
スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 8位

前節はホームで福島と対戦し、1-0で勝利。互いに譲らない一進一退の展開のなか、終盤の太田のヘディングが決勝点となった。プレーオフ圏との勝ち点差は5ポイント。勝ってその差を縮めたいところだ。前節からのスタメンの変更はなし。棚橋が左シャドーで継続して先発となり、五十嵐がベンチスタートとなった。また、岩﨑がベンチから外れ、高嶋が3試合ぶりのメンバー入りとなった。
ヴァンラーレ八戸 3-1-4-2 1位

夏の中断期間前に首位に浮上すると、その後も勝ち点ペースを落とさずに首位の座をキープする八戸。前節はアウェイで群馬に4-0で勝利し、全て無失点での4連勝を飾った。前節からのスタメンの変更はなし。夏に主力選手が移籍してから定着した高橋耕平以外の10人はシーズン当初から先発起用されているメンバー。ベンチは佐々木に代わって高尾が入った。
▼前回対戦のマッチレビュー
マッチレビュー
▼八戸の徹底に圧倒される
ここまで31試合で17失点、クリーンシートは19試合という数字からも分かるように、首位を走る八戸の強みは圧倒的な守備力である。ウノゼロで着実に勝利を挙げていく光景はお馴染みとなっており、敵地に乗り込む栃木としては何としてでも先制点を与えることは避けたい試合だった。
しかし、キックオフから八戸のロングボール攻勢を受けて自陣でのプレーを強いられると、早々にPKから失点を許してしまう。中盤のセカンド争いで上回られ、ゴール前の守備対応で右サイドのカバーに入った吉野が永田を倒してしまい、八戸にPKの判定。これを澤上に決められ、開始6分でビハインドを背負うこととなった。
PKのジャッジについて多少栃木に厳しい判定だったとはいえ、吉野のプレーがファールではないと言い切れない時点で間違った判定とは言えないだろう。ユニフォームを掴んだ上に、切りにいった右足が相手の右足に当たっていることは事実だ。コンタクトの程度は大したことはなかったと思うが、主審からの見え方が良くなかった。吉野にとっては高い授業料となってしまったと言えるだろう。
その後も八戸の徹底したフィジカル勝負を前に思うようにサッカーをさせてもらえない栃木。相手のロングボールに対しては最終ラインの3人や高橋秀典の対人の強さでそれなりにやり合えていたが、どちらかといえば八戸の激しい守備を受けて攻撃がままならず、そこからペースを握られた印象だった。
とりわけ、八戸のサイドに圧縮してくる守備は強烈だった。この日の栃木の攻撃はサイドの関係性から背後を取ろうというもの。シャドーとWBで段差を作ることでマンツーマン気味についてくる八戸の5バックを歪ませ、そこから背後を取ることでポケットに侵入し、よりゴールに近いところからクロスを入れていくプランだった。ただ、そのほとんどでクロスを入れる前に阻まれてしまった。
11分のシーンは八戸の守備スライドが特に際立ったシーンだった。川名が左サイドからカットインすると、右WBの高橋へサイドチェンジ。ボールを受けた高橋はここから縦を窺いたいところだったが、左WB稲積にコースを切られてしまうと、瞬く間に左IH永田のプレスに遭い、サポートに入った大森も澤上のプレスバックに捕まってしまった。

本来5-3-2の3の脇は攻撃の入口にしやすいゾーンだ。ただ、八戸は5バックでピッチ幅をカバーすることでサイド攻撃を遅らせつつ、その間に前線と中盤のスライドを間に合わせ、強烈な寄せで挟み込んでしまう守備を緩めずに徹底していた。個々のハードワークと球際の強さにシステムの持ち味を組み合わせることで潜在的にある弱点を覆い隠していた印象だった。
互いに守備の集中を研ぎ澄ませるなか、15分を過ぎた頃には相手のリズムに慣れたことで栃木もある程度攻撃を繰り出せるように。25分には立て続けにCKを2本獲得。同点に向けて少しずつチームの追い上げが感じられる展開だったといえるだろう。
しかしながら、それも束の間、直後に与えたCKからあえなく追加点を喫してしまう。CKのファーへの折り返しのこぼれ球を永田に押し込まれてしまい、30分で2点を追いかけることとなってしまった。
▼数的優位となり押し込む展開に
早くも2点を追いかけることとなった栃木。前半のうちに2失点するのは今季初めてであり、堅守八戸ということを考えればかなり土俵際に追い込まれた状況だったが、得点直後に試合に大きく影響を与える出来事が起こる。八戸の永田一真の一発退場である。
