
スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 7位

前節は北九州に0-1で敗戦。一瞬の隙を突かれてPKから先制を許すと、守りを固める相手に猛攻実らず、9試合ぶりに黒星を喫した。プレーオフ圏との差が開き、ホーム連戦で迎える今節は結果に拘りたい一戦となる。前節からのスタメンの変更は2人。棚橋は第14節讃岐戦(〇1-0)以来、木邨は第23節沼津戦(〇3-2)以来のスタメンとなった。五十嵐は今季初めてのベンチスタートとなった。
福島ユナイテッドFC 4-1-2-3 10位

前節はホームに松本山雅FCを迎え、1-0で勝利。前々節は長野に4失点で敗れたが、前節はアンカーに由井、最終ラインに藤谷を起用すると、見事クリーンシートを達成し、3試合ぶりの勝利を飾った。前節からのスタメンの変更はなし。前節J3史上初めて300試合出場を達成した樋口は引き続き左WGで先発。最終ラインの藤谷は古巣対戦となった。
▼前回対戦のマッチレビュー
マッチレビュー
▼守備を軌道に乗せてペースを掌握
前日に6位奈良が敗れたことでプレーオフ圏内に近づくチャンスが到来した両チーム。栃木にとっては前節に引き続きプレーオフ圏内を争うライバルとの直接対決であり、相手を振り払い、再び6位との差を詰めたい試合となった。
試合はボールを握る福島に対してコンパクトな守備からカウンターを狙う栃木という構図で進んでいく。
福島のビルドアップは中央密集型のお馴染みの形。両サイドの選手は幅を取らず、チーム全体がピッチの中央3レーンに集まることで、局面の数的優位を作りやすくする。選手間の距離を狭めることで細かいパス交換から相手を剥がしていく形は、まさに「鳥かご」をイメージさせる繋ぎだったといえるだろう。
これに対して栃木は4-4-2の配置がこの日の基本形だった。棚橋が太田と横並びになり、木邨が左SBを担う。これまで4-4-2は中央を固めることで相手の繋ぎを外回しにし、サイドに追い込んでいく意味合いが強かったが、上記のように福島の攻撃は中央に偏ったもの。決まって中央を経由してくる繋ぎに対して、あらかじめ敷いたコンパクトなブロックの中で次々と絡めとることができていた。
これを前でもミドルゾーンでも体現することができていた。前からの守備ではプレスに連動して藤原がアンカーを捕まえることでビルドアップを牽制。これを嫌って福島がロングボールを入れてくれば平松が矢島の上から弾き返す。
後ろでは大森が前に潰しにいくだけではなく、高橋も内側に絞ることで対抗。これは前回対戦でも右WBに入った森璃太が見せており、対福島仕様といえるだろう。中央では吉野と藤原のボランチ勢が予測を研ぎ澄ませることで、出足のよいプレスから球際の強さを発揮。序盤に藤原がイエローカードを受けたものの、全体としてメリハリのついた守備を示すことができていた。
それでも、立ち上がりは強気に押し出した左サイドの背後を狙われてヒヤリとする場面があった。9分には、長いボールで芦部に抜け出されるとシュートはサイドネットに。14分には、平松がアバウトなボールの処理を狙われると、再び芦部にシュートを打たれたがGK川田がセーブ。手前手前の繋ぎにこだわらず、栃木の失点傾向を踏まえてウィークを突いてきた福島だった。
福島はこれがハマると見るや、後ろで引き付けてからの一発背後を多用。右奥で矢島や芦部が起点を作って中盤に戻す流れから敵陣に入る回数を確保していく。右IHの城定は栃木のプレスに対してサイドに流れて川名-木邨間でパスを引き出したり、ペナルティエリアの外から左足を振っていくなど、積極的にアクションを起こしていた。
福島が攻撃を繰り出していた時間帯も栃木はそれなりにカウンターを打つことができていたが、時間の経過とともに相手の攻撃に慣れ、落ち着いた守備を見せるようになると、30分ごろからは栃木が一方的に押し込む展開に。
