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【隙を見つけて交代策で加速】J2 第36節 栃木SC vs ファジアーノ岡山(〇3-2)

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はじめに

 前節は水戸とのダービーに敗れ、3連敗となった栃木。連敗中にあげた得点はPKの一つのみと、攻撃面での決定力不足が尾を引いている。今節の対戦相手はファジアーノ岡山。岡山も3戦勝ちなしと元気はないが、本拠地での今季最終戦とあって勝利に拘ってくるだろう。栃木としては連敗を止めたい一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 12位

 アウェイの栃木は前節から4人変更。GKには川田に変わって29試合ぶりに塩田が先発復帰。高杉、有馬は久しぶりのベンチ入りとなった。前回対戦でともにJ初ゴールを記録した明本、柳は岡山戦に良いイメージを持っているだろうか。

 

ファジアーノ岡山 [4-4-2] 13位

 ホームの岡山は前節から3人変更。濱田が出場停止となるCBには若い阿部を抜擢。栃木を見ている人にとってはJ2復帰初年度にやられた印象が強いかもしれないが、約2年欠場が続いていたのは個人的には知らなかった。前回対戦を欠場したパウリーニョはスタメンとなった。

 

 

前半

じわりじわりとパワーに圧される

 一貫したスタイルで戦う栃木のゲームにおいて、試合展開を決めるのは相手のスタンス。相手が繋ぎを重視すればハイプレスをかわせるかがメインの展開になるし、ハイプレスを避けてロングボールが増えればセカンドボール争いの激しい展開になる。その意味でこの日の岡山は後者を選択することが多かった。

 したがって立ち上がりからロングボールを蹴り合う展開となった両チーム。縦に素早く攻めるという意味では同じ両チームだが、岡山の方がよりスペースで受けようという意識が強かった。FWがサイドに流れてボールを引き出し、上がってきた味方に預けて自身はボックス内に入っていく。前半は特に左に流れることが多く、上門、徳元のサイドからの攻撃が目立った。

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 スローインからではあるが、岡山の先制点となったCK獲得も赤嶺が左サイドに流れたところから。CKのクリア自体は十分だったが、再度ゴール前に入れられたボールを弾き切れず、最後は上門のゴラッソ。CKを直接合わせられるシーンはなくとも、流れからの失点が続いているのは気になるところである。

 

 自分たちのミスというよりは相手のクオリティの高さに出鼻をくじかれた栃木だったが、基本的に守備は安定していた。岡山のロングボールに対して素早い帰陣とサイドに集結する守備である程度攻撃を遅らせることはできていた。

 岡山としては本職FWの齊藤を右SHで起用している分、左サイドで作ってからのクロスは攻撃パターンとして用意していたと思う。左サイドで攻めきれず、ボランチやCBに戻してからの右サイド展開はよく見られたが、一度後ろに戻す時間で栃木のスライドは十分間に合っていた。

 

 この日の栃木は安定した守備で決定機こそ作らせなかったが、押し込まれた状態からの盛り返しの迫力が物足りなかった。セカンドボール争いに備えた岡山のコンパクトな陣形に苦しみ、思うようにマイボールにできず。上手く収められた際はサイドのスペースを駆け上がってきた黒崎を生かせる場面もあったが、クロスがニアを越せず引っかかってしまうのは勿体なかった。

 

 ロングボールを繰り返されてしまうとDF陣としてはマインド的に最終ラインを押し上げられなくなってくる。その一方で、前線はいつも通りのハイプレスをかけるため全体が間延び。顕著だったのが上門を中盤でフリーにさせてしまった前半30分のシーンで、岡山のツートップの圧力がジャブのように効いていたのは明らかだった。

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 重心を上げきれないなかで、相手のマークから外れてボールを引き出す明本の動き出しは攻撃のヒントになったように思う。前半41分には相手のボランチ脇に顔を出し、続く前半43分にはCBから離れるようなランニングからフィニッシャーになる。どちらも岡山の選手はつききれず、マークの受け渡しにも曖昧さがあった。

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 試合はホームの岡山が1点リードして折り返し。

 

