栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【雑感】今季のチーム編成について

 新チームが始動して約二週間が経ちました。栃木SCも新体制発表を終えてだいたいの陣容が見えてきましたので、今季の編成についてポジションごとの感想を書いていきたいと思います。

 

GK

1 川田 修平 27歳/19試合/7年目

25 青嶋 佑弥 22歳/新加入

41 藤田 和輝 21歳/2試合/新加入

 オビ、岡、東が抜けた穴を新加入2人が埋める3人体制でスタートしたGKチーム。

 編成を見てまず思ったのがオーバー30歳クラスのベテランGKが不在なこと。2021年なら岡大生、2020年なら塩田仁史、2019年ならユヒョンのようにこれまでのGKチームには頼れるリーダーがいましたが、今年はここ数年で最も若い組み合わせになりました。よって、在籍7年目となる川田がGKチームの最年長に。こういう環境に身を置かせることで川田のメンタル面の成長を促しているような感じもします。もとは20代そこそこで加入した川田がこうやって若手の指南役になるというのは感慨深い感じがしますね。

 コーチの立場で彼らを支えるのが湘南から加入した齋藤誠一GKコーチ。湘南ではアカデミー部門を含めてGKコーチを長らく歴任し、近年では谷晃生を代表GKまで育て上げました。青嶋や藤田ら若いGKにとっては刺激になる要素のはずです。

 プレー面では今季はGKにも繋ぐ場面と蹴る場面のジャッジが求められるでしょう。新潟やヴェルディほど後ろから緻密にビルドアップすることはないと思いますが、相手のプレッシングを引き込めるくらいには自陣ポゼッションができれば理想です。相手を引き込んでからロングボールを蹴り出しその先で受け手が収められれば一気にカウンターチャンスになります。キック力の面でオビ退団の影響はあると思いますが、アルベルト監督のもとでプレーしてきた藤田にはボールを配球するスキルに期待したいところです。

 強いて言えば3人体制という人数面の少なさは不安点としてあげられます。他チームを見るとコロナ禍や過密日程を考慮して4人以上の体制にしているところも多く、緊急時にはピンチヒッターとしてユースからの2種登録もあるかもしれません。

 とはいえ、編成としてはわりと面白い陣容になったと思います。2シーズン連続でレギュラーを明け渡したリベンジを誓う川田、新潟時代の活躍で栃木サポーターに鮮烈な自己紹介をした藤田、関東大学リーグ1部で最少失点をマークした青嶋。チャンスを掴めれば3人それぞれに出場機会はあると思います。

 

CB

15 大谷 尚輝 26歳/17試合0G0A/新加入

16 カルロス グティエレス 30歳/8試合0G0A(J1)/新加入

20 三國 ケネディエブス 21歳/24試合0G0A/2年目

22 小野寺 健也 24歳/23試合1G0A/2年目

35 鈴木 海音 19歳/0試合/新加入

40 井出 敬大 20歳/0試合/3年目

 チーム全体を見ればそれなりに戦力維持には成功した今季の栃木ですが、唯一例外と言えるのがCBのポジション。なんと言っても柳の退団は影響が大きく、一気に点取り屋とDFリーダー、そしてキャプテンを失う格好となりました。その相方を務めた乾も退団が決定し、今季は最終ラインをイチから再構成する必要があります。

 おそらく最終ラインの構成は3バックが基本路線になるでしょう。湘南のアカデミー部門を指揮したときから時崎監督は3バックを愛用しており、昨季の福島では状況に応じて4バックを混じえる程度でした。守備の大黒柱を2枚失った直後なのでまずは多少守備的でも3バックをものにすることで安定感を得て欲しいと思います。実戦レベルでの4バックはそれからの導入でも遅くないでしょう。

 キャラクター的にもSB・WBと右CBを兼用できる大谷、鈴木は3バックシステムと相性が良く、またあらかじめWBがサイド高い位置に張ることできればカルロス グティエレスの高いフィード能力を生かすこともできます。福岡時代は怪我の影響で出場機会を得られませんでしたが、プレー映像を見る限りは左右に振り分けるロングフィードには相当自信を持っている印象。スペインのクラブで長くやってきたスペイン人ということでマイボールを大事にする素養もあると思います。

 レギュラーを張った時期とベンチにも入れなかった時期の両方を経験した三國と小野寺にとって今年は勝負の年になるような気がします。プレーの波が目立った三國はJ1に戻れるか真価を試す一年に、残留争いのワンダーボーイになった小野寺は去年定着できなかったDFラインへの再挑戦になります。小野寺は経歴的にも柳と重なる部分が多く、今季のDFリーダーに推したい選手です。同じく契約更新組で唯一の左利きである井出には戦術的な幅を広げるためにもぜひ左CBにハマってくれることを期待したいです。

