栃木SCのことをより考えるブログ

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【選手別レビュー vol.1】栃木SCの2024シーズンを振り返る

 

試合ごとの選手寸評(背番号1~14)はこちら

 

 

1 GK 川田 修平

2試合/180分/2失点

ベンチからチームを支える

 今季の出場はカップ戦2試合を含む計4試合のみ。丹野が正GKを務めたためここ数年では最も少ないプレータイムとなったが、その一方でチームで唯一公式戦全試合にメンバー入りするなど、セカンドGKとして常に試合に絡み続けた。

 中島やキムらバックアップメンバーと比べれば実績に大きな差があるとはいえ、全試合にエントリーするのは素晴らしいことだろう。年間を通してコンディションに波がなく、離脱を要する怪我もなかった証拠である。いざという時に川田が万全の状態で控えているためチームにとって非常に心強い存在だった。

 今季の川田で印象的だったのは常にベンチの最前線に立ってピッチで戦う選手を支えていたところだ。交代でピッチを退いた選手に真っ先に声を掛け、ロングスローの際には自らボールやタオルを渡すなど、ベテランに差し掛かった選手としてベンチで出来る最大限のサポートを心得ていた。

 すでに契約更新がリリースされ、来季は在籍10年目を迎える。チームで唯一前回のJ3を知る選手なだけに、過去の経験を生かして節目の年を昇格で飾りたい。

 

 

2 DF 平松 航

30試合/2576分/2得点/0アシスト

リーダーとしてもがいた1年

 大卒2年目ながら今季は副キャプテンに就任。佐藤祥や福森がシーズン当初に負傷離脱したことから、今季はほとんどの試合でキャプテンマークを巻くこととなった。

 彼らが不在の中、キャプテンとして求められるリーダーシップを試合ごとに成長しながら見せてくれたが、同時にそれが重圧となって平松自身を苦しめていたようにも見えた。失点を減らすことができず勝てない試合が続くなか、腕章を巻く選手として悔しい想いをしていたに違いない。ユース時代の恩師である田中前監督の契約解除にも胸を痛めていたことだろう。

 平松自身のパフォーマンスで言えば、昨季と比べて安定感が増し、堂々とプレーしていたように見えた。昨季苦戦した大柄な選手に対しては寄せ過ぎず離れ過ぎずの守備で入れ替わられる場面は減少。前半戦で8失点の大敗を喫した千葉に対して後半戦ではプロ初得点となる決勝弾を決めるなど勝負強さも光った。

 来季も最終ラインの軸として求められるのは今季と同様のものだろう。リーダーシップを発揮し、個人のクオリティをさらに上げることで、悔しい想いをした今季のリベンジを晴らしたいところだ。

 

 

3 DF 黒﨑 隼人

4試合/54分/0得点/0アシスト

熾烈なポジション争いを抜け出せず

 田中前体制ではカップ戦を除いて出番なし。小林体制になった直後に4試合に途中出場したが、その後はメンバー入りできず、今季限りでの契約満了が発表された。

 やはり3バックを採用するチームにおいて勝負できるポジションがWBしかなかった点は大きく響いたように思う。4バックであればサイドをSHとSBで分け合うことができたが、一つのポジションを争うとなると、小林監督は守備にもハードワークできるSHタイプの選手を優先していた印象である。縦への馬力やクロスを武器にする黒﨑だが、ワイドの選手に違いを生み出すスキルを求める小林監督にとってどこか物足りない部分があったのだろう。

 アカデミー時代から約12年間を過ごしたクラブとはここでお別れ。新天地でも黒﨑らしい力強いプレーを見せてくれることに期待したい。

 

 

4 MF 佐藤 祥

9試合/720分/0得点/0アシスト

ピッチから離れて分かる存在感の大きさ

 昨季は出場停止を除く40試合に出場。相棒西谷優希がチームを去った今季は中盤の柱としてさらなる活躍が期待されたが、第2節山形戦(●1-3)で負傷すると、再びピッチに戻ってくるまで約半年を要することとなった。

 佐藤祥の離脱は栃木にとって非常に痛かった。中盤での守備が十分に機能せず、セカンドボールの奪い合いでは相手に上回られ、前からのプレスも中盤で塞き止められずに掻い潜られる場面が頻発。長いボールとハイプレスに軸足を置く栃木にとって要所を締める選手の不在は致命的であり、プレーで味方を鼓舞できる精神的支柱を欠いたという意味でもその影響は大きかった。

 その分復帰してからの存在感は圧倒的だった。第32節鹿児島戦(〇2-1)の後半からピッチに戻ると、そこからチームは安定感を取り戻し、出場した7試合での失点はわずか2つ。第34節愛媛戦(△1-1)では持ち前のボールハントからショートカウンターを発動し大島のゴールの起点に。キャプテンの復帰でこれだけチームが変わるのを目の当たりにしてしまうと、やはり長期離脱を悔やんでも悔やみ切れないところである。

