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【局面の戦いで相手を上回り6試合ぶりに勝利】J2 第40節 栃木SC vs カマタマーレ讃岐(〇2-1)

 今回はJ2第40節カマタマーレ讃岐との試合を振り返ります。

 

 両チームのスタメンと配置はこちら。

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 我らが栃木SCは現在17位。前々節の甲府とのゲームで残留を確定させ、一つの大きなプレッシャーから解放されているところである。しかし現状は、前節山口に敗れ(●0-1)5試合勝利なしとあまり調子が良いとは言えない。ここから勝ちを重ねることができれば、来季に向けて良い意味で嫌な印象を与えられるだけに、引き続き一戦一戦を大事にしていきたい。

 スタメンは前節から変更なし。大黒の動きに反応してパスを出すなど、古波津が少しずつ試合勘を取り戻していることはチームにとって好材料である。あとは質を上げていきたい。久しぶりにベンチに戻ってきた温井にも出番があるか注目である。

 

 一方、ホームのカマタマーレ讃岐は暫定22位。前日に熊本が勝利したことで得失点差で最下位になっている。自力残留に向けて勝利が絶対条件と、かなり窮地に立たされてはいるが、これまで何度も切り抜けてきた実績がある。栃木はホームの勢いに飲まれず、いつも通りの堅守から勝利を掴みたいところだ。

 

 

前半

危なげない守備で讃岐をシャットアウト

 試合開始直後から讃岐の狙いは明確だった。ボールを持つとすぐに頭上を越えるロングボールを栃木GK-CB間に送り込むことで、栃木のストロングポイントである5バックが揃う前に危険なエリアで勝負しようという意図が見えた。特にポジティブトランジション(守→攻に切り替わる局面)時には、前線に選手が一人しかいなくてもロングボールを入れることがあり、いかに少ない手数で攻め切るかがポイントになっていた。

 栃木は序盤から後ろ向きの対応を迫られることとなったが冷静に対応できていた。常に讃岐のFWよりもプラス1人DFを多く置くことでリスク管理を徹底し、拾ったボールを丁寧に繋ぐ場面が多く見られた。讃岐のロングボールの精度に助けられた部分もあったが、それ以上に讃岐の戦い方について織り込み済みだったためか守備の集中が途切れることがなく、シュートまで持ち込まれるシーンはほとんどなかった。

 

 ここまでは栃木の守備が整う前に攻め切ろう!という話。では栃木が自陣で5-4ブロックを敷いた時はどうだったか。

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 讃岐は4-4-2のシステムを採用しているため、栃木との噛み合わせの関係でCBがボールを持つことができた。ただそれより前方の選手は栃木の網に捕まっているため、前方へ効果的なパスは出せず。マンツーマンの意識が高い栃木の守備を逆手に取ってライン間に侵入することができれば、テクニックのある両SHやパンチ力のあるシュートが持ち味の重松を生かすことができたが、そのような攻撃設計をしているようには見えなかった。

 したがって、同サイドでは効果的に展開できない讃岐。苦しくなりサイドチェンジをするも、横幅を5人で守っているため栃木はWBの寄せが早く、縦を切りながら攻撃を遅らせることでシャドーも守備に参加し攻撃を制圧できていた。

 前半の讃岐の攻め方は大きく分類してこの2パターンだった。栃木は人海戦術的にしぶとく守るチームなので、どこかで守備にズレを生じさせなければ得点を奪うのは難しいし、そもそもズレも生じにくい。讃岐は栃木の土俵の上での戦いに終始しチャンスらしいチャンスを作ることができなかった。

 

 

噛み合わせの優位性から攻める

 前半讃岐の攻撃をシャットアウトし続ける栃木は、良い守備から良い攻撃へと繋げていく。その中心になっていたのがCHへニキ。いつも通りのパワフルな運動量を遺憾無く発揮し、攻守における局面で常に顔を出し続けた。前節は抑え込まれた攻撃時のロングボールにも競り勝つシーンが多く、そのセカンドボールも周囲の選手が密集を作って狙い通りに回収。横山監督の言葉で言えば、まさに「局面バトル」から多くの攻撃の起点を作ることに成功した。

