スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 18位
前節は首位横浜FCにドロー。相手を圧倒する時間を多く作るもゴールが遠く勝ち切れなかった。中3日となる今節はアウェイ大分に乗り込む。スタメンの変更は契約上出場不可の福森に代わって大島が左WBに入ったのみ。タフな連戦のなか良い感覚を掴んでいるメンバーで勝利を狙う。
大分トリニータ [4-4-2] 9位
下平監督を招聘し1年でのJ1復帰を目指す大分。直近の公式戦であるルヴァンカップ鹿島戦からは中3日となるが、リーグ戦と完全ローテーションを組んでいることからこの日の出場メンバーは実質中6日。2戦連発中の野村をはじめコンディションの良さで優位を見せられるか。
大分のボール保持に手を焼く
栃木としてはビルドアップに長ける大分に対して熊本戦の後半や横浜FC戦のようにプレッシングからショートカウンターを量産する展開の再現を狙っていたのは間違いない。中3日、遠方アウェイという難しい状況下でメンバー変更を最小限にとどめてきたことがその証拠である。ここまで試してきた様々な組み合わせのなかで最もやりたいことを表現できるのがこのメンバー構成ということだろう。
4分、トカチがペレイラを釣り出して左サイドでキープすると、大島が右足でクロスを供給。GKの弾いたこぼれを谷内田が狙うもシュートは相手ブロックに阻まれた。10分にも自陣で回収してからのカウンターから得た直接FKのチャンスを谷内田が蹴るもGKのセーブにあった。
立ち上がりの栃木はカウンターから大分の懐に入ることができていた。しかし、時間が経つにつれてプレスで奪い切るシーンは徐々に減っていき、どちらかと言えばハイプレスによる前傾姿勢を逆手に取られてしまうシーンの方が多くなっていったように思う。
例えば16分のシーン。三竿から内側に絞った渡邉に縦パスが入ると、その落としを受けた下田がダイレクトで呉屋をスペースに走らせるパスを供給。グティエレスは何とか並走してついて行き、クロスは大森がカットしたことでピンチには至らずに済んだ。
また19分には、トカチをかわしたペレイラが前を向いた状態で右サイドのスペースに流れる長沢へパスを通している。ここでもグティエレスはサイドに流れての対応を余儀なくされており、オーバーラップして入れ替わった伊東を倒したことでイエローカードを提示された。
いずれのシーンもそれぞれ左右のCBである鈴木と大森の背後を使われたもの。内側に絞った大分のSHを迎撃しようとする意識が強いあまり、前がかりになったことで後方に大きなスペースを作ってしまった格好である。
ハイラインを敷くチームは背後のスペースに送り込まれるボールの精度を下げさせるために、ボールホルダーに対して高い位置からプレッシャーをかけることが求められる。ただ、この日の栃木はGK高木やボランチの一枚が加わることで手厚くなった大分のバックラインを制限し切れなかった。せめて入ってきたボールに対して厳しくアプローチできれば良かったが、受け手となる2トップは体の使い方が上手く、受け手のサポートも早かったため、なかなか捕まえることができなかった。
よって、大分のボール保持を止めきれない栃木は30分頃から自陣で構える時間が増えていく。背後のスペースを埋めたことでそれまでのようなピンチは減ったものの、同時に相手ゴールを脅かす機会も減少。重心の低いチームに対してベンチから檄が飛んだのもこの時間帯である。あくまで難しいコンディションにおいても引いて構えるのはこの試合におけるスタンスではなかったのたろう。
40分過ぎにようやく前に出られるようになると右サイドから何度かチャンスを創出。45分、黒﨑との連携から谷内田がハーフスペースに侵入した場面はCB三竿を釣り出せていただけに精度次第では決定機であった。上述の4分のシーンでもそうだったが、シャドーの動きに対して大分のCBはサイドに釣り出されることが多かった。薄くなったエリア内、もしくはボランチが埋めたことで生じるバイタルエリアのスペースはもう少し活用したかったところである。
苦しいながらも凌ぎ切る
後半栃木はいくらか自陣からのボールの運び出しを大事に行っていたように見えた。大分の枚数を合わせてくるプレスに対して西谷がボールサイドに顔を出して数的優位を作りつつ、ボール保持が安定すれば左CB大森がWB大島の外側を駆け上がっていく。可変を交えながら相手を引き付けるようにボールを動かすことで前線にスペースと時間を届けることを意識していたように思う。
一方大分は前半課題となっていたアタッキングサードでの手詰まり感を解消するべくテンポを意識した攻撃を展開。ダイレクトやスルー、裏抜けを交えることで守備側の目線を変えさせるような攻撃を繰り出していく。
とりわけ厄介だったのが右SH野村の存在。栃木のボランチ脇のスペースに下りてくるタイミングが絶妙で、巧みなボールタッチから大裏を回る伊東や呉屋へスルーパスを供給。アタッカー気質の高い逆SHの渡邉に比べて野村はゲームメイク能力が高く、上手く止め切れたと思っても今度は薄くなった逆サイドに振られて香川にクロスを入れられるなど、野村を起点とする攻撃には終始手こずった。
劣勢が続く栃木は60分に山本、植田、小堀を投入するが流れは変わらない。ボランチ脇やライン間でボールを引き出すSHに対して寄せ切れず簡単に前を向かれてしまう。
そのなかで一人テンポを変えられる存在として目立っていたのがボランチに投入された植田。71分に裏抜けする小堀へ通した浮き球はオフサイドの判定になったが、確実に大分DF陣の虚をつく間合いだった。79分にも鋭い縦パスを小堀に通すなど攻撃にアクセントをつける働きを見せてくれた。全て枠を外れてしまったが、途中から出てきて強引に振り抜いたミドルシュート3本は立派なものである。
終盤の栃木はどうしても連戦の疲労を隠せない印象が色濃く残った。最終ラインはなかなか押し上げられずライン間からアーリークロスを許す場面も散見。それでもバックラインを中心に何とか踏ん張りながら最後の局面で体を張って凌ぎ切った。苦しいなかでもクリーンシートを達成し、なんとか勝ち点1をもぎ取ったといえる試合だった。
最後に
試合全体を通して終始苦しかった。プレッシングから大分を慌てさせる場面はほとんど作れなかったし、数字上は上回ったシュート本数も実際にどれだけ大分ゴールを脅かすものであったかを考えれば手放しに評価するのは難しい。
それでも金沢戦や新潟戦のように苦しい展開から自分たちのミス絡みで勝ち点を献上してしまった頃からは前進しているのは間違いない。力のある降格組との連戦を無失点で乗り切り、特にこの日は中3日のアウェイゲームという難しい状況下で達成していることも成長を感じる。
次は中2日でのアウェイ山口戦。栃木的にはお得意様であるが油断すれば足元をすくわれる。粘り強く戦い途切れさせなかった良い感覚を是非ぶつけてほしいところだ。
試合結果・ハイライト
得点 なし
主審 中村太
観客 3348人
会場 昭和電工ドーム大分