これで数的優位となった栃木は一方的にボールを持つ展開に。5-3-1で構える八戸が前からのプレスに出て行けなくなったことで最終ラインで余裕をもってボールを握ることができるようになり、ここからは八戸の強固なブロックに挑むという構図となった。
栃木がまず取り組んだのはテンポを落とさずに素早く左右にボールを動かすことだった。ベンチからは「サイド!」「(大森、平松に対して)1つ飛ばして前!」という小林監督からの声がかかっていたように、相手を動かしてスライドに遅れが生じたところに付け入る隙を見出していく狙いだっただろう。
狙い目になりそうだったのは、左右CBの攻撃参加によるサイド攻撃だっただろう。左右に揺さぶることで八戸のスライドを遅らせつつ、シャドー、WBに加えて左右CBが3人目として加わることでサイドの数的優位を作りやすくする。八戸のスライドが間に合えば、栃木はボランチが4人目として参戦する。
全体のバランス的に木邨や吉野が加わる左サイドを起点に、時間がかかれば藤原を経由して右サイドの大森に広げる流れが多かった。高橋が高い位置に張り出して八戸のWBをピン留めし、その手前で中野、大森、藤原がゲームメイクする形も多かった。
41分には吉野から太田へ縦パスが入り、混戦から棚橋がペナルティエリア内で倒されるもノーファールの判定。43分には大森から再び太田の足元へ鋭いパスが入り、落としを受けた棚橋が右足を振るもシュートはGK正面。サイド攻撃を軸としながらもそれだけに拘らず、ブロック手前からズバッと中央に差し込む形も繰り出すことができていた。
中央とサイドからバランス良く攻撃を組み立てたが、ネットを揺らすには至らず。0-2でハーフタイムを迎えた。
▼システム変更への所感
ハーフタイムに栃木は棚橋と吉野に代えて矢野と五十嵐を投入。ボランチを1枚削り、2トップにすることで3-1-4-2に変更し、ゴール前の枚数を増やしていく。引き続き5-3-1で構える八戸に対して一方的に押し込むという構図は後半通して変わることはなかった。
対する八戸は中野誠也を下げて國分を投入。中盤に本職の選手を入れることで守備の強化を図っていく。割り切って守るという意志を固めた交代策だったが、自陣深くに構えながらもボールホルダーへの牽制は切らすことなく行っていた。奪っても無理に攻撃には出ていかず、大きくクリアすることで再びセットして栃木の攻撃を迎え撃つことに徹していた。
ボールを支配する栃木はひたすら左右に揺さぶることで隙を探っていくが、サイドからの攻撃にやや固執し過ぎたように思う。中央を固める八戸に対して攻撃の入口をサイドに設定するのは理解できるが、サイド攻撃に重心を置くのであれば、個人的には3-4-2-1のままでも良かったように思う。
3-4-2-1であれば平松と2ボランチで中央が安定し左右CBの上がりを促すことができるため、シャドー、WB、CBの3人によるサイド攻撃を作りやすい。そこにボランチが+αとして加われば相手から捕まえにくい4人目としてサイドに絡むことができる。前半の吉野のようにボランチから縦パスを差し込むこともできる。
ただ、3-1-4-2にしてからはシャドーとWBの関係性のみに留まり、左右CBが一つ前に踏み込んで効果的に絡んでいくシーンは少なかった。とりわけ左CBは木邨も高嶋も右利きのため、相手の懐での崩しになかなか関われず。サイドに工夫を求める一方で、サイド攻撃は前半よりも動きが少なく、厚くしたゴール前を生かす前段として十分に機能しなかった。
ただ、もちろんこれは結果論である。2トップ化したことで厚みを増したゴール前で得点を取りきってしまえば、何も問題はなかった。チャンスは何度も訪れたが、1点が遠かった。
52分には、左サイドから川名が縦に仕掛け、さらにもう一つ抉ってライン際でボールを残すと、太田の折り返しに矢野が頭から飛び込んだが、ヘディングは相手DFがブロック。再び川名が鋭いクロスを入れるも、中野のシュートは相手DFに阻まれた。
65分には、大森から太田への楔のパスを起点に押し込むと、右サイドからの高橋のクロスをニアで太田が触り、ゴール前でフリーだった矢野が飛び込むも触ることができず。
75分には、途中出場の福森からパスを受けた五十嵐がポケットに侵入すると、中央への折り返しを矢野が足元に収めるも、ゴール前至近距離からのシュートは相手DFの決死のシュートブロックに阻まれた。
77分には、CKの流れから矢野がヘディングで合わせたが、惜しくも右ポストをかすめ、枠内に飛ばすことができなかった。
