栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【自らの手で掴み取った残留】栃木SC vs ギラヴァンツ北九州

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 15位

 前節は金沢との直接対決を制し、降格圏との勝ち点差を5ポイントに引き離した栃木。今節は自力での残留を決められるか最後の大一番となる。栃木は前節からスタメンの変更はなし。ボランチには小野寺が引き続き起用され、出場停止明けの西谷はベンチスタート。負傷から復帰した菊池は17試合ぶりのメンバー入りとなった。

 

ギラヴァンツ北九州 [4-2-3-1] 20位

 前節千葉戦は0-2で敗れ、連勝とはならなかった北九州。残留圏の18位相模原とは勝ち点で2ポイント離されており、結果次第で降格が決まる今節はまさに背水の陣となる。前節からはスタメンを2人入れ替え、最前線には狩土名、最終ラインには岡村を起用した。

 

 

攻め手を消した守備

 まず目に付いたのが北九州のFWの人選である。途中出場の多い富山がベンチスタートなのはまだしも、これまで前線の軸になっていた佐藤亮がベンチからも外れたのは意外だった。変わってこの日最前線を張ったのは190センチの長身の狩土名。プレッシングの逃げ場として想定していたのか、立ち上がりの北九州は後ろでは繋ぐ意識を見せながらも、基本的には狩土名を目がけてロングボールを入れることが多かった。

 よってまず生じるのが栃木のCBと狩土名のハイボールの競り合いだが、柳も乾もここはほぼほぼ完勝だった。北九州が栃木の最終ラインを越すようなロングボールを入れられず、また狩土名を越えて最終ラインと駆け引きをするような選手が少なかったのも要因だろう。栃木としては前向きに跳ね返すことができたため、重心を高く保つことができた。

 栃木はいつもどおりロングボール主体の縦に早い攻撃で敵陣へ攻め込んでいく。仮にセカンドボールを収められなくても相手ホルダーを素早く取り囲みクリアさせれば、狩土名に対する2CBの優位で再び北九州陣地での攻撃を続けることができる。CBの手前で構えるボランチ小野寺も跳ね返しに大きく貢献した。

 北九州にとっては立ち上がりに井澤が負傷で退いたのも痛かったと思う。身長は178センチとそれほど大きくはないが、小柄な選手が多い北九州のなかではフィジカル面で勝負できる貴重な選手である。変わって入った針谷はよりテクニカルなタイプでボール保持時に生きる選手のため、展開との相性はそれほど良くなかったように思う。

 栃木はロングボールから主導権を握ると26分に先制点をゲット。セカンドボールの攻防でジュニーニョが針谷へアプローチをかけるとボールは森の元へ。針谷と高橋の間でボールを受けた森がミドルシュートを放つとこれがCKとなり、柳のヘディング弾に繋がった。CBながらこれで今季7点目、キャリアハイである。

 

 北九州は失点の少し前から自陣からビルドアップを行う本来の姿を取り戻したように思う。それまで多用していた狩土名へのロングボールもそれ以降は栃木のプレスを引き付けて放った数本のみ。「蹴り合わない。パスを繋ぐ。」と試合前に小林監督が話したようにテンポ良いサッカーで栃木を動かしていく。

 栃木はリードを奪った影響もあってか、北九州の繋ぎに対する寄せはあまりピリッと来なかった印象である。特に対面の相手が状況によって変わる山本はプレスを躊躇する場面もしばしば。積極的に高い位置に進出する福森に意識が向きすぎると下りてビルドアップをサポートする西村をフリーにしてしまう。新垣も曖昧なエリアでボールに絡むため対応がなかなかに難しかった。

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 ただ、プレッシングの圧力が弱まっても栃木の中央を締める守備の強固さは変わらない。ピッチを幅広く使うビルドアップにも全体がスライド&カバーを欠かさずに応戦。黒崎や溝渕らSBは縦のコースを消すアプローチが上手く、低い位置でサイドを変えられてもそこからの前進に上手く規制をかけることができていた。

