スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 18位

前節はアウェイで山口と対戦し、3-4で敗戦。大島と宮崎の得点で二度リードしたものの、2つのオウンゴールが響き、大量失点で敗れた。前節からのスタメンの変更は大森→ラファエルの1枚。熊本戦で負傷したラファエルが最終ラインに復帰し、福島は右WBにスライド。森は左WB起用となった。ベンチには前節デビュー弾を決めた山本桜大が控える。
ブラウブリッツ秋田 4-4-2 10位

リーグ戦中断明けの試合はいわきに敗れたものの、前節はホームで鹿児島に2-0で勝利。秋田らしいアグレッシブなサッカーを90分間体現し、鹿児島の反撃を寄せ付けずに完勝を収めた。スタメン、ベンチともに入れ替えず、前節と同じ18人で今季初の連勝を目指す。
マッチレビュー
■セオリー通りの4-4-2崩し
リーグ戦中断明けから2試合をアウェイで戦ってきた栃木。約1ヵ月ぶりのホームゲームとなる今節は直近で3連敗を喫している秋田が対戦相手。相性の悪いカードとなるが、ホームの利を生かして残留圏への足がかりにしたい一戦となった。
立ち上がりから主導権を握ったのはホームの栃木。フィジカルを前面に押し出してくる秋田に対して集中した守備と矢印を外すボール回しで自分たちの時間を作っていく。
秋田はFWが2人ともターゲットになるが、どちらかといえば青木に向けて長いボールを入れることが多かった。よって栃木から見て左サイドにボールが飛んでくることになるが、これにはラファエルが高さと強さで対抗。しっかりと前に弾き返し、適切な距離感で構えるボランチ勢がボールを回収。右サイドへ広げる形は立ち上がりから何度も作ることができた。
ポゼッションに移行すれば4-4-2崩しのセオリー通りにボールを動かしていく。最終ラインで相手の出方を窺いつつ、相手のSH-SB間に構えるWBにボールが入れば、シャドーがCB-SB間を抜け出していく。大島の抜け出しのほか、大島の動きを利用して宮崎の足元に差し込むなど、サイドのミスマッチを生かした攻撃は念入りに準備してきたことが窺えた。

秋田は栃木の最終ラインに対してプレスをかけることはせず、ミドルゾーンに構える守備を採用していたため、栃木は先手先手でボールを回すことができていた。特に右利きの選手が揃う右サイドでは相手に対して遠い位置にボールを置けるため、左サイドよりも前進はスムーズ。左サイド起用の森は背後にボールをつける際に内側に持ち出す必要があり、蹴り出したボールの跳ね返りが眼に当たり負傷してしまった。
左利きの大森が入ってからもあまり攻撃面で変化は見られなかったが、チームとして効果的に繰り出せていた右サイド攻撃に重きを置いたイメージだったのだろう。右サイドからは前記したとおりサイドのミスマッチを生かして次々とチャンスを作り出していった。
前半最大のチャンスは37分。坂からギャップで待つ大島にボールが入ると、半身でコントロールした大島はワイドの福島へ展開。大島はそのまま右のポケットを取りに行き、福島からパスを受けると切り返してマイナスの折り返し。神戸のシュートは相手DFに阻まれたが、その二次攻撃で大島がふわりとしたクロスを上げると、宮崎のヘディングがバーを叩いた。

この一連の流れは秋田戦に向けて準備してきたものを遺憾無く発揮できたシーンだったと言えるだろう。オープンな状態の坂を起点に中央とサイドを使い、相手ボランチがサイドのカバーに入ったところで栃木のボランチがフィニッシャー役になる。シュートを打った神戸はバイタルエリアでフリーの状態であり、最後の宮崎のフィニッシュも含めて、その後の展開を踏まえれば決めておきたいシーンだった。
秋田の攻撃に目を向けてみれば、右サイドにボールを入れてもなかなか自分たちの得意とする展開に移行できなかった。ターゲットの青木はラファエルに分が悪く、セカンドボールもボランチ勢に加えて交代前は森に拾われてしまい、そこから一つ二つと繋がれると長い距離を帰陣しなければならない状況だった。
飲水タイム以降はそれまで左寄りにポジションを取っていた梶谷を大森に当てるように工夫したが、今度は後方からのロングボールの精度を欠き、エンドラインを割ってしまうシーンも少なくなかった。この点、平松はラファエルとコミュニケーションを取りながら最終ラインを高く保ち、ボールを流す判断を的確に行うことができていた。
それでも秋田は32分や40分のようにセットプレーを含めて波状攻撃を繰り出す場面も作ったが、これにはラファエルや宮崎が高さで対抗。マイボールに移った流れで神戸が下りる4枚回しで展開を落ち着かせるなど、 秋田の土俵に乗らずに試合をコントロールすることができていた。
■流れを失ったいくつかのポイント
栃木ペースで進んだ前半とは一転、後半は時間の経過とともに秋田が主導権を握る展開で進んでいく。
立ち上がりは前半同様に逆サイドにボールを広げる展開でサイドから押し込むことができていた。51分には宮崎のポスト受けを神戸が回収し、青島から右サイドの福島へ。敵陣でルーズボールを回収し、シャドーとボランチの中央4枚でテンポよく繋いで左サイドの大森へ広げたシーンもあった。
前半との違いで言えば、右サイドの坂や福島に対するプレスが前半と比べて早くなったことが挙げられる。秋田側からすれば栃木の右サイドに早めにフタをすることで、前半後手を踏んだサイドのミスマッチを解消する狙いだっただろう。福島は低い位置でプレスにさらされ、サイドに流れてボールを受けようとする大島もCB河野のスライドに対応されるようになった。

