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【鍵を握ったサイドバックのポジショニング】J2 第37節 栃木SC vs 大宮アルディージャ(●0-1)

 さて、今回は第37節大宮アルディージャとの試合を振り返ります。

 

 

 

 両チームのスタメンと配置はこちら。

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 栃木SCは前節横浜FCと引き分け(△0-0)、勝ち点1を積み上げた。引き続き上位との試合が続くタフな日程になっているが、今シーズンの目標である11位を目指すには、上位相手でもしっかり勝ち点を拾っていきたい。

 スタメンの変更は二人。契約上出場できない川田に代わって久富が13試合ぶり、浜下に代わって西谷優希が11試合ぶりのスタメンとなった。なお、久々にベンチ入りした宮崎と横山監督にとっては大宮戦は古巣との対戦になる。

 

 ホームの大宮アルディージャは現在プレーオフ圏内の5位。前節は水戸(〇2-1)、今節は栃木と、北関東勢とホーム連戦が続く日程になっている。11試合ぶりにスタメンにシモビッチが入り、得点ランクトップの大前と2トップを組む。

 また、この試合のメンバーでは富山と山越が、メンバー外の選手だと奥抜が栃木出身であり、何かと繋がりのある両者の対戦となった。

 

 前回対戦は第16節(●0-1)。栃木は大前のPKに泣き、ここからあの辛い6連敗が始まった。栃木は過去大宮に一点も取ったことがなく全敗というかなり苦手な相手ではあるが、堅守をベースに今回こそ勝利したいところだ。

 

 

前半

大宮のビルドアップと栃木の対応

 両チームの特性上、やはり基本的に大宮がボールを保持し、栃木は耐えてマイボールにしたら素早くカウンターという構図になった。

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 大宮のビルドアップの形は上の図のような形である。両SBがミドルゾーン前目~アタッキングサードあたりで横幅を広く取り、CHの片方がCBと同じライン、もしくはCBとSBの間にポジションを取っていた。この役目を担っていたのは三門であり、河本の左側に落ちることが多かったため、大宮の攻撃は左サイドを起点としていた。

 また、両SBが高い位置を取ったとき、最前線の大前やマテウスはライン間に引いたり場合によってはブロック外に出たりとボールを引き出す動きをしていた。これにより栃木は間々で受ける選手に対して、CBがマークするのかCHがマークするのかなど、状況に応じて細かく対応する必要があった。

 

 栃木は大宮のビルドアップに対して、とにかく選手間の距離を縮めて、繋がった守備で対応した。ライン間で受ける選手に対しては前後で挟み込み、ブロック外に回る選手にはそれほど食い付かない守備で対応した。

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 また、フリーのため比較的ボールの入りやすかった大宮のSBに対しては、後方からボールが入ったタイミングでWBとSHがスライドしゴール方向を塞ぐ守備をした。特にWBのボールへのチェックが早く、大宮SBはなかなか前を向くことができなかった。この時栃木の最終ラインは前に出たWBの裏を埋めるべくボールサイドにスライドして守備の安定化を図った。

 

 

大宮の解決策

 大宮はSBの攻撃に栃木のWBが素早く食い付くのに気付くと、これを利用した攻撃を見せた。

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 前半7分のシーン。ボールを保持する大宮に対して栃木が前プレを行うと、右SBの渡部は低いポジションを取った。大宮のSBにはWBが当たることが原則となっている栃木はここで左WBの夛田がプレス。この時、夛田と福岡の間には大きなスペースができていた。大山は素早くスペースにボールを入れ、マテウスは引いて受けることで栃木の前プレを掻い潜った。

 畑尾→大山→マテウスと繋いだ展開は一見苦しいパスワークにも見えたが、大山は間接視野で渡部が引いていることに気付いていたため、スペースにダイレクトでパスをすることができた。これにより大宮は栃木の前プレに対して、序盤のうちにビルドアップの出口を見つけることに成功していた

 

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 決勝点に至るFKを獲得したシーンも似た形だった。引いて受けた左SB河面に対して右WB久富が、ボールサイドに寄る右SH茨田に対して右CBパウロンが着いて行った。

 河面から茨田にパスが入ると、茨田はパウロン-服部の間のスペースにスルーパス。この時服部はシモビッチのマークに付いていて完全にピン留めされた状態だった。そのため空いたスペースを埋めることができず、遅れて対応したパウロンがペナルティエリア外ギリギリの場所でファールをすることになってしまった。

 好位置で得たFKは名手大前が決めて大宮が先制。これで今シーズン22得点目。栃木はWBと大宮SBの関係性を利用され、スライドが間に合わない状態を作り出されたことで失点を招いてしまった。5バックを敷く栃木の最終ラインの穴を突いていく大宮の攻撃は見事だった。