 とにかく今年のCB陣にはシステム的にもスタイル的にも勇気をもってプレーしてほしいと思います。特に3バックはその構造的にどれだけ前に出て相手の攻撃の芽を摘むことができるかが注目ポイントになります。後ろに残している枚数を考えれば、バランスを気にして留まるよりもアグレッシブに相手ボールを狩りに行く。逆にそこが難しいようだと5バックで押し込まれてしまうため、ここは勇気をもって取り組んでほしいところです。また、攻撃面ではWBを高く押し上げるためCBにも繋ぐことが求められるため、併せてチャレンジしてほしいと思います。

 

SB・WB

2 面矢 行斗 23歳/21試合1G3A/2年目

3 黒崎 隼人 25歳/20試合0G1A/4年目

19 大島 康樹 25歳/30試合1G1A/5年目

30 福森 健太 27歳/18試合1G1A/新加入

 右は黒崎、左は福森と面矢を中心に、大島が両サイドをカバーするという陣容になった今年のSB。人数を見ると少ない印象も受けますが、複数ポジションをこなせる大森や磯村が左サイドを、CBの大谷や鈴木も右サイドを兼用できることを踏まえれば人員不足ということはないでしょう。

 SB・WBはアウトサイドを主戦場とすることから、やはり最も求められるのがクロス精度です。Football LABによると、昨季の栃木はクロスからの得点が3点しかなく、これは降格した相模原と並んでリーグ最下位の成績でした。昨季の栃木は中央攻撃を意識しつつ、相手がゴール前を固めてくればサイドに開いてクロスという形を基本としていたため、サイド攻撃の優先度は高くないというエクスキューズはありました。ただ、それでも流れからクロスに至る機会は多かっただけにもう少しアシスト数は増やしたかったのが正直なところです。

 そういう意味では新体制発表直後にリリースされた福森の加入は大きいと思います。プレー精度と運動量を高いレベルで持ち合わせている福森は、2020年にはリーグ3位の8アシストを記録。J2に復帰した北九州の躍進を支えました。正確なクロスはさることながらセットプレーのキッカーとしても計算できるため福森のキックに懸る部分はかなり大きくなると思います。

 3バックのWBなら縦への推進力を生かして森や松岡も起用可能だと思いますが、個人的にはビハインドの攻撃全振りモード以外はあまり効果的ではないと思います。彼らの良さはあくまで守備「も」できることなので、はじめからWBで守備に重きを置くよりは前のポジションで起用して守備にも走れるほうが良いような気がします。ただ、今季は前線の選手数が飽和気味なので、そことどう折り合いをつけていくはポイントになると思います。

 

ボランチ

4 佐藤 祥 28歳/38試合2G2A/3年目

7 西谷 優希 28歳/36試合1G1A/5年目

17 山本 廉 22歳/25試合1G0A/5年目

18 大森 渚生 22歳/新加入

24 神戸 康輔 21歳/新加入

33 磯村 亮太 30歳/7試合0G0A/新加入

 上田と松本が退団し大卒ルーキー2人とベテランの磯村が加わったボランチ。引き続き2ボランチの採用が濃厚な栃木にとっては十分な人員となりました。

 去年までの活躍を見ればやはり佐藤と西谷をファーストチョイスに推す声は多いでしょう。ともに田坂栃木の中核を担い、厳しい残留争いを戦うなかで間違いなくチームに不可欠な存在となりました。どちらかが欠けることもなくコンビで残せたのは本当に大きいと思います。最低限ここを維持できればチームの軸はブレないと思っていたので、新しい背番号をまとった二人には引き続きチームの心臓として牽引していってほしいと思います。

 昨季のボランチセットを残せたことで守備面の心配はないですが、攻撃面でどれだけのクオリティを発揮できるかは懸念点。昨季は西谷が後ろでサポートし、その分佐藤がゴール前に顔を出すなど役割をある程度分業していましたが、彼らが前線のアタッカーを効果的に生かせたかは微妙なところでした。上田や松本を補強したことから昨季も地上戦のクオリティを相当意識していたと思いますが、ハイプレス戦術にプレー強度が追いつかず、攻撃面の特徴を発揮する以前に出場機会を確保することができませんでした。

 佐藤と西谷の双璧に割って入るには昨季頓挫したこの課題を乗り越えられるかがポイントになるでしょう。今年は3バックを基調に前からのプレッシングは多少マイルドになると思うので、新加入でも昨季ほどハードルは高くないような気がします。今年は水曜開催の試合も多くなるため新加入選手、特に大森と神戸の大卒ルーキーズには早いうちに戦力化してほしいところです。

 前線の選手数を考えればそろそろ山本を本格的にボランチ起用する可能性もあるでしょうか。ビハインド時などスクランブル的に起用されることはこれまでもありましたが、サポーターのなかには根強い待望論もあると思います。ボールを持ったときの姿勢が良く基本技術が高いうえに、体付きもガッシリしてきて守備強度も問題なし。左利きという特徴も踏まえれば案外双璧を割って入ってくるのは山本になるかもしれません。

 

