栃木SCのことをより考えるブログ

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【必然の逆転負け】J2 第31節 栃木SC vs 水戸ホーリーホック

スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 18位

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 前節藤枝戦は0-1で敗戦。藤枝の巧みなポゼッションに対して終始プレスがハマらず、攻撃面でも迫力不足を露呈した。残留圏内の熊本とは依然4ポイント差であり、ホーム連戦で差を縮めたいところ。

 前節からのスタメンの変更は3人。奥田は2試合ぶり、神戸は3試合ぶり、藤谷は9試合ぶりに先発入り。大島は5月25日の愛媛戦以来のベンチスタートとなり、夏の加入から連続出場していた坂はメンバー外となった。

 

水戸ホーリーホック 3-4-2-1 15位

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 前節は千葉に大敗したものの、中断明けから白星を重ね、残留争いから抜け出しつつある水戸。中断時は0ポイントだった降格圏との勝ち点差も今では9ポイントに広がり、降格ライン栃木との直接対決でさらなるアドバンテージ確保を狙う。

 前節からはGKを松原から富居に変更。富居は夏に湘南から加入してこれが初出場。フィールドプレーヤーは4試合連続で同じラインナップとなった。

 

 

マッチレビュー

■積極的かつアグレッシブ

 水戸との対戦はここ3試合連続で2-2のドロー。その前も2-3というスコアが示しているとおり、ここ最近は乱打戦がこのカードのスタンダードとなっている。残留争いに身を置く両チームだがこの日も慎重な立ち上がりとはならず、前半早々に栃木が試合を動かすことに成功する。

 6分、ラファエルからのロングボールに抜け出した宮崎が相手CBの前に身体をねじ込むと、中央へ折り返し。福島のキックが再び宮崎のもとへ渡ると今度は自ら左足でゴールに沈めた。5試合ぶりの先制点で幸先良くリードを奪うことに成功した。

 先制点によって勢いを増した栃木は水戸のボール保持に対して前からの守備を次々と機能させていく。この日の栃木にはここ最近のミドルに構えて相手の出方を窺うような慎重な姿勢はなく、試合開始から積極的に、アグレッシブに相手に襲いかかっていくような鬼気迫るものがあった。前半はこれで完全に水戸を呑み込むことができた。

 

 水戸のボール保持は3バックにボランチの長井が加わる4枚回しが基本形。これに対応するように栃木は特に右サイドが非常に積極的にアクションを起こすことができていた。

 水戸の長井が決まって左側に下りるため狙いを定めやすいという点はあっただろう。長井に対して南野が寄せていき、福島は大崎にアプローチ。右サイドが大きくスライドするため右CBには広い守備範囲をカバーすることが求められたが、久々先発の藤谷が持ち前の機動力を生かして対応。坂に変えて藤谷を起用する采配は非常に意図を感じるものだった。

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 4枚回しのサイド(大崎、牛澤)にはそれぞれ福島、奥田がプレッシャーをかけ、プレー精度を落とさせた上で次の局面で回収する。前の限定が効いているためボランチも予測してインターセプトを狙うことができ、内側に潜り込む大崎に対しては青島が、中盤に顔を出す甲田に対しては森がジャストのタイミングで寄せることができていた。

 前半はこれがことごとくハマり、中盤で頻繁にボールを回収することができた。ショートカウンターを次々と繰り出し、水戸を自陣に張り付かせ、長いボールは平松とラファエルが久保に対してダブルチームで抑え込む。さながらハーフコートゲームといっても過言ではない内容だった。

 ただ、16分の失点に繋がるPK献上のシーンでは、その過程でプレス連動が緩んだ。南野と福島の呼吸が合わず大崎に持ち運ばれると、草野とのワンツーで藤谷が釣り出され、福島が新井と1vs1に。これで最終ラインがイレギュラーな状態となり、CBが下がった手前のスペースに折り返されると、カバーに入った神戸の戻りがファールの判定となった。

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 試合後のコメントで福島が1失点目について反省の弁を述べているが、それでもその後は強気の姿勢を貫いたことで同様のシーンが生じることはなかった。仮にひっくり返されてもプレスバックで対応する。22分の森、35分の南野の戻りは素晴らしく、前で奪えなければ戻れば良いという強気のスタンスが窺えた良いシーンだった。

 29分にはCKから追加点。青島のインスイングに藤谷がニアで合わせると、GKの前で福島がコースを変えてゴールイン。この日の守備のキーマンになっていた2人によって貴重な追加点を挙げることに成功した。CK獲得のきっかけとなったのは右サイドからのショートカウンターであり、まさに理想的な形だったといえるだろう。栃木が1点リードでハーフタイムを迎えた。

 

 

■徹底に対して有効打を打てず

 激しい雷雨の影響でハーフタイムに試合は1時間40分ほど中断。雷雨が過ぎ去ってからはクラブスタッフ、ベンチ外の選手総出でピッチの水たまりを取り除き、21時40分という過去に例のない時間での後半開始となった。

 重馬場なピッチを見越して先に動いたのはビハインドの水戸。4枚替えを敢行し、システムを3-4-2-1から4-4-2に変更。戦い方も後ろから繋いで組み立てるのではなく、素早く長いボールを送り込んで2トップを走らせるものへと舵を切ってきた。

