今回は第31節ファジアーノ岡山戦の振り返りです!
両チームのスタメンと配置は次のとおり。
栃木は前節アウェイで熊本に1-0で勝利し4連勝を達成。得点はオウンゴールの1点のみに留まったが、攻撃陣が躍動し、シュート数は17-4と大きく圧倒した。前節からのスタメンの変更はなし。5連勝を懸け、J参入同期対決に挑む。なお、へニキは警告の累積により、この試合まで出場停止になっている。
対するアウェイ岡山は現在9位。ここ最近は怪我人の影響か、勝ったり負けたりを繰り返しているが、自慢の堅守は光っている(30試合で28失点=リーグ2位の少なさ)。スタメンの変更は2人。大竹と怪我の後藤に代わって上田と下口が入った。
このカードの前回対戦はシティライトスタジアムで行われた第2節。この時の栃木は4バックのゾーンディフェンスが機能せず、セットプレーから失点を重ね0-3で敗れた。3バックとなり完成度を高めつつある栃木にとっては、何としてでも勝ちたいリベンジマッチだ。
前半
◎立ち上がり〜岡山がCKから先制〜
堅守が売りの両チームによる対戦は立ち上がりから早々に動いた。末吉のCKをニアに走り込んだ増田がヘディング。ボールはGK竹重の手の上を抜けてサイドネットを揺らした。増田のマークを外す動き出し、ヘディングの技術ともに申し分なく、非常にレベルの高いゴールだった。軌道的にもGKにセーブを求めるのは酷だったと思われる。
両チームのスタイルを考えると先制点が非常に重要になるだけに、栃木にとっては痛恨の失点となってしまった。
※個人的にこの失点シーンを見て、第3節山口戦でCKから高木大輔に決められたゴールを思い出しました。
◎岡山の狙いがハマった前半
この試合の岡山の狙いは至ってシンプルなものだった。ボールを奪うとすぐに栃木CBの背後のスペースにロングボールを蹴り込み、FWの選手を走らせる。試合後の長澤監督(岡山)のコメントからも、芝の状態を考慮したうえで、割り切った選択をしたようだ。ただ岡山は、これを徹底することにより序盤から栃木を押し込むことに成功した。先制点に繋がるシーンも同様の形から生まれたCKによるものだった。
図示するとこのような感じに。ターゲットは主にFWの齋藤と仲間であった。上田は数的同数になる中盤のサポートに回ることもあり、ここは臨機応変な対応を求められていたのだろう。
岡山は、前へ跳ね返すパワーの強い栃木CBとの競り合いを避けるように背後のスペースへ蹴り込み、ある種のイレギュラーな状態を作り出すことで、リスクをかけずに高い位置にボールを運ぶことを意図していた。前でボールを収められればそのままシュートやキープしてのWBの押し上げ、収められなくてもそのまま高い位置からのプレッシングでの回収によるショートカウンターと、攻守両面において栃木を押し込んでいった。
栃木のCBはヘディングで跳ね返すパワーは強いが、お世辞にも足下の技術が高いとは言えない。相手を背後に抱えた状態で、戻りながら的確なパスでの回避やクリアは出来るだけ避けたいところだった。しかし、結果的に最終ラインの背後を繰り返し突かれることでラインがズルズルと下がり、攻撃に転じても押し上げられないという悪循環に陥ってしまった。そもそものラインを低めに設定したり、背後のスペースをある程度GK竹重に任せるという手もあったと思うが、前半は終始この状況から脱することができなかった。
◎岡山の撤退守備とプレッシングのメリハリ
岡山は自陣でブロックを形成する際、両WBを下げて最終ラインに5枚を配置。これは栃木も同様であり、守備時5-4-1は3バックを採用するチームの定石である。
この状態だと栃木としても中央を割っていくのは相当難しい。サイドにボールを回しても岡山のシャドーとWBがコースを限定化するため、ボランチも含めて結局はCBにボールを返すことが多くなった。
これにより準備が整ったのは岡山。西澤の後方でワンアンカー気味にプレーする岡﨑からCBへボールが下がったところでプレッシングを開始。CBにはシャドーが、WBにはWBがプレス。3-4-2-1同士のミラーゲームであり対面の敵が明確であるため、岡山の選手は判断に迷いなくプレッシングを行っていた。
