栃木SCのことをより考えるブログ

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【行き着くところはベーシックな要素】J3 第3節 栃木SC vs テゲバジャーロ宮崎

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スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 10位

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 前節は相模原と対戦し0-1で敗戦。ボールを握り相手を押し込んだが崩し切れず、2試合目にして今季初黒星となった。前節からのスタメンの変更は3人。高橋→ラファエル、揚石→堀内、小堀→棚橋とこれまで先発していた選手を多く入れ替えた。堀内は今季初出場。開幕直前に加入したオタボーケネスは初のベンチ入りとなった。

 

テゲバジャーロ宮崎 4-2-3-1 6位

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 開幕戦は長野に0-1で敗れたものの、前節は福島に3-1で勝利。2年目を迎える大熊裕司監督のもと4-4-2ベースのソリッドなチームを構築している印象である。前節からのスタメンの変更はなし。安田は古巣対戦。栃木県下野市出身の阿野は地元凱旋マッチとなった。ベンチには作新大学出身の吉澤が控える。

 

 

マッチレビュー

▼次第に守備に軸足を置くことに

 2021年にJリーグに入会した宮崎とは今回が初対戦。昨季は最終順位こそ15位に留まったものの、夏場以降に快進撃を見せたイメージが強く、引き続き今季も好調をキープしている印象である。そんな伏兵宮崎をグリスタに迎えるホームゲームとなった。

 試合は開始早々に動く。6分、右サイドで棚橋が宮崎の左SB下川からボールを奪うと、自らドリブルでエリア内に侵入。一度は相手DFに阻まれたものの、そのこぼれ球を右足で決め切った。棚橋は移籍後初ゴール。強めのボール奪取に全体の足が止まった一瞬の隙を見逃さず、個でねじ込んだゴールだった。

 先制点によって生まれた勢いはその後も継続。9分には前からのプレスで回収し、再び右サイドから押し込むと、森のクロスに3列目から飛び込んだ吉野は合わせられず。13分には菅原のポストプレーのこぼれ球を拾った棚橋が中央を持ち運んでミドルシュート。人数をかけた縦に早い攻撃が展開できた良い立ち上がりだった。

 しかし、その流れはそう長くは続かなかった。先制ブーストが終了してからはアウェイチームがボールを握る展開に。栃木にとって厄介だったのは宮崎の左SB残しのビルドアップだった。これによって栃木は右WB森が長い距離をスライドせざるを得なくなりプレスが十分にかからず。ここで時間を作られることでプレスを剥がされる場面が増えていった。

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 宮崎は栃木の2ボランチの周りに入れ代わり立ち代わり選手を配置するのに非常に長けていた。とりわけプレスをかけた際の吉野の周りは1vs2を強いられることが多く、井上や力安に前を向かれることで重心を下げるシーンが増加。宮崎は前進に成功すると左SB下川が高い位置を取って押し込むといったフローになっていた。

 本来ならば、ここには早めにラファエルを当てていきたいところだったが、井上とのマッチアップから早々にイエローカードを貰ったこと、2トップに対して3バックを維持したいということで控えた側面はあるだろう。リードしているという点もブレーキをかけたかもしれない。

 そうした状況を受けて棚橋も後ろを気にしながらのプレーになると、菅原もボランチを消すことに軸足を置くように。ボランチ勢も背後のFWを挟み込む意識が高くなり、次第に重心は後ろに傾いていった。30分ごろからは棚橋がジェスチャーで森のプレスを控えさせ、自らCBとSBを両にらみする守備にシフト。より後ろに重くなり、ボールを支配される流れになっていった。

 

 

▼後ろからの繋ぎにこだわった狙いとは?

 先制点による勢いが落ち着いた15分過ぎから少しずつ後方から繋いでいく素振りを見せる栃木。GKキックを川田→大森の横パスでスタートし、後ろで食いつかせてからミドルレンジのパスやロングボールで前進することにトライしていく。

 結果的には引っかかってボールを失う流れを繰り返したが、なかには上手くいったシーンもあった。28分、後ろで繋いで岩﨑が吉野に縦パスを入れると、落としを受けた堀内がさらに縦パスを供給。棚橋がギャップで粘り、再び堀内から右サイドに広げていくというシーンがあった。

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 縦パスに対して前向きのサポートを作ることがこの日の攻撃における大きなテーマだっただろう。安牌なパスに終始した相模原戦の課題に向き合ったアプローチだった。その手段として準備してきたのが相手を食いつかせることでボランチに時間とスペースを与えるような後方での繋ぎだったと思う。

 正直なところ、ここのクオリティは現時点でかなり厳しい出来といえる。繰り返し横に動かすことで隙を探る作業はある意味我慢のポゼッションともいえるが、どうしても縦への焦りから受け手に厳しいパスを差してしまうシーンが多々見られた。1失点目のきっかけはここでロストしたところからだった。

 後ろの我慢はさることながら、前線の背後へのアクションの少なさも気になった。相手を間延びさせるには後ろが引き付けるだけでなく、前が押し下げることも同じくらい重要なポイント。左右CBから同サイドのWBを走らせるようなシーンは前半なかった。狙いを遂行するためのバリエーションを増やすことを含め、ポゼッションのクオリティは今後しっかりと引き上げていかなければならないだろう。

 

 

▼守備のエラーを突かれる

 後半に入ってからも基本的には後方から繋いでいくスタンスの栃木。しかし、前半にも触れたとおり最終ラインからの繋ぎ出しは不安定。ラファエルには森がサポートすることでなんとかしていたが、岩﨑の判断と精度がいまいち上がらない。同サイドの五十嵐がボールサイドに関わることで落ち着かせようとしていたが、それも空しく自分たちのミスから逆転を許してしまう。

