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【6バックゆえの3失点】J2 第12節 栃木SC vs 徳島ヴォルティス(●2-3)

はじめに

ホーム連戦を1分1敗で終えた栃木。惜しいミスや一瞬の隙から勝ち点を取りこぼす試合が続き、暗いトンネルからなかなか抜け出せないといった現状。今節の対戦相手は徳島ヴォルティス。この試合の結果如何では降格圏への転落もありうることから、何としてでも勝利を上げたい一戦となりました。

 

 

スタメン

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栃木SC [4-4-1-1]

ここ6試合勝利のない栃木。悪い流れを象徴するかのように、攻守の要であった岩間が負傷により離脱。そのボランチの位置には寺田が、右SBには森下がともに2試合ぶりの先発となりました。

キャプテン藤原はプロ入りから6年を過ごした古巣との対戦。同じく古巣対決が注目された大﨑は今季初めてのメンバー外となり、代わって榊が今季初のベンチ入りを果たしました。

 

徳島ヴォルティス [4-4-2]

リカ将政権3年目の徳島。J2に最先端の風を吹かせたスペイン人は、今年こその昇格を目指しながらもここ4試合は勝利なしと苦しんでいる様子。

前節京都戦を欠場した清武をはじめ、スタメンを3人入れ替えて5試合ぶりの勝利を目指します。なお、昨年まで2年間栃木に在籍した福岡将太との再開はならず。

 

前半

幸先の良い先制点

まず最初に試合を動かしたのは栃木でした。

前半8分、スローインからの流れ。タッチライン際の右SB森下から中央へダイアゴナルなパスが入ると、バイタルエリアで西谷和希がボールをキープ。外側をタイミング良くオーバーラップした西谷優希にボールが入ると、シュートはディフェンスにブロックされ大黒のもとへ。ミートせずとも絶妙な軌道を描いたシュートがネットを揺らし栃木が先制に成功。大黒の3試合連続ゴール及び2試合連続の先制点となる幸先の良い立ち上がりとなりました。

この日の栃木は立ち上がりから積極的な姿勢を見せていました。特に効果的だったのが前からのプレッシング。大黒に連動してSHやSBが繰り出す矢のように鋭いプレスは、後ろで落ち着いてボールを持ちたい徳島にとっては厄介なものでした。

西谷優希のシュートやそこから生まれた大黒のゴールは単なる偶然ではなく、チームが求めるアグレッシブなアクションサッカーの産物。まさに理想的な流れからリードを奪うことができました。

 

徐々に押し込まれていくSH

徳島はベースのフォーメーションで言えば栃木と同じ[4-4-2]にあたります。しかしこれは守備のときのみ。ボールを保持して攻撃に出るときは次の図のような立ち位置でポジションを取りました。

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超攻撃的の代表格こと、中盤ダイヤモンドの[3-4-3]フォーメーションです。

選手が左右非対称かつ規則的に動くことでできる形の最大の特徴は両SHのポジション。中継でも触れられていたように、高く、サイドに張り出した位置を取るSHは徳島の攻撃の根幹を成していました。そこを支えていたのが左SB内田とFWの一角を担った清武。二人が中盤中央で数的優位を作ることにより、栃木のSHに内か外の二択を強いた時点で徳島としてはもう完成。あとは常に栃木の逆を突いていくことで前進を図る采配に栃木は手も足も出ない状態になってしまいました。

 

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その結果として発生したのが6バック。

幅取り役が気になったがゆえの判断でしょう。試合後、西谷和希も次のコメントを残しています。

--先制後、6バック気味で守るのはプランどおりでしたか?

相手とのミスマッチになる可能性があったので、それは準備していたとおりでした。先制後はとりあえず失点しなければいいと割り切っていたところはあります。

「ミスマッチ」とは幅取り役の選手を気にしてのもの。サイドに大きく張り出した選手に対してSBが対応すると、どうしてもそのSBとCB(例えば森下と田代)の間が開いてしまいます。栃木にとって危険なエリアへの侵入に長けるのが徳島の清武や小西、内田であり、それゆえ栃木としてはSBが対応に行くのは難しい。それならSHが下がって対応するのも仕方ない、といったところでしょうか。盤面上のウィークポイントを突き付ける徳島の設計は栃木の攻撃を沈静化することにも繋がり、まさしく攻守一体を表現するものでした。

 

出し抜かれた対応策

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あくまで6バックは横幅に対応するための手段であり、それ一辺倒にならない抵抗が見られたのは確かでした。その現れがSBの迎撃プレッシングです。