一枚剥がす技術があれば、一気に数的優位になり局面を打開できたかもしれない。ただ、ビハインドであること、同数プレスのためカバーリングも効きにくいことを考慮すると、栃木としては難しい対応を強いられる場面であった。
◎セットプレーから打開したい栃木
攻守において流れを掴めない栃木は、セットプレーからの打開を図る。前半22分、少し遠い位置ではあったが初めてロングスローのチャンスが訪れると、最後は西谷和のシュート。枠外だったものの、ここから短い時間でいくつかのチャンスを作ることができた。
前半28分、ロングスローから流れたボールを浜下がボレーで狙うもGK正面。前半31分、岡﨑のCKを福岡が上手くマークを外しニアでヘディングも枠の外。前半37分、岡﨑のFKからの流れで福岡とパウロンにチャンスも最後は岡山DFがブロック。特に前半31分のシーンは出し手、受け手の関係性がマッチしたヘディングだっただけに決め切りたいところだった。
立て続けにセットプレーから流れを掴みかけていたものの得点は生まれず。前半は0-1のビハインドで折り返した。
後半
◎同サイド攻撃から流れを掴む
栃木は後半からボランチの西澤に代わって西谷優希がイン。前節の熊本戦と同様、西谷優が右シャドーに、浜下がボランチに入った。守備時は両WBが下がる5-4-1を継続しながらも、攻撃時は岡﨑が完全にアンカーになり、浜下はライン間の入口を取る形になっていた。無理矢理フォーメーションにあてれば3-1-5-1といったところか。
西谷優が入ったことによりライン間での動きが活性化した。栃木の同サイド攻撃の決まり事になりつつある逆シャドーのレーンを越える動きも相まり、徐々に細かいパスワークと流動的な配置転換で、ミドルゾーンからアタッキングゾーンにかけてボールを自由に回すことができるようになった。
◎逃げ切った岡山
後半は栃木にボールを持たれることの多かった岡山。5-4のブロックを維持しながら、レーンを越える両シャドーに対してはスライドとゾーンによるマークの受け渡しで粘り強く対応した。
さらに試合を締めるために後半36分に齋藤に代え武田、後半42分上田に代え澤口を投入。守備に重きを置いた交代でペナルティエリア前にバスを止め、しっかり試合をクローズした。
栃木としては後半は前半とは変わって落ち着いてボールを保持することで岡山を揺さぶったが1点が遠く、6試合ぶりに無得点で終わった。途中出場の端山が左サイドから突破するシーンや大黒にラストパスを送るシーンもあったが、結果には結び付かなかった。
最後に
試合スタッツを見ると、シュート数は栃木19本に対して岡山7本、プレーエリアは栃木がアタッキングゾーンで32%と攻撃面に良い数値が見て取れる。またパス数も前半の199回に対して後半は312回を記録している。
これを見ると、栃木は後半より主導権を握りアグレッシブに攻めたように見える。しかし実際の試合結果は敗戦で、栃木の一つ一つのプレーに対する岡山の対応を見ると、序盤にリードを奪ったことによる試合巧者な一面を見せつけられたようにも感じられる。
そこを加味すれば、上記のスタッツは意味をそれほど成さない数字になってくる。横山監督の言葉を借りれば、「負けたけれどシュート数が多いとか、ボールを繋げた、というのはやめよう」にもあるように、負けた時に良いスタッツにすがって改善を妨げるのはチームの成長にはならない。すべてを悲観することはないが、貴重なデータによる反省点を得られたという点をポジティブに考えていくのが望ましい受け止め方だと思う。
次節はアウェイで徳島ヴォルティスとの対戦。またしてもプレーオフ進出を狙う難敵との対戦になる。更なる前進の一歩目になるよう、良い試合を期待したい!
↓試合結果↓
栃木vs岡山の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2018年9月1日):Jリーグ.jp
↓試合ハイライト↓