こうした秋田の守備対応に対して栃木は解決策を見出せなかった。55分には宮崎がポストプレーから大島に1タッチでスルーパスを送るも、大島はわずかにオフサイド。66分にはその大島と青島に変えて川名と玄理吾を投入して右サイドのテコ入れを図ったが、これも秋田の圧に飲み込まれた。
川名を投入した意図としては、CB河野に対してスピードのミスマッチを突きつける狙いだっただろう。プレスを回避しながらボールを引き出すためにワイドに流れる川名に対して、河野は長い距離をスライドしなければならない。ボールを受けてからのアクションで河野の矢印を外し、右サイドに起点を作る狙いだった。玄理吾は右からの繋ぎを安定させるタスクを与えられていただろう。
しかし、73分に河野に待ってましたとばかりに迎撃されると、徐々にルーズボールの奪い合いでも秋田の圧力に上回られるように。玄理吾のもとにはボールが入らず長いボールが増え、宮崎が相手CB2枚に対して空中戦を強いられる場面が増えていった。
セカンドボール争いでは秋田のダブルボランチに加えて同時投入された畑と水谷の二人がチームにパワーをもたらしていた。前線の吉田も空中戦でラファエルに大きくクリアさせず、中盤勢に前向きの奪い合いを促していく。栃木は自陣から脱出できず、66分のセットプレーの流れから放った奥田のフィニッシュがこの日最後のシュートだった。
80分以降は完全なる防戦一方だった。83分にはビルドアップのミスから諸岡にゴール前に持ち込まれるも、玄理吾の決死のスライディングで対応。87分には左からの折り返しに反応した諸岡に対して大森が身体を張った守備で事なきを得ると、89分、90+1分にはGK丹野のビッグセーブで失点を免れた。特に90+1分のシーンはGK丹野のセーブに加えてラファエルのスーパークリアが飛び出したが、シャツを引っ張り足を高く上げたクリアはファールのジャッジでもおかしくなかった。
試合はこのまま0-0で終了。前後半で主導権が大きく入れ変わった試合は互いにとって悔いの残る勝ち点1の痛み分けとなった。
選手寸評
GK 27 丹野 研太
劣勢の最終盤にビッグセーブを2つ。勝ち点1を引き寄せた。
DF 2 平松 航
DFリーダーとしてラインを高く保ち、背後へのボールを流す判断も良かった。後半は相手の圧力に押されて苦しい展開となったが、最後の局面で踏ん張った。
DF 13 坂 圭祐
前半は福島や大島と繋がって右サイドを支配したが、後半秋田が左SHを入れ替えてからは長いボールでプレス回避する場面が増えた。
DF 33 ラファエル
高さと強さを遺憾無く発揮した。ラファエルの持ち味が十分生きた試合展開だったが、終盤にかけて大きく弾き返せなくなっていった。後半ATにはスーパークリアでピンチを凌いだ。
MF 10 森 俊貴
立ち上がりにボールを顔面に受けた影響で早めにピッチを退いた。
MF 22 青島 太一
右サイドから押し込んだ前半は相手のブロック手前でフリーになれるため、中央に差し込むパスを選択肢として持つことができていた。
MF 23 福島 隼斗
前半は相手の出方を見ながら上手く右サイドから前進できていたが、相手に修正された後半は守備の時間が長くなった。
MF 24 神戸 康輔
前半は味方の弾いたボールをよく回収し、サイド展開できていた。前半終盤に見せたような最終ラインに下りて展開を落ち着かせるプレーを後半もできると良かった。
FW 15 奥田 晃也
前半のようにチーム全体の重心を上げられると奥田の即興的なアイデアが生きやすい。20分には背後に抜け出して相手GKと1vs1になったが、CBの帰陣も早く、シュートはGKに阻まれた。ああいう決定機を決め切りたい。
FW 19 大島 康樹
相手のブロックの間に顔を出したり、CB-SB間を抜け出したりと、特に作りの部分で前半は相手にとって嫌な存在となった。
FW 32 宮崎 鴻
相手の屈強なCBに対して90分間フルで空中戦をやり切った。左CKをファーで合わせた34分のシーン、右クロスに合わせてバーを叩いた37分のシーンのどちらかは決め切りたかった。被セットプレーでは終始ニアゾーンを埋め、多くの場面で弾き返した。
MF 6 大森 渚生
前々節と同様にスクランブル投入された。左利き左サイドのため前を向きやすいが、ラファエル、奥田との連携は少なかった。87分には被決定機を身体を張って防いだ。
MF 16 玄 理吾
セカンドボール争いで後手を踏んだが、83分にはゴール前1vs1の場面で身体を張った守備で最後の一振りをさせなかった。
FW 18 川名 連介
停滞した右サイドの起爆剤として投入されたが、CB河野に対応され、前を向けなかった。
FW 38 小堀 空
少ない出場時間では見せ場を作ることはできなかった。
最後に
勝ち点2を失ったと言うべきか、勝ち点1をもぎ取ったと言うべきか、見る人によって評価の分かれる試合になったとように思う。4失点した次の試合をゼロで抑えられたことは少なくともポジティブな要素であるが、勝ち点3の芽が十分あった試合を落としたのも事実である。熊本戦のように決して良い内容ではなくても得点によって試合をコントロールできた試合もあるだけに、詰まるところペースを握った時間帯に得点を取り切ることの重要性を改めて実感させられた90分だった。
試合結果・ハイライト
2024.8.17 19:00K.O.
栃木SC 0-0 ブラウブリッツ秋田
得点 なし
主審 椎野 大地
観客 8315人
会場 カンセキスタジアムとちぎ