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【少しずつ足りないクオリティ】J2 第34節 栃木SC vs ギラヴァンツ北九州(●0-1)

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はじめに

 前節は徳島に0-2で敗戦。最後まで強気の姿勢を貫いたものの、かえって首位との差を痛感する試合となった。アウェイ連戦となる今節は北九州と対戦。後半戦は好不調の波が大きい北九州だが、前節愛媛戦は3得点で快勝。栃木にとっては終盤戦に向けて上位に食らいついていきたい一戦となる。

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 10位

 中3日でのアウェイ戦に臨む栃木は前節から3人を変更。前節ベンチ外だったエスクデロと佐藤が先発復帰し、代わってウサンホ、山本がメンバーから外れた。GK、DFライン、森の6人は今回の5連戦全てでスタメンとなった。

 

ギラヴァンツ北九州 [4-4-2] 6位

 ホーム連戦となる北九州は前節から2人を変更。FWには町野に代わって鈴木、ボランチには加藤に代わって國分が入った。ボランチの針谷は10月28日に磐田から加入したばかりだが、これで3試合連続のスタメンとなった。

 

 

前半

ハイプレスとカウンターで試合を掌握

 スピーディーなパスワークからサイドを攻略し、FW陣が決定力の高さを見せることで、今季前半戦を席巻してきた北九州。現在は一時期の好調と比べて勢いに陰りが見えるが、チームとして志向しているスタイルは変わらず。栃木としては、後ろからしっかり繋いでくる北九州のビルドアップをどれだけ高い位置で塞き止められるかがポイントになってくる。

 

 北九州は後ろからビルドアップを行うときに左ボランチの針谷をSB福森-CB村松間に下ろして3バック化。両SBを押し上げ、SHが内側に絞ることで[3-1-4-2]のようなシステムを形成する。

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 北九州の3バックは栃木の2トップに対して数的優位を作るというよりは、SBに高い位置を取らせてSHと近い距離感でサイド攻撃に厚みを持たせよう、という意味合いの方が強かったように思う。序盤から左SH椿がライン間でボールを受けて大外の福森との関係性から左サイドを突破する場面を何度か演出。今季ボランチ起用もあった右SH高橋はより中央に寄ってビルドアップを助けることがあったため、北九州は左サイドから攻めることが多かった。

 

 自陣でブロックを敷くとき以外はマンツーマンで対応する栃木。キーマンの椿に対応するのがボランチの佐藤。中央を空けすぎずに椿に入るボールに対して素早くプレスをかけ、自陣深くに侵入された場合も密着マークでついていき、同時にハーフスペースを埋める役割を果たしていた。

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 プレッシングをかける相手を定めることで判断スピードを短縮し、素早くハイプレスをかける栃木。村松→國分のパスや、生駒→藤原のパスをそれぞれエスクデロ、溝渕がカットしてカウンターに繋げるなど、マンツーマンで守るメリットを十分に発揮できていた。

 例外はボールが逆サイドにあるとき。SH(森と大﨑、途中から大島)はプレスの対象を睨みつつ、まずは中央を堅めることで逆サイドへのボールの展開を牽制。片方のサイドに圧縮して守り、パスを繋ぐ余裕を与えずにボールを奪い取る。プレスをかわされてからのプレスバックも効いており、特に西谷の球際の強さは光っていた。

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 北九州の最終ラインを押し下げる明本と、最終ライン手前のスペースを使うエスクデロの関係性はこの日も良好。栃木のロングボールに対して北九州はSHの戻りが遅れる傾向があり、それに伴いボランチ脇にスペースが生じることがしばしば。前線に高さのない栃木だが、このエリアでのセカンドボールの攻防で優位に立てていたため、押し込まれた状態からの脱出にはそれほど苦しむことはなかった。

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 ボール保持を得意とする北九州に対して、45%前後のボール支配率を記録していたのもある程度攻撃回数を確保できていたことの表れ。高い位置でのボール奪取からの積極的なミドルシュートは枠こそ捕えられなかったが、シュートで完結させようという気概は窺えた。

 

 前半は0-0のスコアレスで終了。

 

 

後半

変化についていけなかった立ち上がり

 立ち上がりの最初の攻撃で得点を上げた北九州。高橋、藤原と連続して右サイドから仕掛けると、最後は藤原のクロスに鈴木がコントロールしたヘディングシュートでゴールネットを揺らした。

 栃木にとっては、同サイドでの守備が続いたことで全体がボールサイドに寄ってしまったのが痛かった。柳は最初のクロスは鈴木に対応したが、失点シーンはボールウォッチャーに。やむなく対応することになった黒崎の向こう側には北九州の選手が一人余っており、クロス対応でのエラーが失点に繋がってしまった。

 

 その後も北九州が攻勢を強めていくが、得点ブーストというよりは栃木のマンツーマンDFを逆手に取る策が機能していたといえる。北九州の小林監督が試合後に言及していたFW鈴木のトップ下化によって、それまで鈴木を見ていた栃木のCBは下りていく動きに対応できなかった。前半上手くいっていた片方のサイドに閉じ込める守備もピッチ中央で数的不利に陥ったことから上手くハマらず、次第に押し込まれる時間が増えていった。

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 栃木が落ち着きを取り戻せたのは後半18分に3枚替えを行い、その後の飲水タイムを経てからだった。上背のそれほど高くない村松に対して矢野をあてることでロングボールでの制空権を掌握。セットした状態からのプレスの仕組みを解決したわけではなかったが、ロングボールをゴリ押ししていくことで手早く敵陣での攻撃に移行。強引に自分たちのペースに持ち込んだ印象であった。

 

 後半25分以降はほとんどの時間を敵陣で過ごすことができていた栃木。それだけに、ペナルティエリア内でのちょっとしたミスからチャンスを不意にしてしまうのはもったいなかったし、北九州のカウンターの余力を考えれば、一つのゴールが次を呼びそうな雰囲気はあった。もちろん北九州がセーフティに時計の針を進めようとしていた点は考慮する必要はあるが、5連戦の5試合目、交代選手も含めて運動量を切らさずに試合をコントロールできていたのは栃木だった。

 

 最終盤には柳を上げてパワープレーを試みるも0-1で試合終了。栃木はアウェイ連戦で2連敗。北九州はホーム連戦で2連勝を飾った。

 

 

最後に

 試合展開、被決定機の数を考えれば後半立ち上がりの失点が致命的だったのは言うまでもない。前後半の入りは強度の高いプレッシングで相手を押し込むことの多い栃木がフワッと試合に入ったわけではないと思うが、一つの守備対応のエラーが命取りになってしまった。これまで少なかったクロスからの失点は前節徳島戦から連続しており、クロス対応については再考する余地がありそうだ。

 ここ最近の試合ではエスクデロを軸とした地上戦が上手くいっていた栃木だが、この試合では矢野が途中出場してからの空中戦メインの戦い方の方が機能していた。どちらも今季取り組んできた形であり、状況によって使い分けられる強みがこの試合では表れたと思うが、如何せん足りないのがゴール前でのクオリティ。個人のミスもあれば、フリーの選手を作れていない組織としての不十分さも見られる。

 厳しい来季のレギュレーションを考えれば、準備期間とも言えるラスト8試合。ぜひ来季に向けてのヒントを得られるよう期待したいところだ。

 

 

試合結果

栃木SC 0-1 ギラヴァンツ北九州

得点 47分 鈴木国友(北九州)

主審 笠原寛貴

観客 3,001人

会場 ミクニワールドスタジアム

 

 

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