
スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 14位

前節はホームで八戸と対戦し0-1で敗戦。5バックで堅く構える相手を最後まで崩すことができず、後半初めに喫したビハインドを跳ね返すことができなかった。前節からのスタメンの変更は2人。前節初めてメンバーを外れた大森が最終ラインに復帰し、トップの小堀は第2節以来の先発入り。これまで最前線を張ってきた菅原は初のベンチスタートとなった。
FC岐阜 4-2-1-3 19位

ここまで1勝3分4敗と調子の上がらない岐阜。不調の原因としてリーグワースト14失点の守備が挙げられるが、実際のところ複数失点は3試合のみであり、そのほかは僅差で競り負ける試合が続いている。前節奈良戦からの変更は1人。西谷に代わってトップ下に箱崎が入った。3/26に加入が発表され、前節デビューを飾ったドゥドゥがベンチに名を連ねた。
マッチレビュー
▼与えられた時間をサイドへ届ける
長らくJ2で鎬を削ってきた両チームだが、J3で対戦するのはこれが初めて。互いにJ2復帰への足がかりとするべく、ボトムハーフに沈む現状を打破したい一戦となった。
序盤からボールを握ったのは栃木。あまり前からプレスをかけずにミドルゾーンで構えるホームチームに対してボールを動かしながらブロックの隙間を窺っていく。
岐阜の守備ブロックは4-4-2と5-4-1を使い分けるものだった。立ち位置を調整するのはボランチの萩野とトップ下の箱崎。それぞれ右CBとボランチに落ちることで5-4-1を形成し、栃木とのマッチアップを明確にしていく。このときシャドーはボランチと横並びになっていることが多く、栃木の最終ラインには時間が与えられる状況となっていた。

よって、保持での打開が求められる栃木だが、攻め手を欠いた前節の反省を受けてポゼッションには改善の色が窺えた。とりわけ、最終ラインに与えられた時間をサイドに届ける作業は非常によく整理されていたと言えるだろう。
左右CBの大森・岩﨑はこれだけ余裕があればタイミングを見定めて縦パスを差し込むことができるし、自らスペースに持ち運ぶこともできる。これで相手に中央を意識させればサイドが空いてくる。平松からWBへのフィードも正確に行き届いており、最終ラインを起点とした配球によってWBがオープンな状態でボールを受けられるシーンは多かった。
この日はWBのサイドを入れ替えた栃木だったが、左サイドで起用された川名はまさに水を得た魚のようなパフォーマンスだった。切れ味鋭い突破から対面の相手を翻弄するだけでなく、五十嵐とのコンビネーションも抜群。前述のとおり川名はオープンな状態でボールを受けてからプレーを開始できるため、相手に対して常に先手を取れている状況だった。
五十嵐との関係性で良かったのは川名が引いてきた時に五十嵐がサイドに流れることで岐阜の5バックを歪ませることができていたこと。岐阜の最終ラインの枚数はボランチ萩野によって調整されていたが、サイドに流れた五十嵐を右CB化した萩野が見るには距離感的にやや無理があった。萩野が遅れてスライドしたことで開いたスペースには川名や青島が登場。深い位置で人数が揃った状況でコンビネーションから打開したのが先制シーンだった。

栃木の攻撃はほとんどが左サイドからだったが、これだけプレッシャーが緩く前を向かせてくれるのであれば、得意の攻め手を使わない手はない。再三の仕掛けを受けてさらに重心を下げる相手に対してボランチもフリーで配球する場面が多く、スムーズにボールを集めることができた。ただ、クロスに対して中との呼吸が合わず、フィニッシュに至った回数は限定的だった。
岐阜について言えば、ミドルゾーンに構えるプラン自体は決して悪いものではなかったが、前からの守備で栃木の攻撃の方向性を限定できず、されるがままな印象だった。WBを捕まえやすい5バックのメリットもほとんど感じられず。ボランチの重心は低く、WBを挟み込むためのSHのプレスバックも遅く、ボールをロストした際の守備への切り替えも全体的に緩慢だった。
徹底して背後を狙ってくるロングボール攻撃も栃木にとってはそれほど脅威にならなかっただろう。栃木の一列目を剥がしてからアーリー気味にトップの佐々木を走らせるボールのほとんどが精度を欠いていた。仮に栃木陣内に入り込めたとしても泉澤や荒木が個の仕掛けで優位を取れず。大森や平松が対人守備で強さを見せ、GK川田が仕事をするようなゾーンまでそもそもボールを運ばせなかった。
前半は終始栃木ペースで終了。アウェイチームが1点をリードしてハーフタイムを迎える。
▼テンポを合わせてしまい守勢に回る
後半開始から岐阜は佐々木と大串に代えてドゥドゥと外山を投入。55分には泉澤に代えて粟飯原を投入するなど、早い時間から積極的な交代策に打って出る。
後半の岐阜は前半以上にアバウトなボールを入れる傾向を強めていた。53分には右SB外山がドゥドゥへロングパスを通すと、平松と潰れて背後に流れたボールに箱崎が反応。左からのクロスは大森が凌いだが、栃木はこの試合初めて後ろ向きの対応を強いられることとなった。54分にはルーズボールの走り合いでドゥドゥに収められ、これも左サイドを突破され中央に折り返された。
栃木はセカンドボールをなかなか落ち着かせられなかった。守備への切り替えからボールホルダーに次々と寄せてくる相手のプレスを嫌がって蹴り出す場面が増え、前線では小堀が収められず。前半のように後ろで時間を作れなくなったことで徐々に岐阜にペースを明け渡すようになっていった。
64分には、クイックリスタートで粟飯原にボールが渡ると、左足クロスに逆サイドから飛び込んできた荒木はわずかに触れることができず。65分には、サイドからの折り返しを受けた箱崎のシュートを川名が顔面ブロックで凌ぎ、何とかセットプレーに免れた。畳み掛けるように圧力を増してくる岐阜に対して栃木は自陣から脱出できず、終始苦しい時間を過ごすこととなった。
そのなかでも少ない攻撃回数を前半同様にチャンスに繋げていたのは川名・五十嵐の左サイドのユニットだった。
55分には、岩﨑→川名→五十嵐と繋ぐと、五十嵐から内側に潜ってきた川名へスルーパスが通り、相手のCBを1枚引き出してクロスを入れることができた。エリア内で対応していたのは左CBと左SBの2枚だったため川名のクロス精度と小堀の駆け引き次第では十分に得点チャンスだった。72分にも五十嵐→川名のスルーパスからCKを獲得したシーンがあった。

