーム全体でアラートさを欠いてしまった。

 リードを許した栃木はここから自分たちのポゼッションで宮崎のコンパクトなブロックの攻略に挑んでいく。

 1人少なくなった宮崎の陣形は4-4-1。栃木の横の揺さぶりに対して根気強くスライドを試みるが、出し手にプレッシャーがかからないままではさすがに限界があった。栃木が左→右→左とボールを1往復させることで宮崎はスライドが間に合わず、ピッチを幅広く使う栃木のポゼッションに振り回されるようになっていった。

 前向きでボールを持てるようになった川名に対して右SBが出てくれば、広がったCBとの間のスペースを五十嵐や青島が突撃。宮崎はボランチの安田がカバーに走らされる機会が増えていくと、次第に右SHの阿野を下げて5-3-1で対応するようになっていった。

f:id:y_tochi19:20250913180547p:image

 宮崎の右サイドの重心が下がったことで時間とスペースを与えられたのが栃木の左CB。脳震盪のアクシデントにより岩﨑に代わって急遽平松を投入することとなったが、左CBに移った内田がこのスペースから中盤へどんどんと入り込むことで、3人目のボランチのように関わることができた。最終ラインに平松を残し、右CB大森は後ろと前のバランスを見つつ、左CB内田はボランチ化。1失点目以降は数的優位を生かして完全にハーフコートゲームを展開することができていた。

 そうして押し込んだ流れの中で手にしたのが45+4分、45+6分の得点である。どちらのゴールも最終ラインの選手たちが高い位置でボールに関与し、前がかりに畳み掛けるように攻撃を繰り出したことで、それぞれゴール前で五十嵐、中野にわずかな時間とスペースが生まれた。

 栃木が前半のうちに逆転に成功し、2-1でハーフタイムを迎えた。

 

 

▼ ゲームスピードの加速に苦しむ

 後半に入ってからも引き続き主導権を握ったのはアウェイの栃木。序盤はロングボール中心の攻撃で敵陣でのプレータイムを伸ばし、ボールを失えば素早く守備に切り替えることで、宮崎に息付く暇を与えない。相手のエース橋本に対しては平松がタイトにマーク。宮崎にとっては自陣から脱出するのが困難な立ち上がりとなった。

 そして、その勢いのまま54分に栃木が追加点を挙げる。左サイドから藤原を経由して右サイドの福森へ広げると、相手SBの背後に抜け出した中野が折り返し。これを収めた川名が強引にターンして前向きに仕掛けると、相手のクリアが川名の背中に当たり、太田の足元へ。太田が落ち着いて右足を振り抜き、リードを2点に離すことに成功した。

 しかし、直後の55分に失点を許してしまう。ボールを動かす中でフリーになった左SB下川からのロングボールに内田が目測を誤ってしまうと、ボールを収めた阿野のシュートフェイントに守備陣が翻弄されてしまい失点。栃木県出身の阿野は前回対戦に続いてゴール。1失点目と同様にアラートさを欠いた、あまりにもったいない失点だった。

 リードを広げたのも束の間、再び1点差で試合が進んでいく中でポイントとなったのは後半開始から宮崎が施した守備の微調整を越えられるかどうかだった。

 後半の宮崎は前半4-4-1で受け身になってしまった反省を踏まえ、全体のバランスを前傾姿勢の4-2-3気味にし、かつSHが外切りのプレスを行うよう微調整。WBへのコースを切りながら左右CBに寄せることでなるべく前から圧力をかけていこうという狙いが窺えた。背中のWBに対してはボールが出たタイミングでSBが縦スライド。ビハインドの状況ではリスク承知といった守備だった。

 よって、栃木としては最終ラインがプレッシャーを受けるため前半のようにゆったりボールを持つことはできない。早めのリリースを強いられることで前進の精度が落ち、上手くボールを前進できればサイドの深い位置まで侵入できる一方で、WBのところで宮崎のSHとSBの挟み込む守備に捕まる場面も見られるようになっていった。

 64分にオタボーと棚橋を同時投入してもなお流れはそれほど変わらなかった。左サイドではオタボーがスペースを仕掛けたり、右サイドでは棚橋がライン間や背後に顔を出したりと両者ともに持ち味を示していたものの、フィニッシュに持ち込めたシーンは少なかった。どちらかといえば、宮崎が前からの守備でゲームスピードを早めていったことで、栃木は前進する過程で細かいミスが相次ぎ、数的優位を感じない試合運びに終始してしまった印象だった。

 一方宮崎も時計の針が進んでいくに連れて焦りの色は濃く表れていた。前からの守備によるファールや前がかりの背後を突かれた被カウンター局面でのファールによりイエローカードを立て続けに受けることに。それでも橋本へのアバウトなロングボールとそのセカンド回収からの波状攻撃で栃木を飲み込むことに成功。途中出場の吉澤を前線に並べてからはパワープレー気味にロングボールやクロスを送り込む回数をさらに増やしていった。