主に相手ゴールを脅かしたのはこれらのシーンだが、そのほとんどで矢野がゴール前の嗅覚を発揮していた。そのうち一つでも決め切れればよかったが、八戸の身体を張った守備に水際のところで防がれてしまった。これ以外にもクロスを量産し、ペナルティエリアの外からシュートを放つなど栃木が一方的に攻め続けたが、最後まで八戸の堅い守備を破ることはできなかった。
試合はこのまま栃木が数的優位を生かすことができず0-2で終了。金沢、北九州が勝利したため順位を9位に下げることとなった。
選手寸評
GK 1 川田 修平
失点シーンはどちらもノーチャンス。相手の退場以降はほとんど出番がなかった。
DF 2 平松 航
相手の前線の選手と互角以上にやり合えていた。2失点目のシーンではシュートに対して十分に身体を寄せていたが、すり抜けてしまった。
DF 3 大森 博
タイトな守備で相手を潰しにいった。相手が1人少なくなってからは縦パスを積極的に差し込んだ。セットプレーに何度か合わせたが、ミートできなかった。
DF 37 木邨 優人
2失点目のシーンではファーに飛んでくるボールを折り返された。押し込めるようになってからは積極的にサイドを駆け上がった。
MF 18 川名 連介
縦を切られる場面も多く、遠いエリアからのクロスはなかなか味方に合わなかった。52分には縦に仕掛けてもう一つサイドを抉ることでチャンスを演出した。
MF 22 高橋 秀典
最終ラインとともに空中戦の強みを発揮した。後半はクロスに対してゴール前に飛び込んでいったり、ミドルシュートを放ったが、ゴールを脅かすことはできなかった。
MF 47 吉野 陽翔
不運なPK献上となったが、その後はセカンド争いでガツガツと戦い、前半終盤には太田への縦パスからチャンスメイクした。
MF 77 藤原 健介
ボールを左右に揺さぶり後方で試合をコントロールしたが、意表を突く縦パスなどは見られなかった。アンカーよりは2ボランチの一角として神出鬼没に前に絡む方が相手にとっては脅威のように思う。
FW 7 棚橋 尭士
太田と近い距離感を取ることで縦パスの落としから惜しいシーンを二度作った。
FW 32 太田 龍之介
相手CBに抑え込まれてしまい、なかなか起点を作れなかった。ゴール前で足を振れた場面も相手の守備に阻まれた。
FW 81 中野 克哉
立ち上がりに頭部の接触があったが、問題なくやり切った。右サイドの手前でボールを引き出し、ゴール前ではこぼれ球に反応したが、シュートは相手DFのブロックに阻まれた。
MF 10 五十嵐 太陽
後半から出場し、川名との連携からポケット侵入を繰り返した。ライン間でボールを引き出して強引に仕掛ける場面もあったが、ゴールには至らなかった。
FW 29 矢野 貴章
後半から出場し、ターゲットとして前線で奮闘。決まっても不思議ではない場面が4度あっただけに、どれか1つでも決めたかった。
DF 40 高嶋 修也
ロングスローを期待されて12試合ぶりに出場。木邨や岩﨑のように攻撃参加するには若干試合勘が足りなかったか。
DF 8 福森 健太
周りの選手と繋がりながら保持のテンポを上げ、良質なクロスからゴール前で勝負できる場面を何度か生み出した。
FW 9 菅原 龍之助
終盤のパワープレー要員として10試合ぶりに出場。足を振る場面はなかった。
最後に
堅守を武器に首位の座を固めるチームの強さをまざまざと感じた試合だったといえるだろう。2点リード後に退場者が出たことで割り切りやすい状況だったとはいえ、あれだけ一方的に押し込んだなかで、最後まで守り通されてしまうとは正直予想もしなかった。シュート数やゴール期待値、実際の決定機のシーンを改めて見ても1点2点と入っても何ら不思議ではない試合だっただろう。
それだけに入らなかったものは力不足を認めて切り替えるしかない。今季初めて前半のうちに2失点を喫したが、不運なPKとシュートブロックをわずかにすり抜けてしまったものであり、そこまでピンチらしいピンチは作られなかった。だからこそ八戸の強さを感じる部分でもあるが、11人どうしの時間帯も十分にやり合うことはできていた。
表現できていたものはブレずにやり続け、課題には正面から向き合う。次の勝利のために準備することで、この悔しさを金曜日のFC大阪戦にぶつけたいところだ。
試合結果・ハイライト
2025.10.19 13:00K.O.
J3リーグ 第32節
得点 6分 澤上 竜二(八戸)
30分 永田 一真(八戸)
主審 安川 公規
観客 3827人
会場 プライフーズスタジアム