 攻守にメリハリ感のあった栃木が北九州のシュートを1本に抑えて前半終了。1点のリードでハーフタイムを迎えた。

 

 

ボランチの立ち位置を巡る駆け引き

 後半も栃木は徹底してロングボールを供給していくが、前半よりも北九州のSB裏へ入れていく意識が強かったように思う。前半リードを奪ってから好機は作らせずとも自分たちの攻撃機会を確保できなかったことへの改善策だろう。北九州がビルドアップ時に大きく空けるスペースに矢野やジュニーニョが走り込んでボールを引き出していく。

 また、栃木は前半に比べて北九州が3バック化したときの対応がスムーズに整理されていた。ジュニーニョは相手のアンカーをマークし、山本は下りた西村に素早くプレスをかける。逆サイドの森が高い位置取りで横パスをカットする場面もあった。

 こうなると苦しいのが北九州。相手に対してズレを作りパスコースを確保しながら前進していくスタイルはマンマーク気味のディフェンスと相性が悪い。

 そこで北九州はボランチを最終ラインにあまり下ろさず、SBがサポートする形から前進を図っていく。61分のシーンはそのメリットが表れた代表例。栃木の2トップの縦関係に対して空いたボランチの西村を経由してサイド攻撃をスタートすることで、栃木の前からのプレッシングを無効化するズレを再び作ったといえるシーンだった。

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 ただ、ズレを作ってもサイドから中央に入る手段やゴール前のクオリティ不足という課題は前半と同じ。そこへの打開策として投入されたのが左SHに入った椿。内側で受ければ味方とのコンビネーションを狙い、大外で受ければ積極的に1vs1を仕掛ける。自陣からの単騎突破でゴール前まで運んだ73分のシーンは圧巻だった。この場面、溝渕が堪らずゴール前で椿を倒してしまうも高橋のFKはオビがビッグセーブ。攻勢を強める北九州の攻撃を間一髪切り抜けると、逆に栃木が交代選手の活躍から決定的な追加点を奪う。

 主役となったのは直前に右SHに入ったばかりの畑。持ち前のボディバランスを生かしてサイドから切り込んでいくと、絶妙なパスが黒崎の元へ。黒崎のマイナス方向のクロスに佐藤祥がダイレクトで合わせたシュートはゴールの左隅に吸い込まれていった。

 

 最終盤は三國を投入して5バックへ移行。アンラッキーな形から失点を許したものの、その後は時計の針を上手く進めて2-1で勝利。大事な終盤戦で2連勝を収めた栃木は最終節を残して自力での残留が決定。一方北九州は降格圏内となる19位以下でのフィニッシュが確定した。

 

 

最後に

 残留を大きく決定づけたこの2試合に共通しているのはともに最後まで栃木らしくアグレッシブな姿勢を貫けたことである。プレスがハマらず自分たちの強みを見失いかけた時期もあったが、このリーグ最終盤で本来の輝きを取り戻すことができた。そこに花を添えたのが磨きのかかったセットプレーであり、苦しいシーズンを経てレギュラーに返り咲き連続アシストで大仕事を成し遂げた背番号10の存在である。それぞれが殻を破り、一回り大きくなったことで掴み取ることのできた残留といえるだろう。

 

 このレビューを書いている12月1日に田坂監督の今季限りでの退任が発表された。フクアリでの奇跡の残留を遂げた2019年、積極起用で若手が一気に飛躍した2020年、そして4チーム降格制という過酷なサバイバルを何とか生き抜いた2021年。尖ったスタイルには常に良い声ばかりが聞こえてきたわけではないと思うが、栃木といえばコレ!というスタイルを植え付けたという意味でも田坂監督が栃木にもたらした貢献は大きいと思う。次が田坂栃木のラストマッチ。笑顔で終われるよう最後まで栃木スタイルを貫いてほしい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 2-1 ギラヴァンツ北九州

得点 27分 柳育崇(栃木)

   80分 佐藤祥(栃木)

   90+7分 西村恭史(北九州)

主審 清水勇人

観客 5638人

会場 ミクニワールドスタジアム