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【選手別レビュー vol.2】栃木SCの2025シーズンを振り返る

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試合ごとの選手寸評(背番号10~22)はこちら

 

10 MF 五十嵐 太陽

リーグ戦 37試合/2598分/9得点/5アシスト
ルヴァン杯 2試合/28分/0得点/0アシスト
天皇杯 3試合/227分/3得点/0アシスト

10番のプレーを示す

 川崎から育成型期限付き移籍で加入。昨季まで2年間所属した山口では1年目こそ36試合に出場したが、2年目は7試合のみの出場に。再起を懸けて移籍した栃木で10番を任せられると、期待に違わぬプレーで存在感を示し、シーズンを通して栃木の攻撃を牽引した。

 まさに栃木の攻撃の全権を握っていた。狭いスペースでのボールの引き出しとコントロールに優れ、寄せてくるDFを華麗にかわして冷静にゴールに沈める。五十嵐のゴールはどれもが見る者を唸らせるテクニカルなものばかりで、現代のファンタジスタと言っても過言ではないものだった。それでいて目の前が開ければゴール方向へと力強く駆け出していくドリブル突破も印象的だった。

 大事な試合で得点を決める勝負強さも五十嵐の魅力の一つだった。開幕戦の高知戦(〇1-0)で挨拶代わりの初ゴールを挙げると、第7節栃木C戦(△1-1)でもゴールを記録。8試合ゴールから離れていた第18節松本戦(〇3-1)では起死回生となる2ゴールを記録し、夏場も着実にゴールとアシストを重ねていくと、第35節鹿児島戦(〇2-0)ではそれまでの先発落ちの悔しさを晴らすように圧巻の2ゴールでプレーオフ進出へ首の皮一枚繋がった。

 J3の年間優秀選手にも選出され、晴れてステップアップかと思われたが、12月25日に完全移籍での加入が決定。阿吽の呼吸で相手に脅威を与えた中野、川名とともに来季も心躍るような攻撃を見せてくれるに違いない。

 

 

11 MF 青島 太一

リーグ戦 27試合/2205分/0得点/1アシスト
ルヴァン杯 0試合/0分/0得点/0アシスト
天皇杯 3試合/235分/1得点/1アシスト

主軸として逞しさが増した1年

 大卒2年目となる今季は副キャプテンに就任。キャプテン佐藤祥に代わって腕章を巻いて多くの試合に出場し、中心選手としてチームを牽引した。

 昨季はボランチの位置から突っかけるように攻撃参加していくプレーが青島の代名詞であったが、今季は途中から加入した攻撃型ボランチ、藤原健介に合わせるようプレーを微調整。一歩引いた位置からバランスを取る黒子役に徹することで、藤原の創造性を最大限に引き出す役割を担うこととなった。

 プロ入り前はボランチよりも前の攻撃的なポジションを主戦場としていた青島だが、徐々に役割が守備寄りになっていってもチームにとって欠かせない存在だった。90分を通して足が止まることなく、ピッチの至るところに顔を出し、素早い反応と高い強度で相手の攻撃を未然に防ぐ。チームが機能するよう下支えする青島のプレーは不在時にその存在の大きさを改めて強く感じるものであった。

 来季は栃木で3年目のシーズンを迎える。主軸として感じてきた悔しさとここで培った逞しさを来季こそは結果に繋げたい。

 

 

13 DF 坂 圭祐

リーグ戦 0試合/0分/0得点/0アシスト
ルヴァン杯 0試合/0分/0得点/0アシスト
天皇杯 0試合/0分/0得点/0アシスト

ピッチに戻れず引退を決意

 昨季は夏の加入からリーグ戦7試合に出場。2024年9月の出場を最後にピッチを離れると、今季は公式戦に一度もメンバー入りすることができず、12月17日に現役引退が発表された。

 今季は時折ジョギングしている姿を見ることはあったが、やはりほとんどの期間で周りから見えないところでリハビリに励んでいたのだろう。惜しまれつつも8年間の現役生活に幕を下ろすこととなった。

 

 

14 FW ディアマンカ センゴール

リーグ戦 4試合/42分/0得点/0アシスト

秘密兵器のまま終了

 夏の中断期間に藤枝から期限付き移籍で加入。加入してすぐにベンチ入りを重ねると、第27節高知戦(〇1-0)で途中出場から栃木デビュー。続く第28節琉球戦(〇4-1)にも途中出場したが、この2試合でのプレーが全く周りと噛み合っていなかった。上背の割には空中戦で競り勝てず、足元も特別巧みという訳ではない。何が強みなのか分からず、周りもどう生かせばよいのか見えてこない印象だった。

 藤枝では15試合で1ゴールを挙げるも、徐々に出場機会を減らしていた。満を持してカテゴリーを下げることで再起を懸けたが、センゴール個人にとってもチームにとっても不本意な結果となってしまった。

 

 

18 FW 川名 連介

リーグ戦 33試合/2313分/1得点/3アシスト
ルヴァン杯 2試合/83分/0得点/1アシスト
天皇杯 4試合/359分/1得点/1アシスト

リーグ屈指のウインガーに成長

 今季の栃木は川名がいるかいないかで相手に与える脅威は全くと言っていいほど変わっていただろう。五十嵐とともに次々とチャンスを作り出していく左サイドは今季のチームの最大の武器だった。