 ただ、最も悔しい想いをしたのはキャプテンながらピッチに長期間立つことのできなかった佐藤祥本人に他ならないだろう。降格した日の光景を忘れないと語った最終戦セレモニーの言葉を胸に、来季は悔しさを原動力にして再びフル稼働する姿を見せてほしい。

 

 

5 DF 大谷 尚輝

16試合/929分/0得点/0アシスト

執念のラストイヤー

 改めて脳震盪の怖さを思い知らされることとなった人も多いだろう。選手としてこれから脂の乗る時期を迎える大谷だったが、今季限りでの現役引退が発表された。

 今季は開幕当初こそメンバー外が続いたが、第6節大分戦(〇2-1)から徐々に出場機会を得ていくと、第10節水戸戦(△2-2)でついに先発に。その後も順調にプレータイムを伸ばしていたが、リリースのとおり第15節徳島戦(●0-1)を最後にしばらく戦列から離れることとなった。ちょうど小林監督が就任したタイミングだった。

 復帰後の第32節鹿児島戦(〇2-1)では、相手と競り合ってから時間差でピッチに倒れ込み、そのまま負傷交代。特別激しい当たりではなかったように見えたが、脳震盪が疑われるための緊急な交代だった。ちょうど9月ごろに引退を決めた背景にはこの出来事が影響を与えたのかもしれない。

 ただ、そうした状況を考えれば、引退を周囲に伝えずフラットな競争から再びレギュラーに返り咲いた終盤戦は大谷のプロフェッショナルな部分がよく表れていたといえるだろう。その間に降格は決まってしまったが、先発したラスト4試合で失点は1つのみ。最後に意地を見せた大谷の勇姿は栃木サポーターにしっかりと刻み込まれたに違いない。

 

 

6 MF 大森 渚生

34試合/1935分/1得点/1アシスト

「計算できる選手」から突き抜けたい

 今季もほぼほぼフル稼働した大森だが、過去2年と比べて先発出場を大きく減らしたシーズンだった。小林監督が就任してからの22試合では7試合のみ。とりわけ後半戦という括りで見れば、わずか4試合の先発に留まった。

 黒﨑の項でも述べたことだが、小林監督が求めるWB像はやはり個で違いを生み出すことのできる選手なのだろう。この時期大森に代わって出場機会を得ていたのは森や川名といったアタッカー勢。唯一のサイドプレーヤーとなるWBは生かすだけではなく生かされる選手にならなければならず、その点で監督からの評価が伸び悩んだように思う。

 その一方で、先発から外れてもほとんどの試合にベンチ入りし、決まって途中出場していたことを考えれば、監督からは計算できる選手としてベンチに置いておきたいという評価だっただろう。第25節熊本戦(〇2-0)では前半10分に急遽投入されるとファーストタッチでの得点を含む1ゴール1アシストの活躍。ラスト2試合では途中出場でボランチを任せられるマルチロールぶりを発揮し、ベンチスタートでも高いパフォーマンスを見せた。

 2022年末に締結した複数年契約は今季で終了。大卒から3年間で100試合以上に出場し、攻守に安定した活躍の見込めるレフティとなれば少なからずオファーはあるだろう…と思っていたところで水戸への移籍が決定。複雑な心境ではあるが、頑張ってほしい。

 

 

7 MF 石田 凌太郎

25試合/1791分/1得点/2アシスト

背番号7を背負う覚悟

 名古屋からの期限付き移籍を延長した今季は背番号を31から7に変更。西谷優希から伝統の7番を受け継ぎ、闘志を剥き出しにしたプレーでチームを盛り立てた。

 背番号7を背負う覚悟はプレーの一つ一つから感じ取ることができた。守備に回る時間が多いチームにおいてサイドをタフに上下動するだけでなく、時には中央に絞って身体を投げ出すシュートブロックを披露。対人守備も非常に強く、FW出身とは思わせないほどのパフォーマンスであった。チャンス時にサポーターを煽る姿は今やお馴染みになり、会場を湧かせて一体感を生み出せる稀有な存在でもあった。

 今季のハイライトは第36節清水戦(●0-1)。負ければ降格という試合で開始早々に突き刺した豪快なミドルシュートは惜しくもオフサイドとなったが、その後も気迫溢れるプレーを連発。とりわけ名古屋時代の先輩にあたる吉田豊とは一触即発の激しいマッチアップを繰り広げるなど、気持ちの強さを前面に押し出した姿は非常に印象的だった。

 来季の去就は現時点で未定。1年半の在籍期間で背番号7を背負ったが、J3降格となると保有元の名古屋もシビアに考えるだろう。石田を招いた山口SDがチームを去ったことも影響するかもしれない。

