栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【継続から進化へ】J2 第1節 栃木SC vs V・ファーレン長崎(●0-1)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 前年20位

 昨季終盤の戦い方をベースに上積みを図る栃木。今オフはスタイルに適応する選手を多く獲得し、そのうち6人が開幕スタメンに名を連ねた。注目は下部組織から国士舘大学を経由して加入した明本考浩。レジェンドから引き継いだ背番号『8』は、本人とクラブの覚悟と期待の表れだろう。Jデビューのピッチで活躍を見せることができるか。

 

V・ファーレン長崎 [3-4-2-1] 前年12位

 手倉森政権2年目となる今年の目標はJ1復帰。昨季レンタルで加入していた選手の期間延長や完全移籍への移行、実績ある選手の獲得など、今オフの動向にはその本気度が伺える。昇格に向けて充実のメンバーを揃えた長崎にとって、栃木との対戦は昨年第41節(●0-1)のリベンジとなる。

 

 

前半

狙いが明確な両者

 対戦相手の情報が少ない開幕戦は、相手をしっかり分析して緻密に設計していくというよりは、自分たちの今年のコンセプトを前面に押し出していく、言わば所信表明の試合。プレシーズンのトレーニングの成果とそれが正しい方向に進んでいるかを確かめるという意味合いの強い試合となった。

 

 

 立ち上がりから試合の主導権を握ったのはホームの長崎。キックオフ直後はリスクを冒さずにロングボールを供給していたが、徐々にフォーメーションのミスマッチを突くようなボール回しに移行していった。

 栃木の2トップに対してDFラインで数的優位のある長崎は、DFラインでの横パスやボランチへのパスの出し入れなどから、栃木のSHを誘い出していく。一時的に3トップになった栃木は前からプレッシングではめていきたいのでSBが縦スライド。このときSB裏にはスペースが生じるわけだが、ここにシャドーが斜めに流れていくときに誰がマークについていくの判断が非常に曖昧だった。

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 [3-4-2-1]で[4-4-2]を攻略していくときの定石の崩しである。長崎は特に左サイドからこの崩しを繰り返すことで、新加入選手の多い栃木の右サイドを攻略していこうとしていたし、実際にCB柳とボランチ岩間の対応は後手を踏んでいたように見えた。一方、栃木の左サイドはプレッシングのタイミングと佐藤のカバーリングの息が合っており、ここの完成度は左右に差があることを感じた。

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 立ち上がりからサイドでの守備に追われた栃木だったが、前半7分の矢野のヘディングシュートから流れが変わっていく。

 栃木の狙いはボールの保持にこだわらず、できるだけ高い位置でプレーすることである。その手段が長身選手へのロングボールであり、前からのプレッシングである。前半7分の矢野のシュートはDFラインからのロングボールから始まったものだし、敵陣でカウンターを阻止した岩間のインターセプトから矢野のシュートに繋がった前半9分のプレーは、その狙いを象徴するものだった。前進が軌道に乗り始めた栃木はロングボールからの展開で得たFKやCK、ロングスローからペナルティエリアにボールを供給していく。

 

 立て続けのセットプレーから好機を探る栃木だったが決め切れずにいると、長崎がスローインの流れからCKを獲得。一本目のセットプレーを新加入のフレイレが押し込んでゴールイン。マーカーの溝渕とストーンの有馬をニアへの動き出しでかわした富樫のフリックはさすがである。長崎が劣勢の時間帯をひっくり返す得点でリードを奪うことに成功した。

 

 

ミスマッチに翻弄する栃木

 ビハインドの栃木は前からのプレッシングを強めていくが、先制点により落ち着きを取り戻した長崎からボールを奪うことができない。2トップだけでは数的不利によりフリーの選手を作ってしまうし、SHが加われば前述のとおりSB裏が空いてしまう。それでも失点以降は、ボランチカバーリングを徹底することで、できるだけ長崎のDFラインがフリーでボールを持つことがないよう圧力をかける姿勢は貫いていた

 

 栃木の微修正に手を焼いたものの、次の手を用意していた長崎。SB裏のスペースを埋められたなら、今度はボランチの空けたスペースを使おうというところ。前半31分には右サイドから、前半37分には左サイドからカイオセザールが中央でボールを受けるシーンがあったが、この試合ではここから先に繋がることはなかった。栃木としてはもう一方のボランチがスライドして埋めるのが良いのだろうか。栃木の守備の仕組みだと、相手ボランチがボールを受けた時点でDFラインが晒されてしまうため、ここは序盤戦のうちに修正したいところである。

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 前半は0-1。長崎リードで折り返し。

 

後半

あとは決めるだけ

 後半に入っても長崎がボールを保持する展開は変わらず。SHを誘い出したところから芋づる式に相手をズラしていく形のほか、即興的なものかもしれないが、ボランチとの縦関係のスイッチでCBから離れたシャドーが起点になるシーンもあった。

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 また、横の揺さぶりから2トップの間をパスが通り長崎のボランチがノーマークでWBに捌く場面も見られた。[4-4-2]守備ではサイドの限定は欠かせないだけに、ボールの供給源になる相手ボランチに対しては、常にボランチかFWのプレスバックで対応できるようにしたい。

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 後半13分に韓勇太が途中出場すると、流れは再び栃木のペースに。前線にターゲットが増えたことでペナルティエリアに侵入する回数が増加。後半15分に瀬川のロングスローから韓勇太がフリックし田代がボレーしたシーンや、明本のノーゴール判定となったシュートシーンは交代の影響が大きく表れたものだった。

 

 自陣深くに押し込まれると[5-4-1]にならざるを得ない長崎はクリアボールを収めることができず、一方栃木はボランチを中心にボールを回収してはサイドからのクロス攻撃を徹底する、という展開がほとんどとなった後半。栃木としては狙いの形を何度も再現できていただけに、決定力不足なのは惜しかった。クロスの本数自体もかなり多かったと思うが、長崎の3CBを中心としたディフェンスが一枚上手だった。

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 長崎は後半27分に畑、後半36分にルーキーの氣田を投入。前線でボールを収められる2人が時間を作り、また前傾姿勢になる栃木に対して落ち着いたビルドアップで時計の針を進めていく。栃木もエスクデロと榊を投入するも、それほど効果的な交代策にはならず。ツインタワーが効いていただけにエスクデロの投入で矢野を左SHに回したのは少しもったいないと思った。

 

 試合はこのまま0-1で終了。栃木は6年連続で開幕戦勝利を逃す結果となった。

 

 

最後に

 プレシーズンから田坂監督が明言しているとおり今年の栃木は昨季終盤のサッカーを踏襲している。試合後のコメントを読む限り、ある程度の手応えは掴んでいるようだが、最後のクオリティの部分は今年も突き詰めていく必要がありそうだ。試行錯誤した昨季と比べれば、今年は継続性のなかにしっかりとした軸を築けている点でアドバンテージは大きいと思う。自分たちのスタイルに自信を得るためにも、まずは勝ち点3という結果を残すことが何よりも大事である。

 次節は水戸ホーリーホックとの北関東ダービー。私自身も含め「今年こそは!」とリベンジに燃えるサポーターも多いはず。勝って気持ちよく栃木に帰ろう。

 

 

スタッツ

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