栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【スルリと抜けた手応え】J2 第16節 栃木SC vs FC琉球

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 19位

 前節は甲府に引き分け8戦勝ちなしとなった栃木。得点力不足は依然課題だが、全体的には主導権を握る時間も多く手応えのある試合を行うことができた。スタメン11人は前節から継続。第8節金沢戦ぶりにベンチ入りの瀬沼にはゴールへの期待がかかる。

 

FC琉球 [4-4-2] 22位

 前節は熊本を破り、今季2勝目をあげた琉球。守備が安定し始めたことで浮上のきっかけを見つけた印象である。スタメンの変更は1人。上原牧人が外れたCBに李栄直が入った。監督がチームに帯同できず、倉貫ヘッドコーチが代わりに指揮を執る。

 

 

薄い自陣をさらされる

 GW連戦は上位陣との対戦が多く勝利することはできなかったが、確かな前進を感じるものであった。クリーンシート3回、内容で圧倒する試合もあった。ここで掴んだ手応えは結果に繋げてこそ価値がある。8試合未勝利で迎える琉球戦はアウェイとはいえ勝利にこだわる試合として位置づけていただろう。それだけにピッチで見せたパフォーマンスはあまりにも低調だったと言わざるを得ない。

 栃木は立ち上がりからプレスの連動性を欠いた。琉球は2トップが縦関係になることが多く、ライン間に下りてくる選手をCBが捕まえるのかボランチが捕まえるのかがはっきりしないまま失点を許してしまった。12分、2トップを起点にサイドを変えられると、中野のクロスを池田が折り返して最後は草野がプッシュ。大外の池田は仕方ないにしても、絶好調の草野をフリーにしてしまっては守るのは難しい。栃木にとっては痛恨の早い時間での先制点献上だった。

 清武を含めた琉球の2列目には終始中盤を支配された。栃木がコンパクトに守れなかったのは草野の存在が相当気になったからだろう。立ち上がりから裏に抜けるアクションを繰り返す草野に対し、栃木はバックラインをなかなか押し上げることができなかった。ボランチやCBからのコーチングでプレスに行かない判断も要する状況だったが、ピッチ上で見られたのは間延びして薄くなった自陣を攻め込まれるという光景だった。

 

 一方攻撃に目を向ければ、前節に引き続きやり切る意識は高かった。とりわけ右サイドからはクロスを量産。中の状態を気にするのではなく、上げられるときに上げることで中の選手に合わせてもらうイメージだった。27分に黒﨑のクロスに合わせた松岡のヘディング、43分に谷内田のクロスに合わせた矢野のヘディングはどちらも決定機。あと一歩のところまで迫れてはいた。

 押し込めば悪くない攻撃を繰り出せていたが、今ひとつ流れを引き寄せられなかったのはビルドアップがほぼほぼ上手くいかなかったからだろう。琉球のハイプレスに手を焼き、自分たちの攻撃を継続することができなかった。

 栃木としてはもう少し琉球とのシステムの違いを生かせるとよかった。琉球はプレスの際に2トップに加えてSHを一列押し出してくるためSBの守るべきエリアが広くなる。19分のシーンのように福森に対して大本が寄せてくれば生じたスペースに矢野が流れてCBをサイドに引きずり出すことができるし、4分のシーンのように黒﨑のサイド進出に逆サイドからの松岡の出張を交えれられれば、山本がボランチ脇でフリーで前を向くことができる。崩しの考え方は悪くなかっただけに、もう少し執拗に突くことができれば琉球のプレスの足を鈍らせることができたかもしれない。

 琉球のハイプレスは栃木の形に合わせるために自ら陣形を崩して行うが、それは栃木のWBやボランチの段階で奪うことを前提としているからである。栃木としては琉球の許容範囲を超えて芋づる式に相手を動かさなければ効果的な攻撃にはならない。そのためには相手に判断を強いさせたりライン間を引き伸ばす動きが求められるのだが、まだまだもの足りない感は否めない。得点力不足解消の鍵はここだろう。足元への要求に対しては琉球も寄せが早く、失い方の悪い栃木は薄くなった自陣をカウンターで攻め込まれるシーンが頻発してしまった。