 

 

9 FW イスマイラ

17試合/428分/1得点/0アシスト

昨季のような理不尽さは見せられず

 昨季は京都からレンタルで加入していたため、時崎監督が退任した時点で慰留は難しいと見ていたが、完全移籍でチームに残留。背番号をエースナンバーに改め、本領発揮といきたいところだったが、消化不良のシーズンとなってしまった。

 正直なところ、今季のイスマイラはどれを取っても物足りなさが否めなかった。ロングボールのターゲットとしては宮崎の圧倒的な強さに及ばず、ファーストDFとしては貢献度で矢野に及ばず。身体能力の高さも抑え込まれてしまい、昨季見せた相手DFを薙ぎ払うような理不尽ともいえる力強さは完全に鳴りを潜めてしまった。

 途中出場からジョーカー的な役割をこなせれば良かったが、シーズンを通して挙げた得点は第11節鹿児島戦(●1-2)の1ゴールのみ。その後就任した小林監督のもとでもアピールに成功したとはいえず、終盤戦はメンバー外が定位置になってしまった。来季も小林監督が続投することを考えれば、今季をもっての契約満了はやむを得ないといえるだろう。

 

 

10 MF 森 俊貴

33試合/1656分/0得点/2アシスト

小林体制ではWBの一番手に

 3バック継続となったため今季もWBを主戦場とすることとなったが、田中前体制では出場機会の確保に苦しんだ。主力の福森が離脱したなかで両翼の石田、大森のポジションを脅かすことができず、先発は彼らが同時に出場停止となった第14節藤枝戦(●0-1)の1試合のみだった。

 彼だけの責任ではないが、この時期の森はプレーエリアが低く、攻撃面で良さを出せているとはいえない状況だった。マンツーマン要素の強い田中前体制では相手のサイドアタッカーに立ち位置を引っ張られてしまい、いざ攻撃に転じてもスタートを切る位置が自ずと低くなってしまう。推進力が武器とはいえ自陣ゴール前からそれを発揮するには難易度が高かった。

 一方、小林監督が就任してからはプレータイムの増加とともに徐々に良さを取り戻していったように見えた。第18節熊本戦(●1-3)で宮崎の得点をアシストしたクロスは森の特徴が十分に現れたもの。少しの当たりでは押し負けない力強さは他の選手にはない武器だった。それでいて守備強度も高く、タフさを兼ね備えている点で森に匹敵する選手はいなかっただろう。

 小林監督のもとではWBの一番手として左右両サイドでプレーし、ベンチからの登場も含めて全試合に出場。栃木の象徴の一人なだけに残留してくれることを祈りたいが、去就やいかに。

 

 

13 DF 坂 圭祐

7試合/536分/0得点/1アシスト

右CBとして即フィット

 今季加入したガンバ大阪ではルヴァン杯で約10分間プレーしたのみ。リーグ戦ではベンチ入りできず、夏の移籍市場で活躍の場を栃木に移すこととなった。

 加入直後は試合勘の少なさが心配されたが、夏の中断期間を経てからは3バックの右CBに定着。この時期の栃木は全体を右肩上がりにセットしていたため、坂は4バックの右SBの位置にスライドするような格好だったが、そこから内側を駆け上がったり、ボランチのように最終ラインからボールを引き出したりと、攻撃にアクセントを加える役割を卒なくこなしていた。第28節甲府戦(●1-2)でラファエルの得点をアシストしたクロスは坂の攻撃参加から生まれたものだった。

 第30節藤枝戦(●0-1)のフル出場を最後にメンバーを外れたままシーズン終了となった点は少々気になるところ。ベンチ入りすらなかったことを考えれば、おそらくコンディション不良によるものだろうか。若手が多い来季の最終ラインを束ねる存在として、ぜひチームに留まってほしい選手である。

 

 

14 MF 土肥 航大

2試合/54分/0得点/0アシスト

メンバー争いに割って入れず

 広島から期限付き移籍で加入。J1での出場実績もあり、2022年の水戸時代の印象もあったため、個人的には期待値の高い選手だったが、出場機会を得られないまま夏にレンタル打ち切りとなった。

 リーグ戦でプレーしたのは第8節千葉戦(●0-8)の後半45分間と第24節岡山戦(△1-1)の9分間のみ。ボールを持ったときのアイデアや技術の高さは随所に見せていたが、そもそものポゼッションが少ない栃木ではそれを生かせる余裕がなかった。5月以降は青島が台頭してきたこともあり、ベンチ入りも難しい状況になっていった。

 夏場にレンタル先を今治に変更してからも出場機会の少なさは変わらず。昇格争いを繰り広げるチームでメンバー争いに絡むことができず、シーズン終了後に広島、今治双方から契約満了が発表された。トライアウトに参加していただけに新天地が無事決まることを祈りたい。