 持ち前のドリブルがプロの舞台で通用することは昨季の時点ですでに証明していたことだが、今季はスタメン出場を重ねるなかで WBに求められる守備タスクを着実に身に付けていったシーズンでもあった。5バック化したときのサイドでの守備対応、逆サイドからのクロス対応、守備に切り替わった局面でのプレスバック。WBとして求められる守備をしっかりとこなせるようになったことが先発の機会を大きく増やすことに繋がった。

 もちろん課題はある。ドリブル突破した後のクロスやシュートになかなか精度がつかず、思うように数字を残すことができなかった。第25節奈良戦(△1-1)で見せたカットインからのミドルシュートのようにチャンスメイクに留まらないプレーをもっと見たかったのが正直なところである。

 すでに来季の契約更新が決定。五十嵐や中野、岩﨑など今季の強みをともに体現してきた役者は揃っている。来季もまた期待感高まるドリブル突破を数多く見せてくれるはずだ。

 

 

19 FW 庄司 朗

リーグ戦 6試合/67分/0得点/0アシスト
ルヴァン杯 1試合/66分/0得点/0アシスト
天皇杯 1試合/1分/0得点/0アシスト

不馴れなポジションで奮闘

 立教大学から加入した大卒ルーキー。187cmの長身を生かしたポストプレーや空中戦が強みの選手だが、前線から泥臭くがむしゃらに走れる献身性を評価され、今季はWBでのプレーがメインとなった。

 小林監督のイメージとしては小堀をWBで起用したのと同じで、押し込んだときに大外から長身選手が飛び込む攻撃を一つの形にしたかったのだろう。走れてスタミナがあり、守備強度もWBとして一定のレベルを兼ね備えているという評価だったからこそ、飽和気味の前線ではなくWBで育てる道を選んだのかもしれない。

 第16節福島戦(△2-2)や第18節松本戦(〇3-1)では動き出しのタイミングからFWらしい嗅覚を感じさせた。早々に契約を更新した来季は新たな指揮官のもとどちらのポジションで勝負することになるだろうか。

 

 

20 MF 井出 真太郎

リーグ戦 1試合/19分/0得点/0アシスト
ルヴァン杯 2試合/167分/0得点/0アシスト
天皇杯 2試合/107分/0得点/0アシスト

今季も出場機会は訪れず

 今季のリーグ戦出場は第2節相模原戦(●0-1)の19分のみ。左シャドーで起用され、今季は五十嵐とポジションを争う立場かと見ていたが、それ以降出場機会は訪れなかった。

 今季はルヴァン杯天皇杯で公式戦の数が多く、そうした試合で井出のプレーを見る機会はあった。その中で記憶に残っているのはルヴァン杯仙台戦(〇0-0 PK4-3)でのプレー。初めは本職ではないボランチでの難しさが見えたが、徐々に相手のリズムに慣れると、最終ラインからボールを引き取り、狭いスペースで前へと繋げていく上手さを見せていた。こうしたプレーはトレーニングマッチでも随所に見せており、それを踏まえれば不思議なくらいリーグ戦での出番に恵まれなかった。

 契約満了が発揮され、その後参加したトライアウトでは良い結果を出したとの記事を見た。持てる能力は決して低くないだけに、新天地での再起に期待したい。

 

 

21 GK キム ミンジュン

リーグ戦 0試合/0分/0得点/0アシスト
ルヴァン杯 0試合/0分/0得点/0アシスト
天皇杯 0試合/0分/0得点/0アシスト

引き続きベンチ入りが目標

 今季はNEZAS杯ヴェルフェ矢板戦(〇4-1)でベンチ入りしたのみ。トレーニングマッチでは何度かプレーする姿を見かけたが、それぞれ15分前後だったため正直あまり覚えていない。

 昨オフに複数年で契約更新をかわしているため、このタイミングでの移籍の可能性は低いだろう。すでに来季は4人のGKの在籍が決まっているだけに、残留となればより厳しい争いに身を置くこととなる。

 

 

22 DF 高橋 秀典

リーグ戦 33試合/1828分/1得点/1アシスト
ルヴァン杯 2試合/133分/0得点/0アシスト
天皇杯 3試合/107分/1得点/0アシスト

右サイドの職人

 山口から期限付き移籍で加入。昨季は怪我の影響で2試合の出場に留まったものの、今季加入した栃木では公式戦全44試合のうち43試合にメンバー入りし、先発・途中出場合わせて38試合に出場した。

 サイドの守備対応は職人技といっても過言ではないくらい非常に安定していたといえるだろう。とりわけ空中戦は負け知らずで、相手のターゲットの頭一つ上から弾き返す競り合いは圧巻だった。対人守備の強度も申し分なく、相手のドリブラーをことごとく抑え込んでいくシーンは栃木の右サイドではもはやお馴染みの光景となっていた。

 今季は天皇杯東京V戦(●1-3)と第16節福島戦(△2-2)でゴールを記録。ともに左サイドからのクロスに対してファーサイドからヘディングで決めたものであり、得点力不足に喘いだ当時はとにかくこの形を再現することにチームとして専念していた印象だった。

 年齢的に中堅層の選手のレンタル加入であったため完全移籍への切り替えに期待していたが、山口から秋田への完全移籍が決定。持ち前の強度の高いプレースタイルは秋田にどハマりすること間違いないだろう。