 

 

今ひとつもの足りない

 後半栃木は松岡に代えて瀬沼を投入。前半右シャドーだった山本を左シャドーに移したことで左からの前進もある程度スムーズにできるようになった。

 狙い目にしていたのは大本の背後。右からのサイドチェンジや後ろでのビルドアップから福森に対して大本が食い付いてきたのをトリガーに、背後のスペースに左シャドーが流れる。辛くも山本が怪我を負ってしまったシーンもCB李栄直を外に引きずり出したもので、李栄直はファールしてでも阻止しなければという考えだっただろう。

 左サイドを前進できればあとはクロスである。右シャドーにストライカーの瀬沼を投入したことからも、大枠としては左で作って右で仕留めるイメージだっただろう。しかし、サイドの奥を取ってからクロスをキャンセルしてしまったり、右へ作り直す流れでパスミスしてしまったりと自らチャンスを不意にしてしまうのはもったいなかった。結局のところ、瀬沼がヘディングで合わせたのは82分に唯一あったのみだった。

 後半半ばまでは栃木の攻め込むシーンが増えたものの数多く獲得したセットプレーもキッカーの谷内田、大森のフィーリングがなかなか合わなかった。ターゲットが最初に触れたシーンは皆無だっただろう。裏返されての被カウンターを何とか凌げていただけに一つ刺すことができれば栃木ペースになる雰囲気は漂っていた。

 

 67分に2トップを入れ替えてからの琉球はどちらかといえば攻め急がないことを意識していたように思う。ボールを失わないよう片方のサイドに密集して狭いエリアで細かくパスを繋いでいく。そのまま前進してゴールを脅かせればよいが、一番の目的はボールロストしてからの即時奪還を機能させるためだろう。劣勢に回った展開を踏まえて自分たちでボールを握って試合をコントロールしようという印象を受けた。

 これに対して栃木はなかなかボールを取り返すことができなかった。琉球の選手は止める蹴るの質が高く、奪えても素早い守備への切り替えで奪い返されてしまう。前に目を向けても矢野が孤立しており、琉球のターンが続いてしまった。

 

 最終盤は1点を追う栃木の押し込む時間が多くなったが、どうも迫力に欠ける印象だった。もう少し事故的でもチャンスを増やすためにアバウトなボールを入れても良かったと思うし、長身のターゲットを増やす選択肢もあったと思う。前に出られない琉球に対して3バックを維持したまま瀬沼やトカチにサイドの仕事もこなしてもらう必要はあっただろうか。パワープレーでも良いのでもっとなりふり構わずゴールに向かう迫力を見せてほしかったのが正直なところである。

 試合は1点を逃げ切った琉球が勝利。栃木は9試合勝ちなし、琉球は今季初の連勝とホーム初白星を飾った。

 

 

最後に

 攻守の歯車が噛み合わず90分を通してあらゆる局面で琉球に上回られた試合だった。GWに掴んだ手応えがスルリと手から抜けてしまったような感覚を覚えるほどダメージの大きい敗戦と言えるだろう。

 事故的な得点に期待するサッカーに傾倒してしまっては時崎監督を招聘した意味がなくなってしまうが、サバイバルを生き抜くには現実的な采配も時には必要である。まずはどんな形でも勝利で自信を取り戻さなければ内容にフォーカスすることは難しい。長いトンネルを抜けて3連勝を飾るきっかけとなった昨季のアウェイ愛媛戦のように、とにかくなりふり構わず勝ちを掴み取る執念さが今のチームに必要なのは間違いない。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 FC琉球

得点 12分 草野侑己(琉球

主審 窪田陽輔

観客 1798人

会場 タピック県総ひやごんスタジアム