 試合終盤の栃木は5-4-1で何とか凌ぐような状況だったが、最後の局面でやらせない粘りの守備で対抗できていた。途中出場の高橋や森が献身的な守備で相手のクロッサーを牽制できたこともゲームクローズに当たって大きなポイントだった。7分間のアディショナルタイムをやり切った栃木が3-2で宮崎を振り切り、敵地で貴重な勝ち点3を掴むことに成功した。

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
2失点目は相手のシュートフェイントに対して最終ラインとともにバタついてしまった。

DF 3 大森 博
先制されてからは相手の懐に潜っていくプレーを繰り返すなど、本来の攻撃センスを発揮。攻め込まれる時間帯もタイトな守備で身体を張った。

DF 25 岩﨑 博
一度はプレー可能との判断だったが、45分に交代。まずは身体を休めてほしい。

DF 88 内田 航平
鋭い縦パスを差し込んで2点目を演出した。岩﨑の状況によっては次節も左CB起用の可能性が高いだろう。2失点目の目測誤りは反省点。

MF 8 福森 健太
右サイドで深い位置へもう一つ仕掛けてかのクロスで1点目を演出した。守備でも前から相手を捕まえていく積極性を見せた。

MF 11 青島 太一
厳しい球際バトルに身体を投げ出し、ハードワークでフルタイムをやり切った。前半の飲水タイムに「戦うのはピッチだぞ!ピッチでやれ!」と聞こえてきたのが印象的だった。

MF 18 川名 連介
左サイドの槍として再三の突破を見せた。前半押し込む状況を作り出せたのは間違いなく川名の突破があったからこそ。3点目の背中アシストは前への姿勢がもたらしたものだろう。

MF 77 藤原 健介
相手の強度に振り切られる場面も少なくなかったが、数的優位になってからは中盤で積極的にボールに関わり、司令塔としてタクトを振った。やはり藤原がいるといないとではボールの回りが違う。

FW 10 五十嵐 太陽
1ゴール1アシストの活躍。2点目のシーンでは華麗なテクニックで寄せてくる相手の守備をいなした。仮に中野に繋がっていなかったとしてもPKジャッジだっただろう。

FW 32 太田 龍之介
この日の決勝スコアラー。ラッキーな要素はあったとはいえ、咄嗟に反応してゴールにねじ込むプレーはストライカーである。

FW 81 中野 克哉
1ゴール1アシストの活躍。前を向いた時の判断の早さ、プレーの正確さが際立つ。守備のハードワークは相変わらず。

DF 2 平松 航
スクランブル投入ながら、相手のエース橋本を抑え切った。

FW 7 棚橋 尭士
復帰初戦で安定したパフォーマンスを見せた。終盤は高橋とともに右サイドの奥で時計の針を進めた。

FW 80 オタボー ケネス
長い脚を生かした仕掛けや粘り強い守備対応を見せた。

DF 22 高橋 秀典
相手のSBに早めに出ていくことで前進を牽制した。終盤の被セットプレーではターゲットの江川を徹底マークした。

DF 5 森 璃太
高橋同様、相手のSBに早めに出ていくことで前進を牽制し、ゲームクローズに貢献した。

FW 29 矢野 貴章
短いプレータイムでやるべき守備を示した。

 

 

最後に

 色々あった試合だったがまずは難敵相手にアウェイで勝ち点3を掴めたことを素直に喜びたい。順位はこれで7位に浮上、プレーオフ圏の直下までようやくたどり着いた。

 相手が1人少ない状況で先制を許し、2失点目まで喫したことがこの試合を難しくしたことは言うまでもない。ともにアラートさを欠いた安い失点であり、得点力が高くないチームにとっては御法度なものであった。それでもこの日は攻撃陣が最後の局面でクオリティを発揮し、守備陣を助けることができた試合でもあった。同じ3-2で勝利した沼津戦もそうだったが、そういったミスを覆すだけの得点力もようやく備わってきたといえる。

 ここ5試合で勝ち点13を積み上げてもなお上位との勝ち点差は8ポイントのまま依然縮まらないが、ここで脱落していたらより離されていたのも事実。必死に食らいついたからこそプレーオフを狙うポールポジションに立つことができている。この調子をキープし、上位陣との入れ替わりを虎視眈々と狙いたい。

 

 

試合結果・ハイライト

2025.9.6 19:00K.O.

J3リーグ 第26節

栃木SC 3-2 テゲバジャーロ宮崎

得点 33分 橋本 啓吾(宮崎)

   45+4分 五十嵐 太陽(栃木)

   45+6分 中野 克哉(栃木)

   54分 太田 龍之介(栃木)

   55分 阿野 真拓(宮崎)

主審 酒井 達矢

観客 1341人

会場 いちご宮崎新富サッカー場