栃木SCのことをより考えるブログ

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【横山栃木の最終章】J2 第42節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉 (△0-0)

  リーグ戦、そして昇格プレーオフが終了しストーブリーグに突入したJ2リーグ。今更感が漂っているような気もしますが、最終節の千葉戦のレビューを更新です。(忘れていたわけではないです...…)

 

 

 さて、本題へ!前節は優勝争い真っ只中の松本山雅に●0-1で競り負けた栃木SC。リーグ最終節はフクダ電子アリーナにてジェフユナイテッド千葉との対戦になりました。

 

 

 両チームのスタメンと配置はこちら。

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 ピンクユニの栃木はいつも通り3-4-2-1のシステムを採用。チームスタイル的にボールを持たれることが予想されるだけに、いかに焦れずに隙を衝く作業を徹底できるかが勝負の分け目になってくるでしょう。注目はCHに入った寺田紳一。今季はプレシーズンに負った怪我に苦しみ、前節ようやく初出場を果たしました。J2屈指のテクニシャンがピッチ上で大黒とどのように共演するのか注目されます。また、温井が第14節以来のスタメン、岡﨑が7試合ぶりのメンバー入りと、負傷から戻ってきた選手たちのプレーにも注目です。

 

 一方の千葉は4-1-2-3のシステムを採用。ここまで総得点数リーグ2位、総失点数リーグワースト2位となかなか大味な結果となっていますが、ここ2試合はクリーンシートで連勝(徳島○2-0、京都○3-0)を上げるなど調子を上げてきています。スタメンの変更は1名。茶島に代わって為田が左WGに入りました。

 

 

前半

中盤のミスマッチと偽9番

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 試合の立ち上がり、まず初めに気になったのは中盤の構成の違いでした。1アンカー2IHを敷く千葉の中盤に対して栃木は2CHの2人のみ。古波津が矢田の、寺田が小島のマークに付くとアンカーの熊谷が浮いてしまいます。大黒は基本的に千葉の2CBへのプレッシャーが役割の一つにあったことから、熊谷を含むトライアングルの中にポジションを取っていました。そのため千葉は熊谷のところで時間と空間ができる仕組みになっていました。

 

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 栃木としてはこれではただ受け身になってしまうだけなので前プレをかけます。起点はCHから。図では寺田が小島へのパスコースをケアしながら熊谷へプレスをかけます。カバーシャドウと呼ばれるこのプレーは、守備側の選手の寄せ方により同時にボールホルダーと受け手の2人をケアすることのできる守備戦術の原則の一つです。

 これにより中盤の守備でイニシアチブを取りたいところでしたが、千葉も船山の「下りる」動きで栃木の狙いを無効化してきました。寺田の背後のスペースを埋めるためには残った3枚のMF(特にボールサイドのシャドー=ここでは西谷優)が中央に絞る必要があります。ただ、この試合ではそこの意識が多少緩かったかな、と思いました。目の前の小島が気になる、普段の右CHへニキによるプレスとはサイドが異なる、などいくつか要素が挙げられますが、結果的に千葉は中盤で数的優位を作ることで前向きの選手にスムーズに展開することができていました。

 前半早々の1分にこのプレーから右WG町田にまで展開された栃木は、その後服部が背後に付いて迎撃する姿勢を見せました。しかし、船山の自由なポジション取り、そしてスムーズな展開に堪らずファールをするシーンも多く、この「偽9番」の動きにかなり手を焼いているような印象を受けました。

 

 

千葉WG vs 栃木WB

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 リトリートする栃木に対して最終ラインでも数的優位を確保していた千葉はビルドアップの際、タッチライン際までWGの選手を開かせていました。栃木はそれぞれWBが対応。この状態でCBから何度か対角にロングボールが入ることがありましたが、そもそもWGにボールが収まらない、収まっても1vs1の守備でほぼ完封するなど、栃木にとってはそれほど難しい場面ではありませんでした。

 

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 ただ、千葉は時間の経過とともに逆手をつくような攻撃を見せてきました。栃木WBが想像以上にWGに食いつくことから、敢えてWGに低い位置を取らせてWBを最終ラインから釣り出した上で、その背後にIHを走らせていました。栃木としては、もともとマッチアップにあった古波津が引き続き対応するか、スペースに近いパウロンが対応するかが考えられますが、あめりはっきり決められていないように見えました。よく言えば臨機応変に対応といったところですが、どっちが行くのか判断するための時間を要するため、後手に回るシーンが何度か見られました。

 

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 また、千葉は船山の動きなどにより中盤で起点を作ると、両SBが積極的にオーバーラップして高い位置を取り、それまでタッチライン際に立っていたWGが内側のハーフスペースに入ってきました。このとき栃木はWGへの対応をそれぞれ左右のCBがスライドして担うのがセオリーになります。しかしセットポジションの影響か、WBはWG監視の意識が強く、マークの受け渡しが遅れがちになっていました。そのためポジションが内寄りになり、大外を回るSBに対してシャドーが対応するような形になっていました。これでは後ろに重く、ゴールまでの距離も長くなってしまいます。そのためボールを回収しても中盤でカウンターを止められてしまい、アタッキングサードに侵入するような効果的な前進はあまり見られませんでした。