試合中、Twitterのタイムラインを見ていると「和希と優希の場所が入れ替わってる?」という呟きがチラホラ見られたのがその証左。6バック時に特定のマーカーを持たないSBが対面の選手へプレッシングをかけることで、後ろに重くなり過ぎないように、という意図が感じられました。実際に西谷優希はそのままどんどん前までプレスへ行く形が何度か見られました。

 

しかし失点場面では、その対応策が裏目に。

目の前の清武を迎撃しようと前へ出た森下。しかし実際はボールは清武へは渡らず、森下の背後に抜ける内田のもとへ。エリアに侵入した時点で徳島としては狙いどおり。田代の与えたPKを清武が決め、前半のうちに同点を許す展開となりました。

 

前半はこのまま1-1で終了。

 

後半

アンバランスゆえの失点

後半も変わらず6バックの栃木。後ろ4人は難しいにしても5人では駄目なのか。苦渋の判断にせよ、消極采配と言われても仕方のない選択は、後半も自分たちの首を絞めることになってしまいました。

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後半30分、[6-2-2]のフォーメーションでは案の定空いてしまうボランチ脇のスペースを、CBバイスが侵入。サイドの表原とのパス交換の後、前を向いたバイスが思い切りのいいミドルシュートを打つと、風に乗ったボールは弧を描きゴールマウスの中へ。攻撃の糸口が見えない栃木にとっては痛すぎる失点、そして逆転となってしまいました。

もちろんバイスの周辺の状況を見ると、サイドに振られた寺田の対応が遅れてしまったという事実はあります。ただこの場面でボランチの寺田はなぜサイドまで出て守備をしなければならなかったのか。なぜ釣り出された寺田に代わって守備をする中盤の選手がいなかったのか。なぜを辿っていくと結局は6バックという歪なシステムの採用に帰結します。守備強度は最終ラインの枚数に由来しない。守備というものを改めて考えさせるきっかけを得たような気がします。

 

終盤の攻防

逆転を許した栃木。しばらく攻撃の形を作れないなか、後半37分、西谷和希がワンチャンスをものにし、同点に追いつきます。

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今思えば逆転を喫して以降、栃木は6バックから5バックに変更していたように見えました。もちろん攻撃でこそ本来の力を発揮する西谷和希を前に押し出した形で。ビハインドからすぐに追い付いたことは自信になるはずですし、久富からの縦パスを起点に始まった縦に早いパスワークは、今の栃木が最も表現したい形なのではないかと思います。

 

しかし、試合はこれでは終わりませんでした。

後半アディショナルタイム1分、徳島のスローインの流れからともに途中出場の古波津と平岡が被ってしまい中央で野村がフリーに。近い選手から遅れてプレスに行くも全ての対応が後手になってしまいます。栃木の混乱を見逃さなかった岩尾がその中に顔を出すと自ら正面に持ち運んでシュート。GKユヒョンの重心の逆をつくシュートはゴールに吸い込まれ、栃木は終了間際に勝ち越しを許してしまいました。

そして試合はこのまま2-3で終了。徳島は5試合ぶりの勝利、栃木は7試合勝利なしとなりました。

 

最後に

最下位。他会場の結果により降格圏はおろか最下位まで転落した栃木。この時期、42試合のうち12試合を消化した時点では結果がそれほど意味を持たないことは理解しているつもりです。ただ、一度降格を経験しているサポーターにとっては同じ経験をしたくない、その思いが危機感に変わり、声として上がってきているのが今の栃木を取り巻く現状だと思います。

プレシーズン、遅攻のバリエーションを増やしアクションしていくサッカーを目指すも、序盤のうちに現実的なサッカーへシフトチェンジ、そしてリアクション的にマッチアップを採用したサッカーを経て6バックに遷移したのが、ここまでの栃木SCの2019シーズン。各選手のコメントから、現状に対する危機感、練習レベルでの改善を指摘する点が少しずつ垣間見えるようになってきていますが、このままではどうなってしまうのでしょうか。

5月の対戦相手は甲府、大宮、岡山と続いてききます。栃木としては戦績の良くない難敵ばかりです。一日でも早くチームが浮上してほしい。藤原の語った「一個勝てば上向くと思っています」という言葉を信じて、これからもサポートしていきたいと思います。

 

試合結果

J2 第12節 栃木SC 2-3 徳島ヴォルティス

得点 9’大黒(栃木)、25’清武(徳島)、77’バイス(徳島)、83’和希(栃木)、90+2’岩尾(徳島)

主審 笠原 寛貴

会場 鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアム

観客 5,778人

 

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