 失点シーンに関して、個人的にはGKの配球よりも自陣ゴール前での守備対応の方が気になった。具体的にはボランチのポジショニング。カウンター気味ではあるが、押し込まれた局面であれだけバイタルエリアを開けてしまうと失点のリスクは高まってしまう。宮崎の安田はそれをいち早く認識し、すかさず顔を出したことでシュートに繋がった。

 前半もそうだったが、吉野と堀内のボランチ勢は押し込まれた局面で最終ラインに吸収されることが多く、重心が低かった印象である。一時的に人海戦術で守れたとしても、これでは相手のやり直し(サイドチェンジなど)を規制することはできないし、いざ奪っても前線をサポートするには遠い。初先発とあって難しさもあったと思うが、後ろからのコーチングも含めてここは改善していきたいところだ。

 

 リードを許した栃木は矢野と小堀を投入。ここから長いボールも交えた前進を見せていく。

 この時間帯以降の栃木は右サイドが攻撃のストロングになっていた。ラファエルと森が楔のパスをズバズバと差していき、矢野や小堀が近くの味方に落としながら前進していく。ダイレクトにパスが繋がったシーンでは相手のブロックを縦に切り裂いていったというイメージ。森のクロスも非常に高精度だった。

 前半苦しんだ左SBからの配球も中を消してから寄せることで解消。宮崎は左SHを阿野から坂井に変えてきたが勢いは栃木の方が勝っていた。このサイドの主導権は前半とは一転して栃木が握ることができていた。

 しかし、ゴールが遠い。森の高精度のクロスやセットプレーからあわやという場面をいくつも作り出したが、最後のところで相手守備陣に身体を張られ、凌がれた。前節相模原戦にはなかった畳み掛けるような迫力が見られただけにここで追い付きたかった。

 終盤は焦りを見せた栃木のファールや宮崎の時計の針を進めるプレーで万事休す。1-2で試合終了。栃木は連敗、宮崎は連勝を飾った。

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
2失点ともGKにとってはやむなし。19分にはFKの流れからゴール前の至近距離でシュートを打たれたが、ビッグセーブを見せた。

DF 3 大森 博
繋ぎの起点になったことで良い声ばかりではなかったが、全体を通してみればまずまずのパフォーマンスだったように思う。

DF 25 岩﨑 博
ミドルパス、フィードの精度がことごとく低かった。大森への戻しのパスからプレスを招くなど、判断もいま一つだった。

DF 33 ラファエル
宮崎の立ち位置の工夫によって序盤にイエローを貰ってしまった。縦パスの意識が高いのはよいが、受け手と意思疎通できていない状況で無理やり差し込むパスが目立った。

MF 5 森 璃太
持ち前の推進力と高精度のクロス、セットプレーでゴール前に効果的なボールを供給した。これまでで最もよいパフォーマンスだった。

MF 8 福森 健太
ボールが足につかず、らしくないパフォーマンスが続いている。キャプテン不在時で頼りにしたい存在なだけに復調が待たれる。

MF 47 吉野 陽翔
前半は押し込まれたためあまりボールに絡めなかったが、後半はよくなった。高めのボランチは元アタッカーとして適正かもしれない。

MF 78 堀内 陽太
よく動けてはいるが球際の強度がもの足りない。ガツンと当たっても弾かれている。保持時はアンカーとしてシンプルにさばくことに徹していた。

FW 7 棚橋 尭士
初先発で初ゴール。自ら打開した。前線のいて欲しいところにポジションを取り、ミスのないプレーを連続してみせた。この日の攻撃の中心だった。

FW 9 菅原 龍之助
この日もポストプレーで身体を張った。下りながら受けるだけではなく、背後へのアクションが欲しい。

FW 10 五十嵐 太陽
プレスバックした際に球際負けすることが多く、前に出ていく寄せも迫力不足だった。後半足元にボールが入り始めたところでの交代は少し不運だった。

FW 29 矢野 貴章
今季初出場。菅原からタスクを引き継ぎ、前線でハードワークした。

FW 38 小堀 空
ポストプレーと前に持ち出す際のパワーで右サイドを活性化させた。

FW 18 川名 連介
両サイドから仕掛ける場面があったが、相手から相当警戒されている印象を受けた。

MF 44 揚石 琉生
短い出場時間では見せ場がなかった。

FW 80 オタボー ケネス
加入後初出場。プレータイムが短く、ボールに触れる機会がなかった。

 

 

最後に

 試合後には大量のブーイングが浴びせられたようになかなか厳しい試合内容だった。優勝を掲げた今季の目標とは対照的にチームは開幕から低調なパフォーマンスを繰り返し、前への勢いや球際の強度といったベーシックな部分も不十分なまま戦っている印象である。

 開幕戦はなんとか勝ち切り、前節相模原戦は立ち上がりの失点のみで負けたため、ある意味次に向けて頑張っていこうという気持ちで目を瞑ったサポーターも多いと思うが、この日はやろうとしている片鱗が見えたとはいえ、実際に見られたのはパスミスが多く、球際でも勝てない姿だった。

 J3は甘くないことを承知のうえで臨んでいたとしても、これだけ戦えない姿を目の当たりにしてしまうとなかなか堪えるものがある。今のチームには継続して勝っていけるような光景は思い浮かばないのが正直なところである。

 

 

試合結果・ハイライト

2025.3.2 14:00K.O.

J3 第3節

栃木SC 1-2 テゲバジャーロ宮崎

得点   6分 棚橋 尭士(栃木)

   42分 阿野 真拓(宮崎)

   57分 安田 虎士朗(宮崎)

主審 大坪 博和

観客 3522人

会場 栃木県グリーンスタジアム