トップ下・SH・シャドー

10 森 俊貴 24歳/38試合5G4A/3年目

11 ジュニーニョ 27歳/30試合2G0A/2年目

13 松岡 瑠夢 23歳/22試合0G0A/2年目

14 谷内田 哲平 20歳/14試合3G2A/2年目

21 トカチ 21歳/17試合7G1A(J3)/新加入

23 植田 啓太 19歳/7試合0G0A/2年目

27 五十嵐 理人 22歳/3試合0G0A/2年目

 [4-2-3-1]なら3、[3-4-2-1]なら2のところに入る、いわゆる二列目と呼ばれるポジション。瀬沼や宮崎もここで起用できることを考えれば、人数的に十分過ぎる編成となりました。様々な組み合わせを試すことができる一方で、3バックの場合はここから2人しか選べないのは監督にとって贅沢な悩みといえるかもしれません。

 今年も2列目の選手はサイドに張り出すというよりは内側に入ってFWと近い距離感を取ることが多くなるでしょう。あくまでサイドはSB・WBを香車として生かすためのゾーンと考えてよいと思います。

 アタッカーが内側に入るということは相手の守備対応が自ずと厳しくなるため、ボールを失わないキープ力や少ないタッチ数でリリースできる技術と判断力が求められます。引き続き栃木での武者修行を決断した谷内田や植田はここのスキルで他の選手よりも秀でているため、チームがクオリティを求めたときには必ず出場機会が回ってくるでしょう。

 また、FWと近い距離感でプレーするということからセカンドストライカー的な役割を担うのもこのポジションの特徴。森、ジュニーニョ、松岡は昨季の出場時間を考えれば得点に直接関わる回数は少なかったと思います。守備でも計算できるため起用しやすい選手だったと思いますが、近年個人昇格を果たした明本は守備の貢献に加えて攻撃面でも突き抜けたクオリティがありました。結局のところアタッカーは残した数字が評価を大きく分けるだけに、自身の価値を高めるためには結果にこだわる必要があります。

 二列目は特に年齢構成が若く、日本人選手の年長者はなんと大卒3年目の森となりました。年長者だからといって気負うようなタイプではないと思いますが、昨季はなかなか背番号10に見合う活躍を見せられず苦しんでいただけに、今季に懸ける想いは大きいはずです。

 新加入のなかでも特に異彩を放っているトカチは最大のライバルになるでしょうか。時崎監督とともに福島からやってきたトカチはとにかくインパクトあるプレーが魅力のひとつ。守備面を考えれば多少ピーキーな存在だと思いますが、監督が手綱の握り方を熟知しているのは心強いところ。しばらくは途中から流れを強引に変えるスーパーサブ的な役割になるのではないでしょうか。

 ちなみに個人的には何かミラクルが起きそうなトカチとジュニーニョの外国人タッグによる2シャドーを見たい。

 

FW

9 瀬沼 優司 31歳/33試合6G2A/新加入

29 矢野 貴章 37歳/41試合4G0A/3年目

32 宮崎 鴻 22歳/新加入

38 小堀 空 19歳/1試合0G0A/2年目

 最前線は年代のバラけた長身FWが集まりました。どのシステムを採用してもこの4人で一枠を争うことになるためスタメン争いは熾烈になりそうですが、過密日程と5人交代制を考えればそれなりに出場機会は与えられるでしょうか。

 補強の目玉は豊田とトレードのような形で8年振りの復帰を果たした瀬沼。前回所属時はあまりの大活躍にレンタル元に引き上げられるという栃木にとっては憂き目を見ましたが完全移籍で加入した今回は心配無用。2年間ほぼ出ずっぱりだった矢野の負担を減らすどころかレギュラーの最有力候補であり、プレースタイルもまさに今の栃木にぴったりな選手です。何より加入コメントのエモさには期待せずにはいられません。

 昨季はアウェイ琉球戦以外の全ての試合に出場した矢野。これまでの活躍ぶりを見れば38歳を迎える今季もFWの軸になると思いますが、超過密日程となった2020年の夏場にコンディション不良に苦しんだことを考えれば、フルシーズンを任せ切りにするのは難しいような気がします。それだけに昨季の41試合出場はとんでもない稼働率だと思います。

 矢野と瀬沼が先を走るなか、ベテラン勢に挑むのが大卒ルーキーの宮崎とユース卒2年目の小堀。駒澤大から加入の宮崎は大学最後の大会となるインカレで優勝を果たすなど即戦力としての期待値は高いでしょう。ユース卒の選手が一人前になるのには3年かかると言われるので、小堀には途中出場からでも少しずつ出場機会を増やしていってほしいところ。

 攻守で重要な役割を担うFWですが、大事なのはチームの一員としてプレーすること。上手い下手ではなく、チームのために闘い、走ることでチームの勝利に貢献することが求められます。この前提をしっかりクリアした上で、数字を残すストライカーが現れることに期待したいです。

 

※選手データは、年齢(2/19時点)/昨季リーグ戦実績(試合数・得点・アシスト)/在籍年数