 

 

前半終盤、左サイドに兆しを見せる

 大宮に先制された栃木は直後に古波津がシュートを打つシーンはあったものの、それ以外は苦しい展開に。失点の影響か前プレもほとんどできず、ボールの奪いどころがなかったため自陣でブロックを敷いて耐えるだけの展開が続いた。

 40分以降、夛田のクロスや福岡の持ち上がりから少しずつ前に進むことができるようになってきたが、ここで前半が終了。前半を0-1のビハインドで折り返した。

 

 

後半

前プレからリズムを掴み始める

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 後半、栃木はこのままではいけないということで積極的な前プレを敢行した。53分には、オールコートマンツーマンの形になるほどであり、攻撃的な守備で大宮のビルドアップを制限していった。

 

 大宮は敵陣でなかなか前を向けず自陣でプレーする時間が増えていき、このまま栃木のペースになると思われた。しかし直後の54分、大宮はPKを獲得した。気持ちよく前プレを行う栃木最終ラインの背後へのロングボールに抜け出した大前がパウロンに倒されてPKを獲得。大前にマンツーマン気味に付くことが多かったパウロンはこの直前、他のCBよりもラインが高く、前がかりになっていた背後のスペースを使われてしまった。

 キッカーはじゃんけんに勝ったマテウス(負けかもしれないけど)。栃木としてはここで決められるとかなり厳しくなるところだったが、奇跡的にシュートは右ポストに当たった。詰めていた大山のシュートも枠を外れ、なんとかPKの大ピンチを切り抜けることに成功した。

 

 このような展開の後は、失点を回避した方が心理的に優位に立てることがサッカーではよくある。一気にペースを握りたい栃木は、PKの直後に交代で入った浜下と宮崎も積極的に前プレを行った。シャドーの位置に入った浜下は何度もプレッシングのスイッチを入れ、久しぶりの出場の宮崎も古巣戦に合わせてきたかのようなコンディションの良さを披露した。それだけに70分、西谷和希の前プレから奪ったボールを受けた大黒が放ったループシュートクロスバーを叩いたシーンは非常にもったいなかった。

 

 

アレックス投入後、システムを4-4-2に変更

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 72分、栃木はへニキに代えてアレックスを投入することで3枚目の交代カードを切った。これによりシステムを4-4-2に変更。パワープレー以外で後ろを4枚にしたのは相当久しぶりに見た気がする。

 京都戦で移籍後初ゴール、前節横浜FC戦でも大黒へ絶妙なクロスを上げるなど好調を維持するアレックスはこの試合でも高いパフォーマンスを見せた。78分や83分のシーンではハイボールを処理して上手くタメを作るなど、前線で他の選手にはない特徴を発揮し大宮守備陣に脅威を与え続けた。

 ポストプレーを厭わず、ネガティブトランジション(攻→守に切り替わる局面)時の守備をサボらないプレースタイルは、今後スーパーサブからではなく、スタメンから大黒と2トップを組むことも可能だと思わせるほどの働きぶりだった。終盤戦に向けてアレックスがもたらす戦術の幅は非常に大きいはずだ。

 

 

最後はパワープレーで得点を狙うも実らず

 後半は前プレからリズムを掴み終始ペースを握った栃木だったが、終盤までなかなか得点を奪えず。大宮の素早いポジティブトランジション(守→攻に切り替わる局面)で何度か攻め込まれるシーンもあったが、4バックになってもしっかり跳ね返すことで、決定的なシーンまで持ち込まれることはほとんどなかった。

 このままビハインドの状態で後半アディショナルタイムに入ると、宮崎を左SBに移して服部を最前線に投入。終了直前にはパウロンも最前線でターゲットになるなど、短い時間で何度かパワープレーから打開を図ろうとした。しかし、大宮の守備は最後まで崩れず、栃木は0-1で敗れた。

 

 

最後に

 前後半で全く異なる色を見せた内容になったため、互いに収穫も課題も多く見えた試合になった。ただ栃木にとっては収穫の方が大きい思う。もちろん得点を奪い切れずに無得点となった決定力不足は課題ではある。しかし、それ以上に大宮相手に前半何もできなかったなか、後半は引かずにギアを上げて前プレからペースを握った点は大きな自信になるはずだ。

 また、アレックスが少しずつ栃木のプレーモデルにフィットしてきたことも大きい。残り5試合の栃木の命運を握るキーマンに、良い意味でブラジル人らしくないパーソナリティーを持つアレックスを挙げたとしても過言ではないだろう。

 次の相手はヴァンフォーレ甲府。難敵との対戦が続くが、ホーム戦は泣いても笑ってもあと2試合しかない。良い結果になることを期待したい。

 

 

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