ただ、全体的な試合の流れは依然として栃木にとって苦しいものだった。岐阜は後半半ばに両SBのサイドを入れ替え、逆足のSBをボランチ脇に置くようにしたことで厚くした中盤を軸に細かいパス交換から攻撃を繰り出していくように。栃木としては前からプレスをかけようにも5-2-3の3の背中を使われてしまい、前からの守備を機能させることができていなかった。
こうして苦しい時間を耐えるなかでも、少なからず付け入る隙はあった。83分には、吉野のふわりとしたロブパスから棚橋がゴール前に抜け出したが、シュートはGKセランテスの好セーブに阻まれた。88分には、森の左SB→GK→右CBへの三度追いプレスでミスを誘ったが、ショートカウンターから棚橋はシュートに持ち込めなかった。この日も2点目を奪い切れず、これが最後まで試合を難しくさせた。
後半アディショナルタイムには平松がロングボールの対応を見誤りボールを後逸。ドゥドゥに完全に抜け出されたものの、GK川田の果敢な飛び出しでゴールマウスを覆い隠すと、シュートは枠の右へ外れていった。この日最大のピンチを何とか乗り切ることができた。
試合はこのまま1-0で終了。4試合ぶりの勝利を収めた栃木はこれがアウェイ初勝利。順位を10位まで浮上させ、何とか中位戦線に留まることに成功した。
選手寸評
GK 1 川田 修平
比較的出番の少ない試合だったが、終了間際のドゥドゥとの1vs1ではゴールマウスを完璧に覆い隠し、決定機逸に導いた。
DF 2 平松 航
徹底して背後を突いてくる相手に対して最終ラインを高くキープした。攻撃では左右に振り分けるフィードが正確だった。最後のボール後逸は反省点。
DF 3 大森 博
長身ながらアジリティに優れ、泉澤との1vs1も難なく処理した。セットプレーからもうじき得点が生まれても不思議ではない。
DF 25 岩﨑 博
持ち運びを交えたり右からの流れを止めないように川名へ預けることで1vs1の状況を作りやすくした。
MF 8 福森 健太
右サイドで先発し、正確なクロスを何本も供給した。カットインありきの左サイドよりもプレーしやすそうな印象。
MF 11 青島 太一
狭いエリアを縫うように仕掛けて五十嵐の得点をアシストした。6人目のアタッカーとして3列目から攻撃参加できると得点力アップも見えてくる。
MF 18 川名 連介
やはり川名は左サイドで起用してこそ。再三仕掛けたうちの一つがゴールに繋がった。後半劣勢時には相手の決定的なシュートを顔面ブロックで凌いだ。
MF 47 吉野 陽翔
プレーに派手さはないが、攻守両面において正確かつ高い強度を発揮し続けている。空中戦では上背の高さが生きた場面も多かった。
FW 7 棚橋 尭士
中盤のスペースに顔を出してボールを引き出した。62分には相手SBからボールを奪取し、自らゴール前に持ち込んだがシュートは相手DFに阻まれた。
FW 10 五十嵐 太陽
川名との関係性は抜群。得点シーンでは狭いエリアで巧みにコントロールし、相手が滑るのを読み切って冷静に流し込んだ。
FW 38 小堀 空
今季初めて最前線で起用されたが、ロングボールのターゲットとしてあまり機能しなかった。プレータイムに比して結果を残せず、正念場といえる。
FW 9 菅原 龍之助
ポストプレーに奔走し、何度か攻撃の起点となった。
DF 5 森 璃太
三度追いする攻撃的なプレッシングで遠いサイドのCBからボールを奪った。
DF 22 高橋 秀典
堅実なプレーで守備固めに貢献した。
MF 78 堀内 陽太
最終盤にピッチに入り、試合をクローズした。
最後に
前半ペースを握った展開で1点を奪い切り、劣勢に陥った後半を何とかゼロで抑え切った。勝利から遠ざかっているチームにおいて、まずはこれをアウェイゲームで達成できたことを前向きに捉えたい。勝利が先行して内容を良くすることも往々にしてあるため、不器用でも勝利を手にした意義は大きいように思う。
追加点を奪えない点は依然として課題だが、五十嵐と川名の左サイドのユニットが想像以上に機能していたことはポジティブな要素。ともにボールが収まり相手を引き付けることができるため、さらに相手が警戒するようになれば他の選手が空いてくる。逆サイドの棚橋やこの試合のように6枚目のアタッカーとして青島が絡めるシーンを増やせれば得点機会も自ずと増えていくことだろう。
試合結果・ハイライト
2025.4.13 14:00K.O.
得点 37分 五十嵐 太陽(栃木)
主審 國吉 真吾
観客 2270人