とりわけ中野と高橋による右サイドの連携は非常に効いていた。互いに内と外を使い分け、パスを出してからも止まらずに動き続けることで次々とポケットを取ることに成功。4バック攻略の定石である幅とギャップを突きつけることで迫力ある攻撃を繰り出し、相手を押し込んで自陣に張り付けることができていた。守備に切り替わった局面で要所を抑えた吉野の守備対応も圧巻だった。
跳ね返そうにも前線で起点を作れない福島に対してハーフコートゲームを展開したが、決定機らしい決定機を作るには至らず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎えた。
▼再三のサイド攻撃を実らせる
後半は栃木が太田のポストプレーを生かす形でスタート。太田が収めたボールから棚橋が持ち運んでシュートを放った開始数十秒のプレーを皮切りに、シンプルな作りからゴールに迫っていく。
守備では前半以上に高い位置で相手の繋ぎを引っかけることに成功。相手のアンカーを捕まえて攻撃のリズムを遅らせ、そこに周囲の選手が集結することでショートカウンターに繋げていく。フリックやダイレクトで一つ先にボールを運ばれても、後ろの選手が迎撃の目を光らせることで起点を作らせなかった。
苦し紛れに放り込んでくるロングボールに対しては引き続き平松が強さを発揮。平松を前に押し出し、サイドは大森と木邨が広くカバーするという役割分担をはっきりさせることで、ライン間でも背後でも自由を与えなかった。地上線と空中戦を封じ込めたことで、福島にほとんどの場面でハーフラインを跨がせることはなかった。
ただ、栃木にとって悩ましかったのはサイドからの攻撃になかなか精度が伴わなかったこと。流れのなかでサイドの奥は取れるものの、肝心のクロスが味方と合わず、思うようにチャンスを演出することができない。
54分には、前でボールを奪い右サイドから高橋がクロスを上げるも、ボールは流れてファーサイドへ。62分には、川名のクロスのこぼれ球に中野が反応するも、利き足ではない右足のシュートは枠上へ。67分には川名のクロスが右サイドまで流れ、ゴール前に顔を出した高橋がシュートを放ったが、相手のブロックに遭った。押し込んだ割には相手GKを脅かすシーンはそれほど作れなかった。
後半開始から劣勢を強いられた福島は65分に3枚替えを敢行。途中出場の森晃太が左サイドで相手を引き付け、中央に移った樋口を経由して右サイドの清水へ広げる流れから攻撃の形を作っていく。この流れから交代直後に決定機。左→右→中央とボールを動かしてゴール前で細かく繋ぐと、ペナルティエリアの外から城定がミドルシュート。これはGK川田の好セーブにより何とか失点は免れた。
途中投入の選手のパフォーマンスという意味では栃木も五十嵐がよいアクセントになっていたといえるだろう。今季初めてベンチスタートとなった悔しさをぶつけるように溌剌としたプレーを繰り返し、72分には推進力のある持ち出しから放った左足シュートはクロスバーを直撃。これで栃木の攻撃のギアが一段階上がると、試合が動いたのは78分だった。
自陣で福島の攻撃を抑え込むとロングカウンターを開始。中野からのパスを受けた五十嵐はクロスを上げられず、再び左サイドに流れた中野へリターンすると、中野が右足で上げたクロスに合わせたのは太田。後ろからのボールに絶妙なヘディングでコースを変え、ゴール右隅に流し込んでみせた。再三のサイド攻撃がようやく実を結んだゴールシーンだった。
終盤は福島の猛攻に対して集中した守備で対抗。83分にはオフサイドの判定に助けられたシーンもあったが、それ以外は身体を張った守備でチャンスらしいチャンスを与えなかった。特に高橋や途中出場の矢野・福森はそれぞれの持ち味を発揮することで、最終盤の守備を引き締め、時計の針を進めることに大きく貢献てきていた。