 前半とは一転してキック&ラッシュに割り切った水戸の徹底ぶりは凄まじいものだった。ワンサイドに選手を集結させてロングボールを放り込み、セカンドボールには鋭い出足で襲いかかる。栃木が苦し紛れにタッチラインに逃げれば、大崎がロングスローを入れることでセットプレー化。そのたびにペナルティエリアに帰陣しなければならない栃木は水戸の二次攻撃、三次攻撃を跳ね返せず、水戸の圧力を受け続ける防戦一方となった。

 そうして劣勢のまま迎えた58分、再三の被セットプレーを耐えることができず、CKから失点。途中出場の長身CB楠本に平松が振り切られ、完璧に合わせられてしまった。

 これでスコアは2-2。後半の徹底によって主導権を完全に握り、同点に追い付いた水戸はさらに勢いを増していく。これに対して栃木は66分にイスマイラを投入。奥田に変えてイスマイラの投入はメッセージ性のある交代策に思えたが、前線にツインタワーを並べてからも劣勢の状況は何一つ変わらなかった。

 もちろん、ピッチ上では相手の出方を踏まえた微調整の一端は見ることができた。宮崎が相手CBと競り合うのではなくボランチと競り合うことができるようなロングボールを入れたり、大外でWBがボールを受ければシャドーがポケットを取りに行くなど。ただ、そのいずれもが水戸の圧力を押し返すほどの有効打にはならなかった。

 こういう時こそGKを交えたポゼッションで自陣で時間を確保したり、前からのプレスを抑えてでもセカンドボール回収に注力する時間を作る必要があると思うが、ピッチ上ではそうした取り組みを見ることができなかった。ようやく落ち着いて試合を展開できるようになったのは逆転を許した80分以降だった。

 栃木の最後の交代カードは90+1分の2枚替え。押し込めるようになったことで大森の左足と山本のセカンドボール回収に託した格好だったが、明らかに遅すぎる交代だった。少なくともそれまで出ていた選手は逆転されるまでの間説得力あるプレーを見せられていなかった。ハーフタイムの水戸のように何かを変えようというベンチの積極性がこの日の栃木には欠けていた。

 試合はこのまま2-3で終了。栃木にとっては残留圏内が遠のく、痛過ぎる逆転負けとなった。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
3失点目はセービングのタイミングをズラされた。

DF 2 平松 航
2失点目は楠本に高さで上回られ、3失点目は中島への対応でアラートさを欠いた。

DF 17 藤谷 匠
CB兼SB的な役割を担った。後半は自身のサイドを攻め込まれて後ろ向きの対応を強いられ、前へ弾き返せなかった。

DF 33 ラファエル
後半は猛然とハードワークしてくる相手FWに対して空中戦でもルーズボール対応でも後手を踏んだ。

MF 10 森 俊貴
前半は前からのプレスに連動し、中盤に落ちる選手もよく潰せていた。サイド突破では森らしい推進力を見せたが、クロス精度を欠いた。

MF 22 青島 太一
前半はこぼれ球やセカンドボールへの予測が冴えていたが、一転して後半は相手に上回られた。

MF 23 福島 隼斗
1ゴール1アシストの活躍。タフな役割となった右サイドで結果を残した。後半は自身のサイドを攻め込まれた。

MF 24 神戸 康輔
前半は相手WBの背後にボールを送るなど最終ラインの手前で試合をコントロールした。後半はセカンドボールを拾えず、保持で時間を作ることもできなかった。

FW 15 奥田 晃也
前半は縦パスをダイレクトで味方に預けるなど攻撃にアクセントをつけた。後半立ち上がりは奥田を起点にいくつかチャンスを作ったが、戦術上の理由で早めの交代となった。

FW 32 宮崎 鴻
背後への抜け出しと身体の強さで先制点をマーク。後半は空中戦で勝てなくなり、背後への動き出しも減った。

FW 42 南野 遥海
前半はプレスのスイッチを入れて、福島とともに右サイドを制圧した。後半はポケット侵入を狙ったが、CBのスライドに対応された。

FW 9 イスマイラ
宮崎とツインタワーを組んだが、セカンドボールを拾えない問題は変わらず。後半ATには豪快なプレーでゴールまであと一歩に迫った。

FW 45 山本 桜大
90+1分からの投入では何もできなかった。

MF 6 大森 渚生
90+1分からの投入では何もできなかった。

 

 

最後に

 特殊な状況で迎えた後半にチーム力の差が表れたと言えるだろう。リードしている栃木としては動きにくいという事情はあったにしても、これだけ劣勢を強いられれば何か分かりやすい打ち手を施す必要があったのではと思う。交代策でもピッチ上の選手の意識共有でもいい。そこがあやふやなままだったのが実際であり、逆転されるのを指をくわえて待っているようにしか見えなかった。パーフェクトだった前半が霞むようなあまりに消極的な姿勢だった。

 残り7試合で残留圏内の大分とは勝ち点6ポイント差。得失点差を考えれば実質7ポイント差。いよいよ降格が現実味を帯びる状況となってきた。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.9.15 19:00K.O.
栃木SC 2-3 水戸ホーリーホック
得点 6分 宮崎 鴻(栃木)
   17分 久保 征一郎(水戸)
   29分 福島 隼斗(栃木)
   58分 楠本 卓海(水戸)
   73分 中島 大嘉(水戸)
主審 川俣 秀
観客 6678人
会場 カンセキスタジアムとちぎ