 

 

栃木の狙いはアンカー脇

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 相手のミスからショートカウンター!以外になかなか前線に起点を作れなかった栃木ですが、唯一アンカー脇にボールが入れば一気にチャンスになるといったシーンはありました。

 図は前半19分にも見られたシーンですが、栃木は左右CBがボールを持つとWBが高い位置を取ります。これに対して千葉はWGがマンマークで付いて対応するのですが、この時IHの2人は対面のCHへのマンマークの意識が強く、その背後=アンカー脇で待つシャドーはフリーになっていました。CBからのパスコースも確保されているシャドーは、縦パスを受け反転して前を向くとあとは最終ラインだけといった形となり、栃木としてはこのエリアもっと使えればチャンスは増えたかな、と思いました。

 

 前半は両チームとも決定力を欠き0-0で終了。いつもどおりボールを保持される栃木ですが、やられてるといった印象はありませんでした。後半も引き続き隙を衝いていきたいところ。

 

 

後半

4-2-3-1に変更した千葉

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 後半に入ると千葉は中盤を前半の1アンカー2IHから1トップ下2CHに変更。前半栃木に狙われていたアンカー脇に蓋をする形で早速修正を施してきました。こういう微修正を即座にできるところは欧州での指揮経験が成せる強みでしょう。日本でもこれがスタンダードになると、サッカーを見る目も一段と養われそうですね。

 さて、中盤を修正してきた千葉ですが、ここから猛攻!とはならず、逆に栃木が多少押し込む展開になりました。早々の後半4分、スローインからのセカンドボール争いを古波津が回収すると背後に抜ける西谷優へスルーパス。エベルトがペナルティエリア内で手をかけて止めると、これがファールとなりPKに。大黒のPKをGK佐藤にセーブされたのは痛恨でしたが、中盤でのデュエル勝利やセットプレーなどから後半は栃木がペースを握る展開になっていきました。

 一方千葉はなかなか敵陣でボールを収められず、5-4ブロックに弾かれてはカウンターを受ける流れに。後半19分には自陣での横パスの処理ミスを西谷優に奪われると、最後は大黒にGKと1vs1の状態でループを打たれてしまいます。直後の後半23分にもロングボールのセカンドボールを栃木に拾われ最終的にCKに逃れるなど、前半に比べて攻め筋の見つからない千葉はボールを奪われピンチを迎えるシーンが、特に後半の半分くらいまでは多い印象がありました。

 

 

交代を交えながらもスコアレスで終了

 攻撃の糸口が見つからない千葉は後半15分に矢田に代えて指宿、後半25分に町田に代えて工藤、後半33分に為田に代えて乾を投入します。これらの采配のなかで個人的に面白かったのは左SHの為田⇒乾の交代。187cmと長身の乾を高い位置に置き、右サイドで作ったオーバーロードから上げられるクロスに、乾や同じく途中交代で入った指宿が飛び込むシーンは見応えがありました。

 対して栃木も、後半33分に西谷優に代えて榊、後半38分に古波津に代えて岡﨑、後半44分に浜下に代えてアレックスを投入しました。フォーメーションはそのまま3-4-2-1でしたが、シャドーに入った榊とアレックスは守備時もそれほど下がることなく前線への圧力を維持していたため、5-2-3のような布陣になっていたと思います。

 ただ、ゴールは割れずこのまま試合は終了。両チームにとって今季最後のゲームは0-0のスコアレスドローに終わりました。

 

 

最後に 

 この試合を終え、栃木SCは17位(13勝11分18敗)で2018シーズンを終了。個人的には、復帰初年度ということを考えると、それほど巻き込まれることなく残留を果たした今季の結果について、及第点以上の評価ができると思います。  

 今シーズンを振り返ると、久しぶりのJ2の洗礼を浴びた3連敗から始まり、初勝利から好調を維持しての7位浮上、泥沼6連敗、復活の4連勝かつ9戦負けなし、終盤戦の失速、そして残留達成と、まさにジェットコースターのごとく、全42試合で様々な状況、立場を経験しました。手応えも課題も感じたJ2復帰初年度の経験を、生かすも殺すも自分たち次第です。来季も「良い意味で」エキサイティングなシーズンを送ってほしいと思います。

 

 最後に、第26節から始めたこのブログも今節で17本目になりました。拙文でしたが読んでくださった全ての方々に御礼申し上げます。ありがとうございました。来季も引き続き可能な限り更新していきたいと思っています。その際はまた読んでくださると嬉しいです。

 今回はここまで。また来季お会いしましょう!それでは!!

 

 

試合結果

 

 

試合ハイライト