 

後半

綻びを執拗に突いた栃木

 ロングボールを蹴り合った前半のプレーエリアは栃木ゴール前の39%に対して、岡山ゴール前が23%。両チームともボールを素早く前線に送っていたことから、どれだけ前でタメを作れていたか、押し込んで二次攻撃を繰り出せていたかが数値にそのまま表れていたといえる。栃木としてはなかなか自分たちのスタイルを出せない前半となってしまった。

 

 後半もロングボールとセカンドボール争いに焦点が当たるなか、序盤にペースを掴んだのは岡山。素早くブロックを組む栃木に対して左サイドの上門がカットインからシュートに持ち込むシーンが何度か。オーバーラップしてきた両SBのクロスなど積極的な姿勢で前半の良い流れを継続させていた。

 

 そのなかで潮目が変わったのが後半10分辺りから。岡山の足が止まったとは言わないまでも、セカンドボールへの出足で栃木がわずかに上回れるように。とりわけ岡山の両SHがセカンド争いから被カウンターに移行した際に戻り切れないシーンが見られ、晒されたボランチ脇から栃木がカウンターを仕掛けるシーンが増えていった。

 

 スペースが徐々に空いてきた時間帯に良さを見せたのが途中出場の有馬。前線に張り付くだけではなく、右SHとして岡山のボランチ脇を主戦場にしたことで、栃木のボランチにとっては攻撃時の預けどころを見つけることができたのは大きかった。ギャップで受ける有馬はサイドにも散らすことができるし、中央突破を仕掛けることもできる。

 二度追い付くことができたのもその有馬の巧みなポジショニングから。自身のあげた一点目は西谷の縦パスの受け手となり、近くの味方に預けるとそのままゴール前へ。このシーンではサイドのカバーにパウリーニョが引きずり出されていたため、細かいパスワークによる中央突破から最後は自身の技術で仕上げることができた。

 

 二得点目に繋がるCK獲得のシーンでは、同じエリアで今度は佐藤の縦パスの受け手に。中央の明本とのワンツーから思い切りよくミドルシュートを放てたのも初得点をあげた勢いのようなものがあったのかもしれない。

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 岡山としては、例えば上田の投入時に関戸を下げず、どちらかを左SHとして守備の補填に充てるというやり方もあったと思うが、ここは攻守の強度におけるトレードオフな部分。本拠地ラストゲームとあって、上門の攻撃力を残したいという思惑も頷ける。二得点目のように、後半の岡山の攻撃は左サイドからがほとんどであり、上門は徳元とともに残したかったのかもしれない。

 

 前がかりになる岡山に対して最後は矢野が背後を突き、後半42分に逆転に成功。裏に抜け出させるロングパスを出したのは途中出場の佐藤。交代選手が全得点に絡む活躍を見せると、最終盤の岡山の猛攻もシャットアウト。

 

 試合は3-2で終了。栃木は前回対戦に続く逆転勝利で連敗を3でストップ。岡山は4試合勝ちなしとなった。

 

 

最後に

 攻撃の形やシュート数はこれまでとそれほど変わらなかったと思うが、この日は最後のクオリティの高さで勝ち点3を掴むことができた。苦しんだ前半を考えれば、隙を見つけて交代カードで勢いを加速させた末の逆転は会心の勝利といえるだろう。

 これまでなかなか初ゴールが生まれなかった有馬に結果が出た意味も大きい。攻撃センスや技術の高さは随所に見せていたが、ここにきてようやく自分の居場所を見つけられたような印象である。

 苦しんでいたチームに逆転への足がかりをもたらしたのが、個人としてこれまで苦しんでいた有馬というのも嬉しい巡り合わせである。

 

 

試合結果

栃木SC 3-2 ファジアーノ岡山

得点 15分 上門知樹(岡山)

   61分 有馬幸太郎(栃木)

   76分 清水慎太郎(岡山)

   79分 田代雅也(栃木)

   87分 矢野貴章(栃木)

主審 吉田哲朗

観客 1,909人

会場 シティライトスタジアム

 

 

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