 

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 また、この試合ではシステムのミスマッチにより地上戦からもアタッキングサードペナルティエリア横のエリア(ペナ横)に侵入できていた。

 図のように、選手の特徴から比較的左サイドでよく見られたシーンであった。左CB福岡のポジショニングによりサイドで数的優位を作り、ひとつひとつ丁寧に相手をズラしながら深い位置に潜り込むことで、最終的にスローインかCKを獲得する形を何度か作った。実際に先制点に至ったシーンも、サイドを起点に得たロングスローから獲得したCKにより生まれたものであった。

 讃岐は、セットプレーの守備時はマンマークではなくゾーンを採用することで1vs1による質の勝負を避け、決められたエリアでシンプルに跳ね返そうという意図が見られた。スタメンの身長差的にどうしても分が悪いためだろう。ただゴールシーンは讃岐の狙いは裏腹、パウロンがゾーンの上から叩きつけるヘディングでゴールネットを揺らし、栃木が先制点を奪った。

 

 前半はこのまま1-0で終了。前半をリードして折り返すのは勝利した第34節京都戦以来である。

 

 

後半

佐々木匠のポジションチェンジにより流れを変える

 後半開始早々の47分、栃木が追加点を上げる。讃岐が攻撃に圧力をかけるべくSBに高い位置を取らせた背後を上手く活用した。讃岐の戻りが遅く、また西谷和が自力で一枚剥がしたところで勝負ありだった。パスを受けた浜下は正確なグラウンダーのシュートで待望のゴールを奪い、リードを広げることに成功した。

 

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 このゴールにより、さらに崖っぷちに立たされた讃岐は選手交代により佐々木匠をCHに変更。これが讃岐にとって攻撃を活性化させるファクターになった。

 前半讃岐のCHは栃木のCHの近くでプレーしていたためなかなか前を向けないでいたが、後半は多少距離を取ったポジショニングで時間と空間をキープ。右利きの佐々木匠を左CHに置いたことで中央で広い視野を確保できるようになり、正確な技術でゾーンの間を抜くダイアゴナルなパスや素早いサイドチェンジのボールを何度も供給した。タッチ数を増やしてテンポよく配給することで、徐々にボールが回るようになっていった讃岐が徐々にペースを握っていった。

 しかし、栃木もこれには粘り強く対応。自陣でブロック守備を敷く時間は長くなったものの、パスの受け手にしっかりアプローチをし、讃岐の前線の選手には自由を与えなかった。76分、失点パターンの一つであるCHが前に出た時のライン間の間延びを突かれて佐々木匠にゴラッソを許したが、隙を見せたのはその場面のみであった。

 栃木は終盤、アレックス、西谷優希、榊と前線の選手を立て続けに投入。後ろの堅さはそのままに、フレッシュな選手を入れ前からの守備の強度を維持した。後半アディショナルタイムも徹底して相手のコーナーフラッグ方向にボールを運び、時計の針を上手く進めながら一点差で試合を逃げ切った。

 

 

最後に

 この勝利で6試合ぶりに勝ち点3を獲得。セットプレーから先制点を上げ、相手が前に出てきたところでカウンターにより追加点を奪うという、まさに理想的な展開で試合をものにした。

 後半佐々木匠の位置取りが変わってから押し込まれたところはシステム的に仕方ない面もあるが一つの課題だろう。栃木は1トップで最前線に大黒しかいないため、相手の最終ラインに制限をかけるためにはMFの押し上げが必要になってくる。相手SBにシャドーが対応するとなれば、CH(へニキor古波津)が寄せることになるが、相手まで距離があるため時間を与えてしまう。システムによる時間のギャップをどう埋めていくかが、一つのポイントになりそうである。

 そして最後に、11/7付けで横山監督が、11/9付けで西澤・杉本・夛田・宮崎4選手が契約満了により来シーズンの契約を更新しない旨リリースされた。苦しいJ3時代を共に戦った仲間として、どうか良い形で送り出してあげたいところである。悔いのない戦い、悔いのない応援をして残り2試合、全員戦力で戦っていきたい。

 

 

試合結果(Jリーグ公式)

 

試合ハイライト(YouTube

 

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