試合はこのまま終了し、1-0で栃木が勝利。終盤に1点を取り切った栃木が福島を振り切り、再びプレーオフ圏内との差を2ポイントに縮めることに成功した。
選手寸評
GK 1 川田 修平
相手の鋭いシュートを手元で弾くことなく安定したセービングを見せた。
DF 2 平松 航
前半序盤にロングボール処理を狙われた以外は危なげなく対応。空中戦ではことごとく競り勝ち、背後へのボールに対しても最終ラインを下げずに強気に構えた。
DF 3 大森 博
前への潰し、空中戦対応、どれをとっても申し分ないパフォーマンスだった。決勝点に繋がるロングカウンターは大森の守備から。そのまま自らペナルティエリアまで入り込んでいった。
DF 37 木邨 優人
序盤こそサイドの守備対応に手を焼いたが、動き出すタイミングを見極めてからは前後左右広い守備範囲で相手の攻撃を抑えた。セットプレーでは惜しい場所によく飛び込めていた。
MF 18 川名 連介
仕掛けのキレは見せていたが、ドリブルのタッチが大きくなったり、パスやクロスがズレたりと精度をやや欠いた。
MF 22 高橋 秀典
中野との連携からクロスやCKを量産した。対人守備と空中戦の強さを発揮し、状況を見ながら内側に絞って相手を潰せていた。最後は相手のドリブラーを抑えた。
MF 47 吉野 陽翔
90分を通して球際の強さを遺憾無く発揮した。ボールを次々と狩り取るプレーは佐藤祥を彷彿とさせ、特に相手との走り合いからボールを奪い取ったシーンは圧巻だった。
MF 77 藤原 健介
序盤にイエローカードを貰ったが、最後まで球際で戦っていた。セットプレーのキックがここのところニアで引っかかりがちなのは気になる。
FW 7 棚橋 尭士
前後半の立ち上がりに1本ずつ右足で鋭いシュートを放った。メリハリのついた守備で相手のビルドアップを牽制した。
FW 32 太田 龍之介
殊勲の決勝点。斜め後ろからのボールに対して絶妙な当て具合でコースを変えた。太田が決めた試合は7試合で6勝目。2桁も見えてきた。
FW 81 中野 克哉
前からの守備の足を止めず、次々とカウンターを生み出す起点となり、これをフルタイムで続けた。利き足ではない右足から上げたクロスが決勝アシストとなった。
MF 10 五十嵐 太陽
投入直後から前への積極的な姿勢を押し出し、1点を取り切る空気感を作り出した。自ら持ち運んでの左足ミドルは惜しかった。
DF 8 福森 健太
川名との交代で守備固めに回るのではなく、サイドから仕掛けることで相手のファールを誘った。
FW 29 矢野 貴章
ゲームクローズに大きく貢献。相手を背負いながらシュートを放ち、強引な突破でファールを誘い、ボールキープで時計の針を進めた。
最後に
いかにもリーグ終盤戦らしいヒリヒリした試合だったといえるだろう。ともに守備の集中力が非常に高く、1点勝負が濃厚となるなか、最後まで隙を見せずに終盤訪れた勝負どころをモノにすることができた。スコアレスドローに終わる可能性も十分ありえた試合で、しぶとさや我慢強さを感じさせる、まさに強いチームの勝ち方ができたように思う。
特に、福島のパスワークに巧みに掻い潜られた場面でも対人守備や球際の強さ、攻守の切り替えで互角以上のものを示すことができたことは大きかった。カウンターをなかなか成就させられない展開に焦れることなく、福島に思うようにサッカーをさせなかったことで、最後の最後まで勝ち目を残すことができた。そしてそれをモノにしてみせた。
手強い相手の続く最終盤はこれを再現するに尽きるだろう。周りの勝ち点動向も気になるところだが、自分たちが勝たなければ話は始まらない。これをベースに愚直にやり続けていきたい。
試合結果・ハイライト
2025.10.12 14:00K.O.
J3リーグ 第31節
栃木SC 1-0 福島ユナイテッドFC
得点 78分 太田 龍之介(栃木)
主審 足立 正輝
観客 8718人
会場